介護ロボットにはどのような種類がある?それぞれの特徴とメリット・デメリットを紹介

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2023/08/28

介護ロボットの存在は知ってるけど、どのような種類のロボットがあるかわからない方は多いのではないでしょうか?
介護ロボットの開発は進んでいますが、実際に介護現場に導入された事例は、まだまだ少ないのが現状です。

本記事では、介護ロボットの種類や特徴、導入のメリットやデメリットなどを解説します。
「介護ロボットの種類を知りたい」「導入した場合の効果を知りたい」などの思いを持っている方は参考になるので、ぜひ最後までご覧ください。

介護ロボットってなに?

厚生労働省の資料によると、ロボットとは以下3つの要素技術があり、知能化した機械システムと定義されています。

  • 情報を感知する(センサー系)
  • 判断する(知能・制御系)
  • 動作する(駆動系)

ロボット技術が応用され、ご利用者様の自立支援や介護職の負担軽減に役立つ介護機器のことを介護ロボットと呼んでいます。

参考:介護ロボットとは|厚生労働省

介護ロボットに関するより詳しい情報は、以下のケアきょう記事で解説しています。

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またケアきょうYouTubeでも「介護ロボット」に関する情報を発信しているので、ぜひご覧ください。

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介護ロボットの種類3つ

介護ロボットの種類は、主に以下の3つに分けられます。

  • 介護支援型
  • 自立支援型
  • 見守り型

種類ごとに使用目的が異なり、現場のニーズに沿ってどの種類にするか決めていきます。

それぞれの詳しい内容を見ていきましょう。

介護支援型

介護支援型の介護ロボットは、排泄や入浴、移乗などの介護業務に対する支援を目的としています。
業務支援をすることで、スタッフの介護負担の軽減効果も期待できます。
また介助されるご利用者様も、ロボットなので気を遣わずに済みます。
そのため、ご利用者様の心理的負担の軽減や、緊張の緩和などにもつながるでしょう。

最も主流なものが、介護職が着用するタイプの介護ロボット「マッスルスーツ」です。
移乗介助の負担軽減が主な目的で、とくに腰痛予防に対する効果が期待できます。
腰痛は介護職を健康的に続ける上で、大きな障害となっています。
そのため、介護ロボットの活用が離職率を抑えるといった効果にもつながるでしょう。

参考:介護ロボット導入活用事例集2020|厚生労働省

自立支援型

自立支援型の介護ロボットは、ご利用者様の動作をサポートすることを目的として開発されています。
ご利用者様の中には、要介護度が低く簡単なサポートによって、自立した生活を送れる場合もあります。
たとえば膝の痛みがあるため、歩く際に少しサポートがほしいという方には、自立支援型の介護ロボットが役立ちます。

介護ロボットのサポートによって、自分の力でできることが増えると、ご利用者様の自信につながります。
また介護職に気を遣うこともなくなるため、心理的負担の軽減にもつながるでしょう。

見守り型

見守り型の介護ロボットは、AIを活用しご利用者様を見守り、日常生活での安全を守ることを目的としています。
ロボットに取り付けられたカメラやセンサーによって、ご利用者様の異変に気付ける仕組みです。
遠隔からでもご利用者様の行動を見守ることができれば、介護をする家族やスタッフの負担を軽減できるでしょう。

見守り型の介護ロボットの中には、AIによってコミュニケーションをとれるものもあります
そのため、ご利用者様がいつも違う行動をした際に声をかけたり、レクリエーションでサポートをしてもらったりといった活用も可能です。
常に家族がそばにいられない、在宅での介護では活躍が期待できるでしょう。

介護ロボットの開発を重点的に支援する分野6つ

介護ロボットの開発においては、以下6つの分野を重点的に支援するとされています。

  1. 移乗支援
  2. 移動支援
  3. 排泄支援
  4. 見守り支援
  5. 入浴支援
  6. 介護業務支援

参考:ロボット技術の介護利用における重点分野|厚生労働省

前述の介護ロボットの種類3つとあわせて学ぶことで、介護ロボットの開発の目的をより理解できます。
それぞれ詳しい内容と、分野ごとの具体的な介護ロボットを紹介するので、ぜひご覧ください。

移乗支援

移乗支援は、ご利用者様をベッドと車椅子間で移したり、トイレや入浴時にも必要になる移乗介助の身体的負担を軽減する分野です。
移乗支援の介護ロボットには、装着型と非装着型の2種類があります。

代表的なロボットは「マッスルスーツ」です。
装着することで、移乗介助の際に必要とする動作をサポートしてくれます。
また介護職にとって厄介な腰痛の予防効果も期待できます。

参考:マッスルスーツ|株式会社イノフィス

移乗支援ロボットが普及していけば「肉体労働」と言われる介護職のイメージは変わっていくでしょう。

移動支援

移動支援は、ご利用者様が歩く際の身体的負担を軽減し、移動をサポートする分野です。
移動支援の介護ロボットには、屋内用と屋外用があり使用環境によって使い分けが可能です。
また、ご利用者様が装着して利用するタイプもあります。

装着型には歩行支援機と言われるものがあり、歩行能力が弱ったご利用者様の脚の振り出しをアシストしてくれます。

参考:歩行支援機 ACSIVE(アクシブ)|株式会社ナンブ

移動支援の介護ロボットは、ご利用者様のADLが低下する前に使用することが大切です。
なぜなら、車椅子が必要な状態になる前に利用することで、歩行能力の低下予防が期待できるからです。

排泄支援

排泄支援は、ご利用者様の排泄にかかわるすべての動作をサポートする分野です。
排泄支援には、以下のようなさまざまな介助が含まれます。

  • トイレ誘導
  • オムツ交換
  • 衣類の着脱
  • トイレ内の環境改善
  • 排泄回数や状態の管理など

排泄支援の介護ロボットの中に、排泄を予測し安心してトイレに行ける環境を作ってくれる排泄予測デバイスというものがあります。
排尿のタイミングを事前に知らせてくれるため、失禁や尿漏れなどの予防が期待できるでしょう。
こちらは2022年4月より特定福祉用具として介護保険の適用になったので、コスト面の負担にも配慮されています。

参考:排泄予測デバイス DFree|トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

排泄支援は、介護業務の中でも比較的負担が大きい介助です。
排泄介助の負担軽減は、介護職の仕事環境の改善にも大きくつながってくるでしょう。

見守り支援

見守り支援はセンサーや通信機能を活用し、ご利用者様の異変を検知し安全を守る分野です。
施設でも在宅でも活躍が期待でき、とくに見守りが手薄になりやすい夜間の活用が有効と言えます。

見守り支援の介護ロボットの中で代表的なものが「眠りSCAN」です。
さまざまな介護施設に導入されており、今後もさらなる需要拡大が予想できます。
ベッド上で過ごすご利用者様の心拍数や眠りの状態を把握できるだけでなく、ベッドから起きた際にはアラームで知らせてくれます。

参考:見守り支援システム「眠りSCAN」|パラマウントベッド株式会社

見守り支援の介護ロボットの導入によって、これまで必須だった夜間帯のご利用者様の状態確認が簡素化されます。
長時間労働による身体的負担の軽減に、大いに役立つでしょう。

入浴支援

入浴支援は、ご利用者様の入浴動作や介護職の入浴介助など、入浴にかかわることをサポートする分野です。
入浴時は転倒事故のリスクが高く、他の業務よりもご利用者様の安全に気を遣う必要があります。

具体的な入浴支援の介護ロボットの中に、浴槽に浸かるだけで身体を洗える機械があります。
介護職が身体を洗う必要がなくなるため、業務の負担軽減とご利用者様の羞恥心への配慮が期待できるでしょう。

参考:ピュアット|株式会社 金星

介護ロボットの導入によって、介護職の身体的負担だけでなく、心理的な負担軽減も期待できます。
またご利用者様からすると、介護職に手伝ってもらうことに対する申し訳なさや、裸を見られる恥ずかしさなども、介護ロボットに任せることで軽減できるでしょう。

介護業務支援

介護業務支援は、介護業務での情報収集に関してサポートする分野です。
具体的には、ロボット技術を用いて、見守りや移動支援、排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集します。
それらの情報やデータを、ご利用者様に対する必要な支援に活用できる機器が介護業務支援のロボットです。

介護現場では、いまだ手書きで記録をしたり、データの蓄積手段が紙の書類という事業所もあります。
しかしそれらの業務が負担となり、ご利用者様への直接的な介助が疎かになる可能性も考えられます。
蓄積されたデータと介護記録が連動することで、ご利用者様の状態変化が数字として可視化できるメリットもあるでしょう。

参考:FTCare-i ATコネクト|株式会社エフトス

さまざまな介護業務の情報を共有することで、さまざまなデータが蓄積され、介護サービスの見直しや改善などがスムーズに行えるでしょう。

介護ロボットを導入するメリット5つ

介護ロボットを導入するメリットは、主に以下の5つが挙げられます。

  • 介護職の身体的負担が減る
  • 介護職の心理的負担が減る
  • 業務の生産性が向上する
  • ご利用者様の心理的負担が減る
  • 睡眠の質が向上する

それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。

介護職の身体的負担が減る

介護の仕事は移乗や排泄、入浴介助といった身体的負担の大きい肉体労働がメインです。
日々の介護が長期間にわたって続くと、身体への負担は蓄積し、慢性的な腰痛につながるリスクもあります。

介護ロボットを導入することで介助の負担を減らし、介護職の身体的負担を軽くすることが可能です。
とくに腰痛によって介護の仕事を続けられなくなるリスクを軽減できるため、離職率低下の効果も期待できます。
介護ロボットは、介護業界の人材不足という課題を解決する手段のひとつになり得るでしょう。

介護職の心理的負担が減る

介護ロボットを導入すれば、介護職の身体的負担だけでなく心理的負担も減らせられます。
ストレスをはじめとした心理的負担は、体調不良や腰痛などの身体的な不調にもつながります。
そのため、仕事を長く快適に続けるためにも、心理的負担の軽減は重要と言えるでしょう。

介護の現場で心理的負担がかかる状況に、ご利用者様の状態確認が挙げられます。
たとえば夜間帯の見守りでは、ご利用者様一人ひとりの部屋に行き確認するため、その都度ご利用者様に気を遣います。
また、実際に目で確認しないと状態が確認できないこともストレスの要因です。
見守り支援の介護ロボットを利用すれば、これらの心理的負担は大きく軽減されることが期待できるでしょう。

業務の生産性が向上する

介護ロボットに仕事を任せることで業務の生産性が向上し、介護職の業務負担が減ります
わかりやすい例で言うと、介護記録の簡素化や介護業務のデータ収集の効率化などです。
手書きの記録は、iPhoneやiPadなどを活用すればワンタッチで行えます。
食事や排泄のデータ確認はAIで自動化すれば、わざわざ一つひとつ確認する必要もありません。

介護業務の中でも事務作業にかけていた多くの時間は、介護ロボットの導入で大きく削減できます。
その空いた時間で、ご利用者様とかかわる機会を増やせられれば、介護サービスの質の向上にもつながります。
ご利用者様と接する時間以外で、介護職がする必要のない仕事は、積極的に介護ロボットに任せることが重要になってくるでしょう。

ご利用者様の心理的負担が減る

介護ロボットを活用することで、ご利用者様の心理的負担を減らせます。
たとえば、入浴時にロボットに洗身介助を任せれば、裸を見られる時間を減らし羞恥心の軽減につながります。
また排泄予測の介護ロボットを導入することで排泄の失敗を減らせられれば、ご利用者様の尊厳を守ることにもつながるでしょう。

こういったご利用者様の心理的な負担の軽減は、日常生活に対する満足度の向上にも関わってきます
ご利用者様のストレスを減らし快適な生活を実現するためにも、介護ロボットの導入は大きなきっかけのひとつになるでしょう。

睡眠の質が向上する

先述の見守り支援の部分でも紹介した「眠りSCAN」の導入によって、ご利用者様の睡眠の質の向上が期待できます。
なぜなら、これまで目視で確認する必要があった夜間帯の巡視が、見守りSCANの導入によって不要になるからです。

介護職の巡視がなくなれば、部屋に行く際の物音がなくなるだけでなく、照明によってご利用者様の睡眠を妨げる心配もありません。
良質な睡眠は翌日以降の体調に大きく関係し、体調が良ければご利用者様の生活も安定します。
その結果、介護職の負担も減るため、介護ロボットの導入によるご利用者様の睡眠の質の向上は、大きなメリットのひとつと言えるでしょう。

介護ロボットを導入するデメリット3つ

介護ロボットを導入する際に考えられるデメリットは、以下の3つです。

  • 費用がかかる
  • 設置や保管場所が必要になる
  • ゼロからスタッフを教育する必要がある

それぞれ詳しく解説していくので、ぜひ介護ロボット導入を検討する際の参考にしてみてください。

費用がかかる

介護ロボット導入の最も大きなデメリットは、高額な費用がかかることです。
導入時の費用はもちろんかかりますが、その後の維持管理費も継続的に必要になります。
導入時に利用できる補助金制度はありますが、複雑な申請が必要なため、気軽に利用できるとは言えません。

福祉用具のように、介護保険が適用され自己負担金を抑えて利用できればいいのですが、まだ適用されているものは少ないのが現状です。
介護ロボットも福祉用具と同様に、介護保険が適用され、気軽にレンタルできるようになれば、さらに普及しやすくなるでしょう。

設置や保管場所が必要になる

介護ロボットの中には大型のものもあるため、設置や保管が可能な広いスペースが必要になる場合もあります
大型の施設であれば場所の確保はしやすいですが、小規模施設の場合は介護ロボットを設置することで、ご利用者様の生活空間を圧迫する可能性が出てきます。

そのため、ただなんとなく介護ロボットを導入するのではなく、現在施設で困っていることや重点的に支援を強化したい部分を事前に確認しましょう。
その上で、本当に必要な介護ロボットのみを導入することが大切になってくるでしょう。

ゼロからスタッフを教育する必要がある

介護ロボットを導入すると、使い方や注意点などをスタッフ全員に教えなければいけません
業務時間外で教えるとなると、時間やコストの負担が増えます。
また外部から講師を招く場合は、さらなるコストもかかるでしょう。

介護ロボット導入時は、コストや教育時間などの負担は一時的に増えます。
しかし長期的に考えると、介護職とご利用者様のお互いの負担軽減につながります。
そのため、導入直後は時間的にもコスト的にも大変かもしれませんが、将来への投資と考えコツコツ継続することが大切と言えるでしょう。

介護ロボットに関するよくある質問

介護ロボットに関するよくある質問は、以下の3つです。

  • 介護ロボットはなぜ普及しないの?
  • 介護ロボットの活用事例はある?
  • 介護ロボットって補助金はあるの?

それぞれの質問に対して回答していきます。

介護ロボットはなぜ普及しないの?

介護ロボットが普及しない理由には、以下のようなことが挙げられます。

  • 介護ロボットに関する情報が少ない
  • ご利用者様への機械的な作業は難しい
  • 高度な技術を使いこなせない
  • 作る側と使う側の温度差がある
  • 作業効率が下がる可能性がある
  • 設置や保管場所の確保が難しい
  • 導入するためのコストが高い

それぞれの詳しい内容については、以下の記事をご覧ください。

▼関連記事

介護ロボットが普及しない理由とは?最新の普及率や導入するまでの問題点を解説

介護ロボットの活用事例はある?

介護ロボットは、すでにさまざまな介護施設で活用されています。
実際に導入して良かった面もありますが、反対に上手く活用できなかった場合も存在します。

以下の厚生労働省が公開している「介護ロボット導入活用事例集」では、実際に介護ロボットを導入した施設のリアルな声が確認できます。
参考になるので、ぜひ目を通してみてください。

参考:介護ロボット導入活用事例集 2020|厚生労働省

介護ロボットって補助金はあるの?

介護ロボットの導入には、自治体ごとに補助金制度が存在します。
補助金の利用の際は「対象の介護ロボットであるか」「現場のニーズとマッチしているか」など、導入前の確認や相談をしっかり行いましょう

補助金の支給額は、以下のとおりです。

介護ロボット
(1機器あたり)
・移乗支援(装着型・非装着型)
・入浴支援
上限100万円
・上記以外 上限30万円
見守りセンサーの導入に伴う通信環境整備
(1事業所あたり)
上限750万円

引用:地域医療介護総合確保基金を利用した介護ロボットの導入支援|厚生労働省

介護ロボットの補助金制度の利用方法や、自治体ごとの補助金事例などについては、以下の記事を参考にしてみてください。

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介護ロボットに補助金制度はあるの?対象者や対象機器など最新情報を紹介

まとめ

介護ロボットには「介護支援型」「自立支援型」「見守り型」の主に以下3つの種類があります。
また国として、移動支援や入浴支援など、全6分野に関する介護ロボットの開発を、重点的に支援する方向を示しています。

ロボットとは言っても、小さな電子機器やセンサーなど、さまざまなものが含まれているため、複雑に感じる方もいるかもしれません。
ぜひ本記事を参考に、介護ロボットの種類について理解し、介護現場に導入する際の参考にしてみてください。

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