どうなる介護報酬改定!? 財務省の見解と見通し

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2022/01/24

介護報酬を上げる必要はない

来年度に迫った介護報酬改定
その議論が進んでいますが、財務省は「介護報酬を上げる必要はない」との見解を示しています。
これはどういった事情があるのでしょうか?

財務省が先日11月2日に発表した内容をもとに、その理由を5つにまとめて解説していきます。
介護施設の経営や、皆さんのお給料にも大きく影響を与える内容ですので、ぜひ一緒にチェックしていきましょう!

理由①国民の負担

財務省が、介護報酬アップに反対する1つ目の理由は「国民の負担が増えるから」です。
財務省としては、介護業界だけを考えることはできないのが現状です。

現在、日本においては年々介護保険費用が増加しており、それに伴い介護保険料も増加の一途をたどっています。

介護保険が始まってからで考えると

  • 介護保険の総費用は3倍
  • 保険料は2倍

に、それぞれ増加しています。

これは、高齢化などの要因によるものとの見解を財務省は示しています。
財務省としては、こういった高齢化等の逆らえない流れの下で、さらに介護保険費用は増加するとの見通しを示しています。

そのため、国民全体の負担を考えると、介護報酬改定は慎重に考えざるを得ないとしています。
運営の効率化を求め、介護費用をどうにか抑えたい、というのが財務省の本音だと思います。

理由②介護サービス施設・事業所の経営状況

財務省が介護報酬アップに反対する、2つ目の理由は「介護サービス事業所の経営がそこまで悪くないから」です。

会社や事業所の経営の健全度、どれだけ儲かっているかは収支差率といわれる数値で表され、数値が高ければ高いほど儲かっているとみることができます。

厚労省が行っている「介護事業経営実態調査」によると、令和元年の介護保険サービス事業所の全体での平均収支差率は、2.4%でした。
この数字は、中小企業の収支差率2.9%とほぼ同水準とみて良いでしょう。

また、平成29〜令和元年の3年間で計測しても、介護サービス事業所の平均収支差率は3.1%、中小企業は3.3%とこちらも同程度です。

つまり財務省としては

  • それなりにしっかり利益を出しているはず
  • 利益を出しているのであれば、これ以上お金を国から出さなくてもいいはず

と考えているようです。

理由③新型コロナの影響

財務省が介護報酬アップに反対する、3つ目の理由は、「新型コロナウイルス感染症の影響が収支差率に大きな影響を及ぼしていないと考えられる」になります。

収入と費用に分けて財務省の意見を見ていきます。

まずは収入に関してですが、国から支払われる「介護給付費」は、国民健康保険中央会が行った調査によると、

  • 全体では前年度から3~4%程度プラスになっている
  • サービスや地方によってはマイナスになっている

とのことです。
他の産業は大きく売上が下がっていますので、それに比べたら影響が少ないのでは?との見解だと思います。

一方、費用に関してですが

  • 人件費に影響がないとする事業所が9割以上
  • 物品購入など含めても0.3%程度しか費用は増加していない

としています。

ですので、収支差は「収入から費用を引いたもの」なので、利益の観点では問題が起きてはいないと見ています。

今後、新型コロナの流行や、その影響を見極める必要があるものの、一時的な対応であるならば、3年間影響する介護報酬をアップしなくていいのではとしています。

もちろん財務省も通所介護など一部のサービスにおいて、収入が減っていることを認めており、臨時の措置を講じることは考えているそうです。
収入が減ってしまっているサービスにおいては、人件費も削られていくことが考えられます。
十分に補助を出してもらう必要はありそうです。

理由④介護職員の処遇改善は必要ない?

財務省が介護報酬アップに反対する、4つ目の理由は、「介護報酬改定してまで、処遇改善を進める環境にない」になります。

財務省がこう考える理由は、3つあります。

  • 1つ目が、介護職への就職を増やせそうだから
  • 2つ目が、特定処遇改善加算の財源が余っているから
  • 3つ目が、社会福祉法人の資産が十分にあるから

①介護職への就職が増やせそうだから

新型コロナの影響によって、現在労働市場は大きく動いています。
全産業での失業率は増加してきており、1月は2.5%程度でしたが、8月には3.0%となってきています。

つまり、失業者が増えてきている状況にあります。
これと連動するように、介護関係の有効求人倍率は低下してきています。

つまり、人手が足りている会社が少し増えてきている、ということです。

②特定処遇改善加算の財源が余っているから

昨年10月から始まった「特定処遇改善加算」ですが、請求している事業所は6割にとどまっています。
つまり4割の施設分の加算に対応することのできる財源は余っているはず、こうしたお金を十分に活用することで処遇は改善できるはず、と考えています。

③社会福祉法人の資産はまだ十分にあるから

調査によると、社会福祉法人の「社会福祉充実財産」とよばれる施設が溜めている財産は、平成30年で4,949億円、令和元年で4,546億円あるとのことです。
特定処遇改善加算は総額2,000億円準備しているので、その倍以上貯蓄があると指摘しています。

施設の修繕費などにも使用されるものですが、これをうまく利用することで、処遇は改善できるとしています

理由⑤もっと効率的に運営できるはず

財務省が介護報酬アップに反対する、5つ目の理由は「もっと効率的に運営できるはずだから」になります。

財務省の見解としては

  1. 運営基準よりも人を多く配置している状態が続いている
  2. ロボットなどのICTを活用すれば、サービスの質の確保とコスト縮減ができる
  3. 適切な加算にお金を集中すれば節約できる

としています。

特養においての運営基準は、常勤の職員1人に対し、3人の入所者を受け入れていいとしていますが、2011年ころから、2人の入所者を受け入れている状況です。

これを見て、基準よりも多く人を配置しているのだから、もっと効率的に配置するべきだとしています。
その手段として、ロボットやICTを活用すると良いとしています。

また、加算に関しては相当に複雑になっていることを踏まえ、意味のある加算にお金を集めていくことで、負担軽減と無駄を減らすことができるとしています。

こちらは、一番介護職の方からの反論が多そうです。
常勤換算で足りていても、現場は、かなり手一杯な状況という声がほとんどだと思います。
また、ロボットやICTなどがどこまで効果を出すのか?配置できるお金があるのか?といった反論も出てきそうです。


今回は、「介護報酬を上げる必要はない」5つの理由をご紹介しました。
いろいろな理由がありましたが、皆さんはどう感じられましたか?

介護施設の経営や、皆さんのお給料にも大きく影響を与える内容ですので、今後も注目していきましょう!

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