接遇とは?どうやって身に付けたら良いの?介護で身に着けるべき接遇のポイント!

介助術・介助方法
2021/12/29

介護をする際に気を付けなければならない点は多々ありますが、その中でも基本となるのが「接遇」です。利用者やその家族だけでなく、介護者も交えて双方が心地よく過ごすための大切なポイントです。今回は「接遇」についての知識を深め、利用者やその家族と互いに心地よく過ごせる接遇を身に付けましょう。

1. 接遇とは?

1.1. 接遇の定義

接遇とはいわゆる接客と混合されがちですが、実は少し違います。

接客 利用者へ対応をすること自体を差し、状況に合わせて対応できることや、利用者の意図するサービスを提供することなど。
接遇 いわゆる「おもてなし」の気持ちのことを指し、身近な人や思いがけず出会った人に対して心が通じ合うようにすること。

利用者が気持ちよくサービスを受けることができるための配慮やアイデアを行うなど、接遇には接客を含めた多くの要素が含まれています。

1.2. 接遇はなぜ重要なの?

企業においては、接遇マナーの良し悪しが業績に直結すると言われるほど、企業イメージやブランド力への大きな影響力を持っています。
接遇マナーが身に付いた職員がいる職場は、利用者だけでなくスタッフ同士の心配りが行き届いていることも多く、雰囲気の良い職場になることも期待されます。
個人の成長だけでなく組織としても、利用者とその家族、またスタッフ間での信頼関係を築くことができ、大きく成長する機会にもなります。各スタッフの接遇改善により、利用者とその家族からの強い信頼を寄せられる施設を目指すことも可能です。

2. 介護における接遇とは?

基本的なビジネスマナーは介護以外の企業にも重要ですが、高齢者やその家族への対応が中心となる介護職は基本的なビジネスマナーに加えて介護職独自の接遇を身に付ける必要があります。

2.1. 介護における接遇の重要性

介護職は人との触れ合いが多くある仕事です。施設を利用する人の多くは人生の先輩でもある高齢者であり、様々な事情を抱えています。それぞれの背景に配慮することで利用者との信頼関係を築き、利用者が安心してサービスを受けられるだけでなく、介護職にとっても必要とされている喜びを感じることができる大きなメリットがあります。また、利用者の信頼と理解を得ることは介護職もサポートをしやすくなるメリットもあり、相互にとって心地よい環境を作るために重要です。

2.2. 介護における接遇の実情と課題

社会や経済の変化に伴い福祉をとりまく環境も変化しています。利用者の意識にも昔と比べて変化が出てきており、権利意識が高い利用者やその家族の増加傾向が見られています。 昔に比べて柔軟な対応スキルが求められるケースも多々あり、組織としてだけでなく、個人としても広い視野を持ち対応できる能力が必要です。
施設によっては研修を取り入れるなど職員の意識を高める活動をしているところもありますが、利用者と介護職との意識の間には隔たりがある傾向です。介護職による自己評価では十分に接遇ができていると感じていても利用者や家族は不満を抱いているケースも珍しくありません。

3. 介護における接遇のポイント!

介護職における接遇のポイントにはどのようなものがあるのでしょうか?

3.1. 心構え

接遇を学ぶ上で重要なポイントは「心構え」です。マニュアル通りにこなすことだけでは接遇を身に付けたとは言えません。心から利用者の立場になって考え行動することが必要になります。

被介護者、その家族の気持ちになって考える

被介護者である利用者は何を求めているか、現在の身体状況だけでなく心の状態もみて対応をする必要があります。適切な配慮ができているか、言葉遣いだけではない心配りが利用者やその家族に対しての接遇になります。

3.2. 身だしなみ

第一印象は身だしなみによっても大きく変わります。介護職は利用者と体を近づけて介助をすることも多くあり、不潔な容姿の人では利用者は不快な思いを抱きながら介助を受けなければなりません。 そのようなことを防ぐためにも、日ごろから身だしなみには注意をし、第一印象を良くするだけでなく、介助時にも利用者が心地よく身を任せられるよう清潔感のある身だしなみが最低限必要になります。具体的にはこちらのチェックリストを参照に、自身の身だしなみを振り返ってみましょう。

前髪が目にかかっていませんか?
髪がボサボサになっていませんか?
整髪料の匂いが強くないですか?
髪の毛の色が派手なカラーになっていませんか?
肩につく長い髪はまとめていますか?
介助の時に髪が利用者さんにつきませんか?
フケなどの汚れはありませんか?
顔や口元
ヒゲや鼻毛は伸びていませんか?
タバコの臭いはしていませんか?
口臭には気を付けていますか?
厚化粧になっていませんか?
TPOに合った化粧をしていますか?
手元
爪は短くなっていますか?
マニュキアは塗っていませんか?
爪は汚れていませんか?
結婚指輪以外のアクセサリーは外していますか?
服装
服はシワだらけではないですか?
服は清潔ですか?
下着は透けていませんか?
タバコの臭いはしていませんか?
香水は付けていませんか?
服を正しく着用していますか?
服のサイズは適切ですか?
アクセサリーは外していますか?
名札は見えやすい場所につけていますか?
足元
靴や靴下は清潔ですか?
靴下に破れはありませんか?
靴はきちんと履いていますか?

3.3. 挨拶

接遇の基本は挨拶であるといっても過言ではありません。気持ちの良い挨拶は利用者とコミュニケーションを取るきっかけにもなります。目を合わせて、しっかりと挨拶をすることが重要です。目を見て挨拶をすることは“心を開いている”サインにもなります。
また、相手が心を開いているかの目安にもなるので、自分から目を合わせてしっかりと伝わる声量で挨拶をしましょう。

挨拶の注意点

利用者の中には難聴になっている人も多くいます。そのため、目を見て大きな声で挨拶をすることが大切です。伝わらなければ意味がありませんので、恥ずかしがらず、しっかりと目を見て挨拶をするようにしましょう。

3.4. 表情

挨拶の項目でもあったように相手の目を見ることが大切ですが、この時にニコリともせず目を見ても相手はにらまれたような感じを受ける場合があります。無理に笑う必要はありませんが、柔らかい表情は相手を安心させる効果も期待できます。利用者が心地よく過ごせる空間を提供するためにも、笑顔など柔らかい表情で接することも重要です。

3.5. 言葉の使い方

接遇を学ぶ上で言葉遣いも重要なポイントになります。

介護において控えるべき言葉づかい

利用者のほとんどが目上の人になる介護職では、日ごろの言葉遣いも大切です。具体的にどのように言葉遣いに気を付ければいいのでしょうか?

  • 友達口調のような馴れ馴れしい言葉
    親しくなると友達のような口調になる介護職も多くいます。親しみを込めて友達口調にしている場合でも、やはり相手は目上の人です。親しみを込めていても、きちんと丁寧語を使う習慣は残しましょう。
  • 専門用語や一般的ではない言葉
    スタッフにしか分からないような専門用語や略語などを利用者との会話で使うことは望ましくありません。プロであるからこそ、利用者との会話では誰でも分かりやすいように話すことが大切です。
  • 命令口調や人として失礼になる言葉
    「~しなさい」などの命令口調や馬鹿にしたような言動、子ども扱いするような言葉などは、人として失礼に当たるため厳禁です。介護施設での虐待や暴力が取りざたされる昨今では特に意識して、このような言葉遣いがないように注意する必要があります。エスカレートして虐待にもつながりかねない言葉は使ってはいけません。

3.6. コミュニケーションや接し方

気付く存在になる

日々の業務をこなすことで精一杯になり、利用者の気持ちの変化に気が付く余裕がないこともあるのではないでしょうか。利用者一人一人に割ける時間は少ない場合も多いかと思いますが、ゆっくりと会話をする時間は取れない場合でも、利用者の様子を見て状態を判断することもできます。

今日はいつもより顔色が優れないから体調が万全ではないのかもしれない、いつも仲良く話している二人が離れて座っているなど、利用者の様子を日ごろから観察していれば気付けることも多くなります。その気付きによって、いつもとは違う配慮をすることができ、結果として利用者の安心安全につながるケースもあるかもしれません。一人一人と向き合う時間が限られているからこそ、視野を広く持ち利用者の状況を知る努力を怠らないことが大切です。

聞く姿勢を忘れない

接遇を改善する上で気を付けなければならない点は、利用者の気持ちに寄り添うことです。介護職側のスケジュールや要望ばかりを伝えるだけでなく、利用者の訴えにも耳を傾けることを心がけましょう。 例え利用者の希望通りにできないことも多いかもしれませんが、気持ちを理解し寄り添うことで利用者が安心して過ごすことができるかもしれません。

距離感を大切にする

利用者が安心できるように親近感を持ってもらうことは大切です。しかし、親近感も行き過ぎて馴れ馴れしさになってしまわないか注意が必要があります。親しみを込めていたとしても相手にとって不愉快に感じる場合もあります。あくまでも介護職として寄り添うという姿勢と距離感を忘れないようにしましょう。

3.7. スタッフ同士の会話

スタッフ同士の会話は利用者の耳に届いています。
利用者のことはもちろん、関係のない話でも利用者にとっては不快に感じる場合もあります。自身のケアをしている最中に関係のないおしゃべりをされていたら気分が悪くなるのも仕方ありません。大きな笑い声なども利用者との会話で出てくるものでないのであれば慎む配慮も必要でしょう。

3.8. 対象別注意するべき接遇

接遇に関して注意すべき点は、経験によっても変わってきます。新人職員などの若い世代と、経験を積んだベテラン世代とでは、どのような違いがあるのでしょうか?

若い職員

社会経験が少ない若い職員は、基本的なビジネスマナーの習得も不十分であることから、適切な言葉遣いや立ち居振る舞いができないケースも多く見られます。基本的なビジネスマナーの習得だけでなく、介護職として心がけるべきことを、しっかりと学ぶ必要があります。利用者の尊厳を守るための研修を行い、接遇マナーを身に付けられるようにしましょう

就職先で研修を行っていない場合でも、個人で参加できるセミナーや研修はたくさんあります。自主的に参加をしてでも、介護職として必要な接遇マナーを身に付けることは大切です。

ベテラン

ベテランでも介護業界での経験しかない場合、基本的なビジネスマナーを知らずにいる人も多くいます。また、時代とともに利用者やその家族との関係性も変わってきているため、以前よりも福祉の現場において接遇マナーが重要なものに変化しています。今までの経験だけで対応することが難しい場合もあり、ベテランの人でも基本的なビジネスマナーとともに、現代の介護業界に対応した接遇を身に付けることが望ましいです。

また、利用者との年齢が近いことや言動を注意する立場のスタッフが少ない傾向にあることから、利用者への言葉遣いが友達口調や命令口調になることも増えがちです。自分自身で意識を高く持ち、利用者や家族と適切な距離感を保つ心がけも必要でしょう。 また、ベテランの職員になると、若い職員に変わりクレーム対応をする場面も珍しくありません。そのため自身の接遇だけでなく、後輩指導やクレーム対応能力も高めていけると安心です。

4. 接遇を身に付けよう!セミナーやマニュアル一覧

実際に接遇を身に付けるためには、どのようにすれば良いのでしょうか?
施設全体での研修や個人での研修など学ぶ方法は多岐に渡りますので、参考にしてください。

4.1. おすすめのマニュアル

4.2. おすすめのセミナー

5. まとめ

様々な人生を歩んできた利用者とその家族を尊重し、支えることは、自身のやりがいを高めることにもつながります。接遇は決してテクニックではなく、相手を思う気持ちから生まれてくるものです。
利用者とその家族に寄り添い、お互いが心地よく過ごせることを目標に接遇を身に付けましょう。

また、施設全体の接遇が向上することは、施設としての強みにもなります。介護業界で生き抜くためにも、利用者とその家族の満足度の高さは重要なポイントです。設備やサービスを充実させることも大切ではありますが、基本となるスタッフと利用者との関係性が豊かになるような環境づくりにも着目してみることをおすすめします。

おすすめ役立ち情報

役立ち情報一覧に戻る

ピックアップ