介護報酬の改定は何年ごとにある?次回2024年度のポイントもわかりやすく解説
今回は、介護報酬の改定は何年ごとにあるかを解説しながら、介護報酬の改定内容についても触れていきます。
これまでの改定内容を振り返りながら、次回2024年度の改定内容を一緒に考えていきましょう。
また介護報酬の改定が、今後介護職にもたらす影響を、現役介護職の視点から考察していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
介護報酬の改定とは?
まず介護報酬についてかんたんに解説すると、以下の図のような仕組みになっています。
また、厚生労働省によると介護報酬とは、以下のような定義です。
介護報酬とは、事業者が利用者(要介護者又は要支援者)に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に支払われるサービス費用をいう。
介護報酬の改定は介護事業者の利益や介護職の処遇改善、利用者様へのサービスの向上など、さまざまなことに影響します。
介護報酬が改定される際は改定率が公表され、それに従って事業所に入ってくるお金も変わってきます
そのため事業責任者はもちろん、働く介護職の方々も介護報酬の動向は知っておいたほうがいいでしょう。
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ケアきょう求人・転職の無料相談介護報酬の改定は何年ごと?
介護報酬は定期的に改定され、その都度、前回の改定と比較した増減率や改定する内容が公表されます。
国が介護に対して何のためにお金を使っているかが見えてくるため、現場で働く介護職にとっても非常に重要です。
ここでは介護報酬と関わりの深い、診療報酬についても触れながら、それぞれが何年ごとに改定されているか解説していきます。
介護職としておさえておくべきポイントなので、ぜひ参考にしてみてください。
介護報酬の改定は3年ごと
介護報酬の改定は3年ごとに行われ、以下のような取り組みが実施されます。
- 介護職の処遇改善
- 介護保険サービスの適正化
- 新規サービスの追加
- 既存サービスの廃止
- 介護の人材不足対策など
以上のような取り組みを踏まえ、介護報酬の改定率が定められます。
ただし2022年10月の処遇改善では、臨時で介護報酬の改定が行われました。
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診療報酬の改定は2年ごと
診療報酬は2年ごとに改定され、医療サービスの対価として医療保険から支払われる費用です。
介護報酬は地域や介護サービスの種類によって単価が異なりますが、診療報酬は1単位=10円で全国一律です。
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医療職の配置義務がある施設や、訪問看護サービスを利用する際は、医療保険が適用されると勘違いされますが、原則介護保険が適用され介護報酬が発生します。
ただし、医療的ニーズが高い利用者様の場合、医療保険が適用され診療報酬が支払われる場合もあります。
このように、介護報酬と診療報酬は深い関係にあり、介護と医療の連携は非常に重要なポイントと言えるでしょう。
介護と医療のダブル改定は6年ごと
介護報酬が3年ごと、診療報酬は2年ごとの改定のため、6年ごとにダブルでの改定時期が訪れます。
直近で2018年にダブル改定があり、それぞれ以下の内容でした。
介護報酬 | 診療報酬 |
---|---|
・地域包括ケアシステムの推進 ・質の高い介護サービスの実現 ・多様な人材の確保と生産性の向上 ・介護サービスの適正化や持続可能性の確保 |
・地域包括ケアシステムと医療機能の連携の推進 ・安全で納得できる質の高い医療の実現 ・医療従事者の働き方改革 ・制度の安定性・持続可能性の強化 |
参考:平成30年度介護報酬改定|厚生労働省参考:平成30年度診療報酬改定の概要|厚生労働省
診療報酬も介護報酬と同様に、地域連携や業務の効率化といった働き方改革が組み込まれています。
次回2024年度も6年ごとのダブル改定となります。
団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けて、介護と医療のさらなる連携が必要となるでしょう。
これまでの介護報酬改定の内容
3年ごとに改定される介護報酬について、これまでの内容と次回2024年の改訂案を見ていきましょう。
- 2018年度の改定内容
- 2021年度の改定内容
- 2024年度の改定案
それぞれの改定内容を振り返ることで、介護報酬の全体像が見えてきます。
ぜひこの機会に介護報酬について考え、次回2024年度の改定案への期待を言葉にしていきましょう。
2018年度の改定内容
2018年度の介護報酬改定の内容は、以下のとおりです。
- 地域包括ケアシステムの推進
- 自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
- 多様な人材の確保と生産性の向上
- 介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保
改定率は0.54%で、プラス改定でした。
2018年度は、前述のとおり診療報酬とのダブル改定であり「地域包括ケアシステムの推進」の中に、医療との連携が明文化されました。
2021年度の改定内容
2021年度の介護報酬改定の内容は、以下のとおりです。
- 感染症や災害への対応力強化
- 地域包括ケアシステムの推進
- 自立支援・重度化防止の取組の推進
- 介護人材の確保・介護現場の革新
- 制度の安定性・持続可能性の確保
改定率については0.70%で、前回に引き続きプラス改定でした。
2021年度は前回と比べると、感染症対策や防災といった取り組みが追加されました。
そのほかの内容は、引き続き2025年に向けた人材確保やサービスの質の向上がメインでした。
2024年度の改定案
2024年度の介護報酬改定は、主に以下のようなことが議題に挙がっています。
- 地域包括ケアシステムの深化・推進
- 介護現場の生産性向上の推進
- 制度の持続可能性の確保
参考:介護保険制度の見直しに関する意見|厚生労働省参考:令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会|厚生労働省
2024年度の介護報酬改定については、ケアきょうのYouTubeでも解説しているので、ぜひご覧になってみてください。
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介護報酬の改定は介護職の給与に関係している
介護報酬の改定は、介護職の給与に大きく関わってきます。
なぜなら、現在介護職がもらっている処遇改善加算の財源は介護報酬だからです。
ここでは、これまでの処遇改善の内容や、今後の介護職の給与の動向について触れていきます。
介護職の方々は、普段もらっている給与について詳しく知るきっかけになるので、ぜひご覧ください。
処遇改善加算のこれまでの内容
まずはこれまでの処遇改善の内容を振り返っていきましょう。
開始時期 | 名称 | 内容 |
---|---|---|
2009年10月~2012年3月 | 介護職員処遇改善交付金 | 介護職員(常勤換算)1人当たり月額平均1.5万円の賃上げ 参考:介護職員処遇改善交付金について |
2012年4月〜 | 介護職員処遇改善加算 | 「介護職員処遇改善交付金」の内容を引き継ぐ (キャリアパス要件を満たすことで最大月額3.7万円の賃上げ) 参考:「介護職員処遇改善加算」のご案内 |
2019年10月〜 | 介護職員等特定処遇改善加算※ | 「介護職員処遇改善加算」に追加される (経験・技能のある介護職員の処遇改善が主な目的) 参考:介護職員の処遇改善に係る加算の概要 |
2022年2月〜 | 介護職員処遇改善支援補助金 | これまでの処遇改善に追加される (介護職員の収入を3%程度である月額9,000円引き上げるための措置) 参考:介護職員処遇改善支援補助金 |
2022年10月〜 | 介護職員等ベースアップ等加算 | これまでの処遇改善の要件を見直し厳格化される 参考:介護職員の処遇改善に係る加算の概要 |
介護職員等特定処遇改善加算については「給与が月額8万円アップする」という言葉が独り歩きして話題になりました。
詳しい内容については、ケアきょうでも取り上げたので参考にしてみてください。
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介護報酬アップ=介護職の給与アップではない
介護職の処遇改善の財源は介護報酬であると解説しました。
しかし、だからといって介護報酬の増加が必ず介護職の給与アップにつながるわけではありません。
なぜなら、介護報酬の使い道は事業所の判断に委ねられているからです。
先ほどの介護職員等特定処遇改善加算での月額8万円アップがいい例です。
経験や技能のある介護職だけでなく、すべての介護職に振り分けた事業所が多かったため、結果的に月額8万円アップは幻となりました。
2024年度の介護報酬改定では「介護報酬の見える化」が実現する制度が検討されています。
処遇改善がすべての介護職に平等に配分されていないことを考えると、ぜひ制度化して、介護報酬の適正化を期待したいところです。
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2024年度の改定で処遇改善の見直しを検討
政府は、2024年度の介護報酬改定を機に、介護職員の処遇改善の見直しを検討しています。
見直しの背景には、制度の複雑さが関係しています。
処遇改善は主に3種類に分かれており、それぞれに要件が設けられているため、事務手続きが複雑でわかりにくいのが現状です。
介護業界側からは、処遇改善加算の一本化や基本報酬へ組み入れるなどの案が提言されており、政府の前向きな検討が期待されます。
ただし処遇改善の拡充や追加については議題に挙がっておらず、さらなる賃金アップへの期待は薄いでしょう。
正しい情報を理解することが重要
先述の処遇改善のこれまでの内容でも触れましたが、月額8万円アップや月額9,000円アップという形で、具体的な数字だけがメディアで報道され独り歩きすることがあります。
そういった情報は、多くの人の目に触れやすくするため切り取って報道されている場合がほとんどです。
そのため、新しい処遇改善が追加されたり、制度が変更されたりした際は、厚生労働省や信頼できる介護情報サイトなどで、自ら正しい情報をキャッチすることが大切です。
ケアきょうでは、以下のように実際に介護職の方々にアンケートを実施して、信頼ある情報を発信しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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介護職の給与は今後も上がる?
介護職の給与については「岸田総理もたびたび明言」しているように、上がることが予想されます。
しかし、次回の介護報酬はマイナスになる可能性が浮上している中で、介護職の給与アップが実現可能であるか疑問なところです。
参考:次の介護報酬改定、引き下げも十分あり得る|JOINT介護
これまでも介護報酬の改定内容に必ずあった「介護職の人材確保や処遇改善」については、次回も組み込まれることが予想されます。
大きな期待はできませんが、少しでも介護職の処遇が改善されることを願うばかりです。
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今後の介護報酬改定で予想されること
最後に、今後の介護報酬で予想されることを考えてみましょう。
主な予想は、以下の内容です。
- 利用者負担の増加
- 介護職の待遇改善
- 現場の効率化の追求
ひとつずつ詳しく解説していきます。
今後の介護業界に関係する内容なので、ぜひご覧ください。
利用者負担は増加
昨今の物価高の影響で、利用者負担は増えていくことが予想されます。
理由は、介護報酬の改定により、サービス利用料の原則1割負担を2割にしてはどうか?という議題が挙げられているからです。
また介護保険サービスの利用料以外に、食費やオムツ類、日用品などの負担が増えることは避けられません。
筆者が働く施設でも、物価の高騰にともない、食費が上がりました。
また光熱費の負担が増えているため、今後は施設の利用料にも影響してくる可能性が高いでしょう。
介護職の待遇改善
正直大幅な改善は期待できません。
なぜなら2024年度の介護報酬改定では、複雑になっている現在の処遇改善の仕組みを見直す程度の発言にとどめているからです。
ただし「処遇改善の見える化」を目指しているので、今まで以上に多くの介護職に処遇改善加算が行き渡ることが期待できるでしょう。
政府は今後も介護職の給与改善に努めていくと公言しているため、少ないながらも確実に介護職の待遇は改善していくと感じています。
現場の効率化の追求
介護報酬の改定に毎年組み込まれている内容が「業務の効率化」です。
タブレットやさまざまな電子記録ツールの導入により、介護現場のICT化は確実に進んでいます。
厚生労働省が主体となり介護ロボットの普及活動も全国で行われており、今後さらに介護ロボットの導入施設の増加が期待されます。
最近では、富山県に「介護ロボットの体験施設」がオープンしニュースになりました。
実際に触れてみることで、より具体的な活用をイメージしやすくなるでしょう。
参考:介護ロボット体験施設 富山に 22機種常時展示 体験講座や相談も|読売新聞
まとめ
介護報酬の改定は3年ごとに実施され、その都度、サービスの質の向上や介護職の処遇改善が図られてきました。
2024年度は、2年ごとに改定される診療報酬と重なる時期で、いわゆるダブル改定が行われます。
2025年に団塊の世代が後期高齢者を迎え、さらに高齢者福祉や医療の現場は、サービスや人材の充実が求められるでしょう。
介護報酬の改定とともに、私たち介護職に何ができるか?という視点を持ち、今後の介護現場を支えるためのヒントをともに見つけていきましょう。
▼2024年介護報酬改定についての動画はこちら
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