介護現場で4点柵がダメな理由は?身体拘束になるのか
「ベッド4点柵は身体拘束になるの?」「ベッド4点柵がダメな理由は?」など、以上のような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?
介護現場では身体拘束は原則禁止と言われていますが、身体拘束についての知識が乏しく知らぬ前に禁止行為をしている場合もあります。
本記事では身体拘束についてあらためて考え、ベッドでの4点柵がダメな理由やベッド柵に関する身体拘束の事例を含めながら解説します。
身体拘束とは?
身体拘束とはベッドや車椅子に利用者様を縛りつけたり、外から鍵をかけて部屋に閉じ込めたりする行為など、利用者様の自由を奪うことを指します。
また介護施設での身体拘束は、止むを得ない状況を除き原則禁止です。
ではやむを得ないとはどういった状況なのか、身体拘束に該当するのはどういった行為なのかについて触れていきます。
身体拘束が認められる3つの要件は?
身体拘束が認められる要件は、以下の3つです。
- 切迫性:利用者様やほかの利用者様の生命や身体に危険が及ぶ可能性が高い著しく高い
- 非代替性:身体拘束に替わる介護方法がないこと
- 一時性:身体拘束が一時的である
これらの要件を満たしており緊急性が高いものであれば、ご家族に書面で説明し許可を頂くことで身体拘束可能となります。
身体拘束に該当するのはどういった行為?
介護現場で身体拘束に該当するのは、以下のような行為です。
- 車椅子やベッドに紐などで縛って座らせる
- 鍵付きの介護寝巻きを着させる
- 向精神薬で行動を抑制する
また物理的な身体拘束以外に「スピーチロック」と言われる言葉の拘束も存在します。
スピーチロックについては、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
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ケアきょう求人・転職の無料相談ベッド4点柵による身体拘束とは?
ベッド4点柵による身体拘束の定義は、必ずしも4点柵の状態ではありません。
利用者様がベッドから自由に降りれない状態は、すべて身体拘束に該当します。
ここでは、ベッド4点柵が身体拘束に該当する理由や、ベッド柵による身体拘束がどういった状態であるかを解説していきます。
ベッド4点柵がダメな理由は?
認知症や寝たきりの場合など、自分で柵を外すことのできない方に対するベッド4点柵は身体拘束に該当します。
なぜなら自由にベッドから出られない状況を作っているだけでなく、ベッド柵を乗り越えて転落する危険性も高まるからです。
また行動の自由を奪うことで精神的に不安定になり、QOL(生活の質)を下げる要因にもなります。
以上のことからも、ベッド4点柵は利用者様の心身に悪影響であることは明らかです。
3点柵でも身体拘束に該当する?
4点柵ではなく3点柵の場合でも、状況によっては身体拘束に該当します。
例えば片側2点柵で、もう片側は1点柵の3点柵でも、ベッドを壁に付ければ利用者様の自由を奪う形になります。
2点柵でも同様に片側に柵がなくても、ベッドを壁付けすれば4点柵と同じ状況です。
4点柵だからダメではなく利用者様の行動を制限していないかを常に考え、身体拘束に該当しない最適な対応方法を検討しましょう。
誰のための4点柵なのか?
4点柵をご家族からお願いされる場合もあります。
ただ身体拘束は原則禁止であることと、利用者様の状態を見極めることが重要であり、ご家族への説明が求められます。
ベッドから降りようとして怪我するリスクがあるのは、その利用者様には歩く意欲があるということです。
家族の気持ちを優先して安全面を優先することは間違っていません。
しかしベッドで過ごすのは利用者様であり、誰のための4点柵なのかを考えることが介護のプロとして必要な視点であることを忘れてはいけません。
ベッド4点柵が必要かどうかの判断基準
ベッド4点柵が必要かどうかの判断基準は、以下の5つです。
- 歩行状態
- 尿意や便意の有無
- ベッド柵を自力着脱の可能性
- ベッド上での体動の有無
- ベッド4点柵の転倒転落予防の有効性
利用者様の状態を見ながら、先述の身体拘束3要件に該当するかを考えましょう。
歩行状態に問題はないか?
以下のようなことができる場合、4点柵による行動制限は不適切です。
- 自力歩行可能
- 手引き歩行
- つかまり立ち
これらのことができる方に対して、4点柵は有効とは言えません。
なぜなら自力歩行やつかまり立ちができるにも関わらず行動を制限するのは、転落等の事故だけでなく活動機会を奪い身体機能を低下させるリスクも伴います。
利用者様の歩行状態や自力で何ができるのかを考えることで、4点柵の必要性が見えてくるでしょう。
尿意や便意はあるのか?
利用者様に尿意や便意がある場合、自分でトイレに行こうとしてベッドから起き上がることが予想されます。
このような方に4点柵をすると、乗り越えようとして転落する危険性が高くなるでしょう。
普段から排尿や排便の訴えがあるかを言動から見極めておけば、4点柵による行動制限が危険であることも分かってきます。
そのため、普段の排泄介助から尿意や便意があることも職員間で情報共有しておくことが重要です。
ベッド柵を自力で外さないか?
足の筋力は弱っていても、手の力というのは衰えにくいものです。
なぜなら手は足と違い横になっていても使うもので、足よりも使用頻度が多く力も維持しやすいからです。
そのため一見寝たきり状態な人でも、手の力で柵を外したり揺らしたりできるので、4点柵にすることで怪我のリスクは高くなります。
前述の歩行状態とともに手の動きが活発であるかも観察することで、4点柵による事故や怪我のリスクが見えてくるでしょう。
ベッド上での体動はよく見られるか?
体動が多く見られる場合は、その分活発であり、ベッド柵を乗り越え転落するリスクが考えられます。
またたとえ4点柵にして乗り越えなくても、柵に顔や体をぶつけて怪我をする危険性もあるでしょう。
体動が多い分、4点柵で落ちないように対応すればいいのではと思われるかもしれません。
しかし体動が多く活発であるからこそ、行動制限はより精神的ストレスを与えることにつながります。
安全性や利用者様の身体機能の維持、ストレスの軽減なども考慮しながら、身体拘束である4点柵以外の方法を考えることが重要です。
ベッド4点柵は転倒転落予防に有効であるか?
ある急性期病棟でベッド4点柵の使用と不使用で、転落転落事故の頻度は変わるのかという実験を行いました。
結果はほとんど差はなく、4点柵が安全性を高めてくれるという根拠は見当たりませんでした。
参考:看護研究「急性期病棟における 4点柵の不使用が転倒転落に与える影響」
また4点柵による行動の制限は、利用者様に心理的負担も与えることからマイナス効果が大きいと言えます。
したがってベッドからの転落転倒事故に関しては、行動を制限するのではなく介助方法を工夫するといった、別の視点での対策が必要になってくるでしょう。
ベッド4点柵をしなくていい方法を考えてみよう
ベッドを4点柵にしなくてもいい方法を考え、身体拘束をゼロにする取り組みが大切です。
例えば、以下のような方法を試してみるといいでしょう。
- 判断基準に該当しなければ通常対応で様子を見る
- 赤外線センサーを利用し生活リズムを把握する
- 事故や怪我のリスクが少ない環境を作る
一つずつ詳しい内容を解説します。
判断基準に該当しなければ外して様子を見る
歩行状態が安定していて尿意便意がある場合など、判断基準に該当する場合は4点柵にする必要はないでしょう。
利用者様の状態を把握した上で、身体拘束による事故のリスクやストレス増加が考えられる場合は、通常の対応で様子を見ることも重要です。
判断基準を見極めないと安全面を優先しているつもりでも、逆にリスクを高めてしまうので、利用者様の様子を日頃から情報共有することも大切になってくるでしょう。
赤外線センサーを利用し生活リズムを把握する
赤外線センサーはベッド下に設置することで、利用者様が起き上がった際にナースコールやPHS等で知らせてくれる福祉用具です。
赤外線センサーの目的は、利用者様の生活リズムを把握することなので、利用する際は「何時に」「何をするために」起きてきたのかを記録しましょう。
利用者様が意思表示できない場合は、その後の介助した内容を正確に残すことが大切です。
何時に起きていつトイレに行くのか等を把握することで、利用者様が介助を必要とするときに介入しやすくなるので、転倒や転落のリスク軽減にもつながるでしょう。
事故や怪我のリスクが低い環境を作る
ベッド4点柵をする以外に、以下のような安全面への配慮ができます。
- ベッドを低床にする
- 導線に手すりを付ける
- こまめな巡視で様子を見る
そのほか、日頃からヒヤリハットによる情報共有をしてリスクマネジメントすることで、身体拘束をしなくても安全性を高めることは十分可能です。
リスクマネジメントについて、以下の記事をぜひご覧ください。
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身体拘束廃止に向けた5つの指針とは?
身体拘束は原則禁止で、回避するためにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
ここでは、過去に厚生労働省が行なった「身体拘束ゼロ作戦推進会議」の内容をもとに、以下の身体拘束廃止に向けた5つの指針を紹介します。
- トップが決意し、施設や病院が一丸となって取り組む
- みんなで議論し、共通の意識を持つ
- まず、身体拘束を必要としない状態の実現を目指す
- 事故の起きない環境を整備し、柔軟な応援体制を確保する
- 常に代替的な方法を考え身体拘束は極めて限定的にする
それぞれの内容を詳しく解説します。
1.トップが決意し施設や病院が一丸となって取り組む
まずは施設のトップである施設長や管理職が、身体拘束を廃止するという強い決意を表明することが大切です。
施設のリーダーが決意することで現場介護職の不安解消につながり、チーム一丸のきっかけにもなります。
さらに事故や怪我などに対する責任を、リーダーが引き受ける姿勢を表明することで、身体拘束廃止に向けて積極的に動きやすくなるでしょう。
一人ではなく施設全体で力を合わせるために「身体拘束廃止委員会」の設置も検討しましょう。
2.みんなで議論し共通の意識を持つ
一人二人の力だけでは身体拘束の完全廃止は難しいでしょう。
そのため定期的に身体拘束に関する会議を開催し、職員全体で議論することが大切です。
なぜなら話し合うことで職員同士の考えを理解できますし、意見交換が身体拘束廃止に関する共通認識へとつながっていきます。
日頃の利用者様との関わりも交えながら話せば、身体拘束以外の適切な介助方法が導き出せるかもしれません。
会議だけでなく日頃の会話からもヒントを得てみましょう。
3.まず身体拘束を必要としない状態の実現を目指す
身体拘束を検討している、または現在身体拘束をしている利用者様に対してはあらためてアセスメントを行ない、身体拘束を必要としない状態を追求することが重要です。
例えば、以下のようなことが原因で行動が活発になっている可能性もあります。
- スタッフの言動が不適切である
- 不安や孤独を感じている
- 身体的な不快や苦痛を感じている
この場合は、言動の原因を取り除くことで状態が安定し、事故や怪我などのリスクも減らせるでしょう。
4.事故の起きない環境を整備し柔軟な応援体制を確保する
先ほども解説しましたが、ベッドを低床にしたり手すりをつけたりすることで、事故の危険性を下げることが可能です。
また環境面の変化だけでなく、職員全員で助け合える雰囲気作りも必要です。
決められた仕事だけやるのではなく、その都度大変な業務に対して柔軟に対応できる職員間の連携は非常に重要になってくるでしょう。
あらためて身体拘束廃止がひとりの力では無理であることを、施設全体で共有していきましょう。
5.常に代替的な方法を考え、身体拘束する場合は極めて限定的に
身体拘束せざるを得ない場合でも、本当に代替方法はないのかあらためて考えることが求められます。
要するに、限りなく身体拘束ゼロに近づけるために「本当に身体拘束は必要なのか」を常に検討することが重要です。
「生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」は身体拘束が認められています。
しかし、この規定は極めて限定的に考え、さまざまな状況においても身体拘束を廃止するという姿勢を貫きましょう。
4点柵をはじめとした身体拘束は原則禁止
冒頭で解説した身体拘束の3要件を満たさない限り、4点柵をはじめとした身体拘束は原則禁止です。
なぜなら行動の抑制は利用者様の自由を奪い、人間としての尊厳を汚す行為だからです。
さらに行動の制限は心身の状態にも即影響を与え、認知症症状の進行や歩行能力の低下などによる寝たきり状態を助長するといったことが考えられます。
実際の介護現場でも4点柵を実施している施設は少なく、今では身体拘束ゼロを目指すのが当然という流れになっています。
あらためて身体拘束ではなく、利用者様一人ひとりにあった対応方法を考えていきましょう。
まとめ
4点柵をはじめとした身体拘束は原則禁止であり、利用者様の心身にさまざまな悪影響を及ぼします。
今回ご紹介したベッド4点柵は、転倒転落事故にもつながり非常にリスクの高い身体拘束です。
安全のためだからという安易な考えで行なうのは、非常に危険であることを知ることが必要です。
そして身体拘束ではなく日頃の介助を工夫することで、利用者様にとってより良いサービスや環境を提供していくことが大切でしょう。
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