【2024年最新】介護報酬改定について厚生労働省の資料をもとにわかりやすく解説

介護保険制度解説
2024/08/30

2024年は3年に一度の「介護報酬改定」の年です。
介護報酬改定について、なんとなくは知ってはいるけど、詳しい内容まではよくわからないという方も多いのではないでしょうか?

そもそも介護報酬改定によって「介護現場にどのような影響があるの?」と疑問に感じている方もいるでしょう。

本記事では、2024年の介護報酬改定について、厚生労働省の資料をもとにポイントごとにわかりやすく解説します。

2024年の介護報酬改定について知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

介護報酬改定とは?

介護報酬改定とは、3年ごとに実施される介護事業所への報酬改定のことです。
介護サービスの向上」や「介護職員の待遇改善」、「介護保険制度の安定性や持続性の確保」などを目的に実施されます。

また介護報酬の改定だけでなく、介護サービスの廃止や追加など、介護業界全体に大きく影響する見直しが行われることもあります。

そのため介護現場で働く身としては、介護報酬改定によって介護現場がどう変わるか把握していくことが大切です。

介護報酬改定については、以下の記事でわかりやすく解説しているので参考にしてください。

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介護報酬改定のメリットとは?過去の改定から見えた介護現場への影響について解説

2024年の介護報酬改定について

2024年(令和6年)の介護報酬の改定率は、プラス1.59%になっており、内訳は以下のとおりです。

介護職員の処遇改善分 0.98%
その他 0.61%

参考:令和6年度介護報酬改定について|厚生労働省

そのほかさらなる介護職員の賃上げや、光熱費や物価高に対応するため、プラス0.45%の改定も見込まれるため、全体でプラス2.04%相当の改定になる予想です。

2024年は診療報酬や障害福祉サービス等報酬も改定され、それぞれ以下のような改定率となっています。

診療報酬 0.88%
障害福祉サービス等報酬 1.12%

参考:令和6年度診療報酬改定について|厚生労働省参考:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について|厚生労働省

2024年の介護報酬改定の施行日については、サービス種別によって2つの時期に分かれます。

介護報酬改定の施行日 サービス種別
2024年4月 以下4つ以外のサービス
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・通所リハビリテーション
・居宅療養管理指
2024年6月 ・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・通所リハビリテーション
・居宅療養管理指

6月の施行は、診療報酬改定に合わせて行われるため、医療系サービス4つとなっています。

次の項では、厚生労働省の資料を参考に2024年の介護報酬改定の内容について見ていきましょう。

【ポイント別】2024年の介護報酬改定を厚生労働省の資料を参考に紹介

2024年の介護報酬改定について、以下の5つの取り組みについて解説します。

  1. 地域包括ケアシステムの深化・推進
  2. 自立支援・重度化防止に向けた対応
  3. 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
  4. 制度の安定性・持続可能性の確保
  5. その他

それぞれの取り組みがなぜ行われるのかについて、目的別に具体的な内容を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
参考:令和6年度介護報酬改定について|厚生労働省

地域包括ケアシステムの深化・推進

地域包括ケアシステムの深化・推進」は、以下のようなことを目的にしています。

  • 質の高い公正中立なケアマネジメント
  • 地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取組
  • 医療と介護の連携の推進
  • 看取りへの対応強化
  • 感染症や災害への対応力向上
  • 高齢者虐待防止の推進
  • 認知症の対応力向上
  • 福祉用具貸与・特定福祉用具販売の見直し

それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。

質の高い公正中立なケアマネジメント

質の高い公正中立なケアマネジメント」では、ヤングケアラーや障害者、生活困窮者など、社会の課題が多様化する中で、居宅介護支援における特定事業所加算の単位数や算定要件の見直しを行います。

たとえば、毎月行わなければいけなかった居宅介護支援事業所で確認作業の手間を減らすために、運営基準減算にかかわる要件を削除するという内容が含まれました。

地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取組

地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取組」では、訪問介護における特定事業所加算について、中山間地域等における継続的なサービス提供を適切に評価するための算定要件の見直しが実施されています。

また、定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び(看護)小規模多機能型居宅介護が地域包括ケアの担い手として、地域に開かれた拠点となれるよう、事業所への評価区分の見直しや新たな区分の創設などが行われています。

医療と介護の連携の推進

医療と介護の連携の推進」では、医療ニーズが必要なご利用者が増えていく中で、質の高い訪問看護の提供が重要視されているため、以下の加算が追加されました。

新設した加算名 内容
専門管理加算 専門性の高い看護師による計画的な管理

今後も医療ニーズの高いご利用者の増加が見込まれることを考えると、上記の加算以外に在宅における介護と医療の連携や、高齢者施設等と医療機関の連携がより求められてくるでしょう。

看取りへの対応強化

看取りへの対応強化」では、以下のような取り組みが実施されます。

  • 訪問入浴介護における看取り連携体制加算の新設
  • 訪問看護等におけるターミナルケア加算の見直し
  • 短期入所生活介護における看取り対応体制の強化
  • ターミナルケアマネジメント加算等の見直し
  • 介護老人保健施設におけるターミナルケア加算の見直し
  • 介護医療院における看取りへの対応の充実

看取りへの対応強化を図っている事業所を適切に評価し、ご利用者やご家族の意思が反映されたターミナルケアの実現が求められています。

感染症や災害への対応力向上

感染症や災害への対応力向上」では、高齢者施設等の感染対策を向上させるために、以下のようなことを評価する「高齢者施設等感染対策向上加算」が新設されました。

  • 感染者の診療等を実施する医療機関との連携体制を構築する
  • 協力医療機関等と連携の上で適切な対応を行う
  • 医療機関や地域の医師会による感染対策に関する研修に参加し助言や指導を受ける

また地震や豪雨などの災害における継続的なサービス提供を目指すため「業務継続計画未策定減算」が追加されました。

高齢者虐待防止の推進

高齢者虐待防止の推進」では、ご利用者の人権を擁護し虐待防止をより推進するために、虐待の発生や再発を防止する措置が取られていない場合は基本報酬を減算する形となりました。

虐待の要因は、虐待を行う介護職員だけに責任があるわけではなく、介護職のメンタルを左右する事業所の環境も大きくかかわってきます。
そのため虐待防止対策は、事業所全体で取り組み、職員一人ひとりに周知されているかが重要と言えるでしょう。

認知症の対応力向上

認知症の対応力向上」では、(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症対応力の更なる強化を図るため、これまで2つの区分だった「認知症加算」に、さらに2つの新たな区分を設けました

認知症ケアに関する会議の開催や研修への参加、専門的なケアの実施など、認知症ケアの向上につながる取り組みが正当に評価される仕組みが、より強固なものになったのは、介護現場においてポジティブなニュースです。

福祉用具貸与・特定福祉用具販売の見直し

福祉用具貸与・特定福祉用具販売の見直し」では、より柔軟な福祉用具の活用を目的に、利用者負担を軽減したり、福祉用具の適切な利用ができる工夫を取り入れたりしました。

具体的には、これまでは福祉用具によって貸与と販売がはっきりと分かれていましたが、一部の福祉用具に関しては、貸与と販売の選択制を導入しました。
ご利用者への十分な説明や、多職種の連携などもこれまで以上に強化されることが期待されています。

自立支援・重度化防止に向けた対応

自立支援・重度化防止に向けた対応」は、以下のようなことを目的にしています。

  • リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等
  • 自立支援・重度化防止に係る取組の推進
  • LIFEを活用した質の高い介護

それぞれの目的について具体的に解説します。

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等」では、リハビリテーション・機能訓練や口腔、栄養などの情報を多職種で一体的に共有することで、ケアの向上を図ることを主な目的としています。

たとえば、以下のような加算が新設されました。

  • リハビリテーションマネジメント加算の新区分
  • 口腔連携強化加算
  • 退所時栄養情報連携加算

栄養管理に関しては、介護施設間での移動や居宅や医療機関などに移動する際に、栄養情報を適切に共有することで、より質の高い栄養マネジメントが期待されます。

自立支援・重度化防止に係る取組の推進

自立支援・重度化防止に係る取組の推進」では、介護老人保健施設の在宅復帰・在宅療養支援機能をさらに推進するため、入所前後訪問指導割合や退所前後訪問指導割合の指標に関する区分基準を引き上げることで、自立支援や重度化防止につなげています。

さらに施設入所前の主治医と連携し薬剤を評価・調整した場合や、施設において薬剤を評価・調整した場合において、多職種連携やこまかい情報共有などを求めるために、「かかりつけ医連携薬剤調整加算」が見直されました。

LIFEを活用した質の高い介護

LIFEを活用した質の高い介護」では、以下のような点が見直されました。

  • 科学的介護推進体制加算の見直し
  • 自立支援促進加算の見直し
  • アウトカム評価の充実のための加算等の見直し

アウトカム評価の充実においては、ADLの維持や向上、尿道カテーテルの抜去、施設入所時等に認めた褥瘡の治癒などを達成することで、「ADL維持等加算」や「排せつ支援加算」、「褥瘡マネジメント加算等」が算定されるよう若干変更されています。

良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり

良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」は、以下のようなことを目的にしています。

  • 介護職員の処遇改善
  • 生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり
  • 効率的なサービス提供の推進

それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。

介護職員の処遇改善

介護職員の処遇改善」では、介護現場で働く方々のベースアップが、令和6年度は2.5%、令和7年度は2.0%アップするような加算率の引き上げが目的です。

また現在実施されている、「介護職員処遇改善加算」や「介護職員等特定処遇改善加算」、「介護職員等ベースアップ等支援加算」などを、「介護職員等処遇改善加算」に一本化することで、処遇改善がより多くの事業所で活用されることを目指しています。

介護職員の処遇改善は、多くの介護職が興味ある話題のため、自ら情報を得ようとする姿勢が大切です。

生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり

生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり」では、以下のような取り組みが期待されています。

  • 介護サービスの質の確保や職員の負担軽減検討のためのの委員会の設置義務付け
  • 介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進
  • 生産性向上に先進的に取り組む特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟

ただし、介護ロボットやICT等の活用ばかりに目がいき、職員のスキル向上や人員確保などが疎かになるのではと懸念されています。

介護職の負担軽減に効果的な方法を見つけ実践するためにも、今回の介護報酬改定がいいきっかけになることを期待しましょう。

効率的なサービス提供の推進

効率的なサービス提供の推進」では、介護支援専門員1人当たりのケアプラン取扱件数を、原稿の40未満から45未満に改められました
取扱件数が増えることで、非効率になる可能性がある中で、以下のような取り組みによる作業の効率化を目指しています。

  • ケアプランデータ連携システムの活用
  • 事務職員の配置

これまで想定されていたICT機器の導入といった漠然としたものではなく、ケアプランのデータ連携システムという介護支援専門員の業務効率に特化した内容が盛り込まれました。

制度の安定性・持続可能性の確保

制度の安定性・持続可能性の確保」は、以下のようなことを目的にしています。

  • 評価の適正化・重点化
  • 報酬の整理・簡素化

具体的な内容を見ていきましょう。

評価の適正化・重点化

評価の適正化・重点化」では、訪問介護における同一建物等居住者にサービス提供する場合の報酬の見直しや、短期入所生活介護における長期利用の適正化などが行われています。

とくに「同一建物等居住者にサービス提供する場合の報酬の見直し」では、以前ケアきょうでも触れた「介護施設の囲い込み問題」にも関係してきます。
減算率を引き上げることで、囲い込みの抑制が期待されるでしょう。

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報酬の整理・簡素化

報酬の整理・簡素化」では、以下のようなことが実施されました。

  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の基本報酬の見直し
  • 運動器機能向上加算の基本報酬への包括化
  • 認知症情報提供加算の廃止
  • 地域連携診療計画情報提供加算の廃止
  • 長期療養生活移行加算の廃止

とくに「運動器機能向上加算の基本報酬への包括化」においては、介護予防が重要視されている中で、報酬体系を簡素化することで予防的リハビリテーションをスタンダードにしていきたい狙いが見られます。

その他

その他にも、以下のような取り組みがあります。

  • 「書面掲示」規制の見直し
  • 通所系サービスにおける送迎に係る取扱いの明確化
  • 基準費用額(居住費)の見直し
  • 地域区分

運営規定などを書面掲示だけでなくネットでの掲載を義務付けたり、通所系サービスの送迎において一定の条件を満たせば他事業所の利用者との同乗を可能にしたりすることで、効率的な運営につなげる狙いがあるでしょう。

また1日あたりの居住費を見直し上げることで、今後も予想される物価高に対応しています。

まとめ

今回は、3年に一度行われる介護報酬改定において厚生労働省の公式資料をもとに、「2024年の介護報酬改定」の内容やポイントについて解説しました。

介護報酬改定は介護を運営する法人に影響することはもちろん、現場で働く介護職にもさまざまな変化をもたらします。

2024年以降は、処遇改善加算による介護職の待遇改善や、介護ロボット・ICT機器の導入による業務の効率化がさらに期待されています。

介護報酬によるいい変化をきっかけに、介護サービスの質の向上やご利用者の生活改善につなげていきましょう。

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