介護職への悲しい偏見と、私達ができる偏見をなくす方法

ストレス・メンタル対策
2022/01/14

介護職への偏見

介護職の皆さんから度々受けるご相談として「他の業界の人から偏見の目で見られる」ということ。
最近では、介護職に対して偏見がある人から差別的なことを言われた、というTweetが話題になっていました。

このツイートに対しては、たくさんの「そんなことはない」「全くそうは思わない」「その発言した人が最悪」といった趣旨のツイートが寄せられています。

ただ、何故このような偏見が生まれてしまうのでしょうか?
そして、介護業界に携わる側がするべきことは何なのかをまとめていきます。

なぜ偏見が生まれて・消えないのか?

まず最初に、なぜ介護・介護職への偏見が生まれてしまうのか、偏見が無くならないのかを考えていきたいと思います。

外集団がいしゅうだんに対して理解がないから

偏見が生まれる一つ目の理由は、外集団に対して、理解がないからです。

外集団とは、自分が属していない集団のことです。
そのような外集団を、過度に単純化することで生じる「ステレオタイプ」が偏見を生んでしまいます。

例えば、「イスラム教」だったら、一部の過激派が目立ってしまうがために、「イスラム教=危険な宗教」と考えてしまう、といったイメージです。
このように知らないからこそ、「ステレオタイプ」な考え方で単純化し、ひいては偏見・差別につながるのです。

また、「理解がないこと」が原因で、やってはいけないタブーにも触れてしまうことがあります。
同じくイスラム教を例にすると、儀式でしか使ってはいけない音楽をテレビのBGMなどで利用して、トラブルになったということもあります。

こういった風に、相手が分かっていないから、目立つ情報だけを頼りに相手にレッテルを張ってしまうことで、偏見が生まれてしまいます。

人は内集団ないしゅうだん以外を個別化しようとしない

偏見が生まれる二つ目の理由は、人は所属する集団の人以外を個別化しないからです。

例えば、【渋谷で遊ぶ若者】と聞いて、皆さんは何を想像しますか?
お酒を飲んで騒いでいる、迷惑な行為をしていると考えたりしないでしょうか?

しかし実際には、人それぞれです。
カフェで遊ぶ人もいれば、ゲームをして過ごす人もいます。行儀の良い人がほとんどです。

このように、皆さんがあまり関わりのない集団の人たちのことは、意識しない限り一括りにしてしまいます。
人間の特性ではあるものの、少し寂しいことです。
これは、集団虐殺・ジェノサイドなどでも、こうしたことが要因となっていることがあるようです。

自分を一般的と考えがちだから

そして、ここからは偏見がなくならない理由です。
それは、自分を一般的と考えがちという人間の特性です。

人間は、自分の意見や行動が一般的だ、と考えてしまうという特性があります。
これを「フォールス・コンセンサス効果」といいます。

例えば、こんな実験があります。
ある大学で、広告板を下げて敷地内を歩き回るアルバイトを行うかについて、アンケートを取りました。

結果は
行うと答えた人は、「周囲の人も行うはずだ」と考え、
拒否した人は、「周囲の人も拒否するはずだ」と考えたとのことです。

偏見に対してもこの効果は発揮され、自分の考えや行動は普通のことだと考えてしまいます。
自分が偏見を持っているということに、なかなか気が付きにくいものなのです。

人は多数派に属したがる

続いての偏見がなくならない理由は、人は多数派に属したがるからです。
偏見を持たれる側は、いつでも少数派です。
介護職に対する偏見も、その人にとって介護職が身近でない環境で生まれたものです。

例えば、今でこそ黒人差別はおかしいと言われていますが、昔は差別があって当然という考えを持つ人が圧倒的で、差別はおかしいと声を上げる人はごく少数でした。

これは、人間は自分が優勢だと考えた考えについては声を挙げ賛同し、たとえ反対意見を持っていても、その考えが劣勢なら孤立を恐れて沈黙してしまうという心理が生まれるためです。
また、同時に多くの人が考えていることに、人間は同調してしまうものです。

こうなると、どんどん一つの意見が正しいというものになっていきます。
これは「沈黙の螺旋」とよばれる仮説です。
偏見をなくすには、この螺旋をどこかで断つ必要がありますが、なかなか難しいものです。

ネットを使うと、自然と自分の考えが強化されてしまう

そして最後、偏見がなくならない理由は、ネットを使うと、自然と自分の考えが強化されてしまうからです。

皆さんは「エコーチェンバー現象」という言葉を知っていますか?
これは、ある閉じた空間で、自分と同じ意見を持つ人が集まると、その意見を正しいと考える気持ちが強くなることを意味しています。
ネットが普及して、いろいろな人と意見交換できるようになったから、そのようなことは起こらないのではと、考える人もいるかもしれません。

しかし、SNSや検索を行ったとしても、どうしても自分と近しい意見を取り入れてしまいがちです。
例えば、Twitter。
フォロワーが似通った人なら、意見は近いものしか出てきません。
同意見の人しか世の中にいない、と錯覚することにも繋がります。

このようなエコーチェンバー現象の効果を受けてしまいやすい環境にいることで、偏見が強まってしまうということがあります。

どうすれば偏見が解消されるのか?

では、どのようにすれば偏見がなくなるのでしょうか?
残念なことに、おそらく偏見が完ぺきに世界から無くなることはないでしょう。
偏見、言い換えれば先入観があるからこそ、人間は行動することが出来るとも言えるからです。

人とのコミュニケーションにおいても、完璧に理解した状態になることは不可能です。
そこで、差別をしないために知っておきたいことをお伝えし、最後に介護職への偏見を少しでも良いものにするために、私たちが出来ることをお伝えします。

差別を行わないようにするために

「偏見・先入観」と「事実」の違いを意識する

まずは、自分たちが差別しないために必要なことは、「偏見・先入観」と「事実」の違いを意識することです。

職場に嫌いな人がいて、勝手に「あの人は仕事ができないから」と考えていませんか?
もしかしたら、重大な何か原因があるからかもしれません。

自分が考えていることが、もしかしたら「偏見」「思い込み」かもしれないことを知り、「事実」は何なのかを考えられるようにしましょう。

他人の意見に耳を傾けられるようになる

2つ目は、他人の意見に耳を傾けられるようにしましょう。

人は、自分と違う意見を受け入れることが苦手です。
自分の意見に異を唱える人がいたら、イラっとしてしまいますよね?

どんな意見でも、一度受け入れてみて、吟味してみること、これが出来るようになりたいものです。
もちろん、その意見に賛同する必要はありませんが「そういう意見もあるけど、自分は違うと思う」と言えるようになると良いです。

私達に出来ることは?

そして、最後に介護職への悪い印象を少しでも良いものにするために、出来ることを考えていきましょう。

まずは、介護の現状をより良いものにすることです。
良い印象があっても、実際悪いものだったら最悪です。

もちろん、出来ることに限りがあるかもしれません。
平均給料などはそう簡単に上げられません。しかし、できることもあるはずです。

例えば、介護職の方々からお話をお伺いすると、現場の工夫・努力で、介護の技術向上や環境改善を行っている例をお聞きしたりします。

また、より一層の処遇改善に向け、国・行政・政治に対して、声を挙げていくこともできます。

そして、次に正しい情報を発信することです。
介護を知らない人たちに、正しい介護・介護職に関する情報を提供することで、悪い印象も薄れていくかもしれません。
少なくとも、「思っているのとはイメージが違う」ということはお伝えできるかもしれません。

実際に、「介護職になる前は抵抗感があったが、実際に初めてみたらイメージよりも全然良かった」という声もよくお聞きします。

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