老人保健施設は介護報酬改定で変わる!?何が変わるのか要チェック
老健の実態
今回は、介護報酬改定で老健に関して議論されていることに関してご紹介していきます。
まず始めに、老健の現状を見ていきましょう!
老健は、正式名称は「介護老人保健施設」という名称で、
- 入所者が在宅復帰すること
- 在宅療養の支援を行うこと
を目的としています。
その性質上、病院から退院したのちに入所する人も多く、リハビリや医療ケア、そして介護サービスが行われる施設になっています。
また「超強化型」「強化型」「加算型」「基本型」「その他型」の5種類に分かれ在宅復帰・在宅支援機能が高い老健ほど評価される仕組みが出来てきています。
こういった在宅復帰に力を入れている施設は増加しており、平成30年5月から令和元年11月までの短い期間でも、相当数増えていることが分かります。
こうした背景から、平均の在所日数は、特養や介護療養型医療施設などに比べて短い傾向にあります。
また、平均要介護度も低下傾向にあるのも、在宅復帰に力を入れている傾向が見受けられます。
しかしながら、この老健を出ていく利用者のうち、在宅に復帰・もしくは他の介護施設に行く利用者は50%に満たず、医療機関に行く利用者や看取りも少なくないです。
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それでは、実際に厚労省において議論されていることを確認していきましょう!
大きく分けると5つに分類できそうです。
- リハビリの強化
- 在宅復帰支援
- 医療連携
- 看取りへの対応の充実
- リスクマネジメント
また、これ以外にも老健に関わることも話されており、今回説明することが採択されない可能性もあるので、その点はご注意ください!
①リハビリの強化
リハビリの強化では、
- (A)リハビリ提供施設としての機能の促進
- (B)リハビリ職種の配置を評価する仕組み作成
- (C)医師の指示に関する事項の明確化
といったポイントを掲げています。
(A)リハビリ提供施設としての機能の促進
老健における入所時と退所時のADLは記録されており、しっかりとADLを改善してきた実績が見えます。
また、すでに平成30年から、実施されているリハビリテーションマネジメント加算というものがあります。
これは
- どうすればよりよいリハビリをできるのかという会議
- 実施にリハビリを行うこと
- リハビリが完了したのちの評価
- そしてその結果の情報提供を行うこと
を行った場合に、加算が付くということです。
実績がある人達が、より改善を進め、情報を広めることでリハビリの質を向上させようということが狙いの加算です。
厚労省はこうした取り組みをさらに推し進めるために、ICTの利用を可能にしたり、さらに加算を加えようとしています。
(B)リハビリ職種の配置を評価する仕組み作成
次にリハビリ職種の配置を評価する仕組みの作成に関してです。
リハビリの専門職と言えば、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士ですが、実はこの3つの職種がすべて配置されている老健は実際は45%しかいません。
3職種そろっているからこそできるリハビリがあり、例えば言語訓練や摂食・嚥下訓練に関しては、3職種がいる施設の方が取り組めている割合が高いです。
利用者さんの症状に合わせた様々なリハビリを行うためにも、こういった3職種の配置を評価してみてはどうか?という話になっています。
(C)医師の指示に関する事項の明確化
最後に、医師の指示に関する事項の明確化です。
実は、老健に対する医師の指示や留意事項としては「訓練中の留意事項」が最も多いものになっています。
また、医師からの指示が多ければ多いほど、入所時のADLから退所時のADLの改善具合が大きくなる、ということもわかっています。
そういった環境を見ると、「より医師が明確に指示を出せるようにすることが、より入所者の状態にあうリハビリを行えることにつながるのではないか」と厚労省は考えたようで、明確に指示を出せるようにしようとしています。
②在宅復帰支援
在宅復帰支援においては
- (A)在宅復帰・在宅療養支援をより評価を重みづけ
- (B)認知症の人への対応強化
- (C)居宅介護支援事務所との連携強化
を掲げています
(A)在宅復帰・在宅療養支援をより評価を重みづけ
まずは、在宅復帰・在宅療養支援をより評価を重みづけに関してです。
現状、在宅復帰に積極的な超強化型老健や、他の老健においても通所リハに関しては積極的に実施している施設が多いです。
しかしながら、訪問でのリハビリを行っている施設は少なく、全体では31.7%の施設しか訪問リハを行っておらず、超強化型の老健においてですら55.1%にとどまっています。
これでは、せっかく家に帰すことができても、通所リハを活用できない人は、結局また老健に戻ってきてしまうことになります。
家に戻ってからのサービスもより積極的に行わせたいのが厚労省の考えです。
そのために、訪問リハに対しての加算を上げることで対応しようとしています。
(B)認知症の人への対応強化
次に、認知症の人への対応強化です。
老健に入所する認知症を抱えている人は、誰かが声をかければ自立できる人から介護が必要な人がいらっしゃり、日常生活自立度では、Ⅲのまでの人で、87%を占めています。
また、以前からある加算には「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」というものがあります。
短期的にしっかりとしたリハビリを行い機能維持改善などをしようというものですが、請求している事務所は41.1%しかありません。
多くの施設がこの加算を取得していれば、より認知症の人への対応が強化されるため、厚労省としては、より推し進めたい考えです。
(C)居宅介護支援事務所との連携強化
このセクション最後は、居宅介護支援事務所との連携強化です。
居宅ケアマネと老健は、退所後のケアプランを作成するために連携する必要があります。
この居宅ケアマネとの連携を取り始めた時期ですが
- 退所1か月以内が最も多く45.4%
- 次に入所前が多く37.9%
となっています。
ある意味当然かもしれませんが、居宅ケアマネとの連携を入所前から連携していた方が、入所期間は短くなる傾向があります。
また、カンファレンスを実施した回数が多いほど、入所期間が短くなるという傾向があります。
こういったことを踏まえると、より早くからの居宅介護支援事業者との連携を評価する加算があった方がいいのではないかと、厚労省は考えています。
また、退所前のみの連携もこれに合わせて見直そうとしており、入所前からの連携をしっかりするように促そうとしています。
③医療連携
医療連携としては、
- 適切な医療提供促進のための算定見直し
- かかりつけ医との連携
を掲げています。
適切な医療提供促進のための算定見直し
まず、老健においては「所定疾患施設療養費」という加算があります。
内容としては、月に7日を限度に規定された疾患への治療や検査を行うともらえる加算です。
当然、ご高齢の方や病気にかかった後の方が入所する施設ですから、呼吸器系、腎・泌尿器系の病気、具体的には肺炎や膀胱炎などは発生しやすい状況にあります。
こういった病気に関する加算を取得する際に、検査を実施せずに医師が病名をつけている状況が散見されており、例えば肺炎で加算を貰っている施設の約16%にも上るとされています。
また、治療を行っても、加算の算定日数7日を超えてから治癒するようなこともあります。
こうしたことから、より適切な医療を提供するために、「所定疾患施設療養費」の算定要件について、
- 検査の実施を明確にすること
- 算定期間を延長すること
- 対象疾患を見直すこと
が検討されています。
かかりつけ医との連携
「かかりつけ医」は非常に大切な存在で、持病や薬の管理の連携は非常に重要です。
しかしながら、この連携がうまくいっていない現状が散見されているようです。
実は老健に入所する人は、内服薬が不要になる・少なくて済むようになるケースがあります。
実際、入所時に6種類以上の内服薬が処方されていて、退所するときに1種類以上減っていた人の割合は31.3%にも上ります。
しかし、これがかかりつけ医との連携を行うことで貰える加算を申請した割合は、このうちわずか、6.9%しかいませんでした。
また、
- 入所時にかかりつけ医から、診療情報提供を必ず受けるのは77.5%
- 入所時に薬を変更する、減らす可能性があることの理解を必ず得ているというのは4.5%
というデータも出ています。
適切なケアを提供するためには、まずは情報が重要です。
その情報が適切に共有されるように、すでに加算が設置されてはいます。
厚労省としては、この加算をより強化することで、情報共有を円滑にしたいと考えているようです。
④看取りへの対応の充実
こちらは、特養でも取り上げた内容になっています。
老健においても、看取りを行うことは珍しいものではありません。
実際に対処する人の12%は死亡、最近1年で施設で亡くなった方がいた施設は77.3%に上るということがデータとしてもでています。
しかしながら、亡くなる1か月ほど前から看取りを開始する施設が60.9%です。
そのため、「十分に看取りのための準備が出来ていないのではないか」という懸念がもたれています。
そういった観点から、
- しっかりと看取りの加算のあり方を検討するべきではないのか?
- しっかりと看取りのためのガイドラインを守らせるべきではないのか?
という議論が行われています。
⑤リスクマネジメント
こちらも、特養の動画でも出てきたもので、事故報告や安全管理体制に関する意見です。
簡単に言うと、事故の情報を蓄積・有効活用するための準備をしっかり進めるために
- 事故報告の書式を、国が作成し広めよう
- 専任の安全担当を設置していない施設が44.8%と多いので設置を促そう
- しっかり委員会を開催させよう
ということを目指しています。
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