ユニットケアは机上の空論?問題点を整理してみた

介助術・介助方法
2022/01/09

ユニットケアの問題点ベスト5

最近、非常に増えてきたユニットケア。
ユニットケアで、働いている人も多いのではないでしょうか?

よくメリットが取り上げられていますが、ケアきょうで相談を受けていると、デメリットも多いなと感じることがあります。

そういった現状を確認するためにも、ユニットケアとは何なのか。また、ユニットケアの問題点はなんなのかを解説していきます。

そもそもユニットケアとは?

そもそも、ユニットケアとは何なのでしょうか?
一言でいうと、「個別ケア」を実現する一つのやり方として生まれた手法です。

従来、多くの要介護状態の高齢者を365日・24時間体制で介護をするために「いかに効率的に介護できるか?」を追い求めた集団ケアが主流となっていました。
しかし、そういった流れ作業が多い状態では、「入居者の尊厳」を大切にすることが、なかなか難しいものです。

時代の流れとともに、「入居者の尊厳」を意識し、一人ひとりの生活リズムやライフスタイルに合わせたサービスである、個別ケアを提供するべきだとなっていきました。
人一人の生活リズムや、ライフスタイルに合わせたサービスを提供するべきだ、という個別ケアが生まれました。

この個別ケアを行うために、ヨーロッパ諸国が始めたものがユニットケアです。
日本においては、2002年度より政府が、ユニットケアを行う特養に補助金を出すなどして、その拡大が進められてきています。

その最たる特徴として挙げられるのがハード面、施設の構造です。

ユニットケアを行う施設は、
利用者さん一人一人は、それぞれ個室に居住し、10人程度を1ユニットとして、供用スペースを設置するということを行っています。

単純に個室にするだけでなく、供用スペースを設けることで、ご利用者さん同士の交流を生み、同時にプライベートも確保できるようにする狙いがあります。

実際、ユニットケアにすることで、ベッド上の滞在率が67.7%から、40.2%まで下がったというデータもあります。
寝たきりを予防することにも効果があるようです。

これまでの話を聞くと、あれ?いいことばかりじゃないのか、という意見も出てきそうですが、実際は違うようです。
介護職の皆さんから聞いた「ユニットケアはあまり好きではない」という意見の中から、5つの問題点を紹介していきます!

①人間関係が深まり、面倒なことがある

まず、一番は人間関係が深まり、面倒なことがあるとのことです。

ユニットケアにおいては、

  • 利用者は1ユニット10人程度
  • 担当の職員も基本的に固定される

ということになっています。

通常の介護現場よりも、利用者さんとの距離や職員との距離が近くなる傾向にあります。
そのため、ユニットごとに人間関係が全く異なる、ということはよくあることで「同じ施設なのに、ユニット異動になったら違う施設にいるような感じがした」という意見もありました。

距離が近くなり、人間関係が薄っぺらいものよりも深い方が良いのではと、思われる方も多いと覆いますが、必要以上に人間関係が深くなることもあり、問題に繋がることがあります。

例えばこんなことがあります。

  • 気が付いたら、ユニットのドンが誕生しており歯向かえない状態
  • 特殊な人間関係が構築されていて、新しく入った人が過ごしにくい
  • 仲が良すぎて、逆に落ち着く場所がない

逆に考えると、従来型の施設では人間関係が深くなりにくいので、そういった意味では、気楽に仕事ができるのかもしれません。

②人員配置がギリギリだと、シフトが地獄になる

2つ目は、人員配置がギリギリだとシフトが地獄になることです。

1ユニット当たり必要な人を考えてみましょう。
多くの場合、早番・日勤・遅番・夜勤のシフトがあり、これに休みを加えると、最低でも5人必要ということになります。
余裕を持とうと考えると、これ以上に人手は必要になります。

しかし、こんなに多くの人を採用することは、現状かなり難しいようです。
現状、求人倍率は4.2倍です。1つの求人に応募してきてくれるのは0.24人という計算になります。
こういった状態ですから、人手は足りていない状態です。

一人でも欠けたら回らなくなるシフト、という綱渡りをせざるを得ない状態です。
こうなると、誰かが体調不良で倒れたときには、地獄を見ることになります。

また、こういった事態を未然に防ぐために、隣り合った2つのユニットで職員を共有する施設が多いです。
そういった施設では、2ユニットを1人で見る、というワンオペ夜勤が行われることも多いです。

本来の「個別ケアを行うため」のユニットケアですが、そうなると、なかなか個別ケアを行う余裕も出てこないかもしれません。

③ユニットリーダーの教育が追い付かない

3つ目は、ユニットリーダーの教育が追い付かないことです。

ユニットケアの代名詞「ユニット型特養」においては常勤のユニットリーダーを配置する義務があります。

ユニットリーダー次第で、そのユニットの雰囲気が変わることもあるくらい大切な役職です。
しかし、このユニットリーダーですが、特に必要な資格要件があるわけではありません。
ユニットリーダー研修という研修もありますが、必ずしも受講する必要はありません。

また、ユニットリーダーに求められる能力は、介護職としての能力以外にも
・マネジメント能力
・コミュニケーション能力
・指導力
等が求められていくものです。

こういった能力がある人がユニットリーダーに抜擢されるのが理想ですが、なかなかそうも行きません。
前任者が辞めてしまったため、取り急ぎ、手の空いている人材をリーダーに抜擢することが往々にしてあるのです。

もしそうであっても、十分に教育する体制が出来ていれば問題ありませんが、人手が足りないような施設ではその余裕はありません。

結果として、
・うまくユニットが回らない
・リーダー以外が権力を持ついびつな力関係が生まれる
といったことに繋がることもあるようです。

④新人教育が難しい現場になる可能性がある

4つ目が、新人教育が難しい現場になる可能性があるです。

ユニット型タイプにおける問題の一つに、職員同士があまり接することが少ないということがあります。
少数の人に対し、複数人の職員をつけることが難しいという、職場の問題です。

しかし、このせいで新人教育が難しくなる可能性があります。
最初の数日だけ先輩と一緒に業務にあたり、その後は一人で業務を行うという話も伺います。

従来型特養では、多くの人数を複数の職員で対応するので、
・仕事で困ったことは先輩に相談しやすく
・後輩が間違ったことをしていれば、先輩がすぐに指摘できる
という状況が、生まれやすくあります。

少人数で介護を行う状態だからこそ、研修がしっかりしていないと、新人教育がなかなかうまく行かなくなるという問題に直面する可能性があります。

⑤職員は孤独を感じることが多くなる

5つ目が、職員は孤独を感じることが多くなることです。

上記でもお話しした通り、職員は少人数で介護を行うことになります。
そのため、職員同士の人間関係がストレスにはなりませんが、利用者さん以外とあまり関わらなくなることで、孤独を感じる人もいます。

国際医療福祉大学に提出された論文では、インタビューによる調査の結論として、
「ユニット型ではユニット型施設特有の孤立した閉鎖的な環境がストレスとなり虐待の発生に影響を与えていた」という論文もあります。

人の目も少なくなるだけに、ストレスを感じた結果、虐待につながってしまうということもあるようです。
多くの人と働きたいと考えている人にとっては、デメリットな部分かもしれません。

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