褥瘡(床ずれ)予防どうする?褥瘡の好発部位と原因4つ
「褥瘡(じょくそう)」という言葉を聞いたことはありますか?
「床ずれ」という方が耳馴染みのある方もいるかもしれませんね。
高齢者の介護現場が在宅や施設に広がった今、介護に携わるなら必ず知っておいた方が良いというくらい重要なケアが褥瘡予防です。
褥瘡の好発部位やケアが分かれば、予防や早期発見で高齢者を守ることができます。
では、詳しく解説します。
褥瘡(床ずれ)とは
皮膚の一部分が一定の時間圧迫を受け続けることで皮膚の血流が悪くなり、皮膚が壊死して損傷してしまうことです。
健康な状態であれば、自分で安楽な姿勢を取ることで同じ部分が長時間圧迫されることはありません。
しかし、寝たきり状態や麻痺など病気の症状によっては長時間同じ体勢になってしまうことがあります。
皮膚が圧迫される事で赤くなったり悪化して褥瘡になってしまうのです。
病気や体質などの身体の要因に、圧迫などの外的要因が重なると褥瘡発生の危険性が高くなります。
特に高齢者は複数の要因を持ち合わせていることが多く、注意が必要です。
褥瘡に介護職ができることは
介護職はどこまで介入することができるのでしょうか。
高齢者や要介護者が増えるにつれ、2005年には医師や看護師だけでなく、介護職も可能な医療行為がある程度明確化されました。
医療行為とは、身体の治療や処置のことを指しています。
褥瘡の処置ももちろん医療行為に当たるため、介護職が実施してしまうと法律違反となってしまうので注意です。
介護職は、傷口周囲を洗浄したりワセリンを塗ることは可能です。
しかし、褥瘡部分を消毒したり、薬を塗ることは医療行為となるので禁止されています。
「褥瘡は処置をしてはいけない」と覚えておきましょう。
▼参考動画
褥瘡は1日でできることも
「昨日はなかったのに、今日になって皮が剥けている!?」なんて話はよく聞きます。
注意深く観察を続けていても、ご本人の体調やちょっとした環境の変化が影響して、あっという間に褥瘡はできてしまうのです。
皮膚の観察ももちろん大切ですが、衣類やベッド周りの環境を整え、ご本人の体調変化にも気をつけましょう。
体調を崩してトイレが頻回になったりした時は、皮膚汚染しやすく褥瘡のリスクも高くなります。
少しでも皮膚が赤いなどの変化があれば要注意!
まず上司や看護師に報告し、継続的に観察を行えるよう連携を取れるとよいでしょう。
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ケアきょう求人・転職の無料相談褥瘡(床ずれ)の原因4つ
では、褥瘡の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
大きく挙げると「圧迫」「摩擦」「不潔・蒸れ」「低栄養」の4つの原因が挙げられます。
原因が分かると、それぞれに対策を取ることができるので、しっかりと押さえておきましょう。
褥瘡の原因①
圧迫
同じ部分が長時間の圧迫を受けることで血流が悪くなり褥瘡が起こります。
さらに、圧迫される面積が小さいほど圧力が強くなるため、褥瘡を起こすリスクも高くなります。
シーツや衣服のシワがあると、その部分が周りより強く圧迫されるため、赤くなったり、皮膚が剥けたりすることから褥瘡が発生します。
長時間の圧迫がかからないようにしたり、圧迫される面積を広くしたりして、褥瘡の発生リスクを下げることが大切です。
褥瘡の原因②
摩擦
皮膚が引っ張られたり、擦れることで皮膚が弱くなります。
更衣やベッド上での移動、ギャッジアップ、長時間の座位などで摩擦が起こることが多いので注意しましょう。
移動の際は、利用者さんの膝を立て、介助者の手をしっかりと背中に入れるなどして擦れる設置面積を小さくしましょう。
また、利用者さんの体位を変えたり、更衣をした後は、皮膚が引っ張られた状態になります。
背抜きや衣服のつっぱりが無いよう最後にきちんと整えることが大切です。
褥瘡の原因③
不潔・蒸れ
尿や便で汚染してオムツの中が蒸れたり、夏場や冬の暖房使用時は、利用者さんが発汗して蒸れる場合もあります。
尿や便が皮膚に付着する時間が長いと、本来は弱酸性の皮膚がアルカリ性に偏り、皮膚の防御機構が弱くなります。
さらに、蒸れで皮膚が柔らかくふやけることで傷がつきやすくなり、褥瘡のリスクが高くなります。
定期的なオムツの確認で汚染や蒸れた状態が継続しないようケアをしましょう。
発汗が多い方は衣類や掛物を調節することも大切です。
褥瘡の原因④
低栄養
栄養状態が悪い場合も褥瘡のリスクを高めます。
栄養状態が悪いと、皮膚に栄養が回らず張りが低下します。
張りが低下した皮膚は圧迫や摩擦などに弱くなります。
また、低栄養の時は傷を治す力も弱ってしまうため、最初は小さな傷でも治しきれずにどんどん悪化してしまうことがあります。
食事介助の時にどれくらい食べることができているのか、どのようにすると(食事形態やセッティングなど)食事が取れるようになるのかも確認し、情報共有をしましょう。
褥瘡(床ずれ)の好発部位
姿勢によって、褥瘡のできやすい「好発部位」があります。
それぞれの姿勢での好発部位をしっかりと確認し、要点を押さえて皮膚の観察や褥瘡対策を取っていきましょう。
どの姿勢でも、筋肉が痩せて骨が突出している部分が圧迫を受けやすいことを押さえておくと理解しやすいと思います。
仰向け(仰臥位)の場合の褥瘡の好発部位
上を向いてまっすぐ寝ている状態です。
この姿勢での褥瘡の好発部位は、上から後頭部、肩甲骨部、脊柱部、仙骨部、かかとなどが挙げられます。
頭は体の中でも重い部分なので、枕の選択が大切になります。
後頭部の形にもよりますが、頭蓋骨の形が後方に丸みを帯びている場合は、小さい面積で圧迫を受けやすいので要注意です。
肩甲骨部、脊柱部、仙骨部は利用者さんの体格でもリスクが異なります。
痩せ型の体系だったり、円背(背中が丸まった姿勢)だったりすると、骨の突出が強く褥瘡のリスクが高くなります。
円背のような場合は、仰向けの姿勢自体が褥瘡発生の高リスクです。
その姿勢が適切なのかも考える必要があります。
かかとは足の中で一番当たる部分であり、しかも小さい面積で圧迫されやすい部分です。
気がついたら、かかとが赤くなっていたということも多いので要注意です。
横向き(側臥位)の場合の褥瘡の好発部位
文字の通り、横を向いて寝ている状態です。
この姿勢での褥瘡の好発部位は、上から耳、肩関節部、肘関節部、腸骨部(骨盤を横から触って出っ張っている部分)、大転子部(お尻の横側)、膝関節部、くるぶしなどが挙げられます。
横向きの姿勢の方が、仰向けよりも体の接地面積が小さいため、様々な関節部分に注意する必要があります。
完全に真横を向いてもらうより、クッションなどを入れて体を斜めにしてあげると体の接地面積を大きくすることができますね。
また、横向きの時に気をつけたいのが、体同士が当たる部分です。
例えば、膝が反対の足に当たったり、くるぶし同士が当たってしまう、といったことです。
関節部分は硬い骨が皮膚のすぐ下にあり、小さい面積で強い圧迫が起こりやすいです。
関節同士や関節が体の他の部分に強く当たっていないか確認をしましょう。
座位の場合の褥瘡の好発部位
座った姿勢です。
この姿勢での褥瘡の好発部位は坐骨部、尾骨部、背部、肘関節部などです。
やはり、痩せ型で骨の突出がある場合は褥瘡のリスクも高くなります。
皆さんも、ずっと座っているとお尻やお尻の上の部分が痛くなった経験はありませんか?
その部分が坐骨部、尾骨部(少し後ろ側の方)です。
自分でお尻を持ち上げたり、立てる人ならいいのですが、立てずにずっと車椅子生活の様な人は、長時間圧迫されやすい部分です。
また、先ほどお話しした円背の方も、背もたれに背骨が強く当たってしまうため褥瘡の高リスク部位です。
肘関節部は肘掛に乗せたままになってしまうと、関節部は皮膚の下に骨があり硬いため、皮膚への圧迫が強くなります。
洋服で隠れていたり、利用者さんが肘掛を使用している頻度を見過ごして見落としがちなので、着替えの時などによく確認する様にしましょう。
褥瘡(床ずれ)を予防するには
褥瘡を予防するにはどうしたらいいのでしょうか?
日々の介護ケアの中でできることはたくさんあります。
今回は褥瘡の予防ポイントを4点紹介します。
ポイントを意識しなが一つ一つ丁寧にケアすることで褥瘡は予防できます。
しっかりと原則を理解していると、利用者さんの状態に合わせた対応ができる様になりますよ。
褥瘡予防についてはこちらの動画もご覧ください。
▼参考動画
体位交換・ポジショニング
褥瘡は「長時間の圧迫」「小さい面積での圧迫」でできるものでしたね。
自分で寝返りなどの体動ができない方には、定期的に体位交換を行いましょう。
体位交換とは、仰臥位、右側臥位、左側臥位を交互に向いてもらうことで、同一部位の長時間の圧迫を避けます。
ポジショニングは姿勢の調整です。
関節同士がぶつからない様に足や腕の間にクッションを入れたり、背中にクッションを当てて横向きの角度を緩やかにすることで、体の接地面積を大きくします。
褥瘡予防用具の使用
褥瘡予防用具と聞くと、低反発マットやエアマットといったものを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか?
車椅子でも、座面に低反発のクッションを使用されている方も多いようです。
体を包み込む様に当たる寝具は、体の接地面積を大きくするため、局所の強い圧迫を避けることができます。
円背の方は車椅子やベッドのギャッジアップをした時に背骨が当たってしまいますね。
そんな時は柔らかいクッションやタオルを背中の隙間に当てるだけで、骨の突出部分への圧迫を防ぐことができます。
皮膚摩擦やズレを防ぐ
皮膚が擦れたり、引っ張られたままにならない様にしましょう。
ギャッジアップや車椅子などに移乗したあとはしっかりと背抜きをして、皮膚のつっぱりを取ります。
車椅子に乗っている利用者さんは、徐々に体が前にずり落ちてきます。
ずり落ちてきた状態は、お尻や背中の皮膚が引っ張られているため、座面深くに座ってもらえる様姿勢を調整しましょう。
普段から皮膚の観察をして、摩擦やズレで赤くなりやすい部分にはワセリンを塗るなどして摩擦を少なくできる工夫をしましょう。
身体の清潔保持
尿や便の失禁で皮膚が汚染されていると、皮膚のバリア機構が弱くなったり、ふやけたりすることで皮膚が傷つきやすくなります。
できれば、失禁の無いように事前にトイレ誘導しましょう。
例えそれが難しくても、定期的に失禁状態を確認し汚染された状態が長くならないようにしましょう。
失禁以外に、汗で蒸れて皮膚がふやける場合もあります。
清拭などで皮膚を清潔に保ちましょう。
逆に乾燥が強い場合は、クリームなどでしっかりと保湿をしてあげるとよいでしょう。
褥瘡(床ずれ)のケア
色々な予防対策をしていても、褥瘡ができてしまうこともあります。
褥瘡ができた場合はどのようにケアしたらいいでしょうか。
基本的に処置をするのは看護師です。
しかし、介護職も褥瘡の状態を知っておくと報告や処置のサポートをしやすいので、知っておきましょう。
褥瘡のステージ
褥瘡のステージには4段階あります。
stage2:表皮が剥離している、水泡があったり、傷口がジュクジュクしている
stage3:皮下組織までの深い傷
stage4:骨、筋肉、腱が見えてしまうほど深い傷
以上のように分けられています。
傷口から感染を起こすと膿や浸出液が多量に出て、強い臭気を出すこともあります。
傷口の周囲の皮膚の壊死が進むと、白い部分や黒い部分が見られるようになります。
軽症の場合
stage1
stage1は消えない発赤がある状態です。
赤くなっている部分を3秒ほど指で押してパッと離した時に、一瞬肌が白くなってから赤く戻る場合はまだ褥瘡の一歩出前です。
皮膚の血流がまだある状態だからです。
これが、3秒ほど押して離した時に色が変わらず赤いままであると褥瘡のstage1の可能性が高くなります。
この状態が見られた場合は、すぐに看護師に報告をしてください。
摩擦の軽減と汚れから皮膚を保護するためにワセリンを塗布したり、抗炎症剤が含まれたアズノールを塗布したりします。
また、ベッド周りや車椅子の環境を見直し、除圧できるようにクッションやマットレスの変更を検討しましょう。
こまめな体位交換や、座位の途中でお尻を浮かせる機会を作るなどの除圧を行うと発赤が消失する場合が多いです。
中等症以上の場合
stage2-4
stage2-4の場合は、皮膚が損傷している状態になります。
傷の洗浄や薬の塗布が必要となるため、看護師との連携が必須になってきます。
繰り返しになりますが「介護職は褥瘡の処置はできない」ので、必ず看護師にやってもらいましょう。
お風呂での傷口洗浄は介護職でも可能ですが、一度看護師に洗浄方法を確認してから実施しましょう。
処置は看護師が行いますが、日々の観察は介護職でも可能です。
「ガーゼに黄色い浸出液が染みています」「いつもより臭いが強い感じがします」など、外側から見える傷の変化を観察し、看護師に報告できると万全です。
大きな褥瘡ができる利用者さんは、自分で自由に動けない方が多いです。
褥瘡の処置をする時は、横を向いたり足を持ち上げたりすることが多いので、介護職も姿勢維持の介助などのサポートに入りましょう。
介護と看護の連携は
介護職と看護師の連携はとても重要です。
介護職は利用者さんの一番近くにいる存在です。
着替えやオムツ交換、入浴など皮膚を観察する機会も多く、ちょっとした変化に気がつけます。
その変化を看護師に報告し、早い段階で適切な対応を行えるよう連携しましょう。
それぞれの利用者さんによって、褥瘡のできやすさやできやすい部分が異なります。
普段から、どのようなポジショニングにするのがいいのか、どんな寝具にしたらいいのかなど、看護師と予防策を相談しておくことが望ましいです。
皮膚の状態だけでなく、食事の摂取状況も褥瘡リスクの大きな目安となります。
食事量の変化なども適宜報告を行えるといいでしょう。
「これぐらいで報告していいのかな」と迷うこともあると思います。
しかし、少しでも気になったら遠慮せずに報告しましょう。
それが利用者さんの為になります。
まとめ
褥瘡は苦痛を伴うだけでなく、体位の制限により高齢者のADLを低下させてしまいます。
座れていた方が、お尻の褥瘡によりベッド上で過ごすようになり、寝たきりになってしまったということも少なくありません。
なので、褥瘡を予防するということは、利用者さんのより良い生活を守ることに直結しているのです。
何よりも大事なことは、「利用者さんに興味を持つこと」だと筆者は感じています。
何かいつもと変わったことはないか、この方の場合はどのように対応するとより安楽か、相手の事を思う気持ちに知識と技術がプラスされると質の高いケアを行えるようになるでしょう。
経験を積むほどに対応力も上がります。
分からないことは現場の看護師やベテラン介護職に相談しながらケアに取り組んでみてくださいね。
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