グループホームの看取りの現状を現役のグループホーム介護職が解説

介護職仕事紹介
2022/09/14

グループホームでは看取りはしない」というのはもう過去の話です。
現状では、看取り対応をしているグループホームは存在します。

介護が必要な高齢者が増えてきた中で、グループホームの在り方も変化しています。
本記事では、グループホームが看取りを求められるようになった背景や、グループホームにおける看取りの現状や課題を、事例を交えながら解説していきます。

グループホームが看取りを求められるようになった理由

グループホームが看取りを求められるようになった理由は、介護を必要とする高齢者が増えたからです。

それによって……

  • 医療ニーズを必要とする利用者様が増えた
  • 入院環境に対する不適応
  • 利用者様本人やご家族の希望

といった要因が考えられます。

では、それぞれの要因について解説していきます。

ループホーム利用者様の医療ニーズの高まり

グループホームは本来、認知症の利用者様が小規模で家庭的な生活を送れるように作られた施設です。
しかし長く生活する中で、認知症の進行とともに身体機能も衰え、寝たきりになるケースも少なくありません。

寝たきりになることで、食事や水分の摂取がスムーズにいかなかったり、体力の低下により体調を崩しやすくなるなど、医療的ニーズが高まります。
元気な時に入居しても、長く生活することで衰えていくことは仕方ありません。
現在は、グループホームで問題なく日常生活できている方でも、年齢とともに医療ニーズの高まりや看取り対応の可能性が出てくるでしょう。

利用者が入院環境に適応する難しさ

以前は、グループホームで医療的ケアが必要な場合、病院へ入院するなどの対応をしていました。
しかし、グループホームと病院では生活環境が大きく違うため、利用者様が入院環境に適応できないといった場合もあります。

そのため、どうしても緊急性がある場合を除き、可能な限りグループホームで生活していただく施設が増えてきています。
その中で、近くの医療機関と連携したり、同じ法人内の医療サービス(訪問看護など)の協力を得ながらグループホームでの生活を継続しているのが現状です。
こういったことが、グループホームでの看取りが必要になっている要因と言えます。

ご家族や利用者様の希望も反映

グループホームで生活している利用者様の中には、事前に延命措置はしなくていいとご家族に伝えているケースもあります。
その場合はあらかじめ、利用者様またはご家族と看取りについて意思確認をしておき、急変があっても病院へは行かず、グループホームで看取り対応をします。

先ほども述べたように、グループホームは小規模で家庭的な雰囲気を大切にしている施設です。
そのため、利用者様にとっても馴染みのある生活環境になることから、最期は病院ではなくここ(グループホーム)で迎えたいという思いが出てくるのでしょう。

グループホームにおける看取りの現状と課題

グループホームで看取りをするようになってきましたが、では実際現場ではどのような看取り対応が行われているのでしょうか?

ここでは、グループホームにおける看取りの現状と課題を現役介護職の視点から解説していきます。

グループホームでの看取りは職員が個人に寄り添える

何度もお伝えしていますが、グループホームは小規模で家庭的な空間を提供する介護施設です。
そのため、職員と利用者様の距離が近く、一人一人に寄り添える環境と言えます。

実際現場でも……

  • 利用者様と洗濯物をたたむ
  • 食事の盛り付けを一緒にする
  • おやつの時間は座って一緒に休憩する

など、ゆったりとした雰囲気の中で接することができます。

そのため看取りにおいても、こまめに利用者様の状態確認ができますし、近い距離で関わり続けることができるメリットがあります。

グループホームで医療対応が必要な方の増加

現在は、グループホームでも医療対応が必要な方も増えています。
なぜなら、元々は軽度の認知症程度で身の回りのことはできていた方でも、長く生活する中で身体機能が衰え、それに伴って医療的ケアも必要になるといった場合があるからです。

ただ基本的には、グループホームは医療職はいないので、近くの医療機関と連携するなどの対応が必要です。
私の勤務する施設では、同法人の訪問看護と連携し、24時間体制で看護師が対応できる環境になっています。
今後も医療的ケアが必要な利用者様の増加とともに、グループホームでの看取り対応の在り方を、あらためて考えていく必要があるでしょう。

グループホームで最期を迎えたいという利用者ニーズ

医療的ケアが必要になると、必然的に入院が検討されます。
しかし、利用者様の中には「病気は治さなくていいから、ここままここで生活したい」と言われる方もいます。
まだご利用者様が元気だった時に、ご家族が「延命はしなくていい」と聞いているケースもあります。

利用者様にもご家族にとっても、馴染みあるグループホームで生活を続けたいという思いがあるようです。
また、長く生活していると、職員との信頼関係が構築されており、信頼できる職員に看取ってほしいという思いもあるのでしょう。

介護職の少人数制がデメリットになる場合も

グループホームでの看取りはいいことばかりではありません。
グループホームは利用者様は少ないですが、職員の数も少ないです。
特に夜間帯は、1ユニットであれば職員1人体制で、もちろん緊急時の対応も1人で対応する必要があります。

そのため、看取りの方以外に大変な利用者様がいると、余裕を持って看取りの方の対応ができない場合もあるでしょう。
小規模ということが良い面もあれば、デメリットになることもあることを理解しておきましょう。

看取りをしないグループホームもある

医療的ケアの負担や、看護師との連携が取れないなどの理由で、看取りをしないグループホームもあります。
将来的にグループホームでの看取りを希望する場合は、入居前の面談で施設側に確認する必要があります。

看取り対応をするグループホームが多くなってきた中で、医療との連携不足や職員の看取りに対する理解不足など、対応が難しい施設があるのも現状です。
しかし、人間はやがては老いていきます。
その中で、看取り対応になったからといって慣れ親しんだ施設を変えるのは、利用者様にとって良いとは言えません。
医療機関との連携強化や看護師の配置要件など、グループホームでの看取りが当たり前になるよう願うばかりです。

グループホームでは医療機関との連携強化は必須

先ほども述べましたが、グループホームでの看取りにおいて医療機関との連携強化は必須です。

例えば、以下のような実例があります。

  • 近くの病院と協力して往診や夜間対応などでつながる
  • 看護師などの医療職を配置して24時間体制での医療的ケアを可能にする
  • 同一法人内の医療サービスを利用する

実際に看取り対応をしているグループホームは、以上のような医療機関との連携がしっかりしています。
医療との連携が取れていると、現場で働く介護職も安心して働くことができ、結果として質の高い看取り対応にもつながっていくでしょう。

看取り対応が介護職のレベルアップにつながる

看取り対応をすることは、グループホームで働く介護職のレベルアップにもつながります。
なぜなら、医療的知識を学べたり、実際に看取りをするという経験ができるからです。

また看取りをするということは、その方の最期を看取るということです。
看取りケアには息を引き取るまでの日々の関わり以外に、亡くなった後に行うエンゼルケアご家族のメンタルケアも含まれます。

普段当たり前に介護を提供している利用者様も、いつかは亡くなるという意識を持つことで、あらためて自分が行う支援一つ一つを見直すきっかけにもなるでしょう。

グループホームでの介護職の看取り事例5選

続いては、実際にグループホームで行われた看取りの事例をご紹介していきます。

グループホームで働く介護職の方はもちろん参考になりますし、看取りとはどうあるべきかということを考えるきっかけにしてみてもいいでしょう。

病院と連携を強化し家族の理解を得た事例

Aさんはグループホームで楽しく生活していた。ある日食欲がなくなり「お腹が重い」と言われた。病院へ行くと、末期の胃がんと診断された。
Aさんは「入院しないでグループホームにいたい」と強く希望。長男もAさんの希望を叶えたいと思っていたが「入院した方がいいのではないか?」悩んでいた。
その後、長女(姉)が受診に付き添い「早く入院させたほうがいい」と弟を責めた。
そこで主治医はケアマネージャーから情報を得て、グループホームでも看取りは可能であることをAさんの子どもたちに説明し、Aさんは望み通りグループホームで最期を迎えることができた。

参考:山口県「看取り支援事例」

言語的コミュニケーションが困難になった方の事例

Bさんは呼吸が苦しいとよく言われており、ケアワーカーはその度にすぐに医療職に指示を求めていた。
1日に何度もケアワーカーを呼び「苦しい」「もうあかんのかな?」と死に対する恐怖を訴えられた。
苦痛の除去として薬の量が増え、副作用でせん妄も増加した。
ケアワーカーはBさんの思いを傾聴するが、せん妄は激しくなる一方。
また韓国語による思いの表出が顕著になり、言語的コミュニケーションが難しくなってきた。
終盤は服薬コントロールが主体となり体調の急変により、早朝に夜勤スタッフと、一人の入居者に看取られて亡くなられた。

参考:林山旭診療所グループ「グループホームでの看取りを通して – 介護の専門性を考える –」

ご夫婦で入居されていた方の事例

Cさんは認知症発症を機に、82歳の妻とご夫婦でGHに入居されていた。
看取りの期間は1ヶ月で、本人から体調不良の訴えが多くなり、食欲減退や倦怠感の増大、排泄の失敗が目立つようになった。
ケアワーカーは、Cさんに対して入院を勧めたが「ここでええ」「どこも行きたくない」とご自分の意思を貫き通された。
妻は衰えていくご主人の姿を見て不安が強まっていき、看病したいという気持ちは強かったが、上手くできない自分に焦りや不安を感じていた。
その不安が被害妄想や嫉妬に発展し、ご主人を責めたり口論も多くなった。
Cさんは亡くなる前日ケアワーカーに対して「もうあかんわぁ」と自らの死期を感じる発言があった。
異変に気づいた妻が見守る中、明け方に息を引き取られた。

参考:林山旭診療所グループ「グループホームでの看取りを通して – 介護の専門性を考える –」

本人様と合意形成の下で看取った事例

Dさんの場合は、グループホームで看取るという合意形成の下、チームケアを行った。
本人から苦痛の訴えは殆どなく、本人の体調や意思を尊重しながら、リクライニングベッドをリビングに移動し、他の入居者との交流を図った。
また、居室で休まれている時には「お見舞い」という形で、他の入居者に短時間訪問していただいた。
他の入居者からの優しい声かけに本人の表情が緩むことが多かった。
常に近くに人がいて生活感のある環境づくりをしていくことで、他の入居者とのなじみの関係を維持していった。
最期はその日勤務していた職員全員に看取られ、安らかに息を引き取られた。

参考:林山旭診療所グループ「グループホームでの看取りを通して – 介護の専門性を考える –」

看取り対応になってから状態が安定した方の事例

Eさんは、おしゃべりが好きで他の入居者と楽しく生活していた。
ある日、トイレの前で転倒しそれ以来寝たきりに。
ベッド上で過ごすことが多くなり、食欲や意欲低下が見られ、他の入居者との交流も減った。
食事は高栄養ドリンクやスポーツドリンクなどの水分のみで、固形物は食べれない状態が続く。
ご家族との面談で、胃瘻の増設は考えてないため看取り対応となる。
看取り開始から1ヶ月、ベッド上で過ごす生活は変わらなかったが、職員の声かけに笑顔が見られるようになる。
食事も医療職や栄養士、言語聴覚士と連携しながら1日1回は簡単な食事を摂れるまでに回復。
看取り対応は継続しているが、ベッドをリビングに移動することで他の入居者と交流し、安定した日々を送っている。

参考:筆者が勤務するグループホームの実体験

グループホームの看取り、介護職の心構えは?

グループホームで看取りをするにあたって、そこで働く介護職の心構えが必要になってきます。

ここでは、以下の3点をテーマに、グループホームでの看取りについて学んでいきましょう。

  • グループホームでの看取りの概要
  • 最期まで寄り添える環境
  • できるだけ苦痛を取り除くケア

それでは、一つずつ解説していきます。

看取り加算の考え方

看取り加算とは?

2006年に創設された、死を避けることができないとみなされた方に対して、身体的・精神的苦痛を和らげるためのケアを行う事業所に算定される加算のこと。

看取り加算には「Ⅰ」と「Ⅱ」があり、Ⅰは以下の条件を満たす必要があります。

看取り加算Ⅱは、以下の条件が必要です。

グループホームの場合は医師の配置がないため、看取り加算Ⅰが適用されます。

単位数については、以下の通りです。

算定期間 単位数(1日あたり)
亡くなる45日前~31日前 72単位
亡くなる30日前~4日前 144単位
亡くなる前々日、前日 680単位
亡くなった日 1,280単位

現場で看取りをする介護職の方々は、以上のような基本情報を頭に入れておくといいでしょう。

少人数のユニットを活かした利用者に寄り添うケア

グループホームは、1ユニット最大9名の小規模施設です。
そのため、こまめに利用者様の状態を確認できるというメリットがあります。
看取りをする場合でも、前述の事例にあるような「ベッドをリビングに移動する」といった対応で、より近くで確認しながら、他の利用者様との交流も維持しやすいという環境を作れます。

グループホームは施設の作りが小規模だからこそ、人と人とのつながりも維持しやすいので、看取りをする際もそういったメリットを活かして、利用者様に寄り添うケアが求められるでしょう。

グループホームだからこそできる苦痛の少ない看取り

グループホームでは基本的に医療的ケアは行いません
もちろん、医療機関と連携し医師による往診をしたり、訪問看護による緊急時の対応などは行います。
看取りは「身体的・精神的苦痛を和らげるためのケアを行う」というもので、苦しみを持続させるような無理な延命や医療行為はしない方針です。

グループホームは、特別養護老人ホームなどの大規模な施設と違い、できるだけ家庭的な環境で生活をしていただく施設です。
精神的にも肉体的にも、ゆったりとした空間で最期を迎えていただけるよう、介護職が落ち着いた口調で話しかけるなどの配慮が大切と言えるでしょう。

まとめ

今回は、グループホームの看取りの現状について解説しました。
日本は、今後さらに高齢化社会へと突入します。
それに伴い、施設での看取りも今まで以上に増えることが予想されます。
その中で、グループホームの看取りの形も少しずつ確立されていくでしょう。

ただ単に医療機関や医療職との連携を強めるだけでなく、グループホームで働く介護職が利用者様の最期を看取ることの重要性や、家庭的なグループホームだからこそできる一人一人に寄り添う看取り理解し実践していくことが求められます。

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