福祉用具専門相談員とは?仕事内容と実際に働く手順を分かりやすく解説!

介護職仕事紹介
2022/08/22

福祉用具専門相談員とは、どういった仕事をする人なのでしょうか?
「名前は聞いたことあるけど具体的な仕事内容までは分からない」という方もいるでしょう。

本記事では、福祉用具専門相談員になる方法や仕事内容などを分かりやすく解説していきます。
これから福祉用具専門相談員をしてみたいという方や、興味がある方は参考になる内容です。

福祉用具専門相談員とは?

福祉用具専門相談員とは、簡単に言うと「福祉用具が必要な利用者様やご家族に、適した福祉用具の提案や使い方、その方の身体に合わせて調節などを行う」福祉用具のスペシャリストです。

利用者様の自立した生活と介護者の負担軽減のためにも、福祉用具はとても重要な役割を担っています。
福祉用具の種類は豊富で、車椅子だけでもスタンダードな自走式や介助式、電動やリクライニングなど多くあります。
その中で、利用者様やご家族だけで選ぶのは正直困難です。
そのため、福祉用具のスペシャリストである福祉用具専門相談員の存在価値は大きいと言えるでしょう。

福祉用具専門相談員の仕事内容は?

福祉用具専門相談員の仕事内容は、福祉用具の選定や調節だけではありません。
介護保険を活用し福祉用具を利用するためには、ケアプランと「福祉用具サービス計画」が必要です。

そのため、ケアプランを作成するケアマネージャーとの連携は必要不可欠です。
ここでは、福祉用具専門相談員の具体的な仕事内容を解説していきます。

レンタルの提案

福祉用具専門相談員は、介護保険サービスの福祉用具貸与として定められている一連の手続きを行う必要があります。

  1. ケアマネや利用者様、ご家族からの依頼
  2. 利用者様の状態や居住環境の確認
  3. 対象の利用者様に適した貸与種目の福祉用具を選定
  4. ケアマネと相談し計画書を作成
  5. 福祉用具の調整完了後に利用開始

レンタルと販売では対象種目が違うので、あらかじめ丁寧な説明が求められます。

以下、福祉用具貸与(レンタル)の対象種目です。

種目 内容
車椅子
  • 自走用標準型車椅子
  • 普通型電動車椅子
  • 介護用標準型車椅子
  • 車椅子付属品
  • クッション、またはパッド
  • 車椅子用テーブル
  • 車椅子用ブレーキ
  • 特殊寝台(電動ベッド)
  • サイドレールが取り付けてあるものまたは取り付け可能なものであって、背部または脚部の傾斜角度が調整できる機能または床板の高さが無段階に調整できる機能のいずれかを有するもの
  • 特殊寝台付属品
  • サイドレール
  • マットレス
  • ベッド用手すり
  • 電動ベッド用テーブル
  • スライディングボード、スライディングマット
  • 介助用ベルト
  • 床ずれ防止用具
  • 送風装置、または空気マット等
  • 水、エア、ゲル、シリコン、ウレタン等からなる全身用マット
  • 体位変換器
  • 体位変換器
  • 手すり
  • 取り付け工事を伴わないもの
  • 便器、またはポータブルトイレを囲んで据え置くタイプのもの
  • スロープ
  • スロープ(個別利用者のために改造したもの、簡単に持ち運びができないもの、工事をしなければつけられないものを除く)
  • 歩行器
  • 歩行が困難な者の歩行機能を補う機能を有し、移動時に体重を支える構造を有するものであって、次のいずれかに該当するものに限る
  • 車輪を有するものにあっては、体の前および左右を囲む把手等を有するもの
  • 四脚を有するものにあっては、上肢で保持して移動させることが可能なもの
  • 販売の提案(営業)

    福祉用具専門相談員は、福祉用具の販売も行うため営業をすることもあります。
    販売種目は排泄や入浴に関するものがメインで、手順としてはレンタルの時と同じです。
    ただ、特定福祉用具販売に該当しない商品や消耗品を販売することもあり、その場合は料金や使用方法などを改めて説明します。

    前述同様に、レンタルと販売では対象種目が違うので、あらかじめ丁寧な説明が求められます。

    以下、福祉用具販売の対象種目です。

    種目 内容
    腰掛便座
  • 和式便器の上に置いて腰掛式に変換するもの
  • 洋式便器の上に置いて高さを補うもの
  • 電動式またはスプリング式で便座から立ち上がる際に補助できる機能を有しているもの
  • 便座・バケツ等からなり、移動可能である便器(居室で利用可能なものに限る
  • 自動排泄処理装置の交換可能部品
  • レシーバー、チューブ、タンク等のうち尿や便の経路となるもの
  • 入浴補助用具
  • 入浴用椅子
  • 入浴用手すり
  • 浴槽内椅子
  • 入浴台
  • 浴室内すのこ
  • 浴槽内すのこ
  • 入浴用介助ベルト
  • 簡易浴槽
  • 空気式または折りたたみ式等で容易に移動できるものであって、取水または排水の為に工事を伴わないもの
  • 移動用リフトのつり具の部分
  • 身体に適合するもので、移動用リフトに連結可能なもの
  • 書類作成(ケアマネージャーと相談)

    福祉用具を利用する際は「福祉用具サービス計画」を立てる必要があります。
    これはケアプランに則って作成されるため、事前に担当ケアマネージャーと相談をします。

    その他にも、福祉用具専門相談員は事務作業を担っています。
    介護報酬や利用者負担の請求、保険者への代理請求、福祉用具メーカーとの発注・納品などさまざまです。

    福祉用具に関する書類だけでなく、多くの事務作業を抱えている福祉用具専門相談員は、色々な知識を得ていく必要がある職種と言えるでしょう。

    福祉用具の調整と使用方法の説明

    福祉用具は利用者様一人一人に合ったものを提供するため、体の状態や生活環境に合わせて調整する必要があります。
    また利用者様やご家族が初めて利用する場合は、丁寧な説明と疑問点の解消をあらかじめしておきます。
    確実に伝えておかないと、事故のリスクが高まります。

    また説明する際は専門用語はできるだけ避けて、相手が分かりやすい言葉で伝えることが大切です。
    細かい調節方法など、1回で伝わらない場合は分かりやすく紙に書いたり、実際に使っている動画を見せるなど工夫することも必要でしょう。

    定期的な確認

    福祉用具専門相談員は、利用者様の自宅を定期的に訪問して、福祉用具の調整や利用状況を確認します。
    これをモニタリングといい、年に2回は実施することが義務付けられています。

    モニタリングの際は、利用者様だけでなくご家族やケアマネージャー、さらに介護サービスを提供するヘルパーなどの意見も参考にすることが求められます。
    利用者様の快適な生活のために、定期的な点検と助言は非常に重要な仕事と言えるでしょう。

    福祉用具専門員の1日のスケジュールは?

    福祉用具専門相談員の仕事は、福祉用具の点検やメーカーとの打ち合わせ、事務所での作業がメインなど、その日によって違いますが、主な1日の流れは以下のようなスケジュールです。

    8:30 出社、朝礼、本日のスケジュール確認など
    9:00 電話対応や福祉用具の積み込み作業
    10:00 利用者様のお宅を訪問
    11:00 居宅介護支援事業所でケアマネとミーティング
    12:00 昼休憩
    13:00 モニタリングで利用者様のお宅を訪問
    14:00 新規の利用者様と面談
    14:30 ケアマネとの電話相談
    15:00 福祉用具の納品のため利用者様を訪問
    16:00 福祉用具メーカーと打ち合わせ
    17:00 会社に戻って事務作業
    18:00 退社

    基本外出してることが多く、営業職に近い働き方と言えるでしょう。

    福祉用具専門相談員になるには?

    福祉用具専門相談員になるには、どのような資格や研修が必要なのでしょうか?

    ここでは、福祉用具専門相談員になるまでの方法や、どのような場所で働けるのかなどを解説していきます。

    資格取得方法は?

    福祉用具専門相談員は、福祉用具専門相談員指定講習を受講後、修了試験に合格すれば資格を取得できます。

    また、以下の資格を持っていれば講習を受講しなくても福祉用具専門相談員として働くことが可能です。

    • 介護福祉士
    • 社会福祉士
    • 保健師
    • 看護師
    • 理学療法士
    • 作業療法士
    • 義肢装具士

    福祉用具専門相談員指定講習は誰でも受講可能で、講習受講費用は4〜6万円程度、受講期間は6〜8日間で開講されています。
    講習は全国各地で開催されており「福祉用具専門相談員指定講習+(お住まいの都道府県名)」で検索すれば出てきます。

    講座の内容は?

    福祉用具専門相談員指定講習の内容は、以下の通りです。

    科目 時間数
    福祉用具と福祉用具専門相談員の役割 福祉用具の役割 1時間
    福祉用具専門相談員の役割と職業倫理 1時間
    介護保険制度等に関する基礎知識 介護保険制度等の考え方と仕組み 2時間
    介護サービスにおける視点 2時間
    高齢者と介護・医療に関する基礎知識 からだとこころの理解 6時間
    リハビリテーション 2時間
    高齢者の日常生活の理解 2時間
    介護技術 4時間
    住環境と住宅改修 2時間
    個別の福祉用具に関する知識・技術 福祉用具の特徴 8時間
    福祉用具の活用 8時間
    福祉用具に係るサービスの仕組みと利用の支援に関する知識 福祉用具の供給の仕組み 2時間
    福祉用具貸与計画等の意義と活用 5時間
    福祉用具の利用の支援に関する総合演習 福祉用具による支援の手順と福祉用具貸与計画等の作成 5時間
    合計 50時間

    参考:一般社団法人 全国福祉用具専門相談員協会「福祉用具専門相談員指定講習のカリキュラム

    働く場所は?

    福祉用具専門相談員が活躍する場所は、以下のような所です。

    • 福祉用具販売・レンタル店
    • ドラッグストアや百貨店(介護用品コーナー)
    • 訪問介護事業所
    • 福祉用具メーカー関連
    • 介護施設 など

    福祉用具販売・レンタル店の場合は、2名以上の常勤福祉用具専門相談員の配置が義務付けられています。

    その他、訪問介護事業所や介護施設などは、現場の介護職や相談員などと兼務しながら働いている場合もあります。

    福祉用具専門相談員に向いている人は?

    では、福祉用具専門相談員に向いている人とはどういったタイプでしょうか?

    色々な要素が必要ですが、ここでは主に5つの要素を例として挙げました。
    自分自身の特性と照らし合わせながら参考にしてみてください。

    人と関わるコミュニケーション力

    コミュニケーション能力が高い人は、福祉用具専門相談員に向いています。
    ケアマネージャーをはじめ、利用者様やご家族、福祉用具のメーカー担当者、介護サービス事業者など、さまざまな人と関わる仕事です。
    その中で、信頼関係を築いていく必要があります。

    また、それぞれのニーズを聴きながら、最適な福祉用具を提案する調整力も求められます。
    「聴く力」「伝える力」の両方が必要な仕事であると言えるでしょう。

    変化に気づく観察力

    福祉用具専門相談員は、福祉用具を使っている利用者様の自宅を定期的に訪問して、福祉用具の点検や利用者様の状態、周辺環境などをチェックします。
    その際には、細かい変化に気付ける観察力が必要です。

    変化によって福祉用具が合っていないと判断した場合は、利用者様本人やご家族、ケアマネージャーなどと相談して、福祉用具の再選定をする必要もあります。

    旺盛な好奇心

    福祉用具は日々進化しており、常に新しい製品を開発しています。
    福祉用具専門相談員は、その時の利用者様に最適な福祉用具を提案する必要があるため、好奇心を持ち、常に新しい製品の情報を取り入れる必要があります。

    日頃からメーカーの開発担当者と連絡を取り合っていたり、自分からSNSなどで情報を集めることも有効でしょう。
    新しい情報を取り入れることが好きな人は、福祉用具専門相談員に向いていると言えるでしょう。

    体力に自信あり?

    福祉用具は、介護用のベッドや移動用リフトなどの大型機器を扱うこともあります。
    配送は業者がしてくれますが、室内での微調整や細かい移動に関しては、福祉用具専門相談員が対応しなければなりません。
    その際には、体力があったほうが作業もスムーズに進むでしょう。

    また、外回りが多く毎日のように移動するので、働く上での基礎体力も必要になってきます。
    普段から筋トレや運動などで体力の維持向上に努めている人は、福祉用具専門相談員で自慢の体力を活かせるでしょう。

    介護現場を知ろうとする姿勢

    福祉用具専門相談員は、介護が必要な方々に対して福祉用具を選定することが主な仕事です。
    そのため、福祉用具の知識だけでなく、介護に関する情報も知っておく必要があります。
    介護現場の経験者であれば、ある程度分かるでしょうが、そうでない場合は表面上しか理解できません。

    また、介護業界は制度改定が定期的に行われ日々変化しています。
    したがって、最新の情報を自分から知ろうとする姿勢は大切です。
    自ら率先して情報収集できる人は、福祉用具専門相談員に向いていると言えるでしょう。

    福祉用具専門相談員の給与事情

    ここまで福祉用具専門相談員の仕事について、色々と触れてきましたが、続いては「給与事情」についてです。

    福祉用具専門相談員の実際の給与や将来性などを、分かりやすくまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。

    平均給与は?高い?低い?

    例として、東京都の福祉用具専門相談員の求人を見ると、「20〜25万円程度」の募集が多くあります。
    (年収にすると300〜400万円程度)

    介護職の平均月収の24.5万円と比べるとほぼ同水準ですが、サラリーマンの平均月収27万7400円と比べると低いことが分かります。

    参考:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況

    ここではさらに、福祉用具専門相談員の今後の給与事情や、キャリアアップの可能性を解説します。

    今後上がる可能性は?

    日本の高齢化率は加速する一方です。
    介護を必要とする人の割合は今後も増え続け、福祉用具専門相談員の需要も増していくことが予想されます。
    ただ、給与が上がっていくかは不透明な部分です。
    理由としては、介護職と違い処遇改善加算の対象ではないため、今後、福祉用具専門相談員の給与が大きくアップする可能性も低いでしょう。

    それでも介護需要の伸び率とともに、福祉用具専門相談員の取り巻く環境も少しずつ変化していくことが予想されますので、今後の動向に注目しておきましょう。

    他の職種と兼務すれば給与アップも見込める?

    福祉用具専門相談員の仕事をサブにして、本職のキャリアアップに活かすという方法があります。

    例えば、以下のようなパターンがあります。

    • 介護施設で現場の介護職と兼務
    • 居宅介護支援事業所でケアマネージャーと兼務
    • 訪問介護のサービス提供責任者と兼務 など

    福祉用具専門相談員という付加価値を付けることで、仕事の幅が広がり給与アップにも繋げることができるでしょう。

    福祉用具専門相談員はやりがいがある仕事?

    福祉用具専門相談員の仕事は、利用者様への支援はもちろん、ケアマネージャーをはじめとしたさまざまな職種との連携により成果が出るというやりがいがあります。

    ここでは、福祉用具専門相談員のやりがいについて、具体的に3つ紹介していきます。

    利用者様の生活改善

    福祉用具は、利用者様の自立した生活を支える手段です。
    福祉用具専門相談員が選定した福祉用具によって、利用者様の生活が改善し快適に過ごしていただけることは、大きなやりがいの一つです。

    また、利用者様やご家族から直接感謝の言葉をかけられることで喜びを感じるでしょう。
    利用者様が福祉用具を返却する際、本人様にとっては良いことなので嬉しいですが、その反面関わることが減るという寂しさもあるという、福祉用具専門相談員さんの声は印象的です。

    他職種との連携

    福祉用具を必要としている利用者様は一人一人状況が異なるため、福祉用具専門相談員の仕事はマニュアル通りにいかないことも多いです。
    しかし、ケアマネージャーなどさまざまな職種の方と連携し、利用者様やご家族の課題解決に役立てれば、達成感を感じやりがいに繋がるでしょう。

    また、福祉用具のプロとして他職種から頼られることもあり責任感を感じやすく、何のために働いているのかといった存在意義を実感できる仕事です。

    ノルマ達成

    職場によって異なりますが、福祉用具専門相談員はノルマを課せられる場合があります。
    具体的には、福祉用具の新規契約の数値目標を達成するというものです。

    場合によってはプレッシャーとなり、過度なストレスを感じる人もいるでしょう。
    しかし、ノルマを達成することで給与面に良い影響を与えたり、さらなる目標を掲げるなどモチベーションアップの効果も期待できます。

    まとめ

    今回は、福祉用具専門相談員の仕事内容ややりがい、働く方法などを解説しました。

    福祉用具専門相談員になるには「福祉用具専門相談員指定講習」を受講するか、介護福祉士など特定の資格を有することでも働くことができます。

    福祉用具専門相談員は、福祉用具を通じて利用者様を影で支える重要な仕事です。
    自立支援を促進し介護負担を減らすという意味でも、要介護者の増加とともに需要もますます高まることが予想されます。

    また、福祉用具専門相談員専門で働くだけでなく、介護や医療分野の他の職種と合わせることでキャリアアップも期待できるでしょう。

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