ケアマネは国家資格化される?今後の展望を徹底解説
ケアマネは介護サービスの中核を担っており、正式名称を「介護支援専門員」と言います。
その仕事内容は、高い専門性が必要とされるものです。
現状ではケアマネは都道府県の試験を受けて合格し、さらには更新研修があるという民間資格です。
なぜ国家資格ではないでしょうか?
今回は、このケアマネの国家資格化と将来性について、解説していきます。
ケアマネは国家資格化されないのか?
さて、ケアマネはなぜ国家資格ではないのでしょうか?
ここでは、ケアマネが過去に国家資格化されようとした話と、今後ケアマネが国家資格となるには何が必要なのかをご紹介していきます。
実は国家資格化することを認められていた?
実は、2003年の国会で提出された答弁書の「国家資格一覧」の内容に、ケアマネ(介護支援専門員)が含まれていたという報道もあります。
この事実は、2022年1月5日に日本介護支援専門員協会の調べで明らかになったとされています。
参考元:「介護支援専門員は国家資格」 2003年に政府が見解 解釈を閣議決定済み 協会「歓迎すべき事実」(JOINT)
日本介護支援専門協会は、今回の事実を知った上で、今後新たな動きを検討していると発言しています。
ケアマネの国家資格化に関する動向から目が離せません。
ケアマネが国家資格化するために必要な3つの条件
ケアマネが専門職として国家資格となるための条件には、以下の3つが挙げられます。
- 民間資格という都道府県主体から、国家資格という国主体に移行する
- 介護福祉士法などのように、介護支援専門員法のような根拠法を設定する
- 業務独占の資格であることを改めて明文化する
根拠法などの設定など法律上の問題もあり、今すぐ実現可能とはいきませんが、一つ一つクリアしていくことが、ケアマネの国家資格化を実現させていくでしょう。
受験資格を実務経験から福祉系の大学、または専門学校卒への移行
先ほどの3つの条件以外で、さらにケアマネの国家資格化を加速させるには、ケアマネを福祉系大学などで学べるカリキュラムに組み込むことで、今ある実務経験ルートから、社会福祉士のような福祉系大学で学び国家試験を受けるルートを確立することも必要です。
具体的なカリキュラムとして「ケアマネジメント学」のように、福祉系大学でケアマネ論がしっかり学べる環境を作り、その後の受験資格ルートを設けることで、より専門性に特化したケアマネージャーが生まれる仕組みを作ることも重要になってきます。
こういった仕組みを作ることで、ケアマネの高齢化といった課題解決にもなりますし、介護業界に入りたいけど、現場職に向かない人材の取りこぼしを予防することにもつながるでしょう。
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ケアマネになるまでの道のりは長く、大きく分けて以下の3つの手順になります。
- ケアマネ試験の受験資格を得る
- ケアマネ試験に合格する
- ケアマネ研修を受講する
それでは、一つずつ解説していきます。
ケアマネ試験の受験資格は?
まずは、ケアマネ試験の受験資格については、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 介護福祉士や看護師、医者などの特定の国家資格に基づく業務に関して、通算5年以上(900日以上)の実務経験がある
- 特別養護老人ホームなどの介護施設で、相談援助業務に通算5年以上(900日以上)従事した実務経験がある
介護福祉士の資格取得に3年はかかることを考えると、無資格からケアマネの受験資格を満たすまでには、早くても8年はかかる計算です。
まずは、自分自身が将来ケアマネになるために今必要なことは何かを把握して、目の前のことを一つ一つ確実にやっていきましょう。
ケアマネ試験に合格
受験資格を満たしたら、次は試験に合格する必要があります。
ケアマネの試験は、合格率20%ほどで合格ラインが厳しいため、一般的に難しいと思われています。
しかし、半年〜1年ほど計画的に勉強をすれば、十分1回で受かることは可能です。
勉強法としては、まず過去問に触れて、少しずつ問題に慣れていきましょう。
ケアマネ研修の受講
ケアマネ試験に合格した後は、介護保険やケアプランの作成に関する知識や技能、実践的スキルを学ぶ「介護支援専門員実務研修」を受ける必要があります。
研修時間は87時間で、その後居宅介護支援事業所での実習が3日間となっています。
この研修が終わり、都道府県に登録申請後、資格証が交付されてから初めてケアマネとして働くことができます。
ケアマネ不要論とケアプラン有料化の背景
2021年4月の財務省資料から日本の社会保障給付費は、2000年〜2020年の20年間で大きく増加しています。
その中で、介護給付費の割合に関しては、4.2%から9.7%と倍以上に増加している状況です。
国としては、この増額の原因は何かを考え、要介護認定者の増加であることに気付きました。
そこから、ケアプランの有料化とケアマネ不要論が同時に浮上してきました。
ケアプラン有料化からケアマネ不要論が出た理由
ではなぜ「ケアプラン有料化」と「ケアマネ不要論」が同時に浮上したのか?
まず、財務省が膨らみ続ける介護給付費に対して、要介護認定者の増加を問題視。
そして、要介護度が上がらないようにケアプランを作るのがケアマネの仕事ではないのか?ということを指摘。
役割を果たせていないのであれば、ケアマネはいらないのではないか?という無理矢理な議論がされたという経緯があります。
さらに財務省は、介護給付費の財源をケアプランを有料にすることで賄えないかという話も浮上し、これまでの利用者負担ゼロで10割給付の、実質ケアプラン無料という現状も問題視されました。
ケアプランに関しては有料化以外にも、AIの導入などIT化も話題になり、ますますケアマネ不要論が一人歩きした形にもなりました。
ケアプラン有料化は避けられない?
現在はケアプランに利用者負担はなく実質無料。
しかし事業所には、利用者一人当たり月1万円ほどの介護報酬費が給付されています。
国としては、その中の一部を利用者負担にするだけでも、介護給付費は抑えられるという考えです。
また、ケアプランを有料にすることで、利用者からお金を頂いているということから、ケアマネの意識も高まり、ケアマネジメントの質も高まるのではと考えているようです。
参考元:財務省「ケアプランの有料化は当然」 2024年度からの導入を提(JOINT)
ケアマネは今後不要になるのか?
結論から言うとケアマネは不要にはなりません。
理由は、日本の介護保険制度を支える柱であるから。
より具体的に言うと、今後高齢者はさらに増加するとともに、介護サービスも今より複雑化することが予想されます。
そんな変化の中で、利用者様と介護サービスをつなげるケアマネの存在は必要不可欠です。
今後もケアマネは必要とされていく中で、質の向上とともに処遇のさらなる改善が求められるでしょう。
ケアマネの資格を取得するメリット
今後も必要性が高まるケアマネの仕事。
ここでは、ケアマネの資格を取得するメリットをご紹介していきます。
今後、ケアマネの資格取得を目指す際の参考にしてみてください。
介護職のキャリアアップは?
介護職の多くがケアマネの資格取得を機に、次なるステップにキャリアアップしています。
ただケアマネになるというだけでなく、資格取得とともに手当が付いたり、介護職としての基本給がアップする事業所もあります。
また、管理職の資格要件にケアマネを条件としてる場合もあるため、ケアマネ資格は介護職のキャリアアップにおいて大きなメリットを持っていると言えます。
ケアマネの給与は?
令和2年の介護従事者等の平均給与額
平均給与(月収) | |
---|---|
介護職員 | 325,550円 |
介護支援専門員(ケアマネ) | 362,510円 |
参考元:令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(厚生労働省)
ケアマネの給与は、現場の介護職員に比べて4万円ほど高くなっています。
キャリアの選択肢が広がるとともに、給与も上がるのであればぜひ取得しておきたいところです。
ケアマネの体力的負担は?
ケアマネの仕事は基本的に事務作業と連絡業務がメインです。
そのため、介護職のような身体介助があるわけではなく、体力的負担は少ないと言えます。
ケアマネの資格を持っておけば、いざ腰痛などで介護職ができなくなっても、介護業界で働き続けることができます。
ケアマネの平均年齢が40代ということからも分かるように、年齢を重ねても肉体的負担が少なく働けるという魅力があるようです。
ケアマネの夜勤は?
介護職と兼務している場合を除き、ケアマネには夜勤業務がありません。
朝から夕方まで働き、夜はしっかり寝るという規則正しい生活を送れるので、体調管理もしやすい働き方となっています。
介護職の夜勤は2日分で、17時間拘束と長時間のため、生活リズムを整えるのが難しいのが現状です。
夜勤はどうも苦手という方は、ケアマネになることで夜勤から解放されるメリットがあります。
ケアマネのシフトは?
ケアマネのシフトは、基本的に朝8時頃〜夕方5時頃までといった働き方が多いです。
また、居宅介護支援事業所であれば、日曜休みや年末年始が休むといったところもあるようです。
また、仕事のスケジュールをケアマネ自身で組むことが多いので、自分のペースで仕事を進めやすいというメリットがあります。
子どもがいる方であれば、学校行事などと調整しながら働けるので、ライフワークバランスを取りやすいと言えるでしょう。
ケアマネの転職は?
ケアマネの資格を持つことで、介護業界での転職の選択肢が広がります。
介護職の場合は、転職先は介護施設だけになりますが、ケアマネであれば居宅介護支援事業所や地域包括支援センターなども就職先として選べるようになります。
また、介護職として介護施設に就職するにしても、ケアマネを持っていると知識やスキルがあると判断され、転職時に有利に働きます。
ケアマネの今後の課題
今後さらなる需要が見込まれるケアマネですが、多くの課題を抱えています。
中でも、年々減少するケアマネの受験者数については、将来のケアマネのなり手不足が懸念されています。
ここでは、ケアマネの人員不足を軸に、ケアマネが抱えるこれからの課題について解説していきます。
介護職との処遇改善の差は?
まずは処遇の改善について。
介護業界では、現場の介護職の処遇は年々良くなっています。
しかし、ケアマネの処遇は十分な改善がされないまま、現場からは多くの不満が挙がっている状態です。
本来は介護職のキャリアアップという位置づけとして見られていたケアマネですが、現在では「給料が下がるからケアマネにはならない」といった声が挙がるほどです。
その実態として、夜勤手当や処遇改善加算手当などが手厚い介護職の方が給料が良いケースは良くあります。
本記事のメインテーマであるケアマネの国家資格化とともに、それに伴う処遇の改善も合わせて必要と言えるでしょう。
主任ケアマネは?
2021年4月より、居宅介護支援事業所の管理者は主任ケアマネでなければならないという制度改定が施行されました。
しかし、現状は多くの事業所で主任ケアマネが不在です。
そこで厚生労働省は、2027年3月までは経過措置としてケアマネでもいいとしているが、ケアマネのなり手不足が懸念される中で、果たして主任ケアマネになる人が現れるのか疑問なところです。
参考元:居宅介護支援の管理者要件に係る経過措置 及び地域区分について(厚生労働省)
ケアマネの質は?
ケアマネの質の向上も、今後の大きな課題となっています。
ケアマネ試験のハードルを上げたり、研修時間を増やすなど、質の向上に対する取り組みはしていますが、目立った効果は出ていないのが現状です。
本記事でも触れた、ケアマネの国家資格化に関する受験ルートで、福祉系大学での「ケアマネジメント学」の導入など、専門的に学べる環境を作ることは重要になってくるでしょう。
現在のような実務経験ルートでは、働きながら学ぶことしかできずケアマネに関する知識をしっかり学べるかと言ったら疑問が残ります。
ケアマネの国家資格化とともに、専門性を高めていける学びの場を設けることも、今後のケアマネ業界全体の課題となるでしょう。
まとめ
今回はケアマネの国家資格化について解説してきました。
国としては、ケアマネの国家資格化を検討していることは確かで、今後の動向が気になるところです。
ただ、本当に国家資格化するためには、ケアマネの質の向上、受験ルートの変更検討、処遇改善など、色々な課題を解決していく必要があります。
資格取得をすることで多くのメリットがあるケアマネですが、色々な課題をクリアし、本当の意味で介護職が目指したいと思える資格になることを期待しましょう。
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