ケアマネ試験の合格率が低い理由と対策を徹底解説【現役ケアマネ監修】

資格取得
2022/08/03

「ケアマネの試験は難しい」こういったイメージを持っている方は多いでしょう。
たしかに、ケアマネ試験は介護関連の資格の中でも合格率が低く、難関試験と言われています。

ではなぜ、ケアマネの試験は難関と言われるのか?
試験の概要を探りながら、ケアマネ試験の合格率が低い理由や、合格するために必要な勉強法などを解説していきます。

ケアマネ試験の合格率が低い5つの理由

ケアマネ試験の合格率が低い理由は、色々なことが考えられます。
ここでは、ケアマネ試験の内容制度変更ケアマネの質勉強時間といった観点から、ケアマネ試験の合格率が低い理由を解説していきます。

ケアマネ試験独自の解答法と合格基準は?

ケアマネ試験の特徴は、独自の解答方法合格基準によるものが大きいでしょう。
解答方法は「五肢複択」という、医師の国家試験でも使われている方法で、勘で答えたら正解だったという偶然の確率が非常に低くなります。

また合格基準に関しても正答率70%以上で、さらには分野ごとにまんべんなく点数を取れていないといけません。
これは、同じ介護系資格で介護福祉士正答率60%以上と比べても、やはりハードルが高めと言えます。

参考までに、令和3年度(第24回)のケアマネ試験の合格基準をご紹介します。

▼令和3年度(第24回)東京都のケアマネ試験

分野 問題数 合格点
(1)介護支援分野 25問 14点(56%)
(2)保健医療福祉サービス分野 35問 25点(71%)

介護支援分野は、平均点が低かったため56%でしたが、保健医療福祉サービス分野の方は、35問中10問しか間違えられないというハードルの高さでした。

試験制度変更が影響している?

ケアマネ試験は2015年に、基礎資格による試験問題の免除が廃止され、全ての受験者が同じ数の問題を解答する内容に統一されました。
例えばそれまでであれば、介護福祉士の人が試験を受ける場合は、介護支援分野が免除になっており問題数は35問だけでした。

この免除制度がなくなったことで、受験者の学習負担も増えて、本来は得意の分野でつまづくといったことが起きている可能性が考えられます。

また、受験資格が有資格者のみとなり厳しくなったことから、受験者数が減ったことも合格者数の減少に繋がっています。

▽以下、制度変更前後の受験者数の変化

ケアマネ試験 受験者数 合格者数 合格率
2014年 174,974人 35,539人 19.2%
2018年 49,332人 4,990人 10.1%

ケアマネの受験者数は、ここ数年で1/3以下になっており、その分合格者も同じくらい減少しています。

ケアマネの質の向上は?

ケアマネ試験の合格率が低い理由として、ケアマネの質の向上のためという理由が考えられます。
ケアマネ試験の難易度を上げることで、ケアマネの資質に優れたものだけを合格させて、提供するケアプランサービスなどの品質改善を目指していると言えるでしょう。

厚生労働省の介護保険部会でも、以下のようなケアマネの問題点が議論されています。

  • 医療機関との連携が乏しいケアマネが多い
  • 医療的知識に欠けるケアマネが多い

たしかに、ケアマネ自体の人数は増えてきましたが、全員が現場で十分活躍できるかといったらやはり疑問が残るところでしょう。

受験者の勉強時間は?

ケアマネ試験は、学校に行きながら勉強するといった学習ではなく、ほとんどの人が働きながら独学で時間を確保しながら学習しています。

介護福祉士をはじめ、看護師や医師といった多忙な職種の方々が受けることが多く、そういった方々が働きながら十分な勉強時間を確保するのは難しいと言えるでしょう。
このように、勉強時間の不足が、ケアマネ試験の合格率が低くなる要因として考えられます。

介護職の人材不足とのバランスは?

ケアマネ受験者の60%近くは、介護現場で働いている介護福祉士の方々です。
そして、この介護福祉士の多くがケアマネ試験に合格するということは、今まで以上に介護現場が人手不足に陥ることを意味します。

あくまで推測なのでたしかなことは分かりませんが、安易にケアマネ試験の合格率が上がることは、介護業界の混乱を招いてしまう恐れがあると考えられるでしょう。

ケアマネ試験の合格率と難易度について

ケアマネ試験の合格率は低いと言われていますが、実際にこれまでの試験でどれほどの合格率だったのでしょうか?
他の医療福祉系資格の合格率とも比べながら見ていきましょう。

ケアマネ試験の過去の合格率は?

▽以下、過去10年間のケアマネ試験の合格率の変化です。

平均すると、10〜20%の間を推移しています。
昨年は合格率20%超えてきましたが、それでもまだまだ難しい試験と言えるでしょう。

他の福祉系資格の合格率と比較すると?

▽以下、令和3年度の医療福祉系試験の合格率です。

資格 合格率
介護支援専門員(ケアマネ) 23.3%
介護福祉士 71.0%
社会福祉士 29.3%
看護師 90.4%
理学療法士 79.0%
介護福祉士 71.0%
作業療法士 81.3%
保健師 94.3%
医師 91.4%

合格率だけで見ると、ケアマネ試験の合格率が最も低くなっています。

ただ看護師や医師などの合格率が高い理由は、受験するまでに学校を卒業したり、それまでにかなりのハードルを乗り越える必要があり、受験するまでにかなりの人がふるい落とされているため、受ける人のほとんどが合格できるレベルといった結果になります。

同じ福祉系でも、社会福祉士の場合は、養成学校や大学で勉強した人と社会人受験者が混ざっているため、ケアマネよりも高い合格率となっています。

ケアマネ試験の合格ラインは?

冒頭でも、東京都のケアマネ試験を例に挙げたように、各分野で70%ほどの正答率が合格ラインとなってきます。

分野は2つあり、介護支援分野では25問医療保健福祉サービス分野では35問です。
これらでそれぞれ60%〜70%ほどの正答率を満たせば、合格ラインを超えてきます。

決して簡単ではありませんが、本記事内でこの後ご紹介するおすすめの勉強法を実践すれば、問題なくクリアできるでしょう。

ケアマネ試験の受験資格

ケアマネージャー試験の受験資格には、介護や医療現場などでの実務経験が必須となっています。
実務経験のパターンには大きく分けて2通りあり、「国家資格に基づく業務」もしくは「施設などでの相談援助業務」です。
それでは、それぞれの詳しい内容を解説していきます。

特定の資格取得者の場合

介護の代表的な国家資格「介護福祉士」の場合は、現場での実務経験が資格取得後から通算5年以上(900日以上)必要です。

介護福祉士以外も、以下のような国家資格に基づく実務経験も、ケアマネージャーの受験資格に該当します。

相談援助業務をしている場合

国家資格に基づく実務経験以外にも、以下のような相談援助業を通算5年以上(900日以上)経験することで、ケアマネージャー試験を受験することができます。

相談援助業務とは、以下のような職業の業務です。

一見こちらの方が、資格取得が必要ないため、介護福祉士を取得するルートより早くケアマネージャー試験を受けられるように見えます。
しかし、生活相談員や支援相談員などは、社会福祉士の資格や福祉関係の実務経験が必要である場合が多いので、同じくらいの期間、もしくは国家資格ルートよりも時間がかかる場合もあることは知っておきましょう。

ケアマネ試験のおすすめ受験対策法

ケアマネ試験は合格率が20%ほどで、決して簡単に合格できるものではありません。
しかし、事前に準備をして確実に勉強を積み重ねれば誰でも合格することは可能です。

ここでは、ケアマネ試験に合格するために効果的な対策を3つご紹介します。

勉強の開始時期は?

ケアマネ試験を受けると決めたら、その時点から受験勉強を始めましょう。
可能な限り早く始めることで、余裕を持って学習を進めることができます。
また、早い段階で始めることで、1日の勉強時間を少なくして、働きながら学習することへの負担軽減にも繋がります。

具体的に始める時期としては、可能であれば試験の1年以上前から開始しましょう。
それが難しい場合は、遅くても6ヶ月前までには受験勉強に取り掛かり、直前になって焦らないようにしましょう。

過去問は何年分やればいい?

ケアマネ試験の効果的な勉強法として「過去問を何度も繰り返し解く」方法があります。
具体的には、最低でも過去5年分以上は解きましょう。
なぜなら、介護保険は3年に一度改定されるため、変更前後の試験内容に触れることで、問題の傾向の変化も知ることができるからです。

あと補足として、過去問をやる際は、答え合わせの際に必ず「解説部分」も目を通しましょう。
答えだけ見て正解不正解を確認するのではなく、「なぜその答えになっているのか?」を理解することで、他の問題にも役立つからです。

受験対策講座の効果は?

資格スクールが開講しているような「受験対策講座」への参加も、効果的な勉強法です。
お金はかかりますが、その分理解しやすいカリキュラムになっており同じ志を持った人たちと時間を共有できるのは、孤独な受験勉強への大きな刺激になるでしょう。

模試だけ受けに行ってみるという方法もあるので、独学と講座をバランス良く使い分けながら、自分に合った勉強法を確立していきましょう。

試験に落ちた時の気持ちの整え方

ケアマネの試験の合格率が低いということは、不合格者が毎年多く出ているということでもあります。
ここでは、ケアマネ試験に落ちた時の気持ちの整え方や、切り替える方法をご紹介します。

不合格でも次がある

ケアマネ試験はたとえ不合格になっても次があります。
何回でも受けられるので、一度や二度落ちたくらいで諦めるのはもったいないです。

ケアマネ試験は難しいということで、中には5回以上諦めず挑戦し続けて受かった方もいます。
何回落ちても気にせず、何度でもチャレンジしてみましょう。

勉強期間が伸びることのメリット

試験に落ちても、その分さらに1年、ケアプランや介護保険について深く学べる機会が増えたと考えるといいでしょう。
ケアマネ試験の内容は、介護の基礎が詰まっており、長期間学び続けることで、より頭に定着してくれます。

「また勉強しなきゃいけないのかぁ?」
「よしっ!さらに学んで知識を深めていこう」
今後ケアマネをする上で、どちらの考えが幸せに学び続けることができるでしょうか?
さらに言うなら、ケアマネは試験に受かっても研修が多い資格です。
ケアマネは学び続けなければいけない職種だということを理解しておきましょう。

完璧主義は必要ない?

一度試験に落ちると、次は全問正解して合格してやろうという思いが芽生えるものです。
でも先にお伝えしておきます。
全問正解する必要はありません。
70%の正答率を目指せばいいです。

逆に考えると、「60問中20問は間違えてもいい」というくらいの気楽な気持ちを持つことも、試験を受ける上では大切です。

ケアマネ試験は合格してからがスタート

先ほどもお伝えしたように、ケアマネは試験に合格した後に実務研修更新研修があります。
したがって、ケアマネは試験に合格してからがスタートと言えます。
ここでは、試験合格後の実務研修と、5年ごとの更新研修について解説していきます。

試験合格後の実務研修は?

ケアマネ試験に合格した後は、以下のような実務研修が待っています。

▽ケアマネージャー実習の主な内容

研修形式 研修内容 研修時間
講義 ・介護保険制度の理念や現状について
・実習オリエンテーション
・ケアマネジメントにかかる法令等の理解
・地域包括ケアシステム及び社会資源
・ケアマネに必要な医療との連携及び他職種協働の意義
・人格の尊重及び権利擁護並びに介護支援専門員の倫理
・ケアマネジメントのプロセス
16時間
演習 ・ケアマネジメントの基本
・相談援助の専門職としての基本姿勢及び相談援助技術の基礎
・ケアマネジメントに必要な基礎知識及び技術
・実習の振り返り
・利用者、多くの種類の専門職等への説明及び合意
・介護支援専門員に求められるマネジメント
・サービス担当者会議の意義及び進め方
(必要な基礎知識及び技術に追加)
・ケアマネジメントの展開
71時間
現場実習 基礎技術の実習 3日間
費用と時間 受講費用は61,000円 87時間

研修期間は16日間の研修を、2〜3ヶ月の期間で受講します。
その間に3日間の現場実習もあり、現場に立つ前に充実した研修を受けることができ、安心してケアマネの仕事に就くことができるようになっています。

定期的な更新研修は?

ケアマネは5年ごとに資格の更新が必要です。
更新の際は、ケアマネの実務経験年数に応じてカリキュラムが分かれているので、自分に該当する更新研修を申し込みます。

▽以下、ケアマネ更新方法のチャート図です。

実務経験の程度に応じて、研修時間やカリキュラムが異なるので、安心して更新研修を受けることができます。
ちなみに、更新費用は3万円程度です。

まとめ

今回は、ケアマネ試験の合格率が低い理由と、効果的な受験対策法などについて解説してきました。

ケアマネ試験の合格率は、10〜20%ほどとかなり低く、介護系の資格ではかなり難関の試験と言えます。
しかし、受験資格を得るまでに、早くても5年はかかるため、早い段階で受験勉強を始めることで、確実に合格に近づくことができます。

ケアマネ試験の効果的な受験対策としては、「早い段階で勉強を始める」「過去問を何度も繰り返しやる」「受験対策講座に参加してみる」といった方法があります。

また、たとえ一発合格できなくても、何度でもチャレンジできる試験なので、落ちたら終わりと自分を追い込むのではなく、落ちても次があるという気持ちを持つことも大事になってきます。

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