円背の方の寝る姿勢・食事の姿勢は?介助者が気をつけること

介助術・介助方法
2022/07/16

円背の方の介助の方法が分からない」とお悩みではありませんか?

ここでは、寝る姿勢や食べる姿勢の介助方法、注意点について詳しく解説していきます。

この記事を最後まで読み終えていただければ、誤った介助による褥瘡や誤嚥のリスクを減らすことができます。
円背の方の介助方法でお悩みの方は参考にしてみてください!

円背とは

円背とは、腰や背中が大きく曲がっている、いわゆる「猫背」になっている状態のこと。
骨盤が後ろ側に傾き、顔を上に向けて前方に顎を突き出す姿勢が特徴的です。

普段は痛みを感じにくいですが、脊椎に負担のかかる姿勢では強く痛む場合があります。
円背は進行すると仰向けで寝られず、自力での寝返りが難しくなり、褥瘡リスクが高まります。
また、食事の姿勢が悪くなることで誤嚥を起こすかもしれません。

そのため、円背の方の介助では、寝る姿勢や食事の姿勢に配慮しましょう

円背の原因は

高齢者の円背は、加齢に伴う身体の変化が原因です。

  • 筋力の低下:脊柱のまわりの腹筋や背筋が衰えてくると、支えられなくなった胸椎が前に倒れてしまう
  • 圧迫骨折:背骨の圧迫骨折によって、前側に向かって背骨が潰れたまま固まってしまう。背骨が前側にカーブし、圧迫骨折を繰り返すうちに円背が進行していく
  • 骨の摩耗や変形:加齢に伴い、長年体重を支えていた背骨がすり減ったり、変形したりしまう
  • 長年の不良姿勢:長年にわたって、不良姿勢(下を向く姿勢)を続けることによって、猫背になりやすく、筋力の低下が加わると円背になる

特に女性は閉経後の骨粗鬆症リスクが高く、圧迫骨折を繰り返して円背が進行してしまうケースが多いとされています。

円背と猫背、亀背の違いは

猫背も円背と同じくように前傾姿勢になってしまっている状態ですが、姿勢の悪さや筋肉の緊張などによって起こります。
背骨が固まっていないので、ストレッチや正しい姿勢を心掛けることによって、改善される可能性が高い状態です。

しかし、猫背のまま長期間放置していると、筋力の低下や骨の摩耗・変形などが原因で胸椎が変形してしまい、固まり、円背に進行します。

また、円背亀背は同義語として使われており、大きな違いはないとされています。
ただし厳密には、全く同じものではありません。

  • 円背:胸椎が前に倒れて背中が丸まった状態
  • 亀背:胸椎が後ろに倒れて背中が丸まった状態

また、「脊椎カリエス」という病気による、胸椎や腰椎の変形で前傾姿勢となってしまう状態は、「亀背」と呼ばれています。
そのため、介護の現場では、円背とするのが適切といえます。

円背の姿勢になると寝る姿勢・起きる姿勢が難しい

通常、ベッドに横になったり、起き上がったりする動作では、頭から体幹が直線になった状態で、重心を移動させます。

しかし、円背の方は前傾姿勢のまま固まってしまうので、重心の移動が難しいです。
バランスを崩しやすく、寝る際は後方へ、起きる際は前方への転倒・転落のリスクが上がります。
また、背骨を無理にまっすぐに伸ばした状態で、動作を行おうとすれば、強い痛みが生じることも。

円背の方には転倒・転落リスクがあることを把握したうえで、時間がかかっても、安全に動作が行えるか見守り、必要時援助を行いましょう。

円背の方の寝る姿勢 注意点は

円背の方は安楽な姿勢でなければ、寝ている際に逆に身体が疲れてしまったり、休めない原因になります。
また、長期間同じ姿勢でいることや、曲がった背骨の血流が滞ることで、褥瘡のリスクが上がることにも。

そこで、円背の方の寝る姿勢で注意したい点を詳しくご紹介していきます。

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円背の方が寝る時におきること

円背の方が仰臥位の姿勢を取ると、突出した背骨によって肩が浮いてしまい、背中の筋肉が緊張します。
仰臥位で寝るのが難しいため、側臥位の姿勢で寝ることが多くなります。

しかし、寝返りを自力で打ちにくいことから、長時間同じ向きの側臥位で寝る方が多いです。

側臥位は安楽な姿勢ですが、骨の突出した肩や大転子部、踵などに圧がかかりやすく、褥瘡が起きやすいとされています。
円背の方にとって寝やすい側臥位は、褥瘡が起こりやすいので注意が必要です。
必要時、クッションや枕、タオルなどを利用して、圧がかからないように調整しましょう。

枕の注意点

円背の方が枕を使う場合、注意しなければならないのは枕の高さです。
円背の方が仰向けの姿勢を取りやすくするには、通常の枕よりも5ミリから20ミリほど高いものが向いています。
円背の方は首が前に出ている状態なので、枕が低いと体に合わず、仰向けの姿勢が取れません。

仰向けの姿勢が取れない場合、側臥位にならざるを得ず、朝までほとんど寝返りを打たないため、褥瘡ができやすくなってしまいます。
市販の枕を使用する際は、仰向けで寝るのが苦痛に感じないように、タオルで高さを調整しましょう。

また、円背の方が仰向けで寝やすい福祉用具の枕もおすすめです。

ベッドの注意点

褥瘡予防や除圧のために、背中が沈み込みやすい柔らかいマットレスやエアマットの使用は避けましょう
円背の方は仰向けになった際、丸まった背中が深く沈みこんでしまい、円背の進行につながります。

また、柔らかいマットレスは安定性が低く、筋肉の緊張が高まって関節の拘縮が起こりやすくなります。
通常のマットレスに、クッションを使用することで、褥瘡を予防できます。

側臥位の注意点

円背の方は、背中が丸まっており、骨盤が後ろに傾いています。
そのため、側臥位で、股関節を90度、膝関節を軽く曲げた姿勢は安楽に感じます。
背中の筋緊張が起こる仰臥位よりもリラックスして過ごせるので、円背の方は長時間側臥位の姿勢を取りがちです。

しかし、側臥位は褥瘡が起きやすい姿勢でもあるので、2~4時間おきの体位変換で、仰臥位や反対側の側臥位を取ってもらいましょう。

また、クッションの利用もおすすめです。
骨の突出している部分に、体重が集中してかからない工夫が大切です。

円背の方の食べる姿勢の注意点

健康な人にとって、座って食事を摂る姿勢は当たり前のように行えますが、円背の方は身体への負担が大きく、疲労を感じやすい姿勢です。
適切な介助が行われないことで、円背の方は安心して食事を楽しめない場合があります。

円背の方が安全・安楽に食事を摂れるように、食べる際の注意点を詳しくご紹介していきます。

円背の方は誤嚥のリスクがある

円背の方は首が前側に大きく傾いて顎が突き出ているので、飲み込みにくさがあります。
通常、食べ物が通る食道と、空気が通る気管は喉にありますが、食べ物が気管に入り込まないように、喉頭蓋という部分が気管に蓋をします。

しかし、顎が上がっている状態では、喉頭蓋のコントロールがうまく働かなくなってしまい、誤って気管の方へ食べ物が流れ込みやすくなります。
その結果、円背の方は誤嚥のリスクが高まることに。

誤嚥によって感染を起こすと、誤嚥性肺炎という危険な病気を起こす可能性が高くなるので、誤嚥の予防はとても大切です。

円背の方の正しい食べる姿勢

円背の方が食事の際に誤嚥を起こさないようにするためには、適切な姿勢をとれるように介助しましょう。

円背の方の正しい食べる姿勢
  • 両足を床や足置き台にしっかりと接地させる
  • 頭と垂直になるように背中をゆっくり後ろ側に倒す
  • 腰と背もたれの隙間に硬めのクッションや丸めたタオルを入れ込む

頭が起こせる姿勢では、食事をする際に腕を動かしやすくなります。
背中の緊張を和らげ、無理なく上体を起こした姿勢を維持できるポジショニングを心掛けてください。

また、座面が広い椅子は、円背の方にとって姿勢が崩れる原因です。
浅く腰掛けると姿勢が後ろ側に崩れてしまい、深く腰掛けると頭の重さでより前傾姿勢となってしまいます。
椅子は座面が広すぎず、深く腰掛けても、足が床や足置き台に接地するものを選びましょう。

円背の方の食事介助の注意点

円背の方の食事介助をする際は、無理な姿勢による疲労感を与えないように注意しましょう。

円背の方の食事介助の注意点
  • 立ったままの食事介助は、顎を上げる姿勢となるので、むせこみやすくなる。介助者は座って食事介助を行う
  • 長時間の食事は疲労につながるので、食事時間は30~40分を目安とする
  • 円背の方は食べ物を飲み込みにくいので、飲み込んだことを確認してから次の一口を入れる
  • 遠くにある皿は手を伸ばしにくかったり、中身が見えていない可能性があるので、適宜声をかけて皿を手前に移動させる

食事は生活の中の楽しみに直結する大切な時間です。
疲労感や誤嚥によって、楽しさが損なわれてしまうことがないように、介助者は配慮を心掛けましょう。

円背の方の食べる・寝るのNG行為

食事や睡眠は、生活の中の楽しみや疲労回復の役目を果たす大切なもの。
しかし、円背の方は、前かがみの姿勢になることで、さまざまなリスクが伴います。
そこで、円背の方の食べる・寝るのNG行為について詳しくご紹介します。

円背の方の食事介助のNG行為

座面の大きい椅子に浅く座ると、骨盤の後ろ側にあたる仙骨後面に体重をかけた、「仙骨座り」になりがちです。
仙骨座りは首が前に突き出し、顎が上がった姿勢になるので、誤嚥のリスクがより上がります。
適切な座面の椅子を用意し、深く座るように促しましょう

また、前傾姿勢になりがちな円背の方にとって、高すぎるテーブルは視線の高さや腕の可動域に合いません。
食べ物を口に運びやすくなるように、高すぎるテーブルは避けた方が良いです。

円背の方のベッド介助のNG行為

円背の方に無理な寝返り介助を行うのは避けましょう
通常、側臥位から反対側の側臥位を取ってもらう場合、側臥位から仰臥位の姿勢をとり、反対側に身体を向けます。

しかし、円背の方は側臥位から仰臥位の姿勢を取るのが難しく、通常の寝返り介助の方法ではうまくいきません。
無理に反対側へ身体を向けようとすると、脊柱がねじれたり、まっすぐ伸ばされることで、強い痛みが生じる可能性があります。
側臥位からベッド上で長坐位をとってもらい、介助者は要介助者の肩甲骨と膝下に腕を差し入れて、支えながらゆっくりと反対側に身体を倒していきましょう。

まとめ

睡眠や食事は、リラックスや疲労回復、楽しみとなる生活の中で大切な時間です。

しかし、円背の方は、顎が上がって背中が丸まっている姿勢なので、褥瘡や体の痛み、誤嚥のリスクが発生しやすいです。

無理な介助によって圧迫骨折や、誤嚥性肺炎を起こした場合、ADLの低下を招き、介護度が上がる可能性があります。

円背の方が快適で安楽に過ごせるように、介助者は円背の方の身体の特徴を把握したうえでの援助が必要となります。

円背の方が自分らしく健康に過ごすために、介助者は寝る姿勢や食べる姿勢に、充分配慮しましょう。

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