介護職による看取り介護とは?介護施設での看取りの流れと職員の役割とは
介護職として働く上で
「看取りってどんなことをするんだろう?」
「利用者さんの亡くなる瞬間まで介護するなんて怖い」
と、施設内での看取り介護について不安を感じる方も多いのではないでしょうか?
この記事では
- 看取り介護とはどういったものなのか?
- 看取り介護の実態
- 介護施設での看取りの流れ
- 看取り介護においての介護職の役割
- 看取り介護をする上での不安やその解消法
について解説しています。
この記事を読むことで読者の皆さんの看取りに対する不安が少しでも解消できれば幸いです。
介護職が行う看取り介護とは
看取りとは
「近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最後まで尊厳のある生活を支援すること」
とされています。
自宅や病院などで看取ることを想像する方が多いと思いますが、最近では介護施設でも看取り介護を行います。
似たような言葉として
- ターミナルケア
- 緩和ケア
という言葉もあります。
この2つと「看取り介護」の違いを確認しましょう。
ターミナルケア・緩和ケアとの違い
「看取り介護」とは死が近づいている方に対して延命治療を行わず、自然に死を迎える過程を見守ることを言います。
「看取り介護」で重視されることが
- その人らしい、充実した生活で最期を迎えること
- 人間の尊厳を守ること
とされており、日常的なケアを中心に身体的・精神的な苦痛を緩和する介護を行います。
「ターミナルケア」は別名「終末期医療」と呼ばれ、経管栄養などの医療行為を行います。
「看取り介護」と「ターミナルケア」との最大の違いは、利用者さんに対し医療行為を行うかどうかです。
「ターミナルケア」については医師の判断に基づいて点滴や酸素吸入などの医療ケアを重点的に行っていきます。
「緩和ケア」とは生命を脅かす疾患や問題に直面する際、患者と家族に対して痛みや、それ以外のメンタル面での苦痛に対する予防と緩和を行うことです。
厚生労働省では癌患者に対して診断された時から緩和ケアを推進しているように、終末期でない方にも行われますので注意しましょう。
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実際に看取りを行っている施設とはどの程度あるのでしょうか?
看取りを行う介護施設の割合や、在宅・病院での看取りについてなど、看取り介護に関する実態を見ていきましょう。
介護施設での看取りが増えている
近年看取りを介護施設で行うことが増加傾向にあります。
看取りを行う場所については「病院・在宅・介護施設」であり、 以前は在宅での看取りが8割となっていましたが、最近では病院での看取りが8割と増えているようです。
「人生の最後は住み慣れた場所で看取られたい」という思いから本人・ご家族の意向に沿った生活支援を行うため、平成18年に介護施設での看取り介護加算が算定できるようになりました。
その後は看取りを実施する施設が増え、今では8割の介護施設が看取りを実施しているという調査もあります。
よって、今後介護職員は看取り介護に対しての知識が必ず必要となってくるでしょう。
看取りを行っている代表的な施設として介護医療院があります。
介護医療院について詳しく説明した記事があるので興味のある方は見てみてくださいね。
看取りができない介護施設もある
全ての介護施設が看取り介護をできるというわけではありません。
看取り介護加算を算定できる施設として
- 特別養護老人ホーム
- グループホーム
- 特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホームなど)
などがあります。
また、介護保険法の定めている看取り介護加算の算定要件を満たしている必要があります。
算定要件は以下の通りです。
- 常勤看護師を1名以上配置し施設又は病院との看護職員との連携による24時間の連絡体制を確保していること
- 看取りに関する指針について入所者・家族に説明し同意を得るとともに、看取りの実績を踏まえ適宜見直しを実施していること
- 看取りに関する職員研修を実施していること
- 医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断していること
- 多職種が共同で作成した介護に関する計画について入所者又は家族の同意を得ていること
- 看取りに関する指針に基づきと他職種の相互の連携の下、介護記録等を活用し、入所者家族に説明していること
厚生労働省「介護老人福祉施設の報酬・基準について」
看取り介護加算を算定せずに看取り介護を行っている施設もあります。
また、人員の条件や居室環境などの理由から看取りをできない場合もあるので覚えておきましょう。
在宅・病院での看取り
国の政策によって在宅での終末期ケア・看取りが推し進められていることもあり、厚生労働省のアンケートによると国民の約63%が自宅で最期を迎えたいと希望しています。
しかし、2015年の調査では自宅で最期を迎えた方が約13%、 病院で最期を迎えた方が約75%となっています。
本人が在宅で最期を迎えることを希望されていても家族が看取りに耐えられず救急車を呼んでしまったり、在宅での生活を続けた結果、孤独死に至るケースもあります。
介護施設に入居された方も 病院で最期を迎えるのであれば、住み慣れた介護施設で最期を迎えたいという方も多くいます。
病院で最期を迎えるということは医療的なことは整っていますが「自然な形で最期を迎える」というのには程遠いと感じる方が多いようです。
介護施設での看取りの流れ5段階
続いて看取りの流れについて説明していきます。
看取りには
- 入所期・適応期
- 安定期
- 不安定期・低迷期
- 終末期
- 看取り後
の5段階に別れています。
順番に見ていきましょう。
①入所期・適応期
利用者様が施設に入所され環境に慣れていただく段階です。
入所に対しての要望を取り入れながら終末期の対応についても確認していきます。
②安定期
施設の生活に慣れた頃に、意識の変化や終末期の希望・要望に変更がないかを確認をする段階です。
終末期でも自分らしい生活を送れるよう準備を行っていきます。
③不安定期・低迷期
食事量・体重の低下からの衰弱が始まり進行していく段階です。
ご利用者様とご家族に現在の状況を説明し、施設で対応可能な医療の提供について説明をし、計画・対策を立てていきます。
④看取り期
ゆっくりと死に向かう段階です。
ご利用者様・ご家族へは施設で対応できることについて説明します。
また看取り介護同意書・計画書の同意を取り、亡くなった際の準備を行っていきます。
また、この時期に会いたい人がいる場合は機会を設けるなど、ご利用者様の希望をなるべく叶えてあげられるよう配慮します。
最期の時が近くなった時には、ご家族が立ち会うことができるよう手配をします。
⑤看取り後
ご利用者様の看取り後、担当した職員は一礼をし居室より退室をします。
利用者様とご家族との最期のお別れの時間を取りましょう。
介護職の看取り介護での役割
看取り介護とは基本的には日常の介護の延長にありますが、ご利用者様の状態や家族の希望によって若干変化することがあります。
対応力を身につけておくためには、基本となる看取りの内容を把握しておくことが重要です。
介護職が看取り介護で行う役割としては大きく
- 利用者様への身体的ケア
- 利用者様への精神的ケア
- ご家族へのサポート
の3つに分けられます。
具体的にどのようなことをするのか、順番に見ていきましょう。
利用者への身体的ケア
身体的ケアの内容としては、以下の通りです。
排泄ケア
尿量や排便状況などは利用者様の体の状態を表すサインとなります。
丁寧に行い、しっかりと観察しましょう。
食事(栄養・水分補給)
最期の時を迎えるに当たって食事量や水分量は徐々に下がっていきます。
利用者様の状態に合わせた介助をしましょう。
口腔ケア
食事を食べる量が少なくなると口腔内が乾き、雑菌が繁殖しやすくなります。
他の利用者様以上にこまめな口腔ケアが必要です。
入浴(清拭)
利用者様の状態が安定している時は入浴を、状態がよくない時は清拭を行い体の清潔を保ちましょう。
体位変換(褥瘡のケア・予防)
栄養状態が良くない方は褥瘡ができやすい状態です。
こまめな体位変換、褥瘡に対する注意が必要です。
利用者様への精神的ケア
精神的ケアの内容としては、以下の通りです。
コミュニケーション、スキンシップ
終末期であっても意思疎通は可能です。
利用者様から声を発することがなくても、こちらの声は届いているかもしれません。
利用者様に対してまめに声を掛ける、手を握るなどして、安心して過ごせるよう配慮しましょう。
安心して過ごせる環境、人権プライバシーの尊重
本人の好きな音楽を流す、会いたい人に会う、部屋の清潔を保つなど、希望する最後を迎えられるよう本人の気持ちに沿った精神的ケアを行っていきましょう。
ご家族のサポート
看取り期に入ると当然ご家族の気持ちは不安定になってくるため、精神的なサポートも必要となります。
よって細かな連絡や相談・説明が大切です。
適切な連絡や相談を行っているでご家族の満足度が大きく変わってきます。
ご家族のご希望や意向を汲み取り、亡くなった後の気持ちの整理などを含めたサポートを行うことも重要です。
常に側にいることができないご家族の気持ちに沿った支援を行っていきましょう。
介護職の看取り介護には不安がつきもの
看取り介護は人の死に向き合うもの、そのため不安はつきものです。
普通に生活している中で人の死に立ち会う機会はそう多くはありません。動揺するのは自然なことです。
看取り介護に対して不安を感じるから「自分が向いていない」というのではなく、「大切な場面をケアさせていただいている」と思うようにすると心が楽になります。
とはいえ精神論だけで不安を拭えるものではありません。
看取り介護を行う上で不安を和らげることができるポイントを2つ紹介します。
看取り介護の流れを熟知する
看取り介護は
「利用者さんがもうすぐ亡くなってしまう」
という不安の他に
「具体的にどのような介護をすればいいかわからない」
という不安もあると思います。
看取り介護は医師の診断をきっかけとして、利用者さん本人・家族を主体に見直されたケアプランに沿った介護をすることとなります。
看取り介護を行う上ではそのケアプランを確認し、具体的なポイントを抑えておくことが重要です。
また看取り介護を実施している施設の殆どは、看取り介護の研修が行われています。
その際には積極的に質問し、少しでも不安を解消しておきましょう。
また、亡くなられた後はエンゼルケアとして遺体に触れることも多くあります。
事前に先輩職員や看護師さんなどに話を聞き、心の準備をしておきましょう 。
看護師や上司に相談できる協力体制を作る
いくら準備をしていても予測外のことが起きれば誰もが慌ててしまいます。
よって、看取り介護を行う際は夜間でも看護職や上司に相談できる協力体制を作っていくことが重要です。
- 呼吸状態が悪くなったらどうするのか。
- 血圧が下がったらどうするのか。
など、わからないことについては医療スタッフに確認をとるようにしましょう。
「何かあれば相談できる」
という安心感があることで、その他の業務にも落ち着いて取り組むことができます。
最期を目の当たりにするのは辛くて当然
いくら仕事とはいえ死を間近にした利用者さんと接して何も感じない方は殆どいません。
利用者さんの最期を目の当たりにするのは誰もが辛いものです。
また、その辛い感情は介護職の方が利用者さんにしっかりと向き合ってきた証拠でもあります。
辛い気持ちや寂しい気持ちを感じながらも利用者さんにできるだけ安楽な最期を迎えられるよう、精一杯のお手伝いをしていきましょう。
死を受け入れる心の準備をする
施設の利用者さんに限らず、人は命がある限り必ずしが訪れます。
普段元気な利用者さんと接していると忘れてしまいますが、目の前の利用者さんが近い将来に看取り介護に移行する可能性も少なくありません。
看取り介護を実施している施設に勤めてる以上、普段から「最終的には利用者さんを看取る」ということを理解していくことで、心の準備が形成されていきます。
また看取ることを理解することで、元気な利用者さんと過ごせる時間が有限であることに気付くことができます。
普段何気なく介護にあたる時間が尊い時間に思えて、より良いケアを提供しようという気持ちにもなるでしょう。
無理せず自分の気持ちを吐き出す
利用者さんを看取った後は精神的な負担を強く感じるでしょう。
辛い気持ちは抱え込まず、他の介護職員に話をしたり、適切なメンタルケアなどを受け気持ちを切り替えることが重要です。
無理をせずにしっかりと自分の気持ちを吐き出し、その経験を生かし未来の良いケアへと繋げていきましょう。
ケアきょうのYouTubeチャンネルでも介護職の看取りについて紹介しています。興味のある方はぜひ見てください。
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まとめ
看取り介護とは「人の死に向き合う」ため、誰もが不安を持つかもしれません。
しかし現在、介護職に対して求められていることであり、とてもやりがいのある有意義な支援です。
とはいえ利用者さんにより良い最後を迎えてもらうためには、適切な知識・技術・心構えが必要です。
この記事を読むことで読者の皆さんのより良い看取り介護につながれば幸いです。
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