これって労働基準法違反?!人には聞けない職場のルールの違法度を徹底判定!
介護業界において「人手不足」は常にある悩みです。職員を募集しても、応募がなかったり、応募が来てもなかなか優秀な人材に巡り会えなかったり…。このような状況になる要因として、介護の世界は
- 賃金が安い
- 仕事がきつい
- 人が続かない
といったネガティブなイメージが強くついてしまっている、ということがあると思います。では実際に介護現場はそんなにブラックな職場なのでしょうか?介護現場の労働環境における様々な疑問について考えていきます。
1. 介護職員の長時間労働、激務労働は避けられない話題
1.1. 7割以上が16時間以上の夜勤
人手不足の煽りをまともに受けるのは、実際に現場で働いている介護職員になります。ある調査によると、介護施設の7割が、16時間以上勤務する2交代制の夜勤シフトを取り入れていることが分かったそうです。
日本医療労働組合連合会(日本医労連)調査
本来、職員の負担を考えれば、例えば早出・日勤・夜勤のような3交代制シフトが望ましいとされていますが、それを実行しようとすれば人手が必要となります。人手が必要ということは、当然人件費もそれだけ必要となってくるわけです。募集をしても職員が集まらないこともあるでしょうが、経営状態によっては人件削減のために敢えて人員を増やさない事業所もあるでしょう。
また、2交代制を取っている施設の平均夜勤回数を調べると、月4.5回以上という人が43%に上ったそうです。 4年前の調査では29.8%だったということですので、介護職員の労働環境が段々と過酷になっていきていることが分かります。実際、月8回夜勤に入るのが当たり前というところもあります。夜勤にそれだけ入ると、日勤での出勤が少なくなるため、利用者の状況把握もしにくくなり、不安を抱えたまま夜勤に入ることも多いそうです。
また、夜勤が多くなると体調面でも管理がしにくくなります。特に中高年の職員は、体内時計が正常に保てなくなり、睡眠障害や、酷いときには自律神経失調症などになることもあるそうです。
1.2. ワンオペ介護、ワンオペ夜勤介護
全利用者を一人で介護しないといけないというのは、身体的な疲れも当然ありますが、精神的にもかなりの負担となります。ただ実際にワンオペから二人夜勤にシフトを変えるとなると、これまた職員の数と人件費が必要となりますので、ワンオペを改善して欲しい希望はあるけれど、半ば諦めて仕事をこなしている職員も多いようです。
1.3. サービス残業の横行
このよう夜勤者の負担が増えると、見るに見かねた日勤者が残ってお手伝いをして帰ったり、朝シフトより早めに出勤して、モーニングケアを手伝ったり、といったような「サービス残業」の原因にもなります。このような長時間勤務が必要な場合、1ヶ月や1年を区切りとして平均週40時間とする「変形労働時間制」を利用している介護事業所がよく見られます。
1分で登録OK
ケアきょう求人・転職の無料相談2. 施設の独自ルールって法律違反?様々な疑問にお答えします
2.1. 夜勤にまつわる疑問
夜勤で睡眠や休憩が取れないのは法律違反?
まず16時間の夜勤をするとして、その間に睡眠時間を設けないのは違法ではないのか?ということですが、はっきりとした「睡眠時間」は法律的には「必要無い」そうです。 では「休憩」に関してですが、労働基準法で以下のように決められています。
-労働基準法第34条 第1項-
使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
使用者は、労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には60分以上の休憩時間を労働者に与えなければなりません。
つまり、16時間勤務の場合、60分以上の休憩時間を設けないと法律違反ということになるそうです。逆に言えば、1時間休憩時間を設けていれば、問題無いと言うこと。ただし休憩を1時間取りなさいと言われても、1人夜勤の場合だと、ゆっくり休める状況に無いことも多々あると思います。ナースコールで呼び出されたり、トイレ介助があったり、1時間ゆっくりと休憩なんか出来たものでは無い、というのが正直なところ。休憩に関しては、以下のような法律もあるそうです。
-労働基準法第34条 第3項-
使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
夜勤中の休憩1時間を自由に利用することはほぼ不可能だと思います。ですので、厳密に言うと夜勤中の1時間の休憩時間は法律で言うところの「休憩時間」には当たらず、つまりは「法律違反」である、と言うことも出来るのかもしれません。 ただ残念ながら実際の夜勤現場では「それが当たり前だと思ってと半ばあきらめている」という場合がほとんどだと思います。
夜勤を宿直扱いにするのは法律違反?
定義 | 深夜割増手当の支払い義務 | |
---|---|---|
夜勤 | 法定時間内の勤務。 原則1日8時間、1週間40時間の中で、夜間に勤務する |
あり |
宿直 | 法定時間外の勤務。 原則1日8時間、1週間40時間以外に、業務を行う |
なし |
そもそも宿直と夜勤は似て非なるものです。「夜勤」はあくまで「法定時間内の勤務」となります。原則1日8時間、1週間40時間の中で、夜間に勤務する仕事になります。夜間の勤務になるので、当然深夜割増手当を支払う必要があります。「宿直」は「法定時間外の勤務」となります。原則1日8時間、1週間40時間以外に、業務を行うことができます。深夜割増手当を支払う必要もありません。
ただし、「宿直」を行うには、所轄の労働基準監督署長の許可が必要になります。宿直の許可を得るには、以下の5つの条件が必要です。
- 常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務であること。
- 通常の労働の継続でないこと。
- 相当の睡眠設備が設置されていること。
- 宿直手当が支払われていること。
- 宿直が1週間に1回以内であること。
通常の夜勤業務は、「ほとんど労働をする必要のない勤務」などではとてもあり得ませんよね。つまりは「通常の労働の継続」と見なされますので、宿直として扱うのには無理があり、違法であると言えます。当たり前ですが、夜勤業務をさせる際には、きちんと深夜割増手当を払って、「法定時間内の勤務」として扱われなければなりませんよね。よって、夜勤を宿直扱いにするのは「法律違反」となります。
1ヶ月の夜勤の回数は法律で決まってないの?
週40時間内の労働時間内であれば、夜勤の回数に決まりはありません。 なかには夜勤専門のスタッフなんかもいたりしますしね。ただ、無理なシフトはあまり身体には良くないですので、出来れば夜勤はほどほど(月5回程度まで)がいいですよね。
2.2. シフトや労働時間にまつわる疑問
欠勤すると罰金がとられるのは法律違反?
「遅刻を3回すると1日分減給」とか「遅刻したら半日分減給」など、遅刻・欠勤などへの様々なペナルティーが設定してある事業所があるそうです。「ノーワーク・ノーペイの原則」というものがあります。 「働いた分のお給料はもらえて、働かなかった分はもらえませんよ」というごもっともな原則です。つまり、半日遅刻して、半日分減給されたり、1日欠勤して1日分減給されたりすることは、当然合法となります。これは当たり前ですよね。
問題はそれ以上にペナルティーが科される場合。例えば1時間の遅刻なのに半日分の減給となったとします。この場合、実際に働いていない時間の給料よりも多い減給となるわけです。こういった場合は、あらかじめ就業規則による定めが必要となります。 遅刻は確かに良いことではないですが、かといってその日の上司の気分でいつもより多めに減給されたらたまりませんよね。また、その減給額にも上限が設定されており、
- 1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えないこと。
- 総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えないこと
と定められています。例として、1日8,000円の賃金の人が遅刻した場合、罰金額は4,000円以下であること、1ヶ月30万円の賃金の人であれば、月の総額の罰金額が3万円以下であること、ということになりますね。以上の範囲内での罰金額が、就業規則にきちんと定めてあれば、その罰金は合法と見なされます。
残業を隠すような行為って法律違反?
残業を隠す=残業代が支払われない、というのは当然法律違反になります。
- 「残業代」=1日8時間・週40時間を超えた労働
- 「深夜労働」=22時〜翌朝5時までの労働
- 「法定休日出勤」=週1日の法定休日の労働
上記の労働をした場合には、1時間当たりの賃金(基礎時給)に「割増賃金」がプラスされて支払われなければなれません。
- 時間外労働=1.25倍
- 法廷休日労働=1.35倍
- 深夜労働=1.25倍
- 時間外労働+深夜労働=1.5倍
- 休日労働+深夜労働=1.6倍
残業、深夜労働、休日出勤をしたにも関わらず、それに見合った手当が支払われない場合、労働基準法違反となります。
残業代、深夜手当、休日手当に関する違反
- 残業代、深夜手当、休日手当が支払われない(第37条)
残業、深夜労働、休日出勤の事実があれば、適正な金額の手当が支払わなければならず、支払われなければ違法となり、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の罰則の対象になります。
ただ現実の介護現場では、仕事が忙しかったり、人手が足りなかったりで、残業をせざるを得なくなったものの、「どうせ残業手当は出ないから」と労働者側があきらめて泣き寝入りをしてしまい、その結果賃金も支払われないというケースが多くあるようです。いわゆる「サービス残業」です。労働者側が勇気もって声を挙げることによって状況が改善されケースもあるようですので、働く側も残業業務に関する知識をしっかりと持っておくことが必要と言えるでしょう。
ワンオペ介護って違法?
介護現場でまだまだ常態化している一人夜勤(ワンオペ介護)。結構な数の利用者を1人でケアしている施設もあるようですが、果たしてこれは違法となるのでしょうか?実際のところ、利用者の数に対するハッキリとした夜勤人員配置基準が設定されているのは、「介護老人福祉施設(特養)」と「短期入所生活介護(ショートステイ)」だけです。
例えば「特定施設(介護付き有料老人ホーム)」においては、「1人でも要介護者である利用者がいる場合は常に介護職員が1人以上確保されていることが必要である。」とされています。逆に言えば、最低1人の夜勤職員が居れば違法ではない、ということになります。確かに違法ではないワンオペ夜勤ですが、職員の負担や利用者さんの安全面を考えると、ワンオペ介護はあまり望ましいとは言えないでしょう。実際1人だと途中休憩もまともに取れないですしね。
もし家族を施設に預ける側になったとして、大人数を1人夜勤で回している施設を見ると、やはり不安を感じますよね。運営する側からすれば、少しでも人件費を削減したいのでしょうが、何か事故があってからでは遅いですからね。
業務時間外の連絡って対応しなきゃいけないの?
現代は一人一台携帯電話を持つ時代。その分気軽に連絡が取り合えるようになり、休日や勤務時間外に会社からの連絡があることも少なくないのでは?でも実はそれって労働基準法で禁止されています。もし、就業時間以外の業務連絡に対応した場合、残業手当や深夜手当、休日手当などの割増賃金を支払わなければ違法となるのです。 確かに時間外の業務連絡って意外とストレスを感じますからね。連絡する側も、果たして今すぐにしなければいけない連絡なのか?よく考えてから連絡するようにしましょう。
3. 自分の施設が労働基準法違反だったら…とるべき対処一覧
もしも、自分の働く施設で「これって労働基準法違反ではないか?」と思う出来事があれば、どう対処すれば良いでしょうか?
3.1. 職場の管理職に相談する
何はともあれ、最も身近な上司である職場の「管理職」に相談してみましょう。ただ、ある程度大きな会社になると、その管理職も所詮同じ雇われの身といった場合もあると思います。そうなると相談をしてもあまり意味が無い場合もあるかもですね。
3.2. 労働基準監督署に相談・申告する。
管理職に相談しても駄目だった場合、いよいよ労働基準監督署に相談、申告しないといけない場合もあるかと思います。相談の方法は
- メールでの相談
- 電話での相談
- 直接訪問しての相談
などがあります。
※なお、「申告」とは、「相談」よりもさらに具体的な違法行為の事実を伝えて、何らかの対処を要求することをいいます。
3.3. 転職する
それでも駄目な時は、思い切って転職するのも一つの方法です。
4. 転職するならこんな施設にしよう!ホワイト施設の見極め方
せっかく転職してもまた同じような環境の職場は意味がありません。ホワイト施設を見極める方法はあるのでしょうか?
4.1. 介護職員の年齢分布が均一
色々な世代の職員が協力しあっている施設と言えるのかもしれません。若手は年配の職員を煙たがったり、年配の職員が若手をいじめたりといった問題が少ない場合が多いです。
4.2. 介護職員処遇改善加算をつけている
「介護職員処遇改善加算」は、「キャリアアップの仕組みを取り入れた事業所や職場環境の改善に取り組んだ事業所に対して、介護職員の賃金を上げるための給付を行う」という制度です。要するに、この「介護職員処遇改善加算」を算定している事業所は、介護職員の処遇面の改善に様々取り組もうとしている事業所であると考えられるのです。 平成29年の厚生労働省の調査によれば、処遇改善加算を算定している事業所は64.9%にとどまっているそうです。全体の3分の2程ですね。
厚生労働省・平成29年調査
介護職員の処遇については今までも色々と取り沙汰されており、離職率の高さや人手不足などと直接関係してくる問題です。国としても、今後より多くの事業所が処遇改善加算を算定できるよう促していくものと思われます。
4.3. 介護職員の言葉遣いが丁寧
介護職員の「接遇・マナー」がきちんと行き届いている施設は良い施設と言えるでしょう。広い意味で言えば、介護職もサービス業の一つだと言えます。利用者様に対する言葉遣いはもちろん、電話や来客者への対応にも、自然とその施設の雰囲気が現れてくるものです。
4.4. 利用者の服装が整っている
利用者さんの服が汚れたままになっていたり、日中も寝間着のままでウロウロしていたり、下着がズボンから出たままになっていたり、異臭がしたり……。利用者様の服装の状態を見れば、その施設の介護の状態が一目瞭然。
4.5. 職員間、職員と利用者間のコミュニケーションが活発
職員同士が和やかな中にもしっかりとしたコミュニケーションや情報共有ができている施設、職員と利用者とのコミュニケーションが活発に行われている施設は、自然といい雰囲気が出来上がりますよね。介護職はあくまで人と人との仕事、「黙々と作業をこなす」状態にはならないようにしたいですね。
5. まとめ
介護職とはあくまで人が人と関わる仕事ですので、想定もしていないような様々な状況に出くわすこともたくさんあると思います。そんな仕事だからこそ、自分が働いている職場環境について、しっかりとした知識を持っておくということは、自分を守ることにもなり、さらには職場そのものを守ることにもつながっていきます。
なにか疑問に思うことがあれば、自分一人で抱え込まずに、職場の上司や仲間に相談していくことが大切です。介護職はとても尊い仕事です、長く続けていけるためにも、より良い職場環境で働きたいものですよね。
1分で登録OK
ケアきょう求人・転職の無料相談