生活介護とは?障害者福祉施設で働きたい人向けに仕事内容をわかりやすく解説

介護職仕事紹介
2024/10/11

生活介護を提供する障害者施設について、以下のような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。

そもそも生活介護とは?
障害者福祉施設で働く生活支援員の仕事内容は?
生活支援員として働くにはどうすればいい?

本記事では、生活介護の対象者や就労支援B型との違い生活支援員の仕事内容などを解説します。

生活介護を提供する障害者福祉施設を取り巻く、さまざまな職種についても触れています。

生活介護について簡単に理解したい方や、生活支援員として障害者福祉施設で働きたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

生活介護とは?

生活介護とはかんたんにいうと障害者福祉サービスのひとつで、障害のある方に対して身体介護や生活援助などを行い、自立支援をサポートすることです。

さらに生活介護のより具体的な内容について、以下3つの項目別に解説します。

  • 対象者
  • 就労支援との違い
  • デイサービスとの違い

よく比較される「就労支援」や「デイサービス」との違いについても触れているので、ぜひ参考にしてください。

それぞれ具体的な内容を見ていきましょう。

対象者

厚生労働省の公式サイトによると、生活介護の対象者は以下のように明記されています。

地域や入所施設において、安定した生活を営むため、常時介護等の支援が必要な者として次に掲げる者

引用:障害福祉サービスについて|厚生労働省

具体的には、次のような方が該当します。

  • 障害支援区分が区分3(障害者支援施設等に入所する場合は区分4)以上である
  • 年齢が50歳以上の場合は、障害支援区分が区分2(障害者支援施設等に入所する場合は区分3)以上である
  • 生活介護と施設入所支援との利用の組合わせを希望する者であって、障害支援区分が区分4(50歳以上の者は区分3)より低い者で、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画案を作成する手続を経た上で、市町村により利用の組合わせの必要性が認められている

障害支援区分についてより詳しく知りたい方は、厚生労働省の資料を参考にしてください。

参考資料:厚生労働省「障害支援区分に係る研修資料」

就労支援との違い

同じ障害者総合支援法のサービスに分類される「生活介護」と「就労支援」の違いを見ていきましょう。

生活介護 就労支援
目的 ・日常生活の自立 ・就労の継続
対象者 ・日常生活で支援が必要な障害者 ・就労を目指す上で支援が必要な障害者
提供内容 ・日常生活上の支援
・心のケアや健康面のサポート
・職業的なスキルの習得支援
・心のケアや健康面のサポート
提供場所 ・障害者支援施設 ・場所に関する特定の規定なし
提供時間 ・日中がメイン ・時間に関する特定の規定なし
賃金 ・賃金に関する下限額や報告義務の規定なし
・就労支援よりも低いケースが多い
・B型は賃金の報告義務があり月3,000円未満は不可
・A型は給与として支払われ最低賃金が適用

上記のように、日常生活の支援であるか就労のための支援であるかという点が、生活介護と就労支援の大きな違いです。

デイサービスとの違い

続いて、生活介護デイサービスとの違いを紹介します。

生活介護 デイサービス(通所介護)
関連法 ・障害者総合支援法 ・介護保険法
対象者 ・日常生活に支援が必要な障害者 ・介護が必要な高齢者
提供内容 ・日常生活上の支援
・社会参加を促すサービス
・高齢者の身体機能の維持を目的とした支援
・食事や入浴などの支援
提供方法 ・対象者が施設に通う ・対象者が施設に通う
費用負担 ・一部自己負担金あり
・そのほかの費用は国や自治体で負担
・一部自己負担金あり
・そのほかの費用は介護保険で負担

生活介護とデイサービスは、対象者が障害者と高齢者である点が大きく異なります。

生活介護とデイサービスの併用については、基本的に介護保険が優先されるため、併用はできません

生活介護を提供する生活支援員の仕事内容とは?

生活介護を提供する生活支援員の仕事内容は、主に以下の5つに分けられます。

  • 身体介護
  • 生活援助
  • 相談援助
  • 活動機会の提供
  • ご利用者の経過観察や記録業務

それぞれの具体的な仕事内容を紹介します。

参考資料:生活介護|WAM NET

身体介護

身体介護は、主に以下のような仕事内容です。

仕事の種類 内容
食事介助 自力摂取が難しい方へのサポート
排泄介助 トイレ誘導やオムツ交換、排便コントロールなど
入浴介助 入浴準備や入浴時の見守り、洗身洗髪のサポートなど
移乗介助 ベッドや車椅子、トイレに行く際の移乗に関するサポート
更衣介助 起床時や就寝時などに衣類を着替える際の手伝い

身体介護はご利用者の身体に直接触れるサービスがメインで、体力の必要な仕事です。

また、ただサポートするだけではなく、ご利用者の残存能力を活かした支援が求められます。

生活援助

生活援助は、以下のような仕事内容になっています。

仕事の種類 内容
調理 献立の提案や調理、配膳や下膳、洗い物など
洗濯 洗濯や洗濯物を干す作業、取り入れや収納など
掃除 居室内の掃除やゴミ出し、後片付けなど
ベッドメイキング シーツ交換や布団の入れ替えなど
衣類の整理 季節に応じた衣類の出し入れ、ボタンの取り付けなど
買い物 生活に必要なものの買い物代行

上記の内容を見ると、家事代行サービスのように感じますが、生活援助はあくまでご利用者の自立した生活のための支援を目的としています。

相談援助

ご利用者の生活に関わる相談やアドバイスを行い、メンタル面でのサポートをすることも生活支援員の大切な仕事です。

またご利用者だけでなく、ご家族からの相談にも柔軟に対応する必要があります。

相談内容によっては問題解決が難しい場合もありますが、話を聞くだけでご利用者の気持ちが軽くなる効果も期待できるため、ただ話を聞くことも生活支援員の重要な役割と言えるでしょう。

活動機会の提供

ご利用者が生産活動や創作活動などで、活動する機会を持てるよう支援することも生活支援の重要な仕事です。

たとえば、地域のボランティアの協力を得て、ご利用者にものづくりの機会を提供したり、一人ひとりが趣味を楽しめるようサポートしたりします。

またご利用者がお菓子や雑貨などを製造し、地域のお店で販売するまでの過程をサポートすることもあるでしょう。

活動機会の提供は、社会から孤立しないための支援でもあり、生活支援員にとって重要な仕事のひとつです。

ご利用者の経過観察や記録業務

日常生活上の支援をする中で、ご利用者の状態変化や体調管理などの経過観察と記録に残すことも、生活支援員の大切な仕事です。

経過観察の内容を記録に残すことで、ご利用者の小さな変化に気づきやすくなります。
また、生活支援員だけでなくその他の職種の方々にも情報共有するために、記録は重要な役割を果たすでしょう。

たとえば、経過観察とともに身体機能の低下が見られる際は、記録に残しておくことで、徐々に必要なサポートが増えることが予想しやすくなります。

生活支援員はただ日常生活の支援をするだけでなく、ご利用者の様子を記録に残し分析することで、一人ひとりにあった必要な支援を明確にできるでしょう。

生活介護を提供する生活支援員として働くには?

生活介護を提供する生活支援員として働くには、どのようなキャリアを進めばいいのでしょうか。

  • 無資格未経験からでも可能
  • 資格取得によりさらなるキャリアアップ
  • 生活支援員に求められるスキル

上記3つのテーマから、生活支援員として働くために必要なことを紹介します。

無資格未経験からでも可能

生活介護を提供する生活支援員は、無資格未経験からでも働くことが可能です。

誰でも始めやすいというメリットがある反面、仕事に就いてもすぐに辞めてしまう方がいるのが実情です。

生活介護の対象者は、自分の気持ちをうまく伝えられない場合もあるため、一定のコミュニケーション能力は求められます。

生活支援員は、障害のある方の気持ちが完全にわからなくても、自分から寄り添い相手を理解しようとする姿勢が重要になってくるでしょう。

資格取得によりさらなるキャリアアップ

生活支援員は無資格未経験でも働けますが、以下の資格を取得することでスキルやキャリアの向上につながります。

  • 介護職員初任者研修
  • 実務者研修
  • 介護福祉士
  • 社会福祉士
  • 精神保健福祉士

資格取得は知識やスキルの向上だけでなく、給与アップにもつながり、仕事のモチベーションが上がる効果も期待できます。

介護職員初任者研修実務者研修介護福祉士などの資格は、高齢者介護でも活かせるため、障害者支援以外の領域に転職する際にも役立つでしょう。

生活支援員に求められるスキル

無資格未経験ではじめられる生活支援員ですが、以下のようなコミュニケーションスキルは必要です。

  • 他職員と助け合う協調性
  • ご利用者の話を聞く傾聴力
  • 考えを言葉にする言語化能力

また以下の表に、生活支援員に向いている人と向いていない人の特徴をまとめたので参考にしてください。

生活支援員に向いている人の特徴 生活支援員に向いていない人の特徴
・相手の立場になって物事を考えられる
・体力や忍耐力に自信がある
・感情のコントロールがうまい
・明るくて前向き
・人の役に立つのが好き
・自分勝手で相手に合わせられない
・体力や忍耐力に自信がない
・オンとオフの切り替えがうまくない
・チームで仕事をするのが苦手
・生真面目すぎる

生活支援員として働きながら障害について自ら学び、知識やスキルを高めていく向上心も必要になってくるでしょう。

生活介護を提供する障害者福祉施設で働く職種

生活介護を提供する障害者福祉施設で働く方の中には、生活支援員以外に以下の職種があります。

  • 看護師
  • 理学療法士
  • 作業療法士

それぞれの仕事内容や役割を見ていきましょう。

看護師

障害者支援施設では、医療面でのサポートが必要なご利用者もいるため、看護師の配置が必要です。
看護師の仕事内容は、主に以下のとおりです。

  • バイタルチェック
  • 食事や排泄などの健康観察
  • 内服薬の管理
  • 感染予防対策
  • そのほか医療的ケア

上記のような仕事を、生活支援員をはじめとした他の職種と協力して、ご利用者の健康面でのサポートをするのが看護師の主な役割です。

施設によっては、生活支援員とともにご利用者の身体介護や生活援助を行う場合もあり、臨機応変な対応が求められるでしょう。

参考:生活介護に係る報酬・基準について|厚生労働省

理学療法士

障害者支援施設では、ご利用者の身体機能の維持を目的としたリハビリ活動を提供することがあります。
その際に活躍する職種が理学療法士です。

具体的には、リハビリ体操の指導やマッサージ、運動療法や物理療法による痛みや麻痺の緩和、関節可動域の維持拡大などの個別ケアを行います。

また、集団リハビリテーションのプログラムを考え、生活支援員とともにご利用者の身体機能を維持することも役割のひとつです。

理学療法士は体の動きに関する専門家のため、ご利用者の食事や移動など体の使い方という観点で改善点を共有してくれます。

参考:理学療法士とは|公益社団法人日本理学療法士協会

作業療法士

作業療法士とは、ご利用者が食事や排泄などの日常生活上の動作や、余暇活動、社会活動など、さまざまな作業を行うための訓練機会を提供する仕事です。

作業療法の以下のような方を対象としており、個別支援がメインです。

  • 知的障害の方
  • 脳血管障害の方
  • 脳性麻痺の方
  • 麻痺や拘縮の方
  • 精神疾患の方

作業療法士は、ご利用者の身体的ケアだけでなく、メンタル面での改善も目的とした支援を行います。

たとえば、食事や着替えなど日常生活上の動作訓練だけでなく、絵画や音楽、演劇などの芸術活動を通じて、心の健康を促進する役割も担っています。

参考:作業療法士ってどんな仕事?|一般社団法人日本作業療法士協会

まとめ

生活介護とは、障害者福祉サービスのひとつで、障害のある方に対して障害者支援施設のような場所で日常生活上の支援をすることです。

生活介護は、食事や排泄、入浴介助などの身体介護と、掃除や洗濯などの生活援助の2種類に分けられます。

生活介護は主に生活支援員が行い、仕事内容は介護職と似ていますが、対象が高齢者ではなく障害のある方がメインです。

生活支援員の働く職場によっては、就労支援を行い、障害のある方が就労機会を持てるようサポートしたり、就労に関する相談やアドバイスを行うこともあります。

以上のことを踏まえると、生活介護は障害者福祉を支えるための土台となるサービスと言えるでしょう。

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