ヘルパーができないことを一覧で紹介!依頼された際の断り方についても解説

介護職あるある
2024/10/10

訪問介護でヘルパーとして働いている方で、以下のような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。

  • ヘルパーができないことは何?(してはいけない業務)
  • ヘルパーができることは何?(やるべき業務)
  • できないことを頼まれた際はどうやって断ればいい?

ヘルパーご利用者の日常生活を支援する仕事ですが、正直どこまで支援していいのか明確な基準を把握していない方もいるでしょう。

本記事では、ヘルパーができないこととできることを一覧で紹介します。

また、ご利用者やご家族からできないことを依頼された際の断り方についても解説します。

訪問介護のヘルパーとして働く上で役立つ内容になっているので、ぜひ参考にしてください。

ホームヘルパーとは?

ホームヘルパーとは、介護が必要な高齢者(要介護者)の自宅に行き、日常生活における必要な支援を行う職種のことです。

ホームヘルパーは訪問介護事業所に在籍する形で、事業所と契約をした方の自宅に訪問します。

具体的には、要介護者であるご利用者が、可能な限り自宅で自立した生活が送れるよう、以下の介護サービスを提供します。

サービスの種類 内容
身体介護 食事や入浴、排泄などのサポート
生活援助 調理や洗濯、掃除など身の回りの手伝い

参考:訪問介護(ホームヘルプ)|厚生労働省

自宅で生活する方が対象のため、基本的にはホームヘルパーひとりで行うサービスです。

無資格で仕事はできないため、介護職員初任者研修や実務者研修などの介護系資格が必要です。

【業務内容別】ヘルパーができないこと一覧

ヘルパーができないことを、以下3つの業務内容別に紹介します。

  • 身体介護編
  • 生活援助編
  • 医療行為編

法律的に禁止されている行為もあるため、事前に確認し介護現場で誤って行わないようにしましょう。

それぞれの詳しい内容を見ていきます。

できないことの後に「ヘルパーができること」も一覧で紹介しているので、あわせてご覧ください。

身体介護編

ホームヘルパーが提供するサービスの中で、身体介護に関する以下のような行為は行ってはいけません

  • 散髪行為(ケアプランで指示がある場合は可能)
  • 病院受診時の待ち時間での付き添い
  • 事業所の所有者以外での送迎行為

身体介護に関してはできないことは多くありませんが、上記のことを行うことでトラブルに発展する恐れもあります。

たとえば、自宅から近い病院だから大丈夫だと過信し、ご利用者や自分の車で送迎し事故のあった場合、保険の適用や責任の所在などが曖昧になるかもしれません。

身体介護に関しては、できないことは少ないため、禁止行為は事前に把握しておきましょう。

生活援助編

生活援助に関しては、以下のサービスはヘルパーはできません

サービスの種類 ヘルパーができない生活援助の内容
掃除 ・ご利用者が使用していない部屋の掃除
・草むしりや花の水やりなど庭の手入れ
・窓や換気扇、ベランダなどの清掃
洗濯 ・ご利用者以外の洗濯
・ご利用者以外の収納やアイロン
調理 ・ご利用者以外のための調理
・イベント時の特別な調理
買い物 ・遠方のスーパーやデパートでの買い物
・タバコやお酒など嗜好品の購入
・お歳暮や来客用などの買い物
衣類の整理やリネン交換 ・ご利用者以外の布団干し
・ご利用者以外のシーツ交換

生活援助に関しては、ご利用者の日常生活に必要なことは何かを見極めれば、できないことが見えてきます。

上記の例でいえば、ご利用者以外の部屋の掃除やご利用者以外のための調理などが挙げられます。

あくまで介護サービスの対象者は、ご利用者本人のみであることを忘れないようにしましょう。

医療行為編

ヘルパーが行える医療行為もありますが、以下の行為は禁止されています

サービスの種類 ヘルパーができない医療行為の内容
爪のお手入れ ・皮膚に化膿や炎症など異常があ爪切り
・糖尿病により専門的な管理が必要な方の爪切り
耳掃除 ・耳垢で耳が塞がれている状態の耳掃除
口腔ケア ・重度の歯周病がある方の口腔ケア
服薬介助 ・PTPシートからの薬の取り出し
・専門的な配慮が必要な方の服薬介助
・医療職の継続的な経過観察が必要な方への服薬介助
処置 ・褥瘡をはじ専門的な判断が必要な処置
・地肌に接着したパウチの交換
・血糖値測定やインスリン注射
・自己導尿や摘便など
バイタル測定 ・水銀系の血圧計を使ったバイタル測定

医師法にも「医師でなければ、医業をなしてはならない」と明記されており、許可されていない医療行為を行うと法律違反に該当します。

ここで紹介している「ヘルパーができないこと」は、「してはいけないこと」なので、確実に覚えておきましょう。

参考:医師法第17条|e-GOV法令検索

【業務内容別】ヘルパーができること一覧

一方、ヘルパーができることについても、以下3つの業務内容別に紹介します。

  • 身体介護編
  • 生活援助編
  • 医療行為編

何ができて何ができないかを比較しながら、ヘルパーに求められる役割を明確にしてください。

ぞれぞれの具体的な内容を確認しましょう。

身体介護編

ホームヘルパーができる身体介護を、サービスの種類ごとにまとめたのでご覧ください。

サービスの種類 ヘルパーができる身体介護の内容
食事 ・食事の介助や見守り
・配膳や後片付け
・専門的配慮が必要な調理
(刻みやミキサー、流動食など)
排泄 ・トイレへの誘導やトイレ時の見守り
・ベッド上でのオムツ交換
・失禁の世話や採尿器による介助など
入浴 ・浴室の準備
・着替えの準備
・全身清拭やシャワー浴など
整容 ・洗身や洗髪
・歯磨きや爪切りなどのサポート
・着替えの介助
通院 ・乗車や降車のための移乗介助
・通院時の付き添い
・車椅子による移動介助

ほかにも、処方された薬の服薬介助や飲み忘れ確認体位交換やトイレや車椅子への移乗介助なども、ホームヘルパーができる仕事です。

生活援助編

生活援助に関しては、以下のようなサービスであればヘルパーができます

サービスの種類 ヘルパーができる生活援助の内容
掃除 ・ご利用者が使用するエリアの掃除
・ゴミ出し
洗濯 ・ご利用者が使用する衣類の洗濯や収納
・ご利用者が使用する衣類のアイロンがけ
調理 ・ご利用者が食べるための一般的な調理
・食事の配膳や後片付け
買い物 ・近隣スーパーでの買い物
・生活必需品の購入代行
・生活家電の購入代行
・薬局での薬の受け取り
衣類の整理やリネン交換 ・衣類のボタン付けや補修
・衣類の整理
・布団干しやシーツ交換

生活援助は、基本的にご利用者の生活に関わることであれば、ヘルパーが問題なく行えます。

ご利用者以外の家族や友人に関わるような行為は、原則ヘルパーができないことに該当するため把握しておきましょう。

医療行為編

ヘルパーは基本的に医療行為はできませんが、以下の医療的ケアは認められています

サービスの種類 ヘルパーができる医療行為の内容
爪のお手入れ ・爪切り
・爪やすり
耳掃除 ・一般的な耳垢の除去
口腔ケア ・歯ブラシを使った口腔ケア
・スポンジや口腔内ティッシュを使った口腔ケア
服薬介助 ・一包化された薬の服薬介助
・点眼薬や点鼻薬の使用
・湿布の貼り付け
・肛門へ座薬の挿入
処置 ・軽微な傷による汚れたガーゼの交換
・パウチに溜まった排泄物の処理
・インスリン注射の際の声掛けや見守りなど
バイタル測定 ・体温計を使用した体温測定
・自動血圧測定器による血圧測定
・パルスオキシメーターの装着

上記のように専門的な判断を必要としない医療的ケアであれば、ヘルパーでも行えます。

ただ現場で判断に迷った場合は、事業所の責任者に連絡し、ヘルパーができる医療行為かわかった上で行いましょう。

ヘルパーができないことを依頼された際の断り方【身体介護編】

万が一ご利用者に「ヘルパーができないこと」を依頼された際は、どうすればいいのでしょうか。

今回は、以下3つのヘルパーができない身体介護を依頼された際の断り方を紹介します。

  • リハビリ
  • マッサージ
  • 市販薬の服薬介助

それぞれ具体的な断り方を見ていきましょう。

リハビリ

リハビリに関しては、ヘルパーは専門外の領域で適切な評価ができないという理由で、行ってはいけない支援となります。

ご利用者やご家族からリハビリを依頼された際は、以下のような形で断りましょう。


申し訳ありませんが、リハビリは私の専門外となるため行えません。専門的なリハビリを受けるためには、医師の判断が必要だからです。リハビリを希望される場合は、一度ケアマネジャーに相談してはいかがでしょうか

ただ断るのではなく、なぜ行えないのかを説明した上で、どのようにすればサービスを受けられるようになるのかを提示しましょう。

マッサージ

マッサージもリハビリ同様、専門的な判断が必要となるため、ヘルパーはできません。

医療目的のマッサージであれば、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に触れる恐れもあります。

マッサージを依頼された際は、以下のように断りましょう。


申し訳ありませんが、専門的な知識が必要になるようなマッサージは行えません。ただ、腕や足を優しくさするようなスキンシップ程度であれば行えます。マッサージを希望される場合は、担当のケアマネジャーに相談し、専門スタッフに頼みましょう

基本的にはリハビリのときと同様に、専門外であることを説明した上で、ケアマネジャーへの相談を提案しましょう。

市販薬の服薬介助

基本的に、ヘルパーができる服薬介助は、以下の条件を満たしている方の場合のみです。

  • 状態が安定している
  • 経過観察を必要としない
  • 使用に専門的な配慮を必要としない

参考:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)|厚生労働省

市販薬については、ご利用者本人やご家族が対応するか、医療職に支援してもらうかのいずれかで服薬可能とされています。

そのため、市販薬の服薬介助を依頼された場合は、以下の断り方がおすすめです。


私たちヘルパーは、医師の判断のもとで処方された薬を、医師からの指示で服薬介助させてもらっています。そのため、市販薬に関してはご本人がよくても服薬のサポートをすることはできません。市販薬の使用を希望する場合は、まず担当のケアマネジャーや主治医に確認してから支援を依頼しましょう

薬は命にかかわる大切なことなので、ヘルパーの判断だけで服薬介助は行えません。

法律に関してまで説明する必要はありませんが、なぜ市販薬の介助は難しいのかを丁寧に伝えることが大切です。

ヘルパーができないことを依頼された際の断り方【生活援助編】

続いて、以下3つのヘルパーができない生活援助を依頼された際の断り方も見ていきましょう。

  • 必要以上の清掃
  • 対象者以外の居室の清掃
  • 日用品以外の買い物

ホームヘルパーとして働こうと考えている方は、実際にできないことを依頼される可能性があります。

それぞれ具体的な方法を参考に、ご利用者を傷付けない断り方を実践しましょう。

必要以上の清掃

ヘルパーが行うべき清掃業務は、ご利用者が日常生活を送る上で必要な部分の清掃のみです。
そのため、庭やベランダなどの清掃は対象外となります。

必要以上の清掃を依頼された際は、以下のように断りましょう。


私たちヘルパーが行える清掃は、基本的にご利用者が日常生活を送る自宅の中が対象です。庭やベランダなどの清掃は、対象外となるのでご理解いただければと思います。また窓拭きやワックスがけなど、必要以上の清掃に関してもお断りさせてもらっています

上記のお断りを入れた上で、どうしても清掃してほしいという場合は、専門の清掃サービスを提案してみるのもいいでしょう。

過去の厚生労働省が出した生活援助の対象範囲に関する通知書でも、過度な清掃業務は生活援助に含まれないと明示されています。

参考:訪問介護サービスの生活援助の取扱いについて|厚生労働省

対象者以外の居室の清掃

介護サービスの対象であるご利用者以外の居室清掃は、原則ヘルパーはできません。

なぜなら、介護保険はご利用者本人との契約で成り立つサービスで、本人以外の利益につながることは不適切とされているからです。

ご利用者以外の居室清掃を楽しまれた場合は、以下のように断りましょう。


申し訳ありませんが、契約上、ご利用者様以外の方の居室清掃はサービスの対象外となります。そのため、ご利用者が使用するエリア以外の場所においては、同居するご家族に行っていただきます。サービスの提供時間も決められているため、必要以上のサービスを行えないこともご理解いただければと思います

ご利用者と家族が共同で使用するトイレや浴室、玄関などの清掃については、ご家族が特段の事情で清掃できない場合で、かつご利用者の自立支援につながるのであれば、対応できる可能性があります。

ただし、ヘルパーの判断で行うのではなく、サービス担当者会議を開き、ケアマネジャーを中心に必要性を検討することが必要です。

日用品以外の買い物

タバコやお酒など、日用品以外の嗜好品の購入については、ヘルパーが行うことは不適切とされています。

嗜好品がご利用者の健康を害する可能性を考慮し、介護保険の目的に沿わない観点からも、必要以上のものを購入するサポートはお断りをしているのが現状です。

日用品以外の必要以上の買い物を依頼された際は、以下のように断りましょう。


私たちヘルパーが行う買い物支援は、基本的にご利用者の方が自立した生活を送るために必要なものの購入のみです。そのため、それ以外の買い物については介護サービスの対象外とさせていただきます。嗜好品の購入については、ご家族に協力を依頼してはいかがでしょうか

日常生活に必要なもの以外の買い物でも、ご利用者本人のQOL向上につながり、医師や関係機関との情報共有で必要と判断されれば、購入可能な場合もあります。

必要な買い物についてはケアプランを確認し、適切な範囲内での買い物に留めておきましょう

まとめ

今回はヘルパーができること、できないことをサービスの種類別に一覧にして紹介しました。

ヘルパーのできる業務は、医療法やトラブル防止などの関係もあり、できない業務と明確に分けられています。

ただし、ご利用者はヘルパーができることとできないことを把握していない場合があり、悪気なくできないことを依頼してくるかもしれません。

その際はご利用者の気持ちを理解した上で、相手に納得していただけるよう丁寧な説明をして断ることが大切です。

ヘルパーとして働く方は、自分ができるサービスとできないサービスを把握し、ご利用者にとって必要な支援を適切に提供していきましょう。

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