台風が介護職に与える影響とは?施設の災害対応に関するアンケート結果を公開
今回ケアきょうでは、「台風が与える介護職への影響」と「台風による施設の災害対応への不満」についてアンケートを実施しました。
本コラムでは、アンケート結果を通じて、介護施設の災害対応の現状に触れていきます。
また、台風の際に介護職が出勤するべきか、施設として働く職員にどのような対応をするべきかといったことについても、現役介護職の視点を含めながら解説します。
今回行ったアンケートの概要は以下のとおりです。
- 調査期間:2024年8月29日~9月11日
- 調査方法:Instagramストーリー、X、YouTubeコミュニティ
- 対象者:介護職42名
さっそくアンケート結果を見ながら、台風の影響や、施設の災害対応の現状について見ていきましょう。
質問①台風の影響はありましたか?
8月末に発生した日本列島全体に影響を与えた台風について、介護の仕事をする上で何か影響があったかという問いに対して、以下のような回答が得られました。
回答結果 | 割合 |
---|---|
施設が休業するなどで自宅待機している | 5.4% |
勤務の短縮など一部変更があった | 17.9% |
いつもと変わりない | 76.8% |
やはり多くの介護職が、いつも変わらない状態で仕事をしていたのが実情です。
特養や有料老人ホームのような生活型の介護施設では、24時間365日介護サービスを提供しなければいけないため、台風でも可能な限り職員が出勤することが求められます。
一方、デイサービスのような施設であれば、台風を理由に休業するという選択も可能でしょう。
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ケアきょう求人・転職の無料相談質問②勤務先の施設の災害対応(台風や大雨など)に不満があれば教えてください
上記の質問に対して、以下3つの項目に分けて、施設の災害対応に対する不満の声を紹介します。
- 施設の防災環境が整っていない
- 台風でも変わらず出勤を要請される
- 上司の判断が適切ではない
不満の声からわかることは、多くの介護職が災害時の安全が守られていないことです。
実際にケアきょうのXでも「施設の災害対応や職員の待遇に満足はいっていますか?」という質問に対して、以下のような解答結果が得られました。
災害対応に不満がある | 80.6% |
---|---|
特に不満はない | 17.9% |
いつもと変わりない | 19.4% |
およそ8割の方が施設の災害対応に不満を持っており、以下のようなコメントが印象的でした。
職員が出勤不可能の場合は施設長や事務長、若しくは施設を運営する法人の人達が代わりに施設へ行き、利用者の皆さんの世話をするべきでしょう。
そのほかにも多くの不満の声が挙がっているため、それぞれの不満の声を見ながら、介護施設における職員への災害対応について考えてみましょう。
施設の防災環境が整っていない
施設の防災環境が整ってないことに関して、以下のような不満の声が聞かれました。
避難訓練はしているものの、ただやっているだけになっている施設もあります。
万が一職員やご利用者が施設に取り残された場合の非常食の有無や、緊急事態の際のご利用者の避難経路などが共有されていないという不満の声も目立ちました。
台風でも変わらず出勤を要請される
台風でも変わらず出勤を要請されることに対して、以下のような不満の声が挙がりました。
入所型の施設の場合は休業するわけにもいかず、多くの介護施設で台風の場合でも通常通り出勤しているという声が多くありました。
中には、公共交通機関が運休でも出勤しなければいけないという声も挙がっており、不十分な介護職の安全確保が露呈された形になりました。
ただ、切れ目のない介護サービスが必要な介護施設においては台風と言えど、職員の欠勤は大きな痛手です。
職員の安全を守りながらも、切れ目のない介護サービスを提供できる災害対応が求められるでしょう。
上司の判断が適切ではない
上司の判断に対する不満の声は、以下のようなものです。
台風をはじめとした災害時の対応方法を、管理職すらも把握していないケースがあります。
介護施設に必要なのは、職員とご利用者の安全確保を最優先にした、災害時の対応マニュアルが必要になってくるでしょう。
介護職は台風でも絶対に出勤するべき?
介護職は台風でも出勤するべきでしょうか?
以下のようなサービスを受ける側(ご利用者や家族)の気持ちを考えると、職員が出勤してくれたほうがいいでしょう。
- 災害時でも普段と同じ介護サービスを受けたい
- 人員不足によってサービスの質を下げてほしくない
- 自宅にいても不安なので施設で過ごしてほしい
一方で、以下のような介護職側の気持ちを優先する場合、必ずしも出勤することが正しいとは限りません。
- 公共交通機関が運休で出勤する手段がないため休ませてほしい
- 最低限の人員で営業し時短や休業などの判断をしてほしい
- 自宅から近い職員や通勤手段がある職員と替わってほしい
ただ職員がまったくいない状態では、介護サービスの提供は不可能です。
だからといって、休業をしてサービスをストップさせてしまえば、ご利用者の生活に影響が生じます。
そのため、台風時の出勤体制においては、少しでも風が弱い時間に出勤したり、少ない人員で最低限のサービスを提供したりするなど、臨機応変に対応できる仕組みが重要です。
介護施設に求められる適切な災害対応とは?
介護施設は常時介護サービスを提供しているため、台風が来ているからといって、介護サービスの提供をしないといった対応ができません。
そのため、介護施設においては、日頃から以下のような対策をして災害に備える必要があります。
- 職員の連絡体制の整備
- 災害時の備蓄品の確保
- 職員が待機できる環境整備
- 災害時出勤した場合の特別手当の導入
- 災害時のマニュアルを作成と定期的な研修の実施
それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。
職員の連絡体制の整備
職員の連絡体制を整えておくことで、災害時にも情報共有がスムーズに行えます。
たとえば、連絡網を作成し、誰が誰に連絡をするのかを事前に決めておいたり、災害時用のグループチャットを準備して、災害時の連絡を効率的に行えるようにしたりしておくのがいいでしょう。
災害時でも職員間の連絡がスムーズに行えれば、臨機応変な出勤にも対応しやすくなりますし、管理職の負担軽減にもつながります。
災害時の備蓄品の確保
保存食や飲料水といった災害時の備蓄品を確保することは、職員だけでなくご利用者を守るためにも大切です。
台風で停電になり家電製品が使えなくなったり、地震や土砂災害で介護施設が孤立状態になったりする恐れがあります。
備蓄品を確保している場合は定期的に備蓄品のチェックを行い、使用期限の切れている場合は新しいものに交換し、災害に備えましょう。
職員が待機できる環境整備
災害時は出勤できないことだけでなく、職員が施設から自宅に帰れなくなる場合も想定しておきましょう。
また最悪の場合、出勤できる職員が少ないと、今いる職員に施設で待機してもらい、ご利用者の生活を支援するケースもあるかもしれません。
そのため、災害時に職員が数名待機できる環境を、施設内に整備しておくことが大切です。
スペースに余裕がない場合は、普段応接室として使っている場所を、災害時は待機室として活用できるように準備するといった方法で、災害対策をするのもいいでしょう。
災害時出勤した場合の特別手当の導入
台風時は公共交通機関がストップすることがあるため、どうしても車通勤の方や職場の近くに住んでいる方などが出勤するケースが多くなります。
車通勤だから、職場の近くに住んでいるからといって、安全に出勤できるわけではありません。
職員の中には、上司や同僚の依頼を断りにくく、仕方なく出勤要請に応じている方もいるでしょう。
災害時の出勤は、普段の出勤よりも事故や怪我のリスクが高まります。
そのため、災害時に出勤してくれた職員には、1回の出勤ごとに特別手当を支給するのが効果的です。
特別手当が支給されれば、「なんで私ばっかり出勤するの?」「出勤しても何のメリットもない」といった、災害時の出勤者が抱く心理的負担の軽減につながる可能性もあります。
災害時のマニュアルを作成と定期的な研修会の実施
介護職の出勤体制はもちろん、ご利用者に提供する介護サービスの流れについても、災害時の対応マニュアルを作成しておくことが大切です。
たとえば、気象庁が発表する「警戒レベル」に応じて、出勤可能かどうか判断する仕組みにしたり、災害時は必要最低限の人員で対応できる業務スケジュールを作成したりするといいでしょう。
ご利用者への対応についても、災害時は排泄や食事など生きる上で必要な支援だけを行い、少ない人員でもご利用者の生活を支えられる環境を整えておくことが重要です。
またマニュアルを作成するだけでなく、災害時の出勤やご利用者対応などについて、定期的に研修会を行い、災害時でも混乱しないよう職員全体に周知しておきましょう。
まとめ
今回ケアきょうが独自行った「台風時における介護施設の災害対応」の結果から、多くの介護職が、台風でも関係なく出勤を要請されている現状がわかりました。
「介護職は台風でも休めない」のではなく、職員の安全を優先しながら、ご利用者に必要なサービスを提供するために適切な災害対応は何かを考えることが大切です。
逆に台風だから出勤しないと決めず、その日の状況を見ながら職員間で連絡を取り合い、臨機応変に対応できる、介護職のための災害対応が求められるでしょう。
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