【決定版】車椅子への移乗介助 片麻痺・円背・拘縮・全介助・スライドボード

介助術・介助方法
2024/03/19

車椅子への移乗介助に関して、以下のような悩みを持っている方は多いのではないでしょうか。

介護度が重く移乗介助が難しい
体重の重い方の移乗介助がうまくできない
片麻痺や拘縮がある場合の適切な移乗介助がわからない

適切な移乗介助は利用者さんだけでなく、介護職の負担も軽減するメリットがあります。
なぜ負担が少ないのかという根拠を理解し実践すれば、適切な移乗介助は誰でも可能です。

本記事では、さまざまな状態の利用者さんを想定した車椅子への移乗介助を紹介しています。
車椅子への移乗介助で悩んでいる方にとって役立つ内容になっているので、ぜひ参考にしてください。

移乗介助とは?介護職が知っておきたい車椅子への移乗を助ける介助

移乗介助とは、車椅子やベッド、椅子やトイレなどに移り替わっていただく際に必要な身体介助のひとつです。
身体介助の中でも介護職と利用者さんの距離がもっとも近く、体を密着させて行うため、介護職と利用者さん双方にとって負担の大きい介助と言えます。

移乗介助は転倒や転落、打撲など怪我のリスクがあるため、安全に配慮しながら行うことが求められます。
また、利用者さんの状態に合わせた介助が必要になるため、一人ひとりに合った介助方法を身につけることが大切です。

同じ「車椅子への介助」介助の仕方で介護職と利用者さんの負担は変わる

本記事でのメインテーマである「車椅子への移乗介助」は、介助の仕方によって介護職と利用者さんの負担は変わってきます。
負担の少ない移乗介助は何かを理解することは、介護職と利用者さん双方にとってメリットになります。

利用者さんの身体状態によって必要な介助は異なるため、利用者さん一人ひとりの状態を理解することが大切です。
また、ボディメカニクスの理解と実践福祉用具などの活用なども求められるでしょう。

車椅子への移乗介助をする上で知っておきたいことについて、さらに詳しく解説するので理解を深めておきましょう。

利用者さんの身体状態によって必要な方法は異なる

車椅子への移乗介助は、以下のような利用者さんの身体状態によって異なります。

  • 体重が重い場合
  • 自力で立てない場合
  • 片麻痺がある場合
  • 円背になっている場合
  • 四肢拘縮している場合
  • スライディングボーが必要な場合

介護現場にはさまざまな身体状態の利用者さんがいて、一人ひとりに適した介助方法は異なるため、利用者さんがどういう状態であるかを理解することが大切です。

自力で立てないから福祉用具を活用している、四肢拘縮があり皮膚が弱いから2人で介助しているなど、根拠を理解した上で適切な移乗介助を行いましょう。

ボディメカニクスを駆使することや、福祉用具を利用することも大切

車椅子への移乗介助は、ボディメカニクスを駆使するといった介護職が意識できることから改善することが大切です。
その上で福祉用具を活用し、より安全に移乗介助を行えるよう工夫することが理想的と言えます。

ボディメカニクスの理解や福祉用具の利用なしで、介護職だけの力ですべての移乗介助を行うのは危険です。
なぜなら、さまざまな身体状態の利用者さんを自らの力だけで行うのは、介護職自身の身体に大きな負担だからです。

移乗介助は介護職生命を脅かす「腰痛」の原因になりやすい動作のひとつです。
正しい移乗介助を理解した上で、ボディメカニクスや福祉用具の活用などの負担軽減対策を取り入れていきましょう。

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基本的な車椅子への移乗方法とは?移乗の仕方を確認

利用者さんの状態に合わせた移乗介助をするためには、基本的な移乗介助を理解し実践できなければいけません。

とくに車椅子への移乗介助は、肘掛けやフットレストなどに利用者さんの身体がぶつかり、怪我をしないよう注意が必要です。
安定した姿勢で座っていただくために、利用者さんの能力を最大限活かし車椅子に移っていただく工夫も大切です。

基本的な車椅子への移乗方法は何かについて、テキストと動画でわかりやすく解説します。
普段自分がやっている移乗介助と比べながら参考にしてください。

基本的な介助方法 よく同僚介護職がやっている?

基本的なベッドから車椅子への移乗介助は、以下の手順で行います。

  1. 車椅子のブレーキーがかかっているかを確認
  2. フットレストを邪魔にならないよう開放する(可能な場合)
  3. 利用者さん側のアームレストを上げる
  4. 利用者さんが車椅子の座面と平行になるよう斜めに座ってもらう
  5. ベッドを車椅子の座面より少し高くする
  6. 利用者さんに介護職の肩に手を回してもらいおじぎの姿勢をとってもらう
  7. 介護職は腰を落とし横にスライドさせるよう利用者さんを車椅子へ移乗する
  8. アームレストとフットレストを元に戻しおしりの位置を確認する
  9. 姿勢が安定しているようであれば移乗介助完了

施設によって介助ルールは異なるかもしれませんが、基本的な移乗介助はこの手順で行えば問題ありません。

動画で負担の少ない介護を確認

ベッドから移乗介助には、以下のような点に注意しましょう。

  • 車椅子をベッドにしっかりと近づける
  • 車椅子のブレーキが止まっているか確認する
  • ベッドの高さを車椅子の座面より高くする
  • 可能であればアームレスストやフットレストは開放する
  • 利用者さんにこまめに声かけしながら行う

ケアきょうYouTubeでは、ベッドから移乗介助の方法をシンプルに動画で解説しているのでぜひ参考にしてください。

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立てない人の車椅子への移乗介助方法 移乗の仕方を確認

立てない人の車椅子への移乗介助は、ボディメカニクスの実践利用者さんの状態把握など介護職の技術や知識が必要です。
とくに小柄な介護職が大柄な利用者さんを介助する場合は、体重差があるため力だけで介助するのは困難です。

立てない人の移乗介助をマスターすることで、さまざまな状態の利用者さんに対しても応用できるスキルが身につきます。

ボディメカニクスを活かした力だけに頼らない介助や、体重差がある利用者さんの介助の留意点などについて、動画とあわせて紹介しているのでぜひ参考にしてください。

ボディメカニクスを駆使した介助技術

ボディメカニクスとは、以下8つの原則をもとにしており、利用者さんと介護職の負担を軽減しながらの移乗介助に活かせる考え方です。

  1. 支持基底面を広くする
  2. 重心を低くする
  3. 利用者様にできるだけ近づく
  4. てこの原理を活用する
  5. 足腰などの大きな筋肉を使う
  6. 身体を捻らない
  7. 水平に移動する
  8. 利用者様の身体をコンパクトにする

参考:厚生労働省「介護キャリアアップ応援プログラム」

ボディメカニクスとあわせて移乗介助に応用できる知識として、キネステティクスという考え方があります。
キネステティクスは、介護職と利用者さん双方の動きに同調を生むことを目指しています。

キネステティクスの概念や具体的実践方法などは、以下の記事で解説しているのでぜひご覧ください。

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ボディメカニクスは古いのか?介護職を守り利用者様を活かす新たなケアを紹介

動画で体重差がある介護を確認しよう

介護職よりも体重が重く立てない人への介助では、以下の手順で行う「膝ロック」が有効です。

  1. 利用者さんの前で立つ
  2. 利用者さんの足(車椅子側とは逆の足)に介護職の足を当てる
  3. 脇下から腕を通し肩甲骨を支える
  4. 少し持ち上げて足を軸に回る

ただし体重差が大きすぎる場合や、実際に介助してみて難しいと感じた場合は、迷わずヘルプを呼び臨機応変に対応しましょう。

膝ロックを含めた詳しい介助方法は、以下のケアきょうYouTubeを参考にしてください。

▼関連動画

重さが消える不思議な介助!全介助の方の移乗介助とは

自分の身体の使い方や利用者さんの身体の構造などを理解することで、重さの感覚を最小限に抑えて移乗介助することが可能です。

体重が重い利用者さんは、介護職2人で対応するほうがいいかもしれません。
しかし、施設によっては人手不足で2人で対応するのが難しい場合もあるでしょう。
色々な介助方法を知ることで、さまざまな状態の利用者さんに活かせます。

全介助の方に活用できる移乗介助の方法について、以下の動画にまとめてあります。
ぜひ参考にしていただき、実際の移乗介助に活かしてください。

▼関連動画

また全介助の方の移乗介助について、詳しい方法やポイントをまとめた資料を作成しました。
以下のリンクから無料でダウンロードできるので、ぜひ今後の移乗介助にお役立てください。

全介助の方への移乗介助の方法をまとめた資料をダウンロードする

片麻痺の方の車椅子への移乗介助方法 移乗の仕方を確認

片麻痺の方をベッドから車椅子へ移乗介助する場合、まずは左右どちらの麻痺なのか把握することが大切です。
麻痺の状態によって、車椅子を置く場所やベッド柵の位置などが異なります。

片麻痺の方を移乗介助する正しい手順を知らないまま行うと、利用者さんを怪我させたり介護職自身の腰を痛める恐れがあります。

実際に片麻痺の方を移乗介助している解説動画とともに、片麻痺の方の移乗介助をする際に注意点したいポイントを紹介するので、ぜひ参考にしてください。

片麻痺の方の介助の際に注意したいポイント

片麻痺の方の移乗介助の際に注意したいポイントは、以下のとおりです。

  • 麻痺側の足の膝折れ
  • 麻痺側の方の脱臼
  • ベッドや車椅子からのずり落ち
  • ベッド柵やフットレストなどへの衝撃による皮膚剥離

アームレストやフットレストを開放し、ベッド柵を適切な位置へ配置することで、片麻痺の方の怪我のリスクを下げながら安全に移乗介助を行えます。

片麻痺があっても健側の能力を最大限活かせれば、介護職も利用者さんも負担の少ない介助が可能です。
基本的な移乗介助を理解した上で、片麻痺の方の移乗介助で注意したいポイントを押さえておきましょう。

実際の介助の様子を見てみよう

片麻痺の方をベッドから車椅子へ移乗介助する際の手順は、以下のとおりです(左片麻痺の場合)

  1. 車椅子を手の届く位置に置く
    (アームレストは上げてフットレストは外す)
  2. 横になっている利用者さんに右手で左手を支えてもらう
  3. 右膝を自力で立ててもらう
  4. 左膝は介護職が支えながら立たせる
  5. 右側に体位交換し身体を支えながらベッドに座ってもらう
    (自力で座位姿勢を保てないため介護職が支える)
  6. このとき車椅子は利用者さんの健側に置く
  7. 麻痺側の膝を介護職の膝で押さえながら膝折れを予防する
  8. 利用者さんの右手を介護職の肩に回してもらう
  9. 左手はブラブラしないよう利用者さんの内側に入れておく
  10. 介護職は支持基底面をしっかりとって移乗介助する

実際の介助の手順や注意点は、以下のケアきょうYouTubeの動画を参考にしてください。

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円背利用者さんの車椅子への移乗介助 移乗の仕方を確認

円背とは、胸椎が前に倒れることで背中が丸くなり、前傾姿勢になっている状態です。
円背になると、筋力低下やバランス能力の低下など、日常生活においてさまざまな支障が生じます。

円背になると、重心が前かがみになりやすく、車椅子からの転落やずり落ちなどのリスクが高まります。
そのため、移乗介助した後のポジショニングが重要です。
とくに身長が低く小柄な利用者さんが円背の場合は、正しい姿勢で車椅子に座るのも難しいでしょう。

介護施設でよく見かける円背や、円背の利用者さんの移乗介助方法などを紹介しているので、実際の移乗介助や車椅子でのポジショニングなどにお役立てください。

介護施設でよく見かける円背とは?

介護施設でよく見かける円背は「老人性円背」と言われ、以下のような特徴があります。

  • 脊椎が大きく変形し固まっている
  • 男性よりも女性のほうが発症率が高い
  • 普段の生活で痛みが生じることはあまりない
  • 脊椎に負担がかかる姿勢をすると痛みやすい
  • 症状が進行すると「仰向けになれない」「寝返りが難しい」などの支障が生じる

円背の方への介助やポジショニング方法などは、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

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円背の方のポジショニング方法 背中が曲がった方の介助術

円背のご利用者さんの移乗介助方法

円背の利用者さんへのベッドから移乗介助方法は、以下の手順で行います。

  1. 車椅子を事前にベッドに近づけておく
  2. ベッド端に座ってもらいベッド柵や手すりに掴まるよう声かけする
  3. 介護職は利用者さんの肩甲骨と腰に手を当てて支える
  4. ベッドからの転落に配慮した立ち位置を心がける
    (基本は利用者さんの前にいる)
  5. 利用者さん自身で行えることは積極的にやってもらう
  6. 円背で深く座れていない場合は後ろから身体を引いて姿勢を整える

円背の方は座位姿勢が不安定になりやすいため、必要であれば移乗介助後にクッションを使用し体勢を整えてください。

実際の移乗介助方法に関しては、以下のケアきょうYouTubeを参考に行ってみてください。

▼関連動画

つっぱりのある方(四肢拘縮)の車椅子への移乗介助 移乗の仕方を確認

拘縮とは、なんらかの原因によって関節が正常な範囲で動かなくなってしまった状態のことをいいます。
四肢拘縮は、両足両腕に拘縮があり、関節の動きが制限されている状態です。

拘縮の主な原因は、寝たきりによる関節を動かす機会の減少やパーキンソン病といった疾患などです。
人間の体は動かない期間が長く続くと関節が固まり動きが鈍くなります。

四肢拘縮があると体がつっぱってしまい、移乗介助がしにくくなります。
拘縮している関節に触れたり動かしたりしようとすると、痛みが生じる恐れがあるため、拘縮のある方への移乗介助は丁寧に行うことが大切です。

ここでは四肢拘縮の方への介護の注意点や、実際の介助方法を動画も紹介しながら解説します。

四肢拘縮している方の介護における注意点

四肢拘縮している方の介護における注意点は、以下のとおりです。

  • こまめに声かけをして利用者さんの反応を見る
  • 痛みを感じさせないようゆっくり丁寧に介助する
  • 拘縮のある部分を無理に動かそうとしない
  • 利用者さんがリラックスできる体勢を心がける
  • 同じ姿勢を長くさせない

拘縮を完全に改善することは難しいかもしれませんが、介護職の工夫次第で進行を遅らせて今の状態を維持することは可能です。

拘縮のある方を介助する場合は、注意点を理解した上で丁寧な介助を実践し、拘縮の進行を防ぎましょう。

四肢拘縮しているご利用者さんの移乗介助方法

四肢拘縮をしている利用者さんの移乗介助方法の手順は、以下のとおりです。

  1. ベッドの頭側をギャッジアップして上半身を起こしてもらう
  2. ベッドから足を少し出してもらい靴を履かせる
  3. 利用者さんの肩と膝下に手を回しお尻を起点にして起こす
  4. 起こした後は上半身をしっかり支える
  5. 利用者さんの足が前に出過ぎないよう介護職の足で支える
  6. 脇の下から介護職の手を入れて肩甲骨の部分を支える
  7. 利用者さんの体重を介護職に覆いかぶせるイメージで立ってもらう
  8. 利用者さんの身体を軽く回して車椅子に座ってもらう

実際に四肢拘縮のある方への移乗介助を行う動画を公開しているので、ぜひ以下のケアきょうYouTubeチャンネルを参考にしてください。

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スライディングボードを使った車椅子への移乗介助!移乗の仕方を確認

スライディングボードとは、木やプラスティックで作られた移乗用のボードで、ボード上に身体を滑らせることで座ったまま移乗ができるようになっています。
スライディングボードを適切に使用すれば、利用者さんは負担なく移乗ができますし、介護職の腰痛予防にもつながります

体重が重い方や自力で立てない方でも、スライディングボードがあれば負担なくスムーズに移乗可能です。
慣れるまでは使いにくいと感じるかもしれませんが、使いこなせれば非常に便利で移乗介助の負担を大きく軽減してくれます。

介護職と利用者さん双方のメリットを考えると、スライディングボードをはじめとした福祉用具は積極的に使っていくといいでしょう。

スライディングボードや福祉用具を使うことは良いこと

スライディングボードのほかにも、スライディングシートリフト式移乗介助機器など、さまざまな移乗介助用の福祉用具があります。
福祉用具は、適切な場面で適切な方法で利用すれば、体力的負担の軽減だけでなく介助の効率化による時間の削減にもつながります。

安心で安全な移乗介助は、利用者さんのQOL(生活の質)向上において非常に重要です。
スライディングボードをはじめとした、移乗介助に便利な福祉用具は積極的に導入し、利用者さんと介護職が快適に過ごせる環境を整えていきましょう

スライディングボードの使い方を確認しよう

スライディングボードの使い方について、ベッドから車椅子への移乗介助する際の方法を解説します。
手順は以下のとおりです。

  1. 車椅子をベッドに近くに置く
    (フットレストとアームレストは外しておく)
  2. ベッドを車椅子より高くする
  3. 利用者さんにベッド端に座ってもらう
  4. 利用者さんの身体を少し傾けスライディングボードをお尻の下に差し込む
  5. スライディングボードが車椅子側に傾いていることを確認する
  6. 利用者さんの身体を車椅子側に傾けてボードの上を滑らせる
  7. 移乗が終わったらスライディングボードを抜き取る

以下の【ケアきょう介助術】でスライディングボードの使い方を動画解説しているので、ぜひご覧ください。

▼関連動画

介護職が学びたい、車椅子への移乗介助の仕方

今回は介護職なら誰もが学びたい「車椅子への移乗介助の方法」について解説しました。
移乗介助は、利用者さんそれぞれの状態にあわせた介助方法が求められます。

本記事でも紹介したような「片麻痺の方」や「四肢拘縮の方」などへの移乗介助については、介助時の注意点や動画解説などを含めながら、それぞれ紹介させていただきました。

ぜひケアきょうYouTubeの介助動画を参考に、実際の介護現場での移乗介助に活かしてみてください。

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