「医療法人」と「社会福祉法人」の違いは?待遇面や働き方などそれぞれの特徴を解説
介護職で就職先を考える際に、以下のような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
本記事では、医療法人と社会福祉法人の違いや仕事内容、メリットや転職に向かない人の特徴などを紹介します。
医療法人と社会福祉法人どちらで働こうか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
医療法人と社会福祉法人の違いとは?
医療法人と社会福祉法人の違いについて、表にまとめました。
医療法人 | 社会福祉法人 | |
---|---|---|
事業の目的 | 病院や老健など医療的な施設の運営 | 社会福祉事業の運営 |
法人格 | 非営利法人 | 非営利法人 |
代表的な介護施設 | 介護老人保健施設 | 特別養護老人ホーム |
特徴 | 医療機関にに併設した介護施設が多い | 貸しビルや駐車場の運営など収益事業も行える |
どちらも利益を最大の目的としない非営利法人であり、地域の医療や福祉のニーズを満たすことが存在価値となっています。
事業の公益性や安定性・継続性などが重要で、クリアな経営戦略が求められています。
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ケアきょう求人・転職の無料相談医療法人とは?
医療法人について、以下3つの項目に分けて解説します。
- 医療法人の特徴
- 運営可能な施設
- 主な施設(老健)の仕事内容
医療法人についてはじめて聞く方にもわかりやすく解説するので、ぜひご覧ください。
医療法人の特徴
医療法人とは、医療法に基づき医療サービスを提供し、地域の医療ニーズを満たすことを事業の目的として設立された組織です。
医療法人の設立には、以下のような要件があります(一部を紹介)
- 理事長は医師または歯科医師のどちらか
- 設立当初は2ヶ月分の運転資金を用意することが必要
- 都道府県知事の認可を受けることが必要
また医療法人は、以下の2種類に分けられます。
- 社団医療法人:複数の役員や社員が集まることで設立される法人
- 財団医療法人:個人や法人によって無償で寄附された財産を活用して設立された法人
運営可能な施設
医療法人は、地域の医療ニーズを満たすための団体であり、以下のような施設を運営できます。
- 病院
- クリニック
- 介護老人保健施設
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 通所リハビリテーション
- 訪問看護
介護老人保健施設をはじめ、有料老人ホームや通所リハビリなど、高齢者を対象としたさまざまな介護施設を運営しています。
病院やクリニックなど医療機関に併設した介護施設も多く、医療体制の整った環境で質の高い介護サービスを提供できるのが魅力です。
主な施設(老健)の仕事内容
医療法人の代表的な介護施設である「介護老人保健施設」の1日のスケジュールを見ていきましょう。
時間 | 仕事内容 |
---|---|
8:30〜 | 出勤 |
9:00〜 | 入浴介助やシーツ交換など |
12:00〜 | 昼食の提供や食事介助 |
13:00〜 | 休憩 |
14:00〜 | レクリエーション |
15:00〜 | おやつや水分の提供 |
16:00〜 | 排泄介助 |
17:00〜 | 記録業務や申し送り |
17:30 | 退勤 |
介護老人福祉施設の仕事内容については、以下のケアきょうYouTubeでも紹介しているので、ぜひご覧ください。
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社会福祉法人とは?
社会福祉法人について、以下3つの項目に分けて解説します。
- 社会福祉法人の特徴
- 運営可能な施設
- 主な施設(特養)の仕事内容
それぞれの内容をわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。
社会福祉法人の特徴
社会福祉法人は、社会福祉法に基づき、地域での福祉に対するニーズを満たすことを目的として設立された組織です。
社会福祉事業は、以下2つの種類に分けられます。
第一種社会福祉事業 | 第二種社会福祉事業 |
---|---|
介護老人福祉施設や児童養護施設など | デイサービスや保育園など |
第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業の違いは、利用する方に与える影響の大きさです。
また社会福祉法人は、社会福祉事業以外にも公益事業や収益事業を行うことも可能です。
これらを踏まえた上で、社会福祉法人には以下のような設立要件があります(一部を紹介)
- 第一種社会福祉事業または第二種社会福祉事業を確実に行える
- 公益事業や収益事業の収益が社会福祉事業の収益を超えてはならない
- 都道府県知事または市長の認可を受けなければならない
- 役員等を定められた人数で配置しなければならない
運営可能な施設
社会福祉法人は、以下のような施設を運営できます。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 通所介護(デイサービス)
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 児童養護施設
- 保育園
医療法人と異なるのは、代表的な介護施設である特別養護老人ホームの運営が可能な点です。
また病院やクリニックなどは社会福祉法人は運営できません。
保育園や児童養護施設と併設した介護施設も多く、高齢者と子どもたちが交流するようなイベントが開催できるのが魅力です。
主な施設(特養)の仕事内容
社会福祉法人の代表的な介護施設である「特別養護老人ホーム」の1日のスケジュール(早番)を見ていきましょう。
時間 | 仕事内容 |
---|---|
7:00〜 | 出勤 |
7:30〜 | 整容や起床介助 |
8:00〜 | 朝食の提供や食事介助 |
9:00〜 | 口腔ケアや排泄介助 |
10:00〜 | レクリエーションや水分介助 |
11:00〜 | 休憩 |
12:00〜 | 昼食の提供や食事介助 |
13:00〜 | 口腔ケアや排泄介助 |
14:00〜 | 入浴介助 |
16:00 | 退勤 |
特別養護老人ホームの仕事内容については、ケアきょうYouTubeでも紹介しているのでご覧ください。
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医療法人で働くメリット
医療法人で働くメリットは、以下の3つです。
- 医療的ケアの知識やスキルが身につく
- 多職種連携を経験しチームケアを学びやすい
- 法人内に医療機関があり緊急対応がスムーズに進みやすい
それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。
医療的ケアの知識やスキルが身につく
医療法人は医療ニーズに対応する体制が整っているため、介護職でも医療的ケアに触れる機会が多くあります。
そのため、医療的ケアの知識やスキルが身につきやすいという点がメリットです。
病院やクリニックなどをメインで運営している場合が多く、医療に関する研修を法人内で受講できるのも魅力です。
医療にも詳しい介護職として成長しやすい環境のため、他の介護施設に転職した際でも重宝されることが期待できます。
多職種連携を経験しチームケアを学びやすい
医療法人は、介護職以外にも医師や看護師、理学療法士や言語聴覚士など、さまざまな専門職が在籍しています。
介護に特化しているわけではないため、多角的な視点で利用者様に対応することが大切です。
質の高い介護サービスを提供するためには、チームケアの向上が不可欠です。
医療法人でさまざまな専門職と関わることで、チームケアの重要性を肌で感じられます。
介護の専門職として、他のさまざまな専門職と意見交換をしながら利用者様を支える経験は、介護職として成長するための大きな原動力となるでしょう。
法人内に医療機関があり緊急対応がスムーズに進みやすい
医療法人が運営する介護施設では、病院やクリニックなどが併設している場合が多く、緊急時の対応がスムーズなのが大きな魅力です。
社会福祉法人の場合は法人内で運営している医療機関がないため、近くの医療機関に協力してもらう仕組みになっています。
協力してもらってはいるものの同じ法人ではないため、連絡体制がうまくいかなかったり、現場が求めている対応をしてもらえなかったりといったことがあります。
同じ法人内のほうが介護職と医療職の距離も近く、こまめな情報共有がしやすいのも魅力と言えるでしょう。
医療法人で働くのが向かない人
以下のような人は、医療法人で働くのは向いていない可能性があります。
- 特別養護老人ホームで働きたい人
- 福祉事業をメインで取り組みたい人
転職先を考える際の参考にしてみてください。
特別養護老人ホームで働きたい人
特別養護老人ホームを運営できるのは、社会福祉法人か地方公共団体のみです。
医療法人は特養を運営できないため、特養で働きたい人は社会福祉法人で働くことをおすすめします。
特養は介護施設の中でも平均給与が高いため、より高い給与を求めるために特養に転職したいという方もいるでしょう。
そういった方は、医療法人ではなく社会福祉法人への転職がおすすめです。
福祉事業をメインで取り組みたい人
医療法人のメイン事業は、病院やクリニックなどの医療機関です。
事業の目的も、地域の医療ニーズを満たすためと明文化されています。
そのため、福祉事業がメインの法人で働きたい場合は医療法人はおすすめしません。
医療法人でも介護老人保健施設や有料老人ホームなどの介護施設を運営していますが、福祉よりも医療職が強いのが実情です。
福祉に特化した法人で働きたい場合は、社会福祉法人がおすすめです。
社会福祉法人で働くメリット
社会福祉法人で働くメリットは、以下の3つが挙げられます。
- 遠方への転勤がほぼない
- 研修や待遇面が充実している
- 介護の専門スキルが身につきやすい
詳しい内容を解説するので、参考にしてください。
遠方への転勤がほぼない
社会福祉法人は地域に根ざした運営をしているため、他県の施設に移動するといった遠方への転勤がほぼありません。
そのため、転勤なしで長く働きたいという方には社会福祉法人がおすすめです。
近場への転勤にも抵抗がある場合は、入社時に転勤できない理由や同じ施設で長く働きたい理由などを伝えておきましょう。
ただ役職が伴う昇格をしたい方は、転勤を受け入れるとキャリアアップしやすいケースもあります。
研修や待遇面が充実している
社会福祉法人は、研修制度や福利厚生などの待遇面に力を入れている法人が多くあります。
未経験で入社後に資格を取得したい場合は、資格取得支援制度が充実した法人に入社することで、自己負担なく資格を取得できます。
各種団体からの研修募集も集まりやすく、外部研修へ積極的に参加できる環境も魅力的です。
現場業務だけでなく研修も通じて、スキルアップを目指したい方は社会福祉法人が向いているでしょう。
介護の専門スキルが身につきやすい
社会福祉法人が運営する代表的な介護施設の「特別養護老人ホーム」は、利用者様の入居条件が要介護3以上に設定されています。
そのため排泄や移乗介助など、基本的な身体介護を行う機会が多くあります。
介護の基本的なスキルを効率よく身につけたい場合は、社会福祉法人が運営する特養で働くのがおすすめです。
介護技術の土台が作れるため、他の介護施設に行っても通用するスキルが身につきます。
社会福祉法人で働くのが向かない人
社会福祉法人には、以下のような方の転職はおすすめしません。
- 医療的ケアを学びたい人
- 課長や部長などのマネジメント職を目指したい人
詳しく解説するので、転職先を選ぶ際にお役立てください。
医療的ケアを学びたい人
社会福祉法人は、福祉事業をメインとした法人で、運営する介護施設も医療より介護の色が強いのが特徴です。
社会福祉法人だから医療的ケアを学べないわけではありませんが、医療機関と距離感があり、医療法人よりも学びにくいのが実情です。
医療的ケアを積極的に学びたいという方は、社会福祉法人よりも医療法人で働くほうがいいでしょう。
医療機関が併設した介護施設であれば、より医療現場の雰囲気を感じやすく医療を学びやすい環境です。
課長や部長などのマネジメント職を目指したい人
社会福祉法人は地域に根ざした運営をしているため、施設の数があまり多くありません。
そのため、課長や部長などマネジメント職になれる人の数も少ないです。
現場の介護職からマネジメント職を目指したい方には、社会福祉法人はおすすめしません。
現場の介護職から管理職やエリアマネージャーなどを目指す気持ちが強い方であれば、社会福祉法人よりも、介護施設を全国展開している株式会社がおすすめです。
転勤はあるもののキャリアの選択肢が多いため、昇格しやすいメリットがあります。
医療法人と社会福祉法人の給与の違い
厚生労働省のデータによると、医療法人と社会福祉法人で働く介護職の平均給与は以下のとおりです。
運営主体 | 平均給与 |
---|---|
医療法人 | 319,040円 |
社会福祉法人 | 335,060円 |
営利法人(株式会社) | 298,340円 |
調査結果を見ると、給与を求める介護職は社会福祉法人への転職がおすすめです。
ただし、法人の経営状態によって平均給与は異なるため、あくまで参考程度にしておきましょう。
医療法人と社会福祉法人で働く介護職の感想
介護職として医療法人と社会福祉法人、それぞれの法人での働き方について、実際に働いた経験をもとに紹介するので、法人のリアルな特徴を知るきっかけにしてみてください。
医療法人での働き方
医療法人が運営するグループホームで働いていた頃に感じるメリットは、以下のとおりです。
- 隣に訪問看護があり緊急時すぐに連絡できた
- 法人が運営する病院の受診料が無料だった
- 法人が運営する薬局の薬代が無料だった
- 医療に関する研修が充実していた
- 地域に愛されている法人だった
法人が運営する病院やクリニックなどの医療費が、職員である介護職だけでなく扶養する家族も無料だったのは非常に魅力的。
待遇面に関しては、経営状態が安定していることもあり、社会福祉法人のときよりも高い給与をもらえるパターンもあるようです。
社会福祉法人での働き方
社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームで働いて感じるメリットは、以下のようなことがあります。
- 法人全体に介護の質を高めたいという雰囲気があった
- 保育園が隣接しており職員はお得に利用できた
- さまざまな外部研修に参加させてもらえた
- ボランティアを通じて地域の貢献できた
- 地域に根ざした法人で転勤がなかった
地域に求められる介護サービスを理念を掲げており、法人全体でよりよい介護をしようという意識が強かったです。
厚生労働省のデータでは、社会福祉法人の中でも特養は給与が高くなっていましたが、実際には平均よりは低く待遇面では魅力を感じないこともあるようです。
まとめ
医療法人と社会福祉法人は、事業の目的が異なります。
医療法人は地域の医療ニーズを満たすこと、社会福祉法人は地域の福祉ニーズを満たすことが、事業の目的であるとはっきり明文化されています。
それぞれメリットやデメリットなどの特徴はありますが、施設によって待遇面や雰囲気などが異なるのが実情です。
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