事業所のルールが「昔のまま」になりやすい理由
事業所のルールが昔のままになりやすい理由
ケアきょうのLINEご相談を受けていると、「なかなか事業所のルールが変わらない」「おかしいと思う点が多い」というお声をよくお聞きします。
そこで今回は、事業所のルールが昔のままになりやすい理由に関してまとめてみます。
ずっと古いままの事業所ルール
皆さんの施設では、事業所内の昔から変わらないルールはありませんか?
また、ルールとまではいかないものの、「介護のやり方自体がなんだか古い……」「機械などの導入は一切検討もしていない」ということはありませんか?
ケアきょうが相談で伺ったものとしては、例えばこのようなものがあります。
- 若い職員は、ベテラン介護士の分も身体介助を行わないといけないルールがある
- 施設に長く勤めていた人たちの権力が強く、若手に人権はない
- 介護マニュアルがあるが、15年以上前のものを改訂せずに使用しており、介護職への負荷が大きく、自立支援介護は意識されていない
- 設備も古く、すべて人力で介護を行っている
どうしてこうなってしまうのでしょうか?
もちろん、お金がないために「機材を導入できない」「研修に行かせることが出来ない」ということもあるかもしれません。
しかし、それ以外の理由もあるはずです。
1分で登録OK
ケアきょう求人・転職の無料相談何故このようになっているのか?
ではどうして、このようになっているのか、心理学的に見ていきましょう
キーワードはこちら。
- 一貫性欲求
- 現状維持バイアス
- 内集団びいき
- 集団規範
一貫性欲求
人はどんな人でも、一貫性を大切に生きています。
よく言われる例は、『スーパーで、試食担当の方に「おひとつ食べてみてください」声をかけられ、試食をしながら解説を聞いているうちに、「ぜひおひとつお買い求めください」と言われ、商品を一つ手に取ってしまった』というようなものです。
これは、相手が承諾しやすい小さな欲求から、徐々に要求を大きくして本来の要求を成功させることが出来る「フット・イン・ザ・ドア」とよばれる営業技術としても有名なものです。
人間の「一貫性欲求」という心理を利用したもので、自分の行動に一貫性を持ち行動していきたい、という心理です。
介護の方法を変えようという動きがあった時に、「この介護を続けていこう」という結果が出たとします。
そうすると、同じような議論があるときは、前回否定したのだから……と、考えてしまうのです。
現状維持バイアス
皆さんも、こんな経験があるのではないでしょうか?
テストで、分からないからと適当に埋めた回答を修正したくない……という経験。
恋人がいるときに、気に食わない部分があるが、別れを切り出しにくい……。
髪型を変化させたいが、結局いつもと変わらない髪型になる。
いかがでしょうか?
これは、現状維持バイアスが働いている具体例です。
現状維持バイアスとは、変化や知らないものを避けたいという心理のことです。
人は安定を求める思いが強く、よく分からないものに恐れ慄きます。
先ほど述べた、一貫性欲求も強く作用していることが分かるかと思います。
今までやってきた介護とは違う介護・ルールで行うということは、人間にとって恐怖そのものなのです。
ですから、どんな提案があっても「変えたくないな」という気持ちが働いてしまうのです。
内集団びいき
内集団びいき。これは、実は日本において、よく見ることかと思います。
具体例としてみては、京都人は京都に移り住んだ人に冷たい、という話や、同じ地域・学校出身の人には良い印象を受ける、ネット上で、自分と異なる主張を見るとイラっとする。
こういったことです。
もうすでに分かるかと思いますが、内集団びいきとは、自分の所属している内集団に対して、好意をもって評価し、自分たちの方が優れていると思い込むことです。
また厄介なのが、自分が損をしたとしても、この傾向は変わらないということも分かっています。
ですから、自分の所属する内集団が行っている介護に関しては肯定的に捉え、
逆に外の人たちが行う介護を見て、「普通じゃない」「そんなのおかしい」「現実的じゃない」などのケチをつけてしまうのです。
こうなると、実際に説得する側としては、大変な思いをすることになります。
集団規範
集団規範 とは、他の人の影響を受けて、集団規範が作られるというものです。
簡単に言うと、「他人と一緒にいると、段々と価値基準や行動判断の基準が同じになっていく」というものです。
心当たりのある人はいませんか?
暗闇の中で動く光を見せ、どのくらい動いたかを問うと、他人の選択を見ないで選ばせるとその数値は散らばるのに、他人の選択を見ると数値が近いものが集まるという実験が有名です。
このように、今いる集団での「ルール」は後から参加した人も含めて「普通のルール」になっていくのです。
ですから、入職した当初「おかしい」と思ったルールも、いつの日か「普通だよね」と変わっていってしまうのです。
どうすれば実情を打破できるのか?
では、このような心理的要因があるのに、どうすれば改善できるのでしょうか?
それは
おかしいと思ったことを忘れないようにする
おかしいと思っている人の集団を作る
ということです。
集団規範の話の通り、自分がおかしいと思ったことも、いつの日か違和感なく行えるようになってしまいます。
おかしいと思ったその時が、変革をもたらす大チャンスです。
忘れないように、メモを書く、仲間内に伝えるなどを行うようにしましょう。
また、おかしいと思うような環境に行くことも大切です。
自分の施設にばかりいるのではなく、他の施設の人との交流を図る、介護に関して勉強をするといったことで、刺激を受けるようにすることも忘れずに行いましょう。
そして、「変えるべきなんだ」ということが明確になったら、一人で行動しないようにしましょう。
必ず仲間を作ることが大切です。
内集団びいき、現状維持バイアスといった心理的反応に邪魔されてしまいます。
内集団、自分が所属する団体は、その人自身が決めた団体です。
同じ職場にいても派閥があるように、集団は作ることが出来ます。
ですから、何かしらの共通点を持っている仲間うちで、自分の考えを浸透させ、仲間と一緒に変革に向けて一緒に動いていくということが可能になります。
いくら内集団といえども、反対意見が一定よりも大きければ、「現状維持がおかしいのでは」と気が付きやすくなるものです。
今回は、事業所のルールが昔のままになりやすい理由に関してまとめてみました。
心理学用語満載でお送りしました!
実際、「なかなか事業所のルールが変わらない」「おかしいと思う点が多い」という人も少なくないと思います。
もちろん、今回のことだけですべてが解決するわけではありませんが、参考にして貰い、良い施設に変えていってもらえると嬉しいです。
ぜひ、仲間作りから始めていきましょう!
1分で登録OK
ケアきょう求人・転職の無料相談