介護現場における個人情報保護研修の感想は?

業務支援
2023/07/23

介護現場では、従業員に向けた個人情報保護に関する研修が実施されています。
それだけ介護現場における個人情報保護は重要と言えるでしょう。

本記事では、個人情報保護研修を受けた際に介護職がもつ感想や、個人情報保護と密接な関係にあるプライバシー侵害などにも触れていきます。
また、介護現場での個人情報漏えいの課題と対策も紹介していくので、ぜひ介護現場の個人情報を考えるきっかけにしてみてください。

介護現場における個人情報保護研修とは?

介護現場での個人情報保護研修について、以下6つのことを理解しながら整理していきましょう。

  1. 個人情報保護法とは
  2. 個人情報保護研修の目的
  3. 個人情報の管理体制
  4. 個人情報漏えいの原因
  5. 個人情報に関するトラブルの対処法
  6. 個人情報保護研修を行う上でのポイント3つ

それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。

なお介護現場における個人情報保護については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

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介護現場で知っておくべき個人情報保護とは?介護職の視点からわかりやすく解説

個人情報保護法とは

個人情報とは、個人の生存に関する以下のような情報のことです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • 顔写真など

そのほか個人の身体に関するデータやマイナンバーカード、パスポートなどに記載されている公的な番号も個人情報に該当します。

参考:「個人情報保護法」をわかりやすく解説 個人情報の取扱いルールとは?|政府広報オンライン

また、個人情報保護法における、以下の基本ルールを知っておきましょう。

  • 取得・利用:勝手に使わない!
  • 保管・管理:なくさない!漏らさない!
  • 提供:勝手に人に渡さない!
  • 開示請求等への対応:お問合せに対応!

これらを厳守し、個人の権利や利益を守ることが「個人情報保護法」の基本です。

個人情報保護研修の目的

個人情報保護研修の目的は、以下のとおりです。

  • 個人情報を取り扱う責任へ意識を高める
  • 個人情報漏えいの危険性を自分事とする
  • 自分が取り扱う個人情報を客観的に理解する

介護職の場合、主な仕事は利用者への介助であるため、個人情報保護といった事務的な領域はどうしても他人事になりがちです。

そのため、普段自分達が個人情報を取り扱っており、常に情報漏えいのリスクと隣り合わせで仕事していることを認識することが重要になってきます。

個人情報保護研修は定期的に行うことで、介護職をはじめとした従業員に対して、個人情報に対する意識を高めてもらうことが大きな目的と言えるでしょう。

個人情報の管理体制

個人情報保護研修を行うことで、事業所として個人情報の管理体制が整っているか確認できます。
個人情報の重要性や漏えいのリスクをなんとなく理解していても、管理体制が整っていなければ適切な情報管理は難しいでしょう。

たとえば、事業所の従業員がすべての個人情報にアクセスできる状態は、適切な管理体制とは言えません。
介護職にとって不要な個人情報であれば、知る必要もないでしょう。
基本的には管理者が事業所全体の個人情報を管理し、各部署で必要な情報のみを共有する形が望ましいでしょう。

個人情報漏えいの原因

個人情報漏えいの原因を、研修内の事例を通じて知っておくことは非常に大切です。
なぜなら、自分がどのような行動を取ることで個人情報が漏れてしまうのか知っておけば、普段の行動からリスク管理が行えるからです。

さらに細かく言うと、個人情報漏えいはどこであったのか、誰がどのような行動をしたことで起こったのか、事前に防ぐためには何が必要だったのかなどを研修を通じて学びます。
また個人情報漏えいによる事業所の責任や損害の費用などについても知っておくことで、個人情報に対する意識を高めていけるでしょう。

個人情報に関するトラブル対処法

個人情報が漏えいしないためにも研修の実施は重要です。
しかし、リスクを完全にゼロにするのは不可能です。
そのため、万が一トラブルが起きた際の対処法を事業所全体で共有しておくことが必要でしょう。

個人情報に関するトラブル対処法は、基本的に以下のとおりです。

  • 本人に情報漏えいの報告と謝罪をする
  • 文書による情報漏えいの経緯を示す
  • 原因と再発防止策を話し合う
  • 問い合わせ窓口を開示する

個人情報が漏えいした場合は、すみやかに本人へ報告と謝罪をします。
なぜなら、初期行動が遅れると利用者の信頼を失うだけでなく、その後の再発防止策の実施も遅れが生じるからです。

個人情報保護研修を行う上でのポイント3つ

個人情報保護研修を行う上で、以下3つのポイントを意識するといいでしょう。

  1. 個人情報保護法について従業員の理解統一
  2. 事業所全体と各部署ごとの問題と対策の確認
  3. 個人情報漏えい時の対処法

まずは個人情報保護法の基礎理解を、事業所全体に浸透させることが大切です。
そして、介護施設では介護以外にもさまざまな専門職がいるため、部署ごとに重要な問題と対策を確認します。

個人情報保護研修を受けた感想

個人情報保護研修を受けた際に介護職がもつ感想は、主に以下の5つです。

  • ささいなことが個人情報の漏えいにつながる
  • 同じ内容でも繰り返し学ぶことで活かせる
  • 罰則を理解することで危機感を持てる
  • プライバシーの侵害についても学べる
  • オンとオフの切り替えがひとつの漏えい予防策になる

それぞれの詳しい内容を解説します。

ささいなことが個人情報の漏えいにつながる

介護現場では「これくらい大丈夫だろう」ということでも、個人情報の漏えいにつながる可能性があります。
たとえば、以下のような言動が該当します。

  • 同僚と通勤途中の電車で何気なく利用者について話す
  • 利用者に関する書類を持ち帰り第三者に見られる
  • 個人スマホで撮影したレクの様子をSNSでアップ

定期的な研修を受けることで、普段の何気ない言動が個人情報の漏えいにつながる危険性を認識できるでしょう。

同じ内容でも繰り返し学ぶことで活かせる

個人情報保護に関する研修は、良くも悪くも内容が似ています。
そのため、一見退屈に感じるかもしれません。
しかし個人情報保護においては、基礎情報が非常に重要です。
似たような内容でも、繰り返し研修を受けることで、知識は深まり意識も高まります。

事業所としても義務だから行うのではなく、同じ内容でも定期的に個人情報保護の重要性を伝えることで、情報管理や漏えいに対する従業員の意識を高める効果が期待できるでしょう。

罰則を理解することで危機感を持てる

個人情報保護研修を通じて、万が一個人情報保護法に違反した場合、どのような罰則があるのか理解できます。

個人情報保護委員会では、個人情報保護に関する違反に対しては、以下のような罰則があることを明記しています。

個人情報取扱事業者若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、刑事罰(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が科される可能性があります

引用:個人情報取扱事業者等が個人情報保護法に違反した場合、どのような措置が採られるのですか|個人情報保護委員会

罰則の具体的内容を知ることで、より個人情報漏えいに対する意識を持てるでしょう。

プライバシーの侵害についても学べる

介護現場では、個人情報と密接な関係にあるプライバシーの侵害についても学ぶ必要があります。

介護現場におけるプライバシー侵害の事例と個人情報漏えいを紐付けながら、トラブルへの対処法や予防策を考えるきっかけになります。

本記事でも、介護現場で無意識にしてしまいがちな「プライバシーの侵害」について事例を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

オンとオフの切り替えが個人情報漏えいの予防策になる

ある研修では、仕事に対する意識を変えることが個人情報漏えいの予防策になると紹介されました。
たとえば、仕事のオンとオフをしっかり切り替えることで、利用者の情報を外部でむやみに話さなくなる効果が期待できます。

家に帰ってからも仕事のことが頭から離れず、家族や友人に利用者のことを相談したり、同僚との飲み会の席で利用者について話したりするのは危険です。
利用者のことを人一倍考えているからいいのではと思うかもしれません。
しかし考えすぎが仇となり、第三者に情報が漏れてしまう危険性があることは認識しておきましょう。

無意識に個人情報を漏えいしているプライバシー侵害の事例

プライバシーの侵害は、個人情報の漏えいと密接な関係にあります。
ここでは、以下5つのプライバシー侵害の事例を見ながら、個人情報の漏えいについて見ていきましょう。

  • 部屋のカーテンを閉めずに排泄介助をしている
  • 入浴介助で裸にしたままその場を離れる
  • 排泄介助の内容を大声で申し送りしている
  • 認知症の方に対して不適切な言葉をかける
  • 利用者様の家族情報を他の利用者様にしゃべってしまう

以上のことは普段何気なくやってしまっている場合もあります。
あらためて自分自身の介護を、見つめ返すきっかけにしてみるといいでしょう。

部屋のカーテンを閉めずに排泄介助をしている

居室で排泄介助(オムツ交換)をする際、カーテンを閉めずに行うことは羞恥心の配慮が欠けたプライバシーの侵害に該当します。
誰も外にいないからいいだろうではなく、利用者の尊厳を守ることは最低限のマナーです。

上記のような事例は個人情報の漏えいではありませんが、利用者のプライバシーを守ることは、個人情報を適切に管理することにつながってきます。
介護職は、利用者が気持ちよく生活できる配慮を、常に心がけていきましょう。

入浴介助で裸にしたままその場を離れる

排泄介助の事例と同じように、入浴介助中に利用者を裸にしたまま離れることは、プライバシーの侵害です。
とくに寝たきりの利用者を入浴介助する特別浴の場合、利用者は自力で体を動かせません。
そのため、裸のままにされると恥ずかしさだけでなく、風邪をひく危険性もあります。

どうしてもその場を離れなければいけない場合は、バスタオルをかけて素肌が見えない状態にしたり、上着だけでも着ていただいたりして、プライバシーを守る配慮をしましょう。

排泄介助の内容を大声で申し送りしている

申し送りの際、利用者の排泄結果を大きな声で話していませんか?
たとえば「〇〇さん排便が多量にありました」「〇〇さん今日で排便マイナス3日です」など。
これはプライバシーの侵害だけでなく、個人情報の漏えいとも言えるでしょう。

排泄状況はその人の健康状態です。
健康状態はれっきとした個人データで、むやみに外部に漏らすことは不適切です。
申し送りをする際は、他の利用者に聞こえない場所で行うか、職員間でしか通じないような略語でやり取りするといいでしょう。

認知症の方に対して不適切な言葉をかける

認知症の方は伝えたことをすぐに忘れてしまいます。
しかし、だからといって尊厳を傷つけるような言葉をかけていいわけではありません
「〇〇さんは認知症だから、どうせ言ってもわからない」と、職員同士で話すのもプライバシーの侵害です。

また認知症の方は、伝えた言葉自体は忘れても、その時に抱いた感情は覚えていると言われています。
仮に介護職が、認知症の方にバカにしたような口調で話しかけた場合、言われた側は嫌な気持ちを抱きます。
言葉はわからなくても感情に配慮した声かけをすることが、プライバシーを守ることにつながるでしょう。

利用者やその家族の情報を他の利用者にしゃべってしまう

利用者やその家族に関する情報を、他の利用者に話すことはプライバシーの侵害であり、個人情報の漏えいとも言えます。
たとえば、利用者の家族の健康状態や住んでる地域などを話すことも控えたほうがいいでしょう。

たとえばこんな事例がありうるでしょう。

ある利用者の息子さんが亡くなりました。
利用者のご家族からは、本人にも知らせたくないので息子さんが亡くなったことを公言しないようにと言われました。
職員間はもちろん、他の利用者に伝えることも許されません。

このケースでは少しでも漏洩した場合、大きなトラブルになるのではないでしょうか。

介護現場における個人情報漏えいの課題と対策

介護現場では、個人情報漏えいに関する以下のような課題と対策が挙げられます。

  • 職員一人ひとりの意識の低さ
  • 近い存在でも個人情報の漏れいになる
  • 訪問介護職員はとくに注意が必要
  • 最近はSNSの利用に要注意!
  • 個人情報保護の研修で定期的なリスクマネジメント

個人情報保護研修を受ける上で以上のことを意識することで、介護現場での個人情報保護に対する意識を高められます。
それぞれ詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

職員一人ひとりの意識の低さ

個人情報保護に対して、職員一人ひとりの意識が十分であるとは言い難いでしょう。
なぜなら、介護現場には以下のような状況があるからです。

  • 利用者情報が記載されている書類を無造作にデスクに置いた
  • 利用者情報が入ったUSBを持ち帰る途中に紛失した
  • 個人情報を管理しているPCからセキュリティの不十分なサイトにアクセスした

こういった状況が、個人情報を漏えいする原因となるにもかかわらず、徹底して守れていないのが現状です。
個人情報の流出は、利用者やその家族だけでなく、事業所の信頼を大きく下げ、自分が働く場所を失うかもしれない危機感を持つことが重要でしょう。

近い存在でも個人情報の漏れいになる

たとえ自分の家族や親しい友人でさえも、利用者の許可なく情報を提供するのは個人情報漏えいに該当します。
たとえば、利用者の介助方法に悩んでおり、その方の名前や病歴などを伏せずに家族に相談した場合です。

家族だから大丈夫だろうという考えは危険です。
もしかしたら、その家族から別の第三者に情報が漏えいするリスクも考えられます。
家族や友人といった近い存在でも、むやみに個人情報を伝えることは控えましょう。

訪問介護職員はとくに注意が必要

訪問介護の場合は、個人情報の管理にとくに注意しましょう。
なぜなら、在宅でひとり暮らしをしている高齢者を狙った詐欺や悪徳商法に情報が使われるケースがあるからです。

たとえば、あそこの家には認知症の方がいて、昼間は一人だという情報が漏れてしまうと、その時間を狙った犯罪につながる危険性があります。
訪問介護に関わる職員は、施設介護よりも個人情報の漏えいに対して敏感になる必要があるでしょう。

最近はSNSの利用に要注意!

最近では、SNSで利用者の様子や施設の様子を発信している介護事業所も増えてきました。
SNSの利用は事業のPR効果が期待できる反面、個人情報に関するトラブルの原因になる可能性もあります。
SNSに写真を載せる際は、該当の利用者に対して必ず掲載許可をとっておきましょう

どのような写真や情報を掲載するかについては、実際に投稿する前に職員間で話し合うことが大切です。
また、誰もがSNSにログインできるのではなく、担当者を決めて特定の人しか利用できないようにすることも、流出リスクの減少につながるでしょう。

個人情報保護の研修で定期的なリスクマネジメント

介護職は毎日のように利用者の個人情報を扱っています。
そのため、慣れが生じてしまい個人情報保護に対して意識が低くなる恐れがあります。

利用者の大切な情報を多く扱う介護事業所だからこそ、定期的に個人情報保護に関する研修を行いましょう
そして、個人情報の適切な管理や漏えい予防など、適切なリスクマネジメントにつなげることが大切です。

研修の実施が難しい場合は、毎日の申し送りで個人情報に関する話をしたり、職員同士が声をかけあったりして、個人情報に対する意識を高めあうことが重要でしょう。

まとめ

介護現場における個人情報保護研修の重要性について、解説してきました。
個人情報保護研修は1回受けて終わりではなく定期的に受けて、知識や意識をアップデートすることが重要です。

また介護職が普段何気なく行っている介助の際にも、プライバシーの侵害から発展する個人情報漏えいのリスクが潜んでいます。
それだけ、介護職と個人情報保護は近い存在であるということです。
ぜひ本記事を参考に、個人情報に関する意識を高めるきっかけにしてみてください。

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