介護業界の人手不足【解消に向けた厚労省の狙い】

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2022/01/24

気になる介護報酬改定、その中でも人手不足問題にどう取り組むのか?これは気になる方も多いのではないでしょうか?
今回はその現状を解説していきます!

人手不足の現状

介護職の人手不足は深刻になっています。
人数としては増え続けているものの、要介護・要支援者の増加には追い付いていません。
特に都市部においては、今後高齢者人口が急速に増加することが予測されています。

もちろんそうでない地域でも、緩やかではありますが、増加すると言われています。
そういった中で、介護関係職の有効求人倍率は、全職業の有効求人倍率と比べると、3倍近い数字になっています。

介護業界の有効求人倍率は4.2倍ですので、1人の求職者を4.2件の職場が待っている、というものになっています。
また、離職率も全産業と比べたら高いものになっています。

このグラフを見ると分かるように徐々に改善されつつあるものの、離職率は15.4%となっています。
また、全産業での離職率は14.6%となっていますので、他の産業よりも辞めやすいものとなっているようです。

同時に、介護職員の平均勤続年数も短くなっています。
介護職員の勤続年数の平均は7.1年です。これは、全産業の平均の男性13.5年、女性9.4年と比べるとかなり大きな差があります。

解決するための大きな方針

これまで見てきた通り、厚労省としてもこの状況が大変だ……ということは認識しています。
改善するためにいろいろと対策を考えています。

その方法としては大きく3種類に分けられそうです。

  1. 介護職への入職者の増加
  2. 離職率の低下
  3. 業務効率の向上

つまり、「介護業界の人を増やそう」という方向と「そもそも必要な人数を減らそう」という動きです。

今回の介護報酬改定においても、その方向で考えている様子が見受けられます。

1.介護職への入職者の増加

まず一つ目の「介護職への入職者の増加」に関してです。
これはやはり、お金の面の話が大きいでしょう。

以前から、さまざまな施策で介護の仕事へのハードルを下げようとしています。

しかし、仕事ですから、お給料はとても大切な話です。

今回の介護報酬改定においては、

  • 処遇改善加算Ⅳ・Ⅴの廃止の議論
  • 特定処遇改善加算の取得率の向上策の議論

が大きく行われています。

また、財務省からの反対はありますが、各介護サービスの介護報酬も増やそうという動きも行われています。

処遇改善加算Ⅳ・Ⅴの廃止の議論

まず、処遇改善加算Ⅳ・Ⅴの廃止に関してです。

そもそも、処遇改善加算は、

  1. 介護職の昇給の仕組みを設ける
  2. 研修の準備などを行う

などの施策を行うことで、国からお金がもらえるようになるものです。
処遇改善加算には、どのくらい施策を行ったかで区分が分けられます。

Ⅳ・Ⅴというのは、処遇改善加算の5つの区分のうち、もらえるお金の少ない2つの区分のことです。
上位3つの区分で90%以上の施設を占めることになっている状態であり、すでに制度が始まってからかなりの時間がかかっているので廃止していいのでは?となっています。

Ⅳ・Ⅴを取得している施設は、この影響でⅠ・Ⅱ・Ⅲに移行してもらえるのでは、との期待もありそうです。

特定処遇改善加算の取得率の向上策の議論

次に、特定処遇改善加算の取得率の向上です。

昨年10月から始まった「特定処遇改善加算」は、処遇改善加算のパワーアップバージョンです。
「経験のある介護福祉士の給料をもっと増やそう」ということで始まった加算ですが、まだ、約65%の施設でしか加算を取得していません……。

まだ加算を申請していない施設の理由を解消し、もっとこの加算を普及させたい、というのが厚労省の考えです。

申請していない理由としては

  • 事務作業が大変
  • 職種間・介護職間で賃金バランスが取れなくなる

というものが大半を占めているそうで

  • 申請を簡単にすること
  • 経験のある介護福祉士、その他介護職、その他職種の三つのグループ間での支給制限条件を緩くすること

がそれぞれ検討されています。

少しずつでも、給料が改善されていくことが非常に強く望まれます!

2.離職率の低下

続いて離職率の低下です。

これには

  • 職場環境の改善
  • ハラスメント対策

を掲げています。

職場環境の改善

職場環境の改善ですが、これまでも行われてきてはいました。
しかしながら、職場環境の改善で貰える改善は「過去の施策」を見ての支給となっていました。

そのため、「該当する年度におこなった取り組みで判断した方がいいよね」との話が進められています。

取り組みとしては

  • 若手職員の採用や定着支援
  • 職員がキャリアアップしやすい環境づくりの取り組み
  • やりがい醸成

などがあります。

ハラスメント対策

続いてハラスメント対策です。

介護職の実に4~7割が、利用者さんからのハラスメントを経験しているとのデータがあります。
それなのにも関わらず、3~5割の介護事業所しかそのことを把握していないといわれています。
これには、相談しにくい・相談できる環境がないという問題があります。

実際、「ハラスメントを受けても相談しなかった」という人は2~4割いるそうです。

相談がしやすい環境づくり、そしてそもそもハラスメントが生まれないように「利用者さんへのサービス説明の徹底」等が重要となりそうです。

3.業務効率の向上

こちらは賛否が分かれそうなものです。

厚労省で話し合われたものとしては、下記があげられています。

  • 夜間における人員配置基準の緩和
  • テクノロジーを使用するための準備
  • 文書業務などの負担軽減

夜間における人員配置基準の緩和

まず、一番注目を浴びたのが、「夜間における人員配置基準の緩和」です。

これは従来型の特養において特に実施されようとしているものですが、

  1. 施設内の全床に見守りセンサーを導入していること
  2. 夜勤職員全員がインカム等のICTを使用していること
  3. 安全体制を確保していること

の三つの条件を満たしていれば、夜勤の人員配置を少なくしてよい、とするものです。

その緩和というのもかなり大胆で、現状では、上記の表の左側
「介護職1人で最大25人まで」
「介護職2人で最大60人まで」
というように、最大で30人まで見ることができる、という風になっています。

これを、図の右側にまで増やそうと提案しています。
「介護職1人で最大30人まで」
「介護職2人で最大75人まで」
こう見ると、ひとりあたり最大37.5人見ることができるようになります。

ケアきょうに寄せられた意見でもかなり否定的な意見が多いです。

テクノロジーを使用するための準備

続いて、テクノロジーです。
ロボットの活用やICTを活用しようというものや、ビックデータ利用の準備などが対象になります。

感染症対策のためにも、こうしたICTを積極的に使おうという部分もあるようです。

文書業務などの負担軽減

最後に、文書業務の負担軽減です。
これは、嬉しい人もいますが、懸念する声も聞こえてきます。

  • 例えば、ケアプランなどの書類の保存をPC上などデータでの保存を許可する
  • 同意を証明する押印・署名の廃止

等があります。

これらは面倒な作業を減らすこともできると思いますが、同時に悪用されないか等の懸念もあるようです。

以上、厚労省が人手不足解消のために行おうとしていることをご紹介しました。

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