介護報酬の仕組みとは?算定基準や計算方法などをわかりやすく解説
介護報酬という言葉は聞いたことあるけど、詳しい仕組みについてはよくわからないという方は多いのではないでしょうか?
介護職の場合、直接介護報酬に関する業務に関わることは少ないため、知らなくても仕事に支障はありません。
しかし、利用者様に提供している介護サービスや自分の給料の財源を知ることは、日々の介護への意識を高めることにつながります。
本記事では、介護報酬の仕組みや算定基準、計算方法などをわかりやすく解説します。
介護報酬の仕組みについて知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
介護報酬とは?
厚生労働省によると、介護報酬とは以下のように定義されています。
介護報酬とは、事業者が利用者(要介護者又は要支援者)に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に支払われるサービス費用をいう。
要するに、介護報酬は介護事業者にとって、貴重な収入源と言えるでしょう。
なお介護報酬は3年ごとに改定され、利用者様へのサービス向上や、介護職の待遇改善などを目指しています。
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ケアきょう求人・転職の無料相談介護報酬の仕組みについて
介護報酬の仕組みについて、以下の点に注目しながら解説していきます。
- 介護報酬の支給元は?
- 介護報酬に使われる単位とは?
- 介護報酬の算定構造は?
どこから支給され、どのような形で金額が決まっているか理解することは、実際に介護サービスを提供する介護職にとって大切です。
ぜひ、基本的な介護報酬の仕組みを知るきっかけにしてみてください。
介護報酬はどこから支給される?
介護報酬の仕組みを図で表すと、以下のようになります。
図のとおり、被保険者である利用者様が介護サービスを利用することで、保険者である市町村から介護事業者へ介護報酬が支給されます。
介護報酬はサービスごとに設定されており、各サービスの基本的な費用に加えて、それぞれの介護事業所のサービス提供体制や、利用者様の状況等に応じて、加算や減算がされる仕組みです。
参考:介護報酬について|厚生労働省
なお介護報酬の財源に関しては、以下の割合になっています。
- 保険料:50%(介護保険の第1号と第2号保険者から徴収)
- 公費:50%(国・都道府県・市町村から給付)
介護報酬の基本事項なので、しっかりと頭に入れておきましょう。
介護報酬に使われる単位とは?
介護報酬はサービスごとに金額設定されているわけではなく「単位」と言われる介護報酬特有の表示形式になっています。
単位は、以下のような項目をもとに点数が決まります。
- 地域区分
- サービスの人件費割合
- 介護度など
さらに、単位に対して単価を掛け合わせることで介護報酬の金額が決まり、単価は1単位=10円が基本です。
計算式にすると「単位の数×単価=介護報酬」となります。
なお介護報酬を単位で換算するのは、物価や人件費など地域ごとの格差を埋めるためで、地域に関係なく一律の料金設定にすると、不平等な状況が生まれるでしょう。
物価や人件費が高いと、その分単価も上がる仕組みになっており、地域ごとの格差を可能な限り公平に保っています。
介護報酬の算定構造は?
介護報酬の算定構造は介護保険サービスの種類ごとに、厚生労働省によって設定されています。
たとえば、訪問介護の身体介助サービスを30分以上1時間未満で利用した場合は、396単位で、訪問入浴介護サービスを1回利用すると、1,260単位が算出される仕組みです。
参考:介護報酬の算定構造|厚生労働省
また先述のとおり、同じ介護サービス内でも、時間や要介護度、提供サービスなどによって算定される単位は異なります。
まずは、介護職である自分が提供している介護サービスの単位を知ることで、利用者様への提供価値をより具体的にイメージできるでしょう。
介護報酬の計算方法
介護報酬の計算方法について、以下のことを理解することが必要です。
- 単位と地域区分
- 介護サービスの自己負担限度額
単位と地域区分がわかれば、サービスごとの介護報酬を確認できます。
また、要介護度別に設定された介護サービスの自己負担限度額を知ることで、1割負担で利用できるサービスの量が把握可能です。
一つずつ理解しながら、実際に介護報酬を計算してみましょう。
単位と地域区分を理解しよう
介護報酬は基本1単位=10円ですが、サービスを利用する地域やサービスの種類によって異なります。
サービス提供の地域については、以下の図のように1〜7級地とその他の地域の全8区分にわかれており、それぞれに1単位=10円に対する上乗せ割合が設定されています。
人件費の割合を決める各サービス
- 訪問介護や訪問看護など
- 訪問リハビリや通所リハビリなど
- 介護老人福祉施設や認知症対応型共同生活介護など
地域区分 | 上乗せ割合 | 主な地域名 | 人件費割合 | 1単位の単価 |
---|---|---|---|---|
1級地 | 20% | 東京都(23区) | ①70% | 11.40円 |
②55% | 11.10円 | |||
③45% | 10.90円 | |||
2級地 | 16% | 神奈川県横浜市 | ①70% | 11.12円 |
②55% | 10.88円 | |||
③45% | 10.72円 | |||
3級地 | 15% | 埼玉県さいたま市 | ①70% | 11.05円 |
②55% | 10.83円 | |||
③45% | 10.68円 | |||
4級地 | 12% | 千葉県浦安市 | ①70% | 10.84円 |
②55% | 10.66円 | |||
③45% | 10.54円 | |||
5級地 | 10% | 大阪府堺市 | ①70% | 10.70円 |
②55% | 10.55円 | |||
③45% | 10.45円 | |||
6級地 | 6% | 宮城県仙台市 | ①70% | 10.42円 |
②55% | 10.33円 | |||
③45% | 10.27円 | |||
7級地 | 3% | 北海道札幌市 | ①70% | 10.21円 |
②55% | 10.17円 | |||
③45% | 10.14円 | |||
その他の地域 | 0% | その他の地域 | ①70% | 10円 |
②55% | 10円 | |||
③45% | 10円 |
利用する地域やサービスの種類に応じた1単位の金額を把握しておくと、より正確な介護報酬を割り出せます。
より詳しい地域やサービスごとの違いを知りたい方は、厚生労働省の「地域区分について」をご覧ください。
介護サービスの自己負担限度額を確認しよう
介護報酬は、利用者様の介護サービス利用料に応じて金額が決まります。
ここでは、介護サービス利用した際の利用者様の自己負担限度額について触れていきましょう。
かんたんにお伝えすると、自己負担限度額までは介護保険の1割負担が適用され、それ以上の利用になると全額自己負担です。
居宅サービスの1ヶ月当たりの自己負担限度額を、要介護度別に示したのが以下の表です。
要介護度 | 負担限度額 |
---|---|
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
施設サービスの場合は、個室や相部屋などで負担限度額が異なります。
たとえば、要介護5の方が特別養護老人ホームを利用した場合、1ヶ月の自己負担額の目安は以下のとおりです。
相部屋タイプ | 個室タイプ | |
---|---|---|
施設サービス費の1割 | 847単位×30日=25,410円 | 929単位×30日=27,870円 |
居住費 | 855円×30日=25,650円 | 2,006円×30日=60,180円 |
食費 | 1,445円×30日=43,350円 | 1,445円×30日=43,350円 |
日常生活費 | 約10,000円 (施設により異なる) |
約10,000円 (施設により異なる) |
合計 | 約104,200円 | 約141,430円 |
介護保険サービスの自己負担額には、以下のような軽減制度があります。
- 特定入所者介護サービス費
- 高額介護サービス費
利用料金が高額になっても、軽減制度を利用すれば自己負担額を減らせます。
詳しくは厚生労働省の「サービス利用者の費用負担等」を参考にしてみてください。
介護報酬をシュミレーションして計算してみよう
厚生労働省の「介護サービス概要料金の試算」を利用すれば、誰でもかんたんに介護報酬の金額をシミュレーションできます。
利用者負担を原則1割で考えると、以下のように介護報酬を割り出せます。
- 概要料金の9割:介護報酬
- 概要料金の1割:自己負担額
たとえば自宅に住んでいる要介護1の方が、以下のサービスを利用した場合の料金を計算してみましょう。
- 訪問介護:月に8回
- 訪問看護:月に4回
- 通所介護(デイサービス):月に8回
以上の内容を各項目に入力すると、次の画像のように金額が計算されます。
今回の場合、62,660円が介護サービスの概要料金で、その1割である6,266円が自己負担額となり、残りの56,395が介護報酬になります。
介護報酬改定の歴史
続いては3年ごとに改定される、介護報酬の内容について見ていきましょう。
- 2018年度の改定内容
- 2021年度の改定内容
- 2024年度の改定案
それぞれの改定内容を振り返りながら、次回2024年度の改定案を考えることで、日本の介護が抱える問題も見えてきます。
ぜひ現場の状況と照らし合わせながら、参考にしてみてください。
2018年度の改定内容
2018年度の介護報酬改定は、主に以下の内容です。
- 地域包括ケアシステムの推進
- 自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
- 多様な人材の確保と生産性の向上
- 介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保
なお改定率は0.54%で、プラス改定でした。
2018年度は、2025年に団塊の世代が後期高齢者になることを見据えて、質の高い効率的な介護の提供体制の整備を推進することを目指した内容となりました。
2021年度の改定内容
2021年度の介護報酬改定は、主に以下の内容です。
- 感染症や災害への対応力強化
- 地域包括ケアシステムの推進
- 自立支援・重度化防止の取組の推進
- 介護人材の確保・介護現場の革新
- 制度の安定性・持続可能性の確保
改定率については0.70%で、前回に引き続きプラス改定でした。
2021年度は、新しい感染症の出現や豪雨災害など、感染症対策や防災に対する取り組み内容が追加されました。
そのほかに関しては、前回の内容を引き継ぐ形で、取り組みのさらなる強化を目指していると言えるでしょう。
2024年度の改定案
2024年度の介護報酬改定は、主に以下のようなことが話し合われています。
- 地域包括ケアシステムの深化・推進
- 介護現場の生産性向上の推進
- 制度の持続可能性の確保
参考:介護保険制度の見直しに関する意見|厚生労働省参考:令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会|厚生労働省
地域包括ケアシステムについては、医療・介護・障害サービスの連携がより必要になり、さらなる強化を求められます。
団塊の世代が後期高齢者になり、介護を必要とする人の数が増えていく中で、地域で支え合う地域共生社会の実現が重要になってくるでしょう。
2024年度の介護報酬改定については、ケアきょうのYouTubeでも解説しているので、ぜひご覧になってみてください。
▼関連動画
介護報酬の現状と課題
介護報酬の現状と課題についても触れていきましょう。
主に以下の内容について解説します。
- 介護の担い手不足
- 介護給付費の増加
- 地域包括ケアシステムの構築
介護職や利用者様など介護に携わる方々だけでなく、日本社会の問題として考えていくべき内容になっています。
ぜひ、介護報酬について考えるきっかけにしてみてください。
介護の担い手不足
介護業界の人手不足は深刻です。
厚生労働省の調査によると、2025年には約32万人の介護職が不足すると予想されています。
さらに2040年には、その倍以上となる69万人もの介護職が不足する見込みです。
参考:介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について|厚生労働省
介護業界は慢性的な人手不足で、今後さらに深刻化することが考えられます。
そのため、国として以下の取り組みをより強化していく必要があるでしょう。
- 介護職の処遇改善
- 多様な人材の確保と育成
- 離職の防止や定着の促進、生産性の向上など
- 介護職の魅力向上と発信
- 外国人材の受入環境整備など総合的な人材確保対策
新しい人材の育成と、今いる優秀な介護職の確保など、人手不足に関する課題は今後も尽きないでしょう。
介護給付費の増加
介護給付費は、高齢者の安心した生活を支える介護保険サービスの利用料のうち、保険者である市町村が負担する費用です。
そして介護給付費は、2000年の介護保険制度の開始以来、増加し続けています。
参考:介護給付費とは 創設から20年、増加の一途|日本経済新聞
高齢者の増加→介護給付費の増加→介護保険料の増加という流れは避けられません。
今後さらに少子高齢化が進む中で、40歳以上が納付している介護保険料の増加負担も予想されます。
介護給付費の増加は、物価の高騰とともに、日本人の家計に大きくのし掛かってくるでしょう。
地域包括ケアシステムの構築
地域包括ケアシステムの構築は、介護報酬の改定に毎回組み込まれるほど、日本の介護を支える肝と言えます。
団塊の世代が75歳以上になる2025年を目処に、高齢者ができるだけ住み慣れた地域で暮らし続けられる仕組みが必要です。
とくに、以下のような認知症ケアに関する取り組みが重要です。
- 認知症のサポーターの養成の促進
- 認知症予防のために高齢者が気軽に通える場の拡充
- 認知症になっても生きやすい環境づくりや社会参加支援など
また在宅サービスの強化や、ケアマネジメントの質の向上などもあわせて必要になってくるでしょう。
介護報酬に関するよくある質問
今回は、以下の介護報酬に関するよくある質問を集めました。
- 介護報酬から支払われる人件費はいくら?
- 介護報酬が上がるとどうなるの?
- 月額包括報酬ってなに?
ではひとつずつ回答していきます。
介護報酬から支払われる人件費はいくら?
介護サービスの種類によって異なる人件費の割合を、以下の表にまとめました。
介護サービスの種類 | 人件費の割合 |
---|---|
訪問介護や訪問看護など | 70% |
訪問リハビリや小規模多機能型居宅介護など | 55% |
短期入所生活介護や各施設サービスなど | 45% |
本記事内でも紹介したように、人件費の割合は地域やサービスによる1単位の単価の違いに関係しています。
介護サービスを提供する立場として、理解しておきたい内容ですね。
介護報酬が上がるとどうなるの?
最近の改定の内容を参考にすると、介護報酬の増加は、以下のような効果が期待できます。
- 介護職員の処遇改善
- 介護サービスの質の向上
- 地域包括ケアシステムの構築の促進
とくに介護職員の処遇改善に関しては、2018年10月の消費税増税の対策も含め、臨時の介護報酬改定により2.13%という高めの改定率でした。
2.13%のうち1.67%が処遇改善に充てられ、特定処遇改善加算として多くの介護事業所で介護職の収入アップが実施されました。
2018年当時は、条件を満たした介護職は月額8万円アップという情報が独り歩きしましたが、それでも1万円近くの収入アップにつながった取り組みでした。
▼関連記事
月額包括報酬ってなに?
月額包括報酬とは、かんたんに言うと介護保険サービスの料金が「定額制」であるということです。
ただし定額制だからといって、使い放題というわけではありません。
あくまで、利用者様にとって必要と認められ、ケアプランに盛り込まれたサービスや回数によって利用可能です。
主に地域密着型のサービスが対象であり、利用者様の状況にあわせて、時間や回数、サービス内容などを柔軟に対応できるメリットがあります。
まとめ
介護報酬の仕組みについて理解することは、事業所の運営を継続する上で非常に重要です。
そして、事業所で働く介護職の方々にとっても、基礎的な知識は頭に入れておくほうがいいでしょう。
また、3年ごとに改定される介護報酬についても、介護職の処遇改善やサービスの質の向上など、現場を支える介護職に大きく関わってくる内容です。
介護報酬の仕組みについてあまり知らなかった方は、わかりやすく解説している本記事の内容を参考にして学んでみてください。
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