介護職のQ&A、労働問題のトラブル編【教えて外岡弁護士!】

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2022/01/20

介護職の働き方、労働環境の選び方を解説

本記事は、介護職のためのYouTubeチャンネル「ケアきょう」の動画で特筆すべき部分を文字に起こしたものになります。

解説メンバー

日本初の「介護・福祉系」に特化した法律事務所「おかげさま」の代表である外岡弁護士、ケアきょうを運営しているカイゴメディア社の代表向笠の2人で解説していきます。

介護職の方から頂いたご質問にお答えします!

向笠
向笠
介護に関する介ためな情報をお送りする、ケアきょうチャンネルのお時間です。
今回も介護福祉系の法律のプロフェッショナル、法律事務所「おかげさま」の弁護士である外岡潤先生をゲストにお迎えしてお送りしていきます。先生、本日もよろしくお願い致します。
外岡
外岡
よろしくお願いします。
向笠
向笠
今回のテーマはですね、「教えて外岡弁護士!介護のQ&A、労働問題のトラブル編」、視聴者さんからたくさん質問頂いておりますので、一部を抜粋して先生にぜひ解説して頂ければと思います。

年次有給休暇5日間取得義務化に伴い、夏休みと冬休みが有給休暇扱いに…。【介護職】

向笠
向笠
最初のご質問がこちらになります。
「こんばんは。4月からの年次有給休暇5日間の取得義務化なんですが、夏休み・冬休みとして扱われていたものを、有給休暇扱いに変更されてしまいました。もともと正社員は有給消化しづらいのでみんな無頓着で。こういう事業所は結構あるかも」と。そんなご質問なんですけども、年次有給休暇5日間取得義務化、今年からっていうことですかね?
外岡
外岡
そうですね。4月から、いわゆる働き方改革の第一弾として今現場に影響を与えてますけどね。やっぱり法令の観点から言えば、こういった夏休み・冬休みっていうものを有給に振替えるっていうことは、要は労働者に不利益になりますから、厳密には労働者の合意が必要なんですよね。
向笠
向笠
なるほどですね。
外岡
外岡
ですから、そういった部分で不利益に扱われてるっていうことは言えるんですけれど、やっぱりご利用者さんもいろんなことが起きますし、医療でもそうですけども、現場待ってくれないので人がいなければ出るしかない。そういう状況がある中で、特に医療・介護っていうのは働き方改革で他の産業全体と同じように当てはめちゃうっていうのは無理があるような気がするんですけどね。
向笠
向笠
働き方改革の本来趣旨からすると逆行してますよね、5日取得義務化しちゃって、夏休み・冬休みでもう少し取れていたのが。
外岡
外岡
そうですね。もっと言えば、来年からは労働時間の上限規制ってのが始まりますけど、一方で副業を解禁したじゃないですか、政府はね。一人の人が日中はヘルパーで働いて、夜は施設で夜勤だとか。そうなると結局本末転倒ですよね。だから結局今の生活を維持するためには、建前とか形を変えて働かなきゃいけないっていう状況の人にとってはあまり意味がないってことになっちゃいますし、有給も名称だけ変えて結局は激務が変わらない。人がいないんでね、あると思いますね。
向笠
向笠
確かにその働き方改革のルールが、いわゆる一般的なイメージの、サラリーマン的な感じの方々を対象にしてる感じなのに……。
外岡
外岡
そうです、仕事量をちゃんと調節できるっていうことが前提ですよね。何かを製造したりとか、通常の会社の働き方というところで、ご利用者が急に熱が出たとかね。救急搬送されたとか。そういったところに対応しなくていいのであれば計画的なことができると思うんですけど。
もともとが人がすごく足りないっていう危機的な状況の中で義務化するっていうのは多くの法人にとって難しいのかな。だからこちらの相談者の方も「こういう事業所は結構あるかも」とおっしゃってますけど、それは現実にあると思うんですよね。
だから私が思うのは、そうは言ってもこの仕事をしたいってことであれば、選ぶ側としても優先順位をはっきりさせるといいのかな。待遇とか給料とかそういう条件、数字が大事なのか、あるいは働きやすい環境、仲間ですとか、あるいは自分の意見がちゃんと聞いてもらえるとか、そういう風通しが良い環境がいいのか、あるいは有給が、自分の生活、ワークライフバランスを重視したいのかとか、そういったところで何か明確に優先順位をつけると職場選びにもつながるのかなと思いますね。
向笠
向笠
簡単に確認させて頂くと、施設側、管理者側としてはこういう取得義務化で夏休み冬休みを有給扱い変更にするんだったら不利益変更なので、きちんと従業員さんにご説明をして、合意もして、みたいな。
外岡
外岡
それが本来のあり方なんだっていうとこですね。
向笠
向笠
ちょっと現実問題難しいところもあるので。
外岡
外岡
そうですね、労働者の代表がナンバー2だったりするので、結局上とつながってますから、現場の人はあとから事後報告だけなんですよね。なので、何も反論する上司がいないみたいな、やっぱりそういうことは起きがちですよね。
向笠
向笠
働く側としては先ほどおっしゃっていただいた優先順位、何を自分は優先したいのかを決めて、そういう所で働いていただくと。
外岡
外岡
そうですね。

社会福祉法人の運営者、経営者の適性のチェック体制について【介護職】

向笠
向笠
続いてのご質問なんですけども、「社会福祉法人の運営者、経営者の適性のチェック体制。現業でなかなか告発できないような事案の動き方」。
若干抽象的なご質問ではあるんですけども、恐らく運営者であるとか経営者の方に何か不信感を持ってらっしゃって、告発したいぞというところ、どうやらありそうなんですけど。
外岡
外岡
そうですね。この二文だけですとなかなか状況も読めないんですけど、察するにやっぱり社会福祉法人、偏った見方になっちゃうかもしれませんが、どうしても社福っていうのは硬直的になりがちなんですよね。何かしらルールってがんじがらめで、コンプライアンスってのもあるんですけど、実質よりも体裁をすごく気にする。
それが裏目に出ちゃいますとすごく現場も硬直的になっちゃいますし、経営者がたまにニュースになったりしますけれど、自分の親戚を施設長にしたりとか、給料上げちゃったりとかね。自分たちの私物化していることも実際ニュースでありますけど、要するにそんなことを言ってるのかな。
ですからそういうことであれば、告発っていうのは行政とかに通報したところで身元がわかっちゃったりそういうことはありませんので、公益通報者保護制度でそういった匿名性は守られますから。
だからこれは思い切って告発しちゃってもいいのかなと思うんですけど、なかなか告発できないっていうのはどういうことなのかな。
向笠
向笠
ちょっと思い出したのが、ニュースで時折ある不正受給とか。記録書き換えて、それで受給受けていたとか。運営者側が率先してやっていた場合に内部の働く側として、「知っちゃったけどこれ言っていいのかな」みたいな。言ったらもし、自分が告発したというふうにバレてしまったらもう立場なくなっちゃうし、働いてる先がもし経営不振になっちゃったら自分の生活に跳ね返ってきちゃう。もしかしたらそういうようなご質問かもしれないですね。
外岡
外岡
何かしらミスだとか、その1回きりだったらまだいいと思うんですけど、体質的に繰り返されてたりとか、嘘に嘘を塗り重ねるような所は危険だと思うんですよね。見極めて働き先を変えるとか考えられたほうがいいかもしれませんね。完全に私物化してずっとやってきたとかコンプライアンス違反っていうのは、実は蓋を開けてみればあったということもあるかもしれません。
向笠
向笠
ご本人としては他の職場に移られるか、告発す場合、行政の告発等の場合は匿名性はきちっと守られる。
外岡
外岡
そうです。
向笠
向笠
そんなに多くないケースかと思いますけど、どうしてもという場合は匿名性はきちんと担保されるんで安心して行政に相談に行くと。
外岡
外岡
社会福祉法人で言いますと、チェック体制っていうのが実質機能してない法人が圧倒的に多いんですよね、残念ながら。なんでかって言いますと、社会福祉法の改正で評議員っていうものが、議事の選ぶ権限が委ねられて一番偉い存在になったんですけど、前からそれは理事長の言いなりというか、平たく言えばみんなツーカーで、しゃんしゃん総会でやるようなメンバーでしかない所がほとんどなんですよね。
向笠
向笠
評議員は何人ぐらいいらっしゃるんですか?
外岡
外岡
大体、7~8人とかそれぐらいの人数ですね。それは元職員の人とか、あるいは学者さんとか、いろんな立場の人がいますけれど、結局現場のことはわからないので経営はお任せっていうふうになりがちなんですよね。ですから本来は評議員会で経営者の適性をチェックして、それは株式会社でいうところの株主と取締役の関係になるわけなんですが、だからこれが本来のあり方なんですけど全然機能してないってことが多いですね。
向笠
向笠
結局旧知の仲の、息がかかった方が評議員になってらっしゃる。
外岡
外岡
イエスマンにどうしてもなって。何も知らないのでね、っていうことが多いんですよね。
向笠
向笠
実態としてはそうなってしまう。
外岡
外岡
……ことが多いですね。
向笠
向笠
ありがとうございます。

タイムカードがなく、出勤時はハンコを押すだけ【介護職】

向笠
向笠
最後のご質問なんですけど、「タイムカードなしの、出勤したらハンコを押すだけ」、労務管理ですね。
これはありなのか気になると。
外岡
外岡
そうですね、現状法律でタイムカードを設置せよみたいな義務化はされてないってことなんですが、労働者の勤務時間を正確に把握しなきゃいけないってのはありますから。
ですからこれはまさに今変わりつつある一つのポイントだと思うんですけれども、おそらく今後働き方改革の一環でそういったことがガイドラインでは推奨されてると思うんですが、だんだん移行してくる時期だと思うんですよね。
例えば(職場に)到着して、着替えたり申し送りの時間過ぎてからハンコ押さなきゃいけないとか、不利益ですから。もし実態として削られてるみたいなことがあったら、それは労働基準監督署に言えば指導して変えてくれますからね。
そういったところ、他の職員全員の問題ですので勇気を持って言っていったほうががいいのかなと思いますね。
向笠
向笠
ハンコ押すだけみたいなこと自体は別に特に問題はないけれど……。
外岡
外岡
そのこと自体で正確に、ちゃんと勤務時間が把握できるんであればじゃないけど、なんか不利益にね……。
向笠
向笠
サービス残業をさせられていて、残業しているのに自分の時間は、例えば9時まで残業しているんだけど、6時まで出勤したことになっていてそれでハンコ押させられてた……。
外岡
外岡
間違いなくそれは違法ですね。
向笠
向笠
すぐ労基署に行って頂いて。
外岡
外岡
なので、自分が働いた時間というものを客観的に確認できるような記録を取っておいて差額分を請求するってこともできますよね。

向笠
向笠
以上、「教えて外岡弁護士!介護のQ&A労働問題のトラブル編」でした。
沢山ご質問頂いていたんですけども、本日ご紹介しきれなかったご質問もあります。ケアきょうでは介護職の皆さんからのこうしたご質問募集しておりますので、ぜひコメント欄のほうに書き込みよろしくお願い致します。専門的なご質問のほうは先生の法律事務所「おかげさま」のほうでもご質問頂けるかと思いますので、ぜひそちらのほうにもご確認頂ければと思います!

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