【2020年に変更】認知症の定義とは?

介助術・介助方法
2022/01/11

認知症の定義

突然ですが、皆さんは「認知症の定義」をご存じですか?
また、2020年に認知症の定義が変わったことをご存じでしょうか?

「知らなかった」という方も、少なくないと思います。

今回は、認知症の定義と、2020年になぜ変わったのか?そして、現場への影響などをお伝えしていきます!

2020年以前の定義

まずは、以前の認知症の定義を見ていきましょう!

定義は、こちらです。

脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により、日常生活に支障が生じる程度にまで、記憶機能およびその他の認知機能が低下した状態をいう

こちらは、介護保険法第5条の2に記載されています。

難しいので、今回は「原因」と「症状」に分けてみてみます。

原因は「脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化」で、
症状は「記憶機能およびその他の認知機能が低下した状態」と、分けることが出来ます。

皆さんがイメージする原因と比べると、どうでしょうか?

実は、この原因と症状が2020年に改定されました。

具体的には、次のように変化しています。

原因は「アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患、その他の疾患
症状は「認知機能が低下した状態として政令で定める状態」となっています。

原因

まずは、原因に関して、定義が変更される前は「脳の器質的な変化が原因」とされていました。

そして変更された後は、
「アルツハイマー病その他の神経変性疾患」
「脳血管疾患」
「その他の疾患」
と、特定の2つとその他の、合計3つに分けられました。

元々の定義では、脳細胞が死滅した、異常な変化が起きたことのみが原因とされていました。

しかし、近年の研究によって、アルツハイマー病などでは、「神経細胞が徐々に障害を受けて脱落する」という仕組みが分かってきました。

そのため、神経そのものが徐々に変化していく状態を表す「神経変性疾患」と定義を変えました。

また、脳血管疾患では、脳梗塞などで血が途絶えて神経細胞が死滅するため、徐々に変化していくこととは異なります。

そのため、神経変性疾患とは区別されています。

症状

次に、症状に関して、元々は「記憶機能およびその他の認知機能が低下した状態」のことでしたが、
「認知機能が低下した状態と政令で定める状態」に変わっています。

皆さんご存じの通り、認知症には様々な症状があります。
それなのに、従来の定義では、「認知症=記憶機能の低下」が強調されており、不適切な定義となっていました。

なぜ変わったのか?

では、なぜ今回、定義を変えたのでしょうか?

理由としては、大きく以下の点が挙げられます。

  • 医学が進歩し、古い定義が時代遅れになった
  • 認知症の判断基準が変化した

医学が進歩し、古い定義が時代遅れになった

認知症に関する研究も、日々進化しています。

最初の定義が出された2005年から、15年も経てば、新たな基準が出てきます。

例えば、2019年に厚労省が介護保険部会で示した資料では、認知症の原因疾患として

  • 神経変性疾患(アルツハイマー病など)
  • 脳血管障害
  • その他の原因疾患(感染性疾患など)

と、整理されています。

これは、今回の変更と同じものになっています。

このように、時代の変化に法律が追い付いていなかったため、変更しようということになりました。

認知症の判断基準が変化した

元々の定義は、実は1993年にWHOが示した基準を基に、作成されています。

その基準は、主要な項目として、以下が示されていました。

  • 記憶力の低下
  • 認知能力の低下

しかし、最近では変化してきています。

主要な認知領域のうち、一つでも低下していることが認められると、認知症として判断されるというものです。

具体的に、主要な認知領域は以下になります。

  • 複雑性注意
  • 実行機能
  • 学習及び記憶
  • 言語、知覚・運動
  • 社会的認知

これまでの認知症の基準は、その一部にしか過ぎなかったことが伺えますね。

介護現場への影響は?

では、認知症の定義が変化したら、何か介護現場に変化があるのでしょうか?

実際には、すぐに大きな変化はないが、徐々に変化が出てくると思われます。

病院との情報連携をスムーズにするための勉強が必要になったり、認知症に関してご家族や地域の方に説明するときに、定義通りにお伝えしていく必要があります。

特に、介護に詳しくない人にとっては認知症=物忘れが激しいという風に考えている人も、少なくありません。

また、今後高齢者が増えて、認知症の方も増えることが予想されています。

認知症の方の対応は、素人には難しいことです。

こういった定義などの知識、そして認知症の方へのアプローチを実践から学んだ経験は、非常に大切なものになっていきます。
認知症介護のニーズは今後も高まっていくので、勉強しておくと、将来のキャリアに良い影響を及ぼすかもしれません。

医学は日々進歩し、認知症に関する理解も変化・進化していっています。
その情報をしっかりと押さえておくことも、とても大切なことです。
ケアきょうでは、今後も、こういった専門的な情報を分かりやすく配信していきます!

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