【介護報酬改定】厚労省 特養の現状をどう見てる!?
最も多くの利用者を受け入れているという特養に関して、いま介護報酬でどのようなことが話し合われているのでしょうか?
今回は、特養の現状や、現在話し合われていることを説明していきます。
特養の現状
まず始めに、特養の現状をデータをもとに見ていきましょう!
特養は、介護老人福祉施設という正式名称で、入浴・排泄・食事介護の他、日常生活の世話、機能訓練、健康管理などを行います。
特養は、日本の介護保険サービスにおいては、一番人を受け入れている施設タイプになっています。
その施設数は、10,502施設で、サービスを受けている人の数も61.96万人となっています。
日本の要介護・要支援認定者数は640万人ほど、と言われており、10%ほどを特養が受け持っているということになります。
現在、特養の入所者の平均要介護度は3.95であり、これは年々上昇傾向にあります。グラフだとこんな感じです。
これは、以下が要因と考えられます。
- 平成27年から、新規入所者を原則要介護3以上の方に絞ったこと
- 長期の入所によって、入所者の要介護度が上昇していること
実際、特養に入所する人は、かなり長い年月を入所することになります。
こちらのグラフは、介護施設における入所している期間を表したものですが、特養、介護老人福祉施設は、他の施設タイプに比べてもかなり長いことが分かります。
直近の調査では、3.5年ほど入所するようです。
これは、特養がいわゆる「終の棲家」となることが多いためと考えられます。
特養に入所した人の退所理由の割合を見てみると次のようになります。
退所の理由一位は死亡で67.5%、次点で医療機関へ行くため26.8%です。
医療機関へ行く、ということも持病の悪化などで特養での対応が難しくなるということですので、本当に「終の棲家」であることが分かるかと思います。
また、特養にはいくつか種類があります。
従来型とユニット型に大きく分けることができ、ユニット型は、1ユニットを生活グループとして設定し入居者1人ひとりに合わせた手厚い個別ケアを提供する、比較的新しいものです。
新しいといっても2001年ころから、厚労省はユニット型特養を推奨しており、現在では、約半数の施設がユニット型特養となっています。
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ケアきょう求人・転職の無料相談議論されていること
実際に厚労省において議論されていることは、大きく分けると5つです。
- 人材の活用
- ユニット型特養
- 中重度者や看取りへの対応
- リスクマネジメント
- 高齢者虐待防止
また、これ以外に特養に関わることも話されており、今回説明することも採択されない可能性もあるので、その点は注意が必要です!
人材の活用
介護業界の人手不足は、特養においても深刻です。
現状、特養全体では57.7%の施設において「職員が不足している」としています。
この人手不足ですが、解決するには
- 人手を増やす
- 一人当たりの対応できる人数を増やす
のどちらかが必要です。
人手を増やすに関しては、特定処遇改善加算の規制緩和などが実施する方針となっています。
今回は、一人当たりの対応できる人を増やすという話がされています。
具体的には、「併設されている施設における兼務を可能にする」というものが意見されています。
施設によっては、従来型特養、ユニット型特養が併設されていることがありますが、現状、従来型に勤めている人は従来型の中で、ユニット型に勤めている人はユニット型の中でしか兼務することができません。
また、一部特養と小多機においても介護職は同様に兼務することができませんし、特養に勤めている生活相談員がサテライト型居住施設を兼務することもできない状態です。
兼務を可能にすることで、必要な人手が少なくなるのではないか、というのがまず一つ目の施策です。
この兼務施策に関しては、単純に業務量が増えるだけ、という結果にならないよう注意が必要です。
ユニット型特養に関して
ユニット型特養に関しては、主なものでは2つ提案がなされています。
1ユニットの定員を増やす
ます一つ目は、1ユニットの定員を増やすです。
増えてきているユニット型特養の定員は、現状「おおむね10人」とされています。
実際、5044施設中4360、86%の施設において10人が定員となっています。
- 資料によると、定員が15人以上の施設においては、10人の施設よりも手厚い職員配置を行って対応している模様です
- ユニット型特養では、ユニット単位でシフトを調整している施設が約6割です
- この中で、早番、日勤、遅番、夜勤といったシフトを回すとなると、かなりギリギリでローテーションを回すことになります
- より手厚い職員配置を行うことができれば、もう少し余裕のあるローテーションとなるのではないか?と言われています
- そのため、厚労省は、ユニットの定員をおおむね10人から、15人以内に緩和してはどうか?と提案しています
この定員増加施策に関しては、職員配置は変わらず、単純に1人あたりの利用者数が増えるだけ、という結果にならないよう注意が必要です。
ユニットリーダーの常勤規定を緩和する
2つ目は、ユニットリーダーの常勤規定を緩和するです。
ユニットリーダー研修というものがありますが、研修を受けているにも拘わらず、ユニットリーダーとして勤務しない人が一定数います。
その人たちがユニットリーダーにならない理由として、「出産・育児・介護などの家庭の事情があり、常勤での勤務が困難なため」という人が12.9%います。
現状、ユニットリーダーは常勤であることを求められています。
しかし、本人の意思はあるが、家庭状況で難しいという人がいることはもったいないことです。
そのため、
- Ⅰ 育児休業などを取得した際は、非常勤職員で代替を許可する
- Ⅱ 時短勤務でもユニットリーダーとして認める
という意見が出されています。
家族の介護や出産などでキャリアをあきらめる人がいることは問題になっていますから、この流れは必然かもしれません。
中重度者や看取りへの対応の充実
3つ目は「中重度者や看取りへの対応の充実」です。
看取りに関して
まずは看取りに関してみていきましょう。
看取り加算ができてから、算定を行っている特養は63%です。
現在算定していない施設の主な理由は「加算要件を満たすことができない」というものが多く、46%を占めています。
また、看取り対応を決めた施設も、死亡日から30日以内に決めた施設が53.8%、31〜60日以内に決めた施設が16.8%ということで、「直前になるまで看取り対応するかどうかを決めていない」ということになります。
また、看取りにおいては「人生の最終段階における医療・ケアの決定に関するガイドライン」に示されている通り、十分な話し合いを基に、方針を決めることが求められています。
こういったことが出来ていないことは問題であり、看取りへの対応を充実させる観点から、加算などで取り組みを促進させようとしています。
中重度者への取り組み
次に、中重度者への取り組みです。
前半でもご説明した通り、特養の新規入所者は原則要介護3以上になりました。
そういった中で、入所者の平均要介護度が上昇していますし、認知症の入所者も増加しています。
これまでは、そういった要介護度が高い人や認知症の人を受け入れることを「日常生活継続支援加算」という加算で評価してきました。
しかし、現状はこれを算定していることが当たり前となりつつあります。
こういった状況を踏まえ、「この加算を見直してはどうか」という議論がなされています。
介護保険施設のリスクマネジメント
4つ目は、リスクマネジメントに関してです。
これは、事故報告や安全管理体制に関する意見です。
現状、事故報告に関しては市区町村によって書式などが異なっている状態です。
事故報告は、ただ事故があったことを知らせるためのものではなく、下記を学ぶためにあるものです。
- なぜ?その事故が起きたのか?
- どうすれば、その事故を起こさずにすんだのか?
そのため、将来的に情報を蓄積し、有効活用するためにも、国が報告様式を作成し周知しようという意見があります。
また、同時に現状の施設においては、事故のリスク評価や、専任の安全対策担当者がおざなりになっている現状があるとのことです。
例えば、専任の安全担当者は44.8%の施設で「いない」とのことです。
こういったことも問題視しており、「委員会の開催や、専任の安全対策担当者の設置等の安全対策を強化していくべきだ」と話し合いが行われています。
高齢者虐待防止の促進
最後に高齢者の虐待防止に関してです。
介護施設における高齢者虐待の相談・通報件数、判断件数は、意識の高まりもあってか増加傾向にあります。
虐待が起きる理由としては、「教育・知識・介護技術等に関する問題」が大きいとされています。
また実は、介護施設においては、虐待を防止するための規定がありません。
特養においては「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」というものがありますがこの中に書かれていません。
一方、障がい者施設においてはそのような記載があり、その対応を模倣したり、虐待防止委員会を設置させるべき、との意見が出ています。
今回は、「介護報酬改定の会議において、特に特養がどのように議論されているか」をご紹介しました。
兼務の緩和や、ユニット型の定員増加については、単に業務量が増えるだけの結果につながらないよう注意が必要です。
リスクマネジメントや虐待防止に関しては、今後より重要になってくることで、そういった勉強も前倒しでしておくとよいかもしれません!
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