とろみ剤は何を選べばいい?選び方や注意点は【介護福祉士監修】
とろみ剤の購入を考えているけど、種類が多くて何を買えばいいか悩んでる方は多いのではないでしょうか?
とろみ剤なんてどれも同じじゃないの?って思ってる方もいるでしょう。
本記事では、とろみ剤の選び方と注意点を解説します。
とろみ剤とは?基礎知識を知ろう
とろみ剤で水分にとろみがつくことは、ほとんどの人が知っているでしょう。
しかし、適切な使い方をしないと、かえって逆効果になります。
ここでは、とろみ剤の基礎知識を改めて確認しておきましょう。
とろみ剤の目的や使う際の注意点など、介護職として知っておくべきポイントを解説していきます。
とろみ剤の目的は?
とろみ剤の目的は、嚥下障害がある利用者様に対して、喉を通るスピードを遅くし、誤嚥のリスクを軽減するためです。
万が一、嚥下障害がある利用者様にとろみ剤を使用しないで水分を提供すると、通常のスピードで喉を通っていくため、誤って肺に入る可能性があります。
水分が肺に入ることで誤嚥性肺炎のリスクがあり、非常に危険です。
とろみ剤の使用は、利用者様の命を守るという目的があることを知っておきましょう。
とろみ剤を使う際の注意点は?
とろみ剤を使う際は、先ほど解説した目的を理解した上で、適切にとろみをつけているかを把握しましょう。
例えば、ダマにならないように均等に混ぜられているか、適切な量のとろみ剤を使用しているか等、さまざまな注意点があります。
特に、適切な量に関しては利用者様一人一人異なります。
そのため、とろみ剤の使用量ととろみの具合を把握しておくことが重要です。
次の項で、とろみの量ととろみの具合について、詳しく解説します。
とろみ剤は利用者様によって量が違う
とろみ剤の使用量は利用者様によって違うため、利用者様の適切量を知るとともに、とろみ剤の使用量ととろみ具合をあらかじめ知っておきましょう。
以下、とろみの段階と状態を表したものです。
とろみの段階 | とろみの状態 |
---|---|
薄いとろみ | ・スプーンを傾けるとすっと流れ落ちる ・フォークの歯の間から素早く流れ落ちる ・ストローで容易に吸うことができる |
中間のとろみ | ・スプーンを傾けるととろとろと流れる ・フォークの歯の間からゆっくりと流れ落 ちる ・ストローで吸うのは抵抗がある |
濃いとろみ | ・スプーンを傾けても,形状がある程度保 たれ、流れにくい ・フォークの歯の間から流れでない ・ストローで吸うことは困難で、スプーンの使用が適切 |
参考:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会「とろみの3段階」
筆者の職場では、100ccに対して計量スプーンを何杯入れるか3段階に設定し、とろみ剤の使用量を共有しています。
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とろみ剤を選ぶ際は、以下のような点に注意して選びましょう。
- 成分の特徴を理解しているか
- 溶けやすくダマになりにくいか
- とろみの再調整が可能か
- 素材の味や香りに影響しないか
- 持ち運んで使用することはあるか
などが挙げられます。
それぞれのポイントを詳しく解説していきます。
成分の種類を参考にする
とろみ剤の成分は、主にデンプン系 グアガム系 キサンタンガム系の3種類で、特徴は以下のとおりです。
とろみ剤の分類 | 特徴 |
---|---|
デンプン系 | ・とろみの付け始めが早い ・唾液や酵素の影響を受けやすい ・量が少ないととろみが付きにくい ・においが変わる |
グアガム系 | ・温度によってとろみにムラが出る ・少量でとろみが付きやすい ・量が多いと喉に付着しやすい ・時間が経つと変化する |
キサンタンガム系 | ・透明感がある ・喉に付着しにくく飲み込みやすい ・味やにおいが少ない ・温度によってとろみにムラが出る ・時間が経つと変化しにくい |
それぞれの特徴を理解した上で、目的に合ったとろみ剤を選びましょう。
溶けやすくダマになりにくいもの
とろみ剤は正しく混ぜれば、基本的にダマになりにくくなっています。
それでも、商品によって多少の差はあります。
上手くとろみがつかず、ダマになってしまうと喉に詰まる可能性があるだけでなく、とろみの付き具合も緩くなってしまうので、誤嚥のリスクも高まります。
ダマになりにくく混ぜやすいという点は、とろみ剤を選ぶ際の参考にするといいでしょう。
途中で追加してとろみの再調整できるもの
とろみ剤を使って、いざ利用者様に提供してみると、思ったよりとろみ具合が足りないという場合があります。
そしてそのまま提供してしまうと、当然ですが誤嚥の危険性が高まります。
こういった場合は、途中で追加してとろみを再調整できる商品がおすすめです。
追加するだけでなく、とろみを緩くできる商品もあるので、ぜひ購入する際の参考にしてみてくてください。
無味無臭のもの
とろみ剤は水以外にも、ジュースや牛乳、味噌汁やスープなど、さまざまな食品に使用します。
そのため、食品の味や香りを変えにくい無味無臭のものを選ぶといいでしょう。
前述で紹介した「デンプン系」のとろみ剤は、特有の味や匂いがあり食品本来の風味を損ないます。
おすすめは、味や匂いが少ない「キサンタンガム系」です。
持ち運び便利な個装タイプ
とろみ剤の多くは、大きな袋や缶などに入っているため、持ち運びに不便です。
さらに、一度開けると空気に触れてしまうため、湿気などの影響を受けやすくなります。
個装タイプの商品を選べば、外出の際にも気軽に持ち運べます。
また、通常は使用するたびにスプーンで計量する必要がありますが、個装タイプは計量しなくても、とろみ剤の量が分かるため使いやすいというメリットもあるでしょう。
とろみ剤の使い方
続いては、とろみ剤の使い方を確認していきましょう。
とろみの混ぜ方や適切な量、使用する食品によるとろみ具合の違いなど、さまざまな点に注意して使う必要があります。
今回は、以下4つのポイントを解説していきます。
- とろみ剤の適切な混ぜ方
- 注意したほうが食品の種類
- 適切なとろみの調整方法
- 職員間でとろみ量を統一する方法
なお以下の動画では、とろみ剤のつけ方についてあわせて解説してるので、ぜひ参考にしてみてください。
とろみ剤の適切な混ぜ方
とろみ剤はスプーンやマドラーを使って混ぜますが、その際円を描くように混ぜてはいけません。
なぜなら、円を描くことで渦巻きができとろみ剤が真ん中に集まってしまうため、ダマになりやすいからです。
したがって、とろみ剤を混ぜる際は、スプーンやマドラーを前後に動かしましょう。
そうすることで、食品全体に均等に混ざりやすくなります。
また、とろみ剤を入れてから混ぜるのではなく、先にスプーンやマドラーを動かし混ぜている状態でとろみ剤を入れると混ざりやすくなります。
カロリーの高いものは注意が必要
カロリーの高いものは、とろみがつくまでに時間がかかります。
特に牛乳や栄養補助飲料のエンシュアなどは、こまめに混ぜないと底にとろみが溜まりダマになってしまいます。
上手く混ぜるコツは、とろみ剤を入れたらまず30秒ほどしっかり混ぜましょう。
その後は、30秒から1分ほど間を空けて再度混ぜる手順を2,3回繰り返します。
忙しい介護現場では手間かもしれませんが、適切にとろみをつけることで利用者様が安心して食事ができるので、徹底することが大切です。
とろみ剤の追加投入は基本NG
とろみが薄いからといって、途中でとろみ剤を追加するのは基本的にNGです。
商品によって追加投入できるものもありますが、多くの介護現場で使われているものは調整できません。
どうしても調整したい場合は、同じ食品で少し濃いめのとろみを作り、調整したいとろみの中に追加することでダマになりにくくなります。
もしとろみを薄めたい場合は、水分を追加する方法もありますが、とろみにムラができやすいため、作り直すほうがいいでしょう。
とろみ剤の適切な量を職員間で共有
利用者様ごとの適切なとろみ剤の使用量が決まったら、職員間で共有し誰がとろみをつけても一定になるようにしましょう。
一番あってはいけないのが、職員によってとろみの具合が違うことです。
本来は薄めのとろみの方に濃いとろみを提供すると、上手く飲み込めず誤嚥のリスクが高まります。
逆に濃いとろみの方に薄いとろみを提供すると、飲み込みスピードが早くなり誤嚥につながります。
とろみ剤のケースなどに適切な使用量を数値化して表示しておくなど、誰がとろみをつけても一定になるよう工夫しましょう。
介護現場でよく使われる代表的なとろみ剤を紹介
では、介護現場で使われるとろみ剤にはどのようなものがあるのでしょうか?
以下に5つのとろみ剤を紹介します。
- ニュートリー ソフティアS
- トロミーナ ハイパータイプ
- とろみエール
- つるりんこQuickly
- 明治簡単トロメイク
それぞれの特徴を解説しているので、とろみ剤を選ぶ際の参考にしてみてください。
ニュートリー ソフティアS
はじめに紹介するのが「ニュートリ ソフティアS」です。
専用の蓋と計量スプーンが付いており、ワンタッチで開けやすい構造になっています。
さらに、蓋の隅にはスプーンの量を正確に計量できるすり切り棒もあるため、使用量を均一に保てます。
まずは同商品の個装タイプを購入して、一度試してみるのもおすすめです。
参考サイト:ニュートリー株式会社
ウエルハーモニー トロミーナ ハイパータイプ
2つ目は「ウエルハーモニー トロミーナ ハイパータイプ」です。
こちらの商品は、少ない量で素早くとろみがつくので、経済的かつ時間短縮が期待できます。
ウエルハーモニー トロミーナ ハイパータイプは少量で素早くとろみがつくので、忙しい介護現場で非常に助かります。
参考サイト:ウエルハーモニー
アサヒグループ食品 とろみエール
3つ目は「アサヒグループ食品 とろみエール」です。
素早く溶けて温度の影響を受けないなど、安定感のあるとろみ剤です。
特徴として食品本来の風味を損なわない点は、食事をする利用者様目線で考えると魅力的と言えるでしょう。
またとろみが強すぎる場合、同じ水分を追加することで均等に混ざり、とろみを薄めることができる点は現場の介護職としてありがたいポイントです。
参考サイト:朝日グループ食品
株式会社クリニコ つるりんこQuickly
4つ目は「株式会社クリニコ つるりんこQuickly」です。
こちらの最大の魅力は、見た目の透明感と無味無臭へのこだわりです。
水にとろみをつけると、白く濁るものが多いですが、つるりんこQuicklyはまるでとろみがあるのか分からないほど透明感のある仕上がりになります。
また一度とろみをつけると、時間が経っても変化しにくく飲み込みやすさをキープしてくれます。
参考サイト:株式会社クリニコ
明治簡単トロメイク
5つ目は「明治 簡単トロメイク」です。
介護施設だけでなく多くの病院でも使われている実績が信頼できるポイントです。
とろみがつくまでに2,3分と時間がかかるため、丁寧に混ぜる必要があるので注意しましょう。
参考サイト:株式会社明治
まとめ
今回はとろみ剤の選び方や選ぶ際の注意点、適切な使い方などを解説してきました。
まずはとろみ剤を使用する目的をしっかりと理解した上で、施設の特徴や利用者様にあったとろみ剤を選ぶことが大切です。
また、とろみ剤を選ぶ際は商品ごとの特徴を知るために、まずは個装タイプでお試ししてみるのもいいでしょう。
ぜひ、本記事を読んで、とろみ剤を選ぶ際の参考にしてみてください。
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