実務者研修とは?介護福祉士を取るために必要?資格取得方法やメリットは【介護福祉士監修】
介護職の資格である「実務者研修」とはいったいどのような内容なのでしょうか。
本記事では、実務者研修の資格取得方法やメリット、将来介護福祉士を目指す上での手順などを、現役介護福祉士である筆者がお伝えしていきます。
実務者研修の資格取得を検討する方にとっては、参考になる内容ですので、ぜひ最後まで読んでみてください。
実務者研修とは?
実務者研修の目的として、以下のような点が挙げられます。
- 幅広い利用者に対する基本的な介護提供能力の修得
- 今後の制度改正や新たな課題・技術・知見を自ら把握できる能力の獲得を期待
分かりやすく言うと「基本的な介護能力を高めるための資格」です。
ここでは、実務者研修を受講するための条件や費用、カリキュラムなどについて解説していきます。
受講するための条件は?
実務者研修の受講条件は特になく、誰でも受講可能です。
一見、介護職員初任者研修(以下「初任者研修」という)の次に取るべき資格と思われていますが、無資格でもはじめから実務者研修を受講できます。
もちろん、年齢制限や介護経験の有無も関係ありません。
ただ基本的な介護の知識がないと難しいと感じる方もいるので、不安な方はまず初任者研修を取得することをおすすめします。
費用はいくらかかる?
実務者研修の受講費用については、現在持っている資格や受講するスクールによって金額が変わってきます。
以下、保有資格による受講費用の目安です。
保有資格 | 受講費用の目安 |
---|---|
無資格 | 10〜20万円 |
介護職員基礎研修 | 3万〜5万 |
ヘルパー1級 | 5万〜10万円 |
介護職員初任者研修(ヘルパー2級) | 10万〜15万円 |
この金額はあくまで目安です。
詳しい費用については、最寄りの実務者研修を開講している講座やスクールに、直接問い合わせてみるといいでしょう。
大手のスクールであれば、ネットで検索すればだいたいの金額は分かります。
カリキュラムの内容と時間は?
実務者研修のカリキュラム内容と時間は、以下のとおりです。
(保有資格によって免除される科目あり)
科目 | 無資格 | 介護職員基礎研修 | 介護職員初任者研修 | ホームヘルパー1級 | ホームヘルパー2級 |
---|---|---|---|---|---|
人間の尊厳と自立 | 5時間 | ★免除 | ★免除 | ★免除 | ★免除 |
社会の理解Ⅰ | 5時間 | ★免除 | ★免除 | ★免除 | ★免除 |
社会の理解Ⅱ | 30時間 | ★免除 | 30時間 | ★免除 | 30時間 |
介護の基本Ⅰ | 10時間 | ★免除 | ★免除 | ★免除 | ★免除 |
介護の基本Ⅱ | 20時間 | ★免除 | 20時間 | ★免除 | ★免除 |
コミュニケーション技術 | 20時間 | ★免除 | 20時間 | ★免除 | 20時間 |
生活支援技術Ⅰ | 20時間 | ★免除 | ★免除 | ★免除 | ★免除 |
生活支援技術Ⅱ | 30時間 | ★免除 | ★免除 | ★免除 | ★免除 |
発達と老化の理解Ⅰ | 10時間 | ★免除 | 10時間 | ★免除 | 10時間 |
発達と老化の理解Ⅱ | 20時間 | ★免除 | 20時間 | ★免除 | 20時間 |
認知症の理解Ⅰ | 10時間 | ★免除 | ★免除 | ★免除 | 10時間 |
認知症の理解Ⅱ | 20時間 | ★免除 | 20時間 | ★免除 | 20時間 |
障害の理解Ⅰ | 10時間 | ★免除 | ★免除 | ★免除 | 10時間 |
障害の理解Ⅱ | 20時間 | ★免除 | 20時間 | ★免除 | 20時間 |
こころとからだのしくみⅠ | 20時間 | ★免除 | ★免除 | ★免除 | ★免除 |
こころとからだのしくみⅡ | 60時間 | ★免除 | 60時間 | ★免除 | 60時間 |
介護過程Ⅰ | 20時間 | ★免除 | ★免除 | ★免除 | ★免除 |
介護過程Ⅱ | 25時間 | ★免除 | 25時間 | ★免除 | 25時間 |
介護過程Ⅲ | 45時間 | ★免除 | 45時間 | 45時間 | 45時間 |
医療的ケア | 50時間 | 50時間 | 50時間 | 50時間 | 50時間 |
合計 | 450時間 | 50時間 | 320時間 | 95時間 | 320時間 |
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ケアきょう求人・転職の無料相談実務者研修と初任者研修どちらを取るべき?
実務者研修は、初任者研修の上位に位置付けられる資格として扱われています。
したがって、実務者研修を受ける前に初任者研修を取得した方がいいのではと思う方もいるでしょう。
ここでは、実務者研修と初任者研修の違いや、はじめに初任者研修を取得するメリットなどを解説していきます。
実務者研修と初任者研修の違いは何?
実務者研修と初任者研修の違いは、以下のとおりです。
実務者研修 | 初任者研修 | |
---|---|---|
受講目的 | 介護福祉士に必要な実践スキルの習得 | 介護の基礎を学ぶ |
科目数 | 20科目 | 9科目 |
受講時間(期間) | 450時間(6ヶ月ほど) | 130時間(2ヶ月ほど) |
費用 | 10万〜20万円 | 5万〜10万円 |
介護福祉士の受験資格 | あり(実務経験も必要) | なし |
サービス提供責任者 | なれる | なれない |
実務者研修は初任者研修に比べ、科目も時間も多いため、その分費用も高くなっていることは知っておきましょう。
初任者研修を取るメリットは?
初任者研修のメリットは、初心者でも介護の基本を一から分かりやすく学べることです。
また、初任者研修を取得すれば、実務者研修の科目が一部免除になり費用も安くなります。
「まずは介護の基本を身に付けたい」「いきなり実務者研修は心配」という方は、初任者研修を取得して、余裕ができてから実務者研修を取得するといいでしょう。
実務者研修を取得するメリット7つ
実務者研修は、初任者研修よりも高度な介護スキルを習得できるというメリットがあります。
またその他にも、仕事の幅が広がりキャリアアップにつながるでしょう。
ここでは、実務者研修を取得することで得られるメリットを7つ紹介します。
実務者研修の取得を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
介護福祉士の国家試験受験資格を満たす
実務者研修を修了することで、介護福祉士国家試験の受験資格を得られます。
正確には、実務者研修の修了と介護現場での実務経験3年以上が必要です。
参考:社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 受験資格」
今は介護福祉士の取得までは考えていなくても、介護職のキャリアアップとして介護福祉士国家試験の選択肢を持つために、実務者研修を受けておくことをおすすめします。
サービス提供責任者の職務につける
実務者研修の資格を取得することで、サービス提供責任者として働けます。
サービス提供責任者は、訪問介護事業所への配置が義務付けられている職種です。
主な仕事としては、事業所に在籍するヘルパーやケアマネージャーなどと連絡を取りながら調整する、いわゆるマネジメント業務です。
サービス提供責任者については、以下の記事でも解説しているので参考にしてみてください。
▼参考記事
【まるわかり】サービス提供責任者(サ責)とは?仕事内容・なり方・対策まで徹底解説!!
選べる職場の幅が広がる
実務者研修を取得することで、選べる職場の幅が広がります。
実務者研修では、介護以外に、単吸引といった医療的ケアのスキルも習得できます。
(実務者研修とは別に、喀痰吸引等研修の受講が必要)
そのため、医療的ケアも習得した実務者研修取得者は、看取り対応など医療的ケアが求められる特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで重宝されます。
また、無資格者や初任者研修よりも知識やスキルがあるという照明になり、多くの事業所で採用される確率が上がるでしょう。
資格取得による給料アップが狙える
実務者研修の取得は資格手当として、そのまま給料アップにつながります。
以下、筆者が実際に働いていた施設の、保有資格別の給料(目安)です。
初任者研修 | 実務者研修 | 介護福祉士 | |
---|---|---|---|
月給 | 20万円〜 | 22万円〜 | 25万円〜 |
年収 | 280万円〜 | 300万円〜 | 340万円〜 |
実務者研修を取得することで、初任者研修よりもおよそ2万円ほど給料が高くなっています。
事業所としても、資格取得を目指す向上心が人事考課にプラスになることも考えられるでしょう。
喀痰吸引などの医療的ケアの実践につながる
職場の幅が広がるメリットの部分でもお伝えしましたが、実務者研修を修了し喀痰吸引の実地研修を受けることで、痰吸引や胃瘻(経管栄養)の医療的ケアが可能になります。
本来、介護職は医療的ケアを禁止されていますが、2012年の喀痰吸引等研修、その翌年の実務者研修の誕生とともに、医療的ケアができる介護職が求められるようになりました。
今後も医療的ケアが可能な介護職は、どこの施設でも重宝されることを考えると、実務者研修とともに、喀痰吸引等研修の資格も取得しておくといいでしょう。
仕事における自信や信頼につながる
資格は目に見えるものではありません。
しかし、資格を取ることで自分の仕事に自信を持てたり、同僚や上司からの信頼構築につながります。
実務者研修は、介護福祉士を目指すための資格であり、高度な実践スキルがある介護職の証明です。
介護の現場では資格がなくても仕事ができるため、資格が軽視されがちですが、資格を目指す過程で色々なことを学び、自分の仕事に対する自信を生み出します。
利用者やその家族、同僚、先輩、後輩など関わる多くの人から安心されるためにも、実務者研修を取得する効果は大きいと言えるでしょう。
自ら学ぼうとする力を養える
実務者研修は、ただ講義を受けているだけで取得できるわけではありません。
それぞれの科目には課題があり、その都度自らの力で解き、提出する必要があります。
もちろん講義の内容から課題を解くこともできますが、時には自ら調べ考えなければならない場面も出てきます。
実務者研修は、介護福祉士を目指す上でも重要な資格です。
6ヶ月という長い研修期間を通じて、介護福祉士国家試験に必要な自ら学ぶ力を養う効果も期待できるでしょう。
実務者研修の資格取得方法は?
続いて、実務者研修の資格取得方法を解説します。
働きながら取得できるか不安、介護未経験でも研修内容が理解できるか心配といったお悩みにもお答えしていきます。
また、実務者研修を無料で取得する方法も合わせてご紹介します。
実務者研修って難しい?
実務者研修の内容は、介護未経験者にとっては多少難しく感じるかもしれません。
しかし、講義をしっかり聞いて復習すれば十分に理解できる内容となっています。
また、修了試験の有無はスクールによって異なり、たとえ修了試験があったとしても、研修の理解度を図ることが目的で、合格不合格を決めるものではないので心配はいりません。
万が一不合格となるケースを考えると、講義を欠席している、課題を提出していない等の当たり前のことができていない場合に限るでしょう。
働きながら資格取得は可能?
多くの人は働きながら実務者研修を取得しています。
なぜなら、実務者研修は介護福祉士の受験条件に入っており、さらに3年の実務経験が必要だからです。
しかし、現状は決まった曜日に休日を取らなきゃならず、職場の理解を得る必要があるため、気を遣うなど精神的負担を感じる人も多いでしょう。
ただそこまで気にする必要はありません。
事業所としては資格を取得してくれることで、施設の介護レベルも上がるので、遠慮することなく休日の相談をしましょう。
実務者研修を無料で取得する方法は?
実務者研修を取得するには、10万円以上の費用が必要です。
資格取得により給料が上がるとは言え、大きな負担であることは間違いないでしょう。
以下、実務者研修を無料で取得する方法一覧です。
- ハローワークの職業訓練を利用する
- 自治体の資格取得支援制度を利用する
- 職場の福利厚生を利用する
- 全額負担などスクールの制度を利用する
などがあります。
働きながら資格取得を目指す場合は、職場の資格取得支援制度について上司に相談してみましょう。
無資格から介護福祉士を目指すステップ
最後に、無資格から介護福祉士を目指すステップを紹介していきます。
介護福祉士を受験するには実務経験が必要なため、今年来年に試験があるわけではありません。
しかし、介護福祉士の出題数(125問)や範囲を考えると、早い段階からコツコツ勉強することが重要です。
資格取得と国家試験に向けて、余裕のあるスケジュール調整を一緒に考えていきましょう。
▼参考記事
実務者研修の最短取得期間は?介護福祉士取得までのスケジュールも解説!
介護福祉士の受験要件を確認
まず介護福祉士の受験要件を確認しましょう。
実務者研修修了者の場合は、3年以上(従業期間3年以上(1,095日以上)、従事日数540日以上)介護等の業務に従事した方が対象です。
※実務者研修の修了や3年以上の介護等の業務については、介護福祉士国家試験がある年の年度末までに要件を満たす見込みであれば受験可能です。
その他、介護福祉士養成施設や福祉系高校を卒業するといったルートもあります。
参考:社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 試験概要」
初任者研修を取得する
無資格の方で介護の基本を学びたい場合は、まず介護職員初任者研修を取得しましょう。
初任者研修は介護福祉士受験要件にありませんが、資格を取得することで実務者研修の科目や費用が一部免除になります。
介護の仕事についてまったく知らない状態であれば、いきなり実務者研修を受けるのではなく、焦らずにまずは初任者研修から学ぶ選択肢を検討するといいでしょう。
実務者研修を取得する
前述でもお伝えしたように、介護福祉士国家試験を受けるには実務者研修の取得が必須です。
初任者研修よりも専門性の高い内容になっており、医療的ケアの実践スキルも身に付く資格です。
介護福祉士を目指す人はもちろん必要ですが、そうでない場合でも現時点でのキャリアアップにつながる資格なので、取得しておいて損はないでしょう。
研修は余裕あるスケジュールで申し込もう
実務者研修を受ける場合は、余裕あるスケジュールで申し込みましょう。
なぜなら、実務者研修の受講期間は6ヶ月と長くなっており、ギリギリになって申し込むと介護福祉士の国家試験に間に合わない可能性があるからです。
おすすめは、介護職1年目または2年目のうちに実務者研修を取得し、3年目は介護福祉士の勉強に集中するといいでしょう。
もし介護職3年目に実務者研修を受講すると、介護福祉士の勉強と重なり大きな負担となることを考えると、早い段階で実務者研修を取得することをおすすめします。
資格取得と同時の少しずつ勉強も始めよう
介護士1年目または2年目に実務者研修を取得したら、それと同時に介護福祉士の試験勉強も始めましょう。
介護福祉士国家試験の出題数は125問で科目数も多いため、午前と午後に分けて行われる大規模な試験です。
そのため、試験ギリギリになって焦って勉強して合格できるような試験ではありません。
早い段階から1日15分程度でもコツコツ勉強することが大切です。
まとめ
今回は介護福祉士国家試験に必要な「実務者研修」について解説してきました。
同じ介護系資格の初任者研修に比べると、少し難しい内容で学習期間も6ヶ月と長いですが、介護業界でキャリアアップするには必須の資格です。
給料を上げたい、スキルアップしたい、長期的に介護業界で活躍したい、そんな人にとって最適な資格と言えるでしょう。
本記事で紹介した実務者研修の取得手順や、無料で受講できる方法などを参考に、ぜひチャレンジしてみてください。
介護福祉士国家試験 全問題の解説!
ケアきょうでは、2023年01月29日(日)試験当日に介護福祉士国家試験で出題されたすべての問題に解説を付けて配布します。
今年受験された方も、そうでない方も最速で発表される解説をチェックしましょう!
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