レスパイト入院とショートステイの違いって何?それぞれの利用方法も分かりやすく解説!
「レスパイト入院って何?」
「ショートステイとの違いは?」
「それぞれの利用方法が知りたい」
今回は以上のような疑問に、経験16年の現役介護職である筆者が分かりやすく解説していきます。
また、レスパイト入院の現状と必要性についても言及しながら、レスパイトケアの重要性も合わせてお伝えしていきます。
レスパイトとは?
まずは「レスパイト」について簡単に解説します。
レスパイト(Respite)とは小休止・中休み・中断といったことを意味する言葉です。
そして介護において使われる「レスパイトケア」とは、介護する家族の方が一時的に介護から離れて、リフレッシュするための介護サービスです。
つまり、介護をする家族のためのケアのことです。
かつては、親を施設に預けることに対して「かわいそう」「介護放棄」「自宅で家族が見るべきだ」といった意見がありました。
しかし現代においては、介護を理由に仕事をやめなければいけない介護離職や、介護負担による虐待が起きているというのが残念な現状です。
したがって、介護をする家族のためのレスパイトケアは、これからの介護を支える重要なサービスと言えるでしょう。
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続いて「ショートステイ」についても解説します。
ショートステイとは、在宅で生活している高齢者の状況にあわせて、一時的に介護ができない場合に短期間介護施設を利用し、日常生活上の介護を受けられるサービスのことです。
原則65歳以上の要支援または要介護と認定された方が利用できます。
ショートステイで利用可能な主な施設は以下の通りです。
- 短期入所生活介護:特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなど
- 短期入所療養介護:介護老人保健施設や病院など
介護保険適用のショートステイ
介護保険を利用するショートステイの場合は、介護度に応じた自己負担1割でサービスを利用可能です。
ちなみに、介護度によって利用できる日数は異なります。
介護保険適用外のショートステイ
有料老人ホームなどのショートステイは介護度関係なく利用でき、通常と同じサービスを受けられます。
しかし、全額自己負担となるため、こちらは通常のショートステイに対して「有料ショートステイ」と言われています。
レスパイト入院とショートステイの違いって何?
これまでの説明を聞くと「レスパイト入院」と「ショートステイ」は共通点が多いことが分かります。
したがって、2つの違いがよく分からない人もいるでしょう。
ここでは、レスパイト入院とショートステイの違いを、以下の5つの視点から考えて来ましょう。
- 対象利用者
- 介護保険制度の適用
- 医療的対応
- 利用可能日数
- サービスの目的
それでは一つずつ解説していきます。
対象となる利用者
ショートステイの対象者は、原則要介護認定を受けている方に限られます。
利用者の体調がすぐれない場合や、介護者である家族の用事や介護負担軽減のために利用することができます。
それに対してレスパイト入院の対象者は、医療的ケアが必要でショートステイでは受け入れ困難な方です。
例えば在宅療養で、常時人工呼吸が必要であったり、経管栄養などが対象です。
こういった方々は、施設によってはショートステイの利用ができないことがあります。
その場合に、レスパイト入院が利用できます。
介護保険制度の対象になる?
ショートステイは要介護認定を受けている方が対象なので、当然介護保険制度の利用が可能です。
先述でもお伝えしたように、要介護度に関係なく利用する有料ショートステイの場合は、介護保険制度の対象外なので全額自己負担です。
それに対してレスパイト入院は、医療的ケアが必要な方を対象(要介護者を含む)としており、通常の入院と同じように医療保険制度が適用されます。
したがって、高額医療費や自己負担限度額など利用者の年齢、収入や世帯状況によって、各種の負担軽減処置が利用可能です。
(詳しくは申込時の窓口で確認してみましょう。)
医療対応は
ショートステイは基本的に生活全般の介護を担うサービスであり、医療対応が必要な場合は受け入れられないこともあります。
中には夜間も看護師が常駐するなど、医療対応に柔軟な施設もあるので、申し込みの際に確認してみるといいでしょう。
レスパイト入院に関しては、病院での対応になるため当然医療対応は可能です。
参考までに以下のような疾病の方々が対象となっています。
- 神経難病の方(パーキンソン病・筋萎縮性側索硬化症・脊髄小脳変性症等)
- 重度の意識障害者(JCSⅡ-30以上またはGCS8点以下の状態)
- 脊髄損傷等の肢体不自由や、筋ジストロフィーの方
- 医療依存度が高く介護保険施設でのショートステイ利用が困難な方(人工呼吸器管理・痰吸引頻回・経管栄養等)
利用日数
それぞれの利用日数のルールは以下の通りです。
ショートステイの利用日数
- 連続利用日数は最大で30日間
- 連続しない場合は介護認定期間の半数まで
(介護認定期間が180日の場合、90日までショートステイが利用可能)
レスパイト入院の利用日数
- 連続利用日数は原則14日以内
- 連続しない場合は合計60日まで利用可能
(利用日数が30日に達するとそこから3ヶ月はレスパイト入院が利用不可)
両方ともあくまで、短期間での利用であることを理解しておきましょう。
レスパイト入院もショートステイも介護する家族のためのサービス
ここまでレスパイト入院とショートステイの違いについて解説して来ましたが、どちらのサービスも「介護する家族の休息のために必要なサービス」であることが分かります。
「毎日の介護に疲れた……」
「少し旅行でもして気分転換したい」
こういった理由で利用することに罪悪感を抱く方もいるでしょう。
しかし、自宅で毎日のように介護する負担が続けば、いつか心身ともに限界を超えてしまいます。
最悪の事態にならないためにも、レスパイト入院やショートステイは日本社会を支える重要なサービスと言えます。
レスパイト入院の利用手順
レスパイト入院の利用手順は以下のようになります。
それでは一つずつ解説していきます。
①ケアマネまたは主治医に利用希望を伝える
まずは担当ケアマネや主治医にレスパイト入院希望の相談をします。
その際に以下の内容を伝えましょう。
- 利用したい日付
- 利用したい期間
- 必要であれば希望病院も
以上の内容を、遅くても利用開始の2週間前までに伝えましょう。
(急を要する場合は、相談時にその旨を伝えると、すぐに対応してくれることもあります)
主治医や担当ケアマネなどがいない場合は、最寄りの地域包括支援センターに連絡すれば大丈夫です。
②レスパイト入院申込書の記入
レスパイト入院を申し込む際は以下の書類が必要です。
- レスパイト入院申込書
- ADL表
- 診療情報提供書(かかりつけ医の病院以外で利用する場合)
以上の必要書類は、主治医や担当ケアマネ、地域包括支援センターの職員、家族いずれかが準備すればOKです。
ちなみに同じ病院で2回目以降の利用であれば、ADL表(状態に変化がない場合)や診療情報提供書は不要となります。
③病院の地域医療支援センターなどに連絡
続いて利用する病院の「地域医療センター」など(病院によっては地域医療連携室など呼び名が異なる)に、担当ケアマネや主治医、家族などから、レスパイト入院希望の連絡をします。
その際に先ほど説明した必要書類を、病院にFAXで送ります。
もし書類にある情報以外で共有したいことがあれば、電話する際に伝えておくといいでしょう。
電話以外にも、通院中の病院でレスパイト入院をする場合は、家族が直接外来窓口で申請することも可能です。
④病院担当者から連絡が来る
申込書のFAXと電話連絡が完了すると、だいたい2、3日で返事がきます。
その際に、入院確定日を口頭で伝えるとともに、後日郵送でレスパイト入院確定日を記載した文書が送られてきます。
病院によっては受け入れ判定をするために、一度面談をしたり自宅に訪問させていただく場合もあります。
詳細は各病院のホームページで「レスパイト入院の案内」といったページがあるので、事前に確認することでスムーズに手続きを進められます。
⑤レスパイト入院開始となる
病院から確定の連絡が来れば、無事にレスパイト入院が可能となります。
最後にレスパイト入院時の注意点を改めてお伝えしておきます。
- 入院期間は原則14日以内
- 入院時の状態把握のために、採血・採尿・心電図・胸部エックス線撮影等の検査あり
- 入院中の検査やリハビリについては、必要に応じて実施することあり
- 自宅で使ってる定期内服薬等は全て持参
- 治療が必要な状態になると通常の治療入院となる場合がある
- 次回のレスパイト入院については疾患によって数ヶ月経過後となる場合あり
- 入院中の他医療機関への受診は不可なので必要な場合は入院前に受診する
ショートステイの利用手順
続いてショートステイの利用手順についてです。
流れとしては以下のようになります。
それでは一つずつ解説していきます。
①担当ケアマネに相談する
ショートステイの利用は、原則要介護認定を受けた方が対象です。
したがって、ショートステイを利用したい場合は、まず居宅介護サービス計画書を担当してくれているケアマネに相談するところから始まります。
普段からケアマネと信頼関係を築きこまめに情報共有をしておけば、家族の介護負担を考慮しケアマネ側からショートステイ利用を提案される場合もあります。
もちろん家族や利用者自身も自ら情報収集をし、ケアマネに任せっきりにならないことも大切です。
②利用できる施設を探す
ケアマネに相談するとショートステイが利用できる施設を探してくれます。
先ほどもお伝えしましたが、ケアマネに任せっきりになるだけでなく利用する本人や家族も施設情報を調べることが大切です。
またショートステイの受け入れは、3ヶ月前から申し込み受付を開始しているところが多く、早めに予約しないと利用できないこともあるので注意が必要です。
③施設に利用可否を確認する
利用できる施設がいくつか決まったら、次は施設に連絡してショートステイの枠に空きがあるか確認します。
もし空きがあるとなれば、利用予約をする前に見学をすることが大事です。
なぜなら、いきなり利用して思っていたものと違いストレスを感じる可能性があるからです。
施設によっては体験入居という形で、実際に1泊2日で滞在してみて問題がないか確認ができます。
ケアマネはもちろん、家族や利用者本人はその方に合うショートステイの場を探すことが求められます。
④ケアプランを作成
利用する施設が決まったら、ケアプラン(居宅介護サービス計画書)にショートステイの利用について記載する必要があります。
その際に、ショートステイ先の担当者と相談しながら、利用者本人にとって最適なサービス内容を立案していきます。
また、要介護ごとにある支給限度額の範囲内でサービスを組む必要があるため、ショートステイを利用することで限度額を超えるようなら、ショートステイ利用以外のサービスを検討するか、他のサービスを減らすなどの必要性があることも知っておきましょう。
⑤ショートステイの利用開始
以上の手順通り進めて、問題なければ無事にショートステイの利用開始となります。
ショートステイ利用時の注意点は以下の通りです。
- 要介護度ごとに利用可能日数が異なる
- 余裕を持って早めに利用申請をする
- 持ち物にはあらかじめ記名しておく
- 体調の急変により利用が中断することも知っておく
- 4日以上の利用でショートステイのケアプランが必要になる
レスパイトケアの現状と必要性について
最後に、今後さらなる高齢化社会を迎える日本社会において重要な、レスパイト入院とショートステイ、それらの共通点である「レスパイトケア」の現状と必要性について解説していきます。
レスパイトケアは、今まで以上に介護業界を支える重要なサービスであることは間違いないでしょう。
ぜひ一緒に考えてみてください。
介護者の負担軽減
レスパイトケアの一番の目的は「介護者の負担軽減」です。
終わりの見えない自宅介護で、心身ともに疲れ果て精神的に限界を超えてしまう可能性があります。
最近では、介護離職や虐待などが社会問題となっており、要介護者のためにも家族などの介護者へのケアがますます重要になってくるでしょう。
さらには、国として在宅介護の推進をしているため、介護者の負担軽減は急務と言えます。
そして介護者の負担軽減を図ることが、要介護者の在宅生活を続けるために必要な課題解決です。
在宅介護の環境づくり
レスパイトケアをすることで、在宅生活をする方々が今まで関わりのなかった、介護施設などの社会資源と繋がるきっかけになります。
特に自分のしている介護しか知らないと「本当にこれでいいのだろうか?」「こんな時はどうすればいいの?」と疑問に思ってしまいがちです。
そんな時に、レスパイトケアで繋がった施設や地域包括支援センターなどに相談することで不安を解消できます。
また、レスパイトケアをすることで在宅での介護環境を見直したり改善する余裕が生まれるので、より良い在宅介護の継続のためにも、一度介護者が要介護者から離れることは重要と言えるでしょう。
最悪の事態を予防する効果も
先ほども述べたように、在宅介護で行き詰まると、介護離職や虐待などに繋がることがあります。
中でも虐待によって、守れたはずの命が失われるといった事件も起きています。
最悪の場合、無理心中といった最悪の事態も実際に起きています。
参考:読売新聞オンライン『民家に70代兄弟の遺体、弟の49歳妻も死亡…無理心中か「妻が2人介護」の情報も』
レスパイトケアは介護者をケアするためのサービスですが、それは要介護者を守ることにも繋がります。
あってはならない事件がこれ以上起きないためにも、レスパイトケアの役割や利用方法を、多くの人が知れる取り組みが必要になってくるでしょう。
利用者本人にとっては負担になる場合も
ここまでレスパイトケアのメリットばかりをお伝えしましたが、デメリットももちろんあります。
中でも、レスパイトケアによって慣れない環境に身を置かなければならない利用者本人にとっては、大きなストレスと感じることもあるようです。
筆者も以前ショートステイの受け入れ施設で働いていましたが、初めて利用される方で、一晩中施設の中を歩き回り「帰りたい……」と悲しそうな表情をしていたことを思い出します。
介護者を守るために必要なレスパイトケアですが、そこには利用者本人の目に見えない負担が発生していることも考える必要があるでしょう。
レスパイトケアの今後について
内閣府の調査によれば、自宅で介護を受けたい人の割合は73.5%です。
介護職がケアする対象は要介護者ですが、その家族に対してもケアが必要であることを理解することが大切です。
今回ご紹介したレスパイト入院やショートステイ以外にも、デイサービスや小規模多機能型居宅などもレスパイトケアとしての効果が期待されています。
さらには、時間単位でサービスを提供する訪問介護の場合は、在宅生活を継続しながらレスパイトケアの役割を担うことができます。
以上のように、色々な手段を選択しながら介護者を守っていくレスパイトケアが、今後より浸透していくことが、日本の高齢化社会を支える鍵となっていくでしょう。
まとめ
今回は「レスパイト入院」と「ショートステイ」の違いについて解説してきました。
そして両者の共通点であるレスパイトケアの現場や今後についても、介護職目線で考えてみました。
本記事を読んだことをきっかけに、要介護者である利用者様だけでなくその家族にも目を向けて、レスパイト入院やショートステイの情報を共有することが大切です。
そして、レスパイトケアを必要としている人が気軽に利用できる環境づくりに繋がっていくことを願っています。
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