【介護用語の解説】臥床とは?混同しやすい臥位や離床との違いについて
臥床(がしょう)は、病院や施設でよく使われる言葉ですが、臥位(がい)や離床(りしょう)といった専門用語の中で混乱してしまった、という経験がある方もいるのではないでしょうか。
辞書では、「ベッドなどに寝る。」「病気で寝込む。」という意味が出てきますが、介護現場での臥床がどういう意味なのか確認してみましょう。
介護現場における臥床(がしょう)とは
介護現場で使われる「臥床」は「ベッドなどに寝ること。」の意味で使われます。
体調の良し悪しは関係ありません。
もう少し具体的にすると、起きている姿勢から、横になる姿勢に移行する事を意味します。
使い方としては、介護士が利用者様をベッドに横たわらせた時に「ベッドに臥床させる。」と表現します。
臥位(がい)や離床(りしょう)などの言葉と混同しやすいので、正しい意味を知って使い分けていきましょう。
臥位(がい)は寝る際の姿勢のこと
臥位(がい)とはベッドや布団の上で、身体が横になっている姿勢の事を指します。
この時、横になっている方が眠っているか、覚醒しているかは関係ありません。
臥床させた後の姿勢が「臥位」となります。
臥床の反対語が離床(りしょう)
この「離床(りしょう)」という言葉も介護現場で多く聞かれると思います。
これは臥床とは反対で、ベッドや布団に横たわっている姿勢から起き上がる事を意味します。
介助の有無は関係ありません。
介護士が介助をしても、利用者様がご自身で起き上がっても、ベッドから起き上がる事を「離床する。」と表現します。
1分で登録OK
ケアきょう求人・転職の無料相談長期の臥床状態による廃用症候群とは
臥床状態が長期間続く事で引き起こされる、身体や精神・認知機能の低下を総称して「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」と呼びます。
脳血管疾患で麻痺となったり、肺炎などの体調不良で過度な安静状態が続くことで、心肺機能の低下、認知機能の低下、筋力の低下、関節が固まって動かなくなる関節拘縮、抑うつやせん妄症状などを引き起こします。
この状態が続くと、少し動くだけでも息切れや疲れが出たり、立つことはもちろん、座っている姿勢を保つのが難しいほど筋力が落ちてしまいます。
気力や認知機能の低下も合わさって自力で動く事が難しくなり、最終的には寝たきり状態になる事もあります。
一度低下してしまった機能や筋力が元に戻るまでには、長期間かけて離床や運動を継続する必要があり、高齢になるほど機能改善が難しくなります。
出来るだけ離床や手足の運動を行う時間を作り、長期臥床をさせないようにすることで、廃用症候群を予防する事が大切です。
定期的な臥位交換が必要
臥位交換とは、体の向きを左右に傾け臥位の位置を変える事です。
同じ姿勢が長時間続く事で、上記に記した廃用症候群を引き起こす他に、褥瘡(じょくそう)を引き起こす危険性も高くなります。
褥瘡とは「床ずれ」の事です。
骨や関節が突出している部分が、長い間圧迫される事で、皮膚の血液循環が悪くなり、傷を作ってしまいます。
定期的に体の位置を変える事で、褥瘡や廃用症候群のリスクを低くする事ができます。
介護現場での臥位の種類
臥位といっても、顔が上を向いていたり、左右を向いていたりと様々な姿勢があります。
それぞれに名称があり、使い分けられると現場でのやりとりが正確でスムーズになります。
よく使われるものは覚えておくと便利です。
仰臥位・背臥位(ぎょうがい・はいがい)
どちらも同じ姿勢のことを指しており、体の前面が天井を向いている姿勢です。
仰向けから由来して「仰臥位」や、背がベッド側に当たっているために「背臥位」とも呼ばれます。
これは一番基本的な臥位の姿勢です。
腹臥位(ふくがい)
お腹をベッド側に向けた、うつ伏せの状態です。
呼吸状態の改善や痰を出すなどの目的で使われることもありますが、利用者様の状態によっては禁止されることもある為、医師や看護師の指示に従って行うのがいいでしょう。
側臥位(そくがい)
仰臥位の状態から左や右に90度体を傾けた姿勢です。
完全に真横を向く姿勢で、臥床しながらのオムツ交換や更衣の際に取ることも多いと思います。
肩や腕、骨盤、膝、踝等の硬い部分に体重がかかる為、褥瘡に注意が必要です。
半側臥位(はんそくがい)
仰臥位の状態から左や右に45度体を傾けた姿勢です。
仰臥位と側臥位の中間の姿勢です。
背部や足部にクッションを入れてポジショニングします。
褥瘡予防に有効な姿勢の為、臥位交換でよく使用される姿勢です。
背殿位(はいでんい)
背臥位(仰臥位)をとった状態で、両膝を立てた姿勢のことをいいます。
腰痛のある方や円背などで背臥位が辛い場合は、膝の下にクッション等を入れて背殿位を作って上げることで安楽な姿勢を取る事ができます。
半腹臥位(はんふくがい)
側臥位の状態からさらに45度程うつ伏せに近い状態にした、側臥位と腹臥位の中間あたりの姿勢です。
腹部側に大きめのクッション等を抱え込むようにしてポジショニングすると、体が安定します。
屈曲側臥位(くっきょくそくがい)
側臥位をとった際、胎児のように頭部や体幹を屈曲させ、手足を抱え込むように丸くなった姿勢です。
体を丸める事でベッドとの接地面積が大きくなり安定する為、安静時に自然と取る事が多い姿勢です。
体の不自由な方への4つの介助
脳血管疾患やパーキンソン病、リウマチや関節症など様々な要因から麻痺や関節の変形等により体の自由が制限され、介助を必要とする方々がいます。
下記の4つの介助は、内容を混同しやすい為、しっかりと区別していきましょう。
起床介助
介護士が朝に利用者様を起こす一連の流れのことをいいます。
ベッドからの離床だけでなく、排泄介助や更衣、洗面、口腔ケア、整容など、モーニングケアと呼ばれる介助全般を指します。
例えば、居室へ行き声をかけたあと、ベッドから起こし、トイレに誘導する。そのまま洗面台で洗顔や歯磨きをしていただき必要な方は入れ歯も入れてもらいます。
洋服に着替えて椅子や車椅子に移乗する、といった介助を行います。
離床介助
ベッドから離れる動作を介助することです。
離床介助は起床介助の流れのうちの一つとなる事もありますし、起床時以外にも、トイレや入浴、食事の際にベッドから利用者様を起こして誘導する事も離床介助と言えます。
利用者様に合わせて、手繋ぎでの介助であったり、車椅子への移乗介助を行います。
特に車椅子を使用されている場合は、褥瘡や皮膚トラブル、腰痛を防ぐために、座面や背側にクッションやタオルを入れ、体の1点に体重が集中しないようポジショニングしましょう。
就寝介助
夜、就寝するための準備を介助することを言います。
就寝前のトイレ誘導や口腔ケア、入れ歯の洗浄、寝衣への更衣、ベッド臥床する際の介助や枕やクッションのポジショニング等、就寝までの一連の介助を行います。
利用者様に合わせて、夜間に使用するポータブルトイレや尿瓶等も用意しておきましょう。
就寝介助の更衣の介助方法は、ケアきょうのYouTubeに動画があるのでご参照ください。
▼YouTube動画 【介護】介助方法シンプル解説 臥位での『更衣』介助 負担の少ない介助法
臥床介助
ベッドに横になって臥位を取るまでの介助のことです。
就寝介助の流れの中の一部と考える事もできますが、就寝時以外にも、寝たきり状態の方が入浴やリハビリの後にベッドに戻られたり、利用者様が少し休まれる際にベッドへ横になる時の介助も臥床介助となります。
臥床した際は、利用者様の状態に合わせて(褥瘡の有無、腰痛の有無、骨突出の状態など)、臥床によるトラブルが少なく、安楽に過ごせる姿勢でポジショニングしましょう。
まとめ
介護に携わる中で、臥床に関わる介助を行う機会はかなり多いと思います。
長時間臥床のリスクや、臥位の種類を知っておくことで、利用者様が安楽に過ごせる介助ができます。
また、介護用語をしっかりと理解し使い分けができると、現場でのコミュニケーションや記録を付ける際に正確でスマートな情報共有が可能です。
それぞれの施設によって、言葉の使い分けが異なる場合もあるので、職場の指導者に確認を取りながら介助を行ってみましょう。
▼YouTube動画 【介護】臥位での更衣介助!楽しみながら介助技術を学ぼう!セントケア東京ご協力!
1分で登録OK
ケアきょう求人・転職の無料相談