より良い職場環境にしよう!看護師と介護士の関係を改善する方法5つ
1. 介護士と看護師の仲が悪いのはなぜ?
「あなたの仕事のストレスは何ですか?」という類のアンケートで概ねトップとなる回答が、「職場の人間関係」 です。
「業務が多少大変でも、人間関係が良ければ頑張れる」
「ストレスの少ない人間関係の方が、給料や休日より大切」
などの意見が多く見られます。これは逆に言えば、それだけ多くの人が職場の人間関係にストレスを感じている(感じていた)、ということでしょう。
介護施設においても同様の傾向が見られます。
- 介護士どうしの関係
- 利用者との関係
- 管理職との関係
- 他職種との関係
など、様々な人間関係において諍いやトラブルが起こります。実際、それで苦労した方も少なくないと思います。
有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの介護施設に特徴的に見られる人間関係トラブルとして、看護師と介護士の関係があります。看護師は介護士に、介護士は看護師に、それぞれ不満を抱えやすいようです。
もちろん一概に言えませんが、「介護施設の看護師と介護士は仲が悪い」というのは、もはや定説とさえなっています。 何故でしょうか。
1.1. 看護師と介護士の考え方や役割に違いがある
看護師と介護士はもちろん資格が違いますから、業務や役割が違います。もともとの考え方や発想、見方も違います。しかし介護施設の性格上、入居者の生活や健康を支えるために、看護師と介護士は協同して働かなければなりません。
介護業務においては同じような仕事(食事介助や排泄介助など)もしますから、「違う資格なのに同じ業務をする」という状況が生まれやすい関係です。
違う考え方、違う見方をする両者が協同して働く以上、意見や方法が異なるのは避けられません。議論したり、衝突したりすることもあるでしょう。それが結果的に互いへの不満となり、人間関係トラブルにまで発展することもあると考えられます。
「看護師>介護士」という認識がある
看護師と介護士の不仲の原因の一つは、「看護師の方が上位資格だ」という差別意識にあります。
実際はどちらの資格が「上位か下位か」でなく、資格の種類が「違う」のです。しかし介護業務という部分において両者は重なっていますから、どうしても「看護師の方がより詳しい=上位だ」という考え方になりやすくなります。
周囲の目もそれを助長します。施設の管理職や他職種、入居者の家族なども「看護師の方が上」という意識を持ちやすく、実際そのように扱います。
結果的に、介護士が看護師に指示されたり、命令されたりすることが多くなります。介護士は「介護のプロ」ですが、その中心部分においても「看護師に口出しされる」状態になってしまいますから、悪感情を抱きやすいでしょう。
あるいは介護士自身が必要以上に(看護師に対して)劣等感を持ってしまい、それが敵対意識や悪感情に繋がることも、あるかもしれません。
看護師は医療重視、介護士は生活重視
看護師 | 介護士 | |
---|---|---|
視点 | ・医療的 →問題の原因を探り医療的に改善させようとする |
・生活支援的 →介助をすることで改善させようとする |
先程「看護師と介護士は資格が違う」と書きましたが、看護師が「医療的な視点」を持っているのに対して、介護士は「生活支援的な視点」を持っています。それぞれがうまく協同するのが一番ですが、時として看護師は医療面を重視しすぎ、介護士は生活面を重視しすぎてしまうことがあります。
たとえば、食事を食べるのに毎回時間が掛かる入居者がいるとします。それはその入居者の個性でしょうか。あるいは何か原因があって、上手く食べられない状態になっているのでしょうか。
この場合、看護師は原因を探って「なんとか改善させよう」と努める傾向があります。そして入居者に無用な負担を強いてしまうこともしばしばあります。そういう「やりすぎ」を止めようとして、介護士が看護師と衝突することもあるでしょう(逆の場合もあると思います)。そういった衝突も、看護師と介護士の不仲の原因になると考えられます。
収入で大きな差がある
看護師と介護士は給与相場も違います。ご存知の通り、看護師の方が高く設定されるのが一般的です。
これは資格や業務内容の違いによるものです。しかし介護施設においては、同じような介護業務をしているのに給与が違うのはおかしいではないか、と捉えられることがあるかもしれません。そうした不満も、看護師と介護士の不仲を助長する原因となります。
しかし介護施設において、看護師は入居者の医療ニーズを把握し、適切に判断する責任を負っています。
介護士も入居者の生活支援において責任を負っていますが、看護師は生死に関わる判断、緊急の判断もしなければなりません。しかも介護施設に常駐する看護師は基本的に少数ですから、一人一人にかかる責任も必然的に大きくなります。
そのために高給与が設定されていると理解するなら、この不満は解消されるかもしれません。
1.2. 介護士も看護師も互いに不満がある
看護師から介護士への不満
―自己判断で医療の領域に介入する
経験を積んだ介護士にしばしば見られるのが、医療分野に介入しすぎる傾向です。入居者の心身の状態に何らかの異常を見つけると、「これは◯◯ではないか」「◯◯すべきでないか」と独自の判断をしてしまうのです。もちろん長年の経験から、その判断が的を射ている場合もあります。しかし医療的判断は看護師の業務ですからら、介護士はあくまで状況報告に留めるべきでしょう。でないと越権行為となってしまいますし、負うべきでない業務負担まで負うことにもなってしまいます。
看護師も自分の領分を侵されたと感じますから、良い気はしません。こういうことが続くと、介護士への不満が募ってしまいます。
―看護師の指示に従わない
前項のように介護士が独自の判断をしてしまうと、結果的に看護師の指示に従わない、という事態も起こります。
たとえば、入居者が発熱しているのに看護師がクーリング(冷罨法)の指示を出さなかったとして、介護士が勝手にクーリングをはじめてしまった、というケースがあります。しかし熱が上がりきらないうちは悪寒がありますから(シバリングの状態です)、冷やすべきでありません(看護師がクーリングを指示しなかったのはそのためです)。何でもかんでも「発熱=クーリング」ではないわけです。
このように、同じ症状に見えても対応が全く異なる、というケースは他にも多々あります。それぞれのケースに基づいた看護師の判断を介護士が無視してしまうと、看護師が良く思わないばかりか、重大な事故に発展しかねません。
―仕事が身についていない
看護師 | 介護士 | |
---|---|---|
介護経験 | ・豊富な場合がほとんど →未経験介護士の「未熟さ」が目についてしまう |
・ゼロの状態も少なくない →わからないこと、できないことがある |
介護業界に特徴的に見られるのが、別業界で働いていた人が転職して介護士になるというケースです。介護施設においても、介護経験のない介護士が全くゼロの状態から働きはじめる、というケースが少なくありません。未経験ですから当然わからないこと、知らないこと、気づかないこと、できないことがあります。失敗してしまうこともあるかもしれません。
一方で看護師は、もともと病院等で勤務していた人がほとんどです。経験抱負なベテランも多いですから、余計に未経験介護士の「未熟さ」が、目に付いてしまうかもしれません。
本来なら、経験の浅い介護士には寛容や理解を示すべきです。しかし入居者の健康や生死を預かる職場でもありますから、ミスがあってはなりません。その点で、看護師が必要以上に厳しい目を持ってしまうのかもしれません。
介護士から看護師への不満
―看護師>介護士の差別意識が強い
前述の通り「看護師の方が上」という意識が蔓延しているためか、看護師が介護士に対して高圧的だったり、過度に服従を求めたり、上下関係を強調したりすることがあります。あるいは「そんなことも知らないのか」「偉そうなことを言うな」と介護士を貶める発言まですることもあると聞きます。
しかし資格や立場が違いますから、看護師と介護士は上下関係ではありません。 そのような扱いをされれば、介護士が不満も持つのも当然でしょう。
―病院の基準で指示する
介護施設で働く看護師のほとんどが、病院勤務を経験しています。ですから病院独自の「治療」に重きを置いた考え方ややり方が、染み付いていることが少なくありません。
一方で介護施設は「治療」の場と言うより「生活」の場です。医療ニーズばかりに拘り、病院レベルの「治療」をしようとする看護師を見て、介護士が辟易してしまうこともあるでしょう。
―仕事量が介護士と比べて少ない
看護師 | 介護士 | |
---|---|---|
役割 | 身体介助 | 健康管理 |
肉体的負担 | 比較的大きい | 比較的小さい |
施設での身体介護(食事介助や排泄介助など)は主に介護士が担います。 一方で看護師は、主に入居者の健康管理を担います。役割がそれぞれ違います。しかし肉体的負担は介護士の方が大きく、看護師の方が「余裕」があるように見えます。その負担感の違いが、介護士の不満に繋がることがあります。実際「暇なら手伝ってくれ」と看護師に要求したくなる介護士もいるそうです。
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ケアきょう求人・転職の無料相談2. 介護士と看護師の関係を改善するポイン5つ
2.1. ポイント1 互いの違いを理解し合う
今まで述べてきましたように、看護師と介護士は役割や業務内容が違います。施設によっては看護師も介護業務をするところがありますから、両者の境界が曖昧になっているかもしれません。しかし基本的な立場が違います。上下関係でもなく、優劣でもありません。 その違いを理解することが、良好な関係を築く第一歩ではないでしょうか。
2.2. ポイント2 医療専門職として看護師の考えを尊重する
何度か繰り返していますが、看護師と介護士は異なる資格であり、業務や役割が基本的に違います。介護士が「介護業務のプロ」であるように、看護師は「医療業務のプロ」です。その違いを互いに理解し合い、尊重し合うことが、業務を円滑に進める上で大切なポイントとなります。
前述のクーリングの例のように、医療的判断を介護士が勝手にしてしまうと、思わぬ事故に発展することがあります。「医療的判断は看護師の仕事」と認識し、尊重することで、そういった無用のトラブルを避けることができます。
またそれは介護士の業務負担を減らすことにもなります。入居者の心身のことで何か気になること、いつもと違うことを見つけたら、何でも看護師に相談して、巻き込んでみてはいかがでしょうか。
頼られて気を悪くする人はほとんどいません。看護師も相談されればいろいろ動いてくれるでしょう。結果的に業務が円滑に進み、介護士も余計な心配やストレスを抱えずに済むことになります。
2.3. ポイント3 医療介護で必要な医学の知見を蓄える
おそらくどんな仕事も同じですが、働きながら学んでいく姿勢は大切です。介護士も業務に関連した知識はもちろん、医学的な知識もある程度身につけていくことが望ましいでしょう。施設の入居者に一番近いのは介護士であり、そのわずかな変化を一番早く発見し得るのも介護士です。そして入居者の異常を早期発見するには、医学的な観察眼が必要となります。
ただしそうやって学ぶことは、看護師と張り合うためではありません。むしろ看護師がどんな視点を持っているかを知り、その言わんとするところを理解するためです。
2.4. ポイント4 プロフェッショナルとして働き、信頼感を得る
看護師は「医療業務のプロ」、介護士は「介護業務のプロ」です。どちらも職員である以上、プロフェッショナルとして業務をこなすことが第一です。人間関係が気になるのは人間として当然ですが、ある程度は仕事として割り切って、淡々とこなすことも大切です。
また介護士の方であれば、介護業務に専念することが、結果的に良好な人間関係を築くことにもなります。たとえばいつも綺麗にオムツを当て、衣服に皺ができないようにし、陰部や臀部の状態に異常があればすぐに気付いて報告するなど、丁寧な仕事をしていれば、「あの人はしっかりしている」「あの人に任せておけば大丈夫」と周囲から信頼されるようになります。そして信頼感を得られれば、管理職や看護師などの他職種からも一目置かれ、尊敬されるようになります。
信頼感とは貯金と同じで、徐々に貯まっていくものです。
はじめのうちは貯まっているかどうかわからず、自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。日々の業務を無意味に感じることもあるかもしれません。
けれどあくまで「介護のプロ」としての威厳を持って仕事を続けていくならば、介護士としての評価は、いつかきっと不動のものとなるでしょう。そうなれば相手が看護師であれ何であれ、もはや関係なくなります。
2.5. ポイント5 互いに助け合う関係を築く
人間関係を円滑に進める心理学的手法の一つに 「返報の法則」 があります。 人は他者から良いことをしてもらうと、「お返ししなければ」という心理が無意識的に働く、という法則 です。
この法則は介護の職場においてももちろん有効です。たとえば、看護師のちょっとした仕事を手伝ってあげましょう。大変なことでなく、ごく簡単なことでいいのです。しかし看護師は恩に感じて、あなたに対して「何かしなくちゃ」と考えます。同時に好感を持ってくれます。そして何かの機会に、あなたの仕事を手伝ってくれることでしょう。
このようにして互いに助け合う関係を築くことができれば、良いスパイラルに入ることができます。看護師の業務も介護士の業務もそれぞれ効率化され、ストレスも減るでしょう。職場全体の環境も良くなるかもしれません。その第一歩は、あなたのちょっとした、ささやかな親切にあるかもしれません。
3. まとめ
人間関係とは難しく厄介なものです。毎日行く職場のこととなれば尚更ストレスです。互いの違いを理解すること、自分の仕事に徹すること、相手に親切にすることなど書かせていただきましたが、唯一絶対の解決法はありません。それぞれ個別に向き合い、時間を掛けて、解決の道を探るしかないと思います。
ただ、どうしても分かり合えない、歩み寄れない人間関係も残念ながらあるでしょう。そういう関係において無理に努力しても、消耗するだけです。思い切って距離を置いたり、完全に仕事の関係だと割り切ったりして、自分を守ることも大切です。
介護士の皆さんの、今後のご活躍をお祈りしています。
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