機能訓練とリハビリはどう違うの?機能訓練指導員になるためには?
1. 機能訓練とは
「機能訓練」「リハビリ」などの言葉を介護の現場では多く聞くと思いますが実際に機能訓練とリハビリの意味は微妙に異なってきます。機能訓練とはという項目で調べても実際に機能訓練の定義というものはあいまいになっていますが、介護の世界での機能訓練を端的にあらわすと、「身体・生活機能に対して維持・向上・予防を専門職が図ること(機能訓練指導員)」ということになります。
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ケアきょう求人・転職の無料相談2. 主な仕事内容
それでは介護施設において機能訓練を計画、実施する役割になっている機能訓練指導員とはどのような仕事内容なのかについてご説明していきます。
2.1. 歩行訓練、マッサージ、筋力トレーニングなど、利用者の症状に合った回復訓練
「機能訓練」と聞いて最もイメージしやすいのが
- 歩行訓練
- マッサージ
- 筋力トレーニング
など身体機能の維持や向上のため直接介入を行うことです。
2.2. 利用者の心身機能評価
介護保険分野では専門職が機能訓練を行う上で利用者の心身機能の評価をより的確に行っていく必要があります。機能訓練加算を算定するために必要な機能訓練計画書を作成する際にも「心身機能の評価」を専門職が行っていることが必要になりますので必ず抑えておきましょう。
心身機能の評価は
- 利用者の関節可動域や筋力
- 歩行や起居動作を含むADL・IADLと呼ばれる動作や生活機能
- 利用者の精神状態や自宅環境
も評価に含まれます。(27年度の法改正で要介護利用者の機能訓練加算算定のためには自宅訪問が必須となりました。)また利用者に行った機能訓練が一定の成果を上げているのか、プランの変更が必要になるのかを考えるため、一定の期間でのモニタリング、再評価を繰り返し行っていくことも必要になります。
2.3. レクリエーションの実施
機能訓練として認められるのは1対1のかかわりだけではありません。レクリエーションのような集団体操においても適切な評価と計画が存在していれば十分効果のあるものです。施設によっては個別的な介入ではなく集団体操など1(もしくは複数)対集団でレクリエーションをおこなうところも多くあります。
2.4. 利用者一人ひとりに合わせた機能訓練計画書(運動プログラムや訓練内容)の作成
利用者一人一人に対して適切な評価を行った後は、その利用者の今後の機能訓練内容について計画を立てる必要があります。また先の評価の部分でも述べたようにその作業を一定の期間で更新していく必要があります。
- 利用者の長期目標
- 短期目標
- 評価
- 機能訓練の内容
- 実施者
など必要条件を明記した「機能訓練計画書」を作成することも機能訓練指導員の施設における大切なお仕事の一つです。
デイサービスでいえば、機能訓練の目的の違いから機能訓練加算Ⅰと機能訓練加算Ⅱという2つの加算で様式が異なります。 このように機能訓練指導員として計画書を作成していくうえでは介護保険上で必要な事務作業の決まりも頭に入れておくことが必要となります。
2.5. 利用者に合った車イスや補助具、自助具の選択
通所介護などでは24時間利用者とともに過ごすのではなく、1日・1週間のほんのわずかな時間を一緒に過ごすサービスです。機能訓練指導員はあくまで在宅生活を支援するために機能訓練計画を立案していますので、自宅などで使う福祉用具の提案も業務に含まれます。よくあるご相談では下記のようなものがあります。
- 自宅の手すりなどの住宅環境の相談
- 杖や歩行器などの移動手段の相談
- 車イスの選択、自助具などの提案
- 靴の相談
- 家族が使用する移乗グッズの選択 など
このような相談に対するニーズにこたえられるようになるためには身体機能面の評価や治療技術だけではなく生活機能として残存機能などの利用者を評価する能力や、福祉用具に対する知識を持っておくことが非常に重要になってきます。
2.6. 他の介護スタッフに対して、自立支援に基づいた介助の提案と指導
現在の介護保険の基本的な考え方は「自立支援」です。これは簡単に説明すると「自分でできることは自分でする。できないことはできるように努力する。それでもできない場合は支援する。」といった考え方ですよね。機能訓練指導員はこのような考え方のもと、
- 他のスタッフに対してその人ができていること
- できるようになるかもしれないこと
- そのためには普段の介護場面ではどのように関わるべきなのか
という3つの事項を的確に説明する必要があります。また人員や時間に余裕がある施設であれば体操やレクリエーションの提案も行い、より機能訓練を充実させてみてもよいでしょう。
3. 機能訓練とリハビリの違いは?
機能訓練の部分でも少し触れましたが、機能訓練という言葉とリハビリという言葉には実際に少し違いがあります。微妙な違いではありますが、介護保険の考え方を知るためにも大事なことですので簡単に振り返ってみましょう。
3.1. 機能訓練は機能の「改善」と「減退防止」
機能訓練の言葉の明確な定義は存在しません。介護現場などにおいて機能訓練指導員(必要な資格についてはこの後に説明) が主として行う身体機能の改善を目的に行う行為のことを一般的に機能訓練と呼びます。 ここで重要なのは機能訓練指導員が「主」としてというところが重要です。また、介護の場面ではもちろん利用者さんが失った機能の維持・改善がメインです。
加えて介護保険が施行されテーマとなる自立支援を実現していくためには「予防」という観点が非常に重要になります。 具体的には
- 要介護状態の方を要支援や自立に戻すこと
- 要支援状態の人を要介護に落とさないこと
- 自立している人を介護が必要な体にしないこと
です。よって機能訓練の目的は「改善」「減退予防」の2つになります。
3.2. リハビリは「医師の指導のもと」で機能の「維持」と「回復」
理学療法士などリハビリ職と呼ばれる方には聞きなれたフレーズですが、リハビリテーションとは「全人間的復権」という意味になります。これは心身機能だけに限らず、その人が人間らしく生きるためのすべての要素が含まれているため介護保険法で使われている機能訓練という言葉に比べるともっと大きな意味になるかと思われます。 また現実的な使われ方で見ると医師の指導のもと、理学療法士などの専門職が機能の維持、回復のために行ういわゆる治療行為をさします。
医師の指導のもとに行われるのは病院がメインになるでしょうからリハビリはどちらかというと「回復・維持」というイメージが強いです。ただしこれらの言葉は現実として介護の現場ではほとんど同じ意味として使われています。現場での会話のこのような意味の違いが問題になることはほとんどないと思いますが、市町村によっては機能訓練計画書の文言としてリハビリと機能訓練の言葉の使い方をきっちりと分けるようにという指導もあると報告されています。
また施設名に関しても市町村によってはリハビリという言葉を安易に店舗名などに入れることに難色を示す市町村もあるのでオフィシャルな場での言葉の使い方には注意しましょう。
4. 機能訓練指導員になるためには国家資格が必要
介護施設においてこれまでご説明した利用者の心身機能を評価し機能訓練計画(書)を作成、その人に合った機能訓練内容と環境調節を行う役割を担うスタッフは「機能訓練指導員」と呼ばれます。 デイサービス(通所介護)ではこの機能訓練指導員を最低1名配置することが義務図けられており、また必要要件を満たすことで機能訓練加算が算定されます。ただし、この機能訓練指導員という立場は無資格ではできず必ずいかにご紹介する7つの国家資格を有するものでないといけないというルールがあります。
4.1. 機能訓練指導員に必要な国家資格
機能訓練指導員としての登録に必要な資格は以下の7つです。実際に働いているスタッフの割合としては1位が看護師、2位が理学療法士、3位が柔道整復師となっています。
- 正看護師
- 准看護師
- 理学療法士
- 柔道整復師
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 按摩・マッサージ指圧師
4.2. 資格取得のメリット
上記の国家資格を取るメリットは機能訓練指導員になれることだけではありません。ほかにも給与面や待遇、転職など様々なメリットがあります。ここでは簡単に国家資格を取得することによるメリットをご紹介していきます。
資格手当が出るので給料が良い
国家資格を取得することで特に資格を有さないスタッフと比べるとよい給料がもらえるというメリットがあります。特に機能訓練指導員は介護施設にとって配置が義務図けられておりますのでスタッフとしての需要が高いこと、機能訓練加算を取得できることが強みになっています。 また特にデイサービスなどでは一般的に夜勤はありませんので職場に復帰を考えている主婦の方などにとっては比較的自由の利く働きやすい環境になっているのが魅力です。
国家資格を取得するので仕事の選択肢が広がる
国家資格を取得する大きなメリットとして働くフィールドが増えるということも大きなメリットです。万が一今の職場に不満を持っているとしても国家資格を取得することで以下のような職場へ開業や転職が可能になります。
- 開業
一つ目が自分でビジネスを起こすことです。柔道整復師、按摩・マッサージ指圧師は資格を使い治療行為を行うことが可能です。そのほかの資格に関しては開業権を持たない(医療保険を使えない)資格ですが、例えば理学療法士が機能訓練指導員として看護師など人員を雇用することが出来れば通所介護を経営することが出来ます。最近は自分の理想のリハビリテーションを行いたいという思いで通所介護や訪問看護ステーションを立ち上げて経営者になる人も増えてきています。 - 病院などの医療機関
先に挙げた7つの資格はいずれも医療従事者(コメディカル)としての資格ですので介護領域以外でも病院やクリニックなどに就職することが可能です。介護の領域はいわゆる慢性期という病気や障害をおってある程度時間のたった方がほとんどを占めるのが特徴です。病院やクリニックなどでは受傷から時間があまりたっていない急性期や回復期などの領域、整形外科や脳神経外科などの専門領域、スポーツ外来など様々な種類の就職先がありますので他のジャンルに興味がある人にはおすすめですね。 - 他の介護施設や訪問系のサービス
機能訓練指導員として勤務するのは通所、いわゆる通ってもらうサービスが主になりますが、介護保険分野では訪問系のサービスもあり事業所なども多く開設されています。訪問看護ステーションや訪問リハビリなどの需要は地域包括システムの推進により高まっている現状にありますので多くの求人が行われており特に看護師さんはステーション維持のための絶対条件でもありますので給与面や待遇面で恵まれているという側面も見られます。 - 株式会社など
まだまだ全体の数は少ないものの、先に挙げた企業も含め病院、介護施設以外に活躍のステージを移す専門職も増えています。福祉用具の分野、公衆衛生、介護ロボット産業、下着メーカーに至るまで様々な会社で理学療法士の監修が行われており一昔前の「医療職=病院勤務」のようなイメージは変わりつつあります。
4.3. 資格取得のコスト
ここまで資格取得の可能性に触れてきましたが、ここで気になってくるのが資格を取るまでのコストですよね。ここではあくまで一例ですが各専門学校や大学を卒業するためにどれくらいの学費がかかるのかを比較していきます。
- 看護師
看護師の学費は国立の大学から専門学校まで幅広いのが特徴です。初年度の学費(授業料以外も含む)だけでいえば100万円以内のところから、200万円を超える学校までありますのでチェックしておきましょう。当然国立の大学は授業料が安いですが、その分倍率が高く入学するのが困難になります。授業料が高い専門学校や私立大学は国立大学に比べると入学はしやすいので受験要綱などを確認してみましょう。 - 理学療法士・作業療法士
理学療法士、作業療法士の専門学校の初年度にかかる費用はおおよそ170万円といわれています。卒業までの総額の目安は450万円以上になりますので入学しようとしている学校の状況を確認しましょう。 - 言語聴覚士
言語聴覚士になるためには2つのパターンがあり大卒の方は2年間の専門学校に入学することができ、高卒の方に関しては3~4年間の専門学校に通います。3年間の総額は理学療法士の専門学校とおおむね同じくらいの総額がかかります。2年制の場合は1年間の学費がありませんので100万円以上安くなります。 - 按摩・マッサージ師
学費は総額で500万円程度が相場となります。 - 柔道整復師
平均的な学費は300万円~500万円とされています。
このようにどの資格を取得した場合でもそれなりのコストはかかります。ただ、今後の活動や収入、職業としての安定度など魅力の高さもありますので国家資格に挑戦する価値は十分にあります。また働きながら通う方のためにも学校側としては夜間部がある、資格取得に積極的な法人であれば奨学金や貸付制度があるところもあります。すでに働いている方は学校側、職場側にどのような制度があるのかしっかりと確認しておきたいですね。
5. まとめ
いかがだったでしょうか?このように機能訓練指導員として活動するためには国家資格が必要になります。国家資格を取得するには安くない学費や課題、実習などがあり特に働きながらだと大変な道のりになります。しかし国家資格を取得することによって得られるメリットも大きく価値があるものです。人生の幅が広げるためにもぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?
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