介護現場での事故、どう防ぐ?起きた時の対応と予防策を解説!
介護職として働く中で、誰もが避けたい介護事故。
とはいえ全てを防ぐことは難しいのが現状だと思います。
忙しい介護現場の中、事故を防ぐ対策に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか?
この記事では介護職として働く上で発生しやすい事故の種類、事故が発生した際の対応方法、事故防止の対策方法について解説しています。
ぜひ最後まで読んでいただき、みなさんの働く現場でも役立てていただけたら幸いです。
介護事故とは?
「介護事故」とは「介護中に起きる事故」です。
怪我の有無や治療の必要性などは関係ありません。
介護中に発生した転倒、転落、骨折など実害のあった事故は当然該当し、実害が出る可能性のあった事実に対しても「ヒヤリハット」という事故として扱われます。
また、怪我が起きないような物品の紛失や破損、利用者さんの忘れ物も介護事故の一つです。
介護事故はあくまでもサービスを受けている利用者さんに起きた事故になります。
介護者に起きた事故は労災として扱われます。
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介護中に発生する事故の中でも頻度が多いものは
- 転倒、転落
- 誤嚥、誤飲
- 紛失、破損
があります。
これらがどのような事故なのかを詳しく見ていきましょう。
転倒・転落
介護職として働く上で最も身近な事故は転倒・転落になります。
読者のみなさんも転倒・転落を防ぐために頭を悩ませている方は多いのではないでしょうか。
若く健康な人が転倒する分には笑い話で終わりますが、高齢な利用者さんが転倒した場合、最悪命にも関わる場合もあります。
介護労働安定センターが平成30年にあげた報告書によると介護施設内で発生した事故状況分類にて転倒・転落が65.6%と最も高い割合を占めています。
- 一人で歩くことが困難な利用者さんが、職員が目を離した隙に自分で歩こうとし転倒
- 夜勤中の巡回時、よく休まれていると思っていた利用者さんがベットからの転落しているのを発見
など、想像するだけでゾッとするようなシチュエーションが発生するのが介護の現場。
また、高齢である利用者さんは骨粗鬆症などの要因で骨が脆い方が多く、一度の転倒で骨折に至り、余生が寝たきりの生活になってしまうこともあります。
介護職として働く限り、常に転倒転落の事故を予防する意識をしておく必要性があるでしょう。
誤嚥・誤飲
食事の時間を楽しみにしている利用者さんは多いと思います。
しかし、そんな楽しい時間でも「誤嚥・誤飲」の事故には十分に注意する必要があります。
誤嚥・誤飲の事故は、先ほども述べた介護労働安定センターが平成30年にあげた報告書でも事故発生状況にて13%であり、転倒・転落に続き第2位となっています。
高齢になると喉の筋肉が衰え飲み込みが困難になったり、認知症の症状により食べられない物を間違って認識し飲み込んでしまうこともあります。
転倒・転落事故と比較すると発生件数は少ないですが、もし起きてしまえば命に関わる事故です。
利用者さんが食事をされる時間には細心の注意を払いましょう。
紛失・破損
訪問介護サービスの現場で最も発生しやすい事故が訪問先の「紛失・破損」に関する事故となります。
物損事故は命に関わらないからといって安易に考えてはいけません。
もしかしたら破損した物は利用者さんにとっては命よりも大切な物である可能性もあります。
利用者さんだけではなく、利用者さんの大切な物を守るのも介護職の仕事です。
クレームなどになれば賠償責任を問われることもあります。注意をしましょう。
介護事故がよく起きる場面
「事故を防ぐために常に全身全霊で注意しろ!」
という心持ちは大切ですが、現実に行うとなると難しいものです。
介護事故には発生しやすい場面があります。その場面を中心に対策を練っていくことでより効率的に事故を防ぐことができるでしょう。
介護事故が特に発生しやすい場面としては
- 移動、移乗
- 食事
- 排泄
- 入浴
などがあります。
それぞれの場面で発生しやすい介護事故に具体例を見ていきましょう。
移動・移乗
利用者さんの動きがある移動・移乗の場面では当然、介護事故のリスクは高まってきます。
具体例としては
- 車椅子からベッドに移乗する際、フットレストに足をぶつけて内出血
- 利用者さんが単独歩行で移動している時に転倒
- 外出先での転倒、所在不明
などがあります。
食事
「よくある事故の種類」でもあげた通り、食事の場面も事故に注意する必要があります。具体例としては
- 食堂で落ちている食物、水分で滑り転倒
- 食事の誤嚥・誤飲事故
- 食形態の違う食事や禁食を提供してしまうなどの提供ミス
- 服薬ミス
などがあります。
排泄
トイレでの排泄、オムツ交換でも事故が発生する可能性があります。
具体例としては
- トイレ使用中の便器からの転落
- トイレに移動する際の転倒や手すりなどに体をぶつける内出血
- 排泄物や、オムツ、パット内のポリマーの異食
- 下剤の誤薬
などがあります。
入浴
衣類を纏わず滑りやすい入浴中も事故が発生しやすい場面の一つです。
入浴に関わる事故としては
- 脱衣所、浴室の濡れた床で滑って転倒
- 浴槽にて溺れる
- 浴槽、浴室内の温度差によるヒートショック、湯あたり
- 剥き出しの肌へ備品がぶつかり内出血
などがあります。
その他の介護事故が発生しやすい場面
- 歯磨きや口腔ケア時、口腔内の怪我や入れ歯の紛失
- 拘縮のある方の無理な着替えによる骨折等の怪我
- 利用者同士のトラブル、他害による外傷
- 介護職員のミスによるサービスの提供漏れ
介護事故 正しい対応は?
介護事故が発生した際は適切な対応を取ることが重要です。
被害を最小限にし、クレームなどのトラブルを回避することに繋がるからです。
そこで、事故発生時のポイントごとに正しい対応方法について解説します。
利用者への対応
事故が発生した直後には、二時的事故を防ぐためにも被害にあった利用者さんに対して安全を確保する必要があります。
それと並行して他の利用者さんの安全も確保する必要があります。
事故ばかりに注意がいってしまい、他の方々が疎かになることがあるので注意しましょう。
その後は怪我に対しての応急処置、場合によっては救急車を呼ぶ必要があります。
この際、一人では冷静な判断ができないことが多いので、可能な限り周りの職員に応援を頼みましょう。
また、事故の当事者となった場合は報告の義務があります。
時間を見つけて事故の詳細や対応は記録として残しておきましょう。
家族への対応
利用者さんが事故のあった際は迅速に家族へ報告する義務があります。
事故現場が落ち着き次第、家族へ一報を入れましょう。
伝える内容としては「事故の経緯」や「本人の容態」を報告します。
もし通院や救急車を呼ぶ必要がある際は家族に付き添ってもらうこともあります。
家族への報告が十分に行われない場合、クレームに発展する場合もあるので注意しましょう。
仮にこちらに過失がないとしても
「ご心配をかけ申し訳ありません」
と謝罪しておくことが重要です。
事故報告書の作成
事故が発生した際は記録として残しておく必要があります。
また、大きな事故の場合は行政に報告する義務があり、その際は決められた様式で事故報告書を作成しなければいけません。
事故報告書を作成する目的としては
- 原因究明
- 再発防止
となります。
決して事故に対しての反省文ではありません。より良い介護サービスを築いていくための記録となります。
書く内容については
- 事故を起こした当事者、関係者の氏名
- 事故にあった利用者の情報
- 事故の発生日時、場所、事故の種類、怪我の程度などの発生状況
- 事故発生の経緯・原因
- 事故発生後の対応・状況
- 再発防止対策案
- 損害賠償状況・家族とのトラブルの状況
です。
記録の書式については勤務する事業所にて確認しましょう。
行政に提出する場合の事故報告書の書式については市区町村のホームページより見ることができます。
自分の勤める地域の書式については必ず確認するようにしましょう。
画像は前橋市の事故報告書の様式、例文です。
提出先については勤めている地区の市町村です。
緊急性・重大性が高い事故については所轄の都道府県の振興局健康福祉部へ報告することとなります。
直接役所の窓口に提出する自治体もあれば、メールでの提出となる場合もあるようです。
関係各所への連絡
事故が発生した際は家族や行政以外の関係者へも連絡しなければいけません。
例としては
- 利用者さんの担当ケアマネージャー
- 利用者さんが他の介護サービスを使っている場合はその関係者(ケアマネからの連絡が間に合わない場合)
- 医療機関(薬の誤薬などがあった場合には主治医から指示を受ける)
- 警察(事件性がある場合や、所在不明等で捜索の必要性がある場合)
- 保険会社(被害にあった利用者さんの治療費や入院費等を保険にて支払うことがあるため)
などがあります。
事故にあった利用者さんに関わる人を想像し、その人達が情報を知らず困ることがないようにしましょう。
職員への状況説明・注意喚起
事故が発生した後には事故に関わっていない職員への状況説明・注意喚起をする必要があります。
事故にあった利用者さんのことを心配している職員もいるだろうし、何より情報を共有しなければ再発防止に繋がりません。
丁寧に行っていきましょう。
これだけはやってならない!介護事故の誤った対応
起きてしまった介護事故に対して、無知や保身のために誤った対応をしてしまう人がいます。
読者の皆さんが適切な事故対応ができるように介護事故の誤った対応について紹介していきます。
繰り返しますが、くれぐれもやってはいけません。
事故の報告漏れ
悪い報告ほど早くする必要があります。
事故の報告が漏れ、関係者に伝わるのが遅くなったためにクレームにつながることは珍しくありません。
報告が遅くなればなるほど対応が遅れ、余計な迷惑をかけてしまいます。
また報告漏れがあった場合、受けた方にとっても事業所に対して非常に悪い印象を持ってしまいます。
事故の関係者に対しては速やかに報告するようにしましょう。
事故の隠蔽
説明する必要もないかもしれませんが、事故の隠蔽は絶対に行ってはいけません。
とはいえ人間は弱い生き物です。大きな事故の当事者となってしまった場合、
「なんとか隠せないかな」
とは誰もが思ってしまうものです。
このような風潮になる職場は、事故に対して非常に高圧的に指導をする傾向があります。
どうせ怒られるのであれば、バレないように隠蔽を試みるのも人間の性なのかもしれません。
事故が起きても安心して報告できるような事業所の風土を作ることが、事故の隠蔽を防ぐことにも繋がるでしょう。
介護事故を防ぐために
起きてしまった介護事故はなくすことはできません。
再発防止に活かせるように、事故によって得た情報は最大限に生かしていく必要があります。
未来の事故を防ぐのに役立つよう
- よくある事故の要因
- 事故の防止策
について説明します。
介護事故の要因
事故が起きたあと再発防止策として
「注意して見る・気をつける・意識する」
と上げる人がいますが、これでは介護事故を防ぐことはできません。
事故の状況を分析し、明確な要因を見つけることが重要となります。
よくある介護事故の要因として
- 現場の忙しさ、人員不足
- 知識や技術の未熟さ
- 連携、連絡の不備
の3つが挙げられます。
これらの要因を踏まえながら、介護事故の防止策を5つ紹介します。
防止策1 介護現場の環境やルールを見直す
介護事故の再発防止策として介護現場の環境やルールを見直すことが最も有効であるといえます。
人間は必ずミスをします。これは努力をすれば頻度を下げることはできますが、ゼロにすることはできません。
しかし環境によるアプローチには人為的ミスというのは殆ど起きません。
例としては
- 浴室が滑らないように滑り止めマットを敷く
- 利用者さんが歩きやすいように手すりをつける
など、実行すれば必ず事故の確率を下げることができます。
また、職場の「昔からそうだから」というルールも見直す必要があります。
「その仕事、今やる必要あるの?後からでもいいんじゃない?」
このような内容がある場合は思い切ってルールを変えてしまった方がいいかもしれません。
防止策2 注意するべき人に注目する
人員不足を事故の要因としてあげましたが、すぐに解決できることではありません。
限られた人員で事故を防ぐためには事故のリスクが高い利用者さんに常に注目しておく必要があります。
介護現場で大勢の利用者さんを見る際に
「全体を見なければいけない」
「利用者さんの細かな部分まで見えるようにしなければいけない」
という考えを持つ方も人もいますが、視界に入るもの全てに注意を向けるということはなかなか難しいものです。
よって
- 利用をされてまだ時間が立っておらず情報が少ない人
- 体調が悪い人
- よく転倒する人
など、限られた人員、注意力を有効活用するためには注意すべきポイントをはっきりさせた方が良いでしょう。
防止策3 経験の浅い職員を教育する
経験の浅い職員は不安でいっぱいです。
また自己流で介助を行う可能性があり、ベテラン職員に比べ事故のリスクが高い傾向にあります。
新人職員への教育は一度教えたからOKということではありません。
しっかりと一人でできるようになることが重要です。
戦力になってもらうためにも根気よく教育をしていく必要があります。
時間がかかり、すぐには結果が出ないかもしれませんが、長期的に考えると確実に事故は減っていくはずです。
防止策4 ヒヤリハットを報告・共有する
ヒヤリハットを共有するという方法は多くの施設で行われています。
「ハインリッヒの法則」に基づき、小さな事故からもしっかりと学ぼうというものです。
「ハインリッヒの法則」とはアメリカの損害保険会社の調査をしていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが見つけた法則です。
1件の重大な事故の背景には29件の軽い事故があり、その裏には300件のヒヤリハットが存在するというものです。
日々の業務の中でヒヤッとしたことを放置せず、一つ一つ丁寧に対策を立てることにより重大な事故を未然に防ぐことに繋がります。
防止策5 事故を分析し、原因を見極める
事故の原因を過去の前例から決めつけてしまい、効果の薄い対策を立ててしまうことがあります。
このようなことを防ぐには日頃から小さな事故も隠さず情報を共有してることが重要です。
また、介護事故には「防げる事故」と「防げない」事故が存在します。
「防げない事故」に対して今後の対応を検討することは重要ですが、
「誰のせいなのか」
「なぜ防げなかったのか」
などを議論するのは効果的とは言えないでしょう。
事故の要因は細かく分類化し、変えることができるもの、変えることができないものを区別しましょう。
原因が明確になっても対策を立てることができない場合もあります。
そのことに時間を費やすのではなく、変えることができる原因に対して対策を立てましょう。
介護事故まとめ
今回の記事では「介護事故の種類」「介護事故がよく起きる場面」「実際に起きた時の対応方法」 「介護事故の再発防止策」について紹介しました。
できれば防ぎたい介護事故です。
しかし、人が人にサービスを提供する以上、どうしても全てを防ぐのは難しいのが現実です。
起きてしまった事故についてはなくすことができません。
まずが二次的被害が起きないようしっかりと対応をしましょう。
現場が落ち着き次第事故を分析し、要因を明確にし未来の事故を減らすことに注力しましょう。
適切な対応を行っている事業所とそうでない事業所で、はっきりと差が出るのは介護事故です。
読者のみなさんの関わる介護現場で事故が減り、利用者のみなさんがより良い介護サービスが受けられることを祈っております。
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