日勤、夜勤別ひな型付き!介護記録の書き方とNG表現を完全解説!
1. 介護記録って何?
1.1. 介護記録とは?
介護記録とは、介護サービスを行った日時・担当・内容・結果等を実施者が記録すること或いは記録そのものを言います。
広義にはカンファレンス記録・ヒヤリハット・事故記録等も介護記録と表現することがあるようです。
最近は紙媒体だけでなく、タブレットやパソコンの介護ソフトを使って記録する事業所も増えてきています。
1.2. 介護記録の目的
職員の情報共有
介護サービスは様々な職員が交代で行うことが通常です。個々が行った介護サービスは「点」ですが、記録して結び付けていくことで「線」となります。そのことにより複数の職員と情報が共有され、利用者の状態把握や適切な介護サービスが提供されているかを確認する根拠となります。
事故や訴訟の際の証拠品
介護現場においては不慮の事故や急死等が起こり得ます。そうなると行政職員や警察の対応をしなければならないことがありますが、求められるのは主に記録です。例えば「1か月前の○時○分の××さんの様子」を尋ねられ、スラスラと答えるのは不可能に近く、数日・数時間前の話であっても記憶だけが頼りでは信憑性に欠けます。
そこで頼りになるのが記録であり、それが残っていれば、記憶が曖昧でも当初どのように対応していたかを証明できます。 一方、いくら「その時は懸命に対応していた」等と主張しても、記録に残っていなければやっていなかったのと同様に扱われてしまうこともあります。
人事考課・指導の資料
あまり関係がないように思えますが、例えばAさんが介護すると皆が満足感を得ているのですが、Bさんが介護すると決まって皆が不穏になるということがあります。単純にソリが合わないということもありますが、Bさんの介護が不適切なことに起因している可能性もあるのです。そのような場合、正確に記録ができているかを評価するのは勿論のこと、Bさんがどのような対応をしているのかを洗い出し、人事考課や指導に役立てることもできるのです。
ケアプランの見直し
ケアプランは利用者の心身状態やニーズに応じて目標を設定し、達成に向けて必要な介護サービスやその提供時間・回数等が記入された書類で、ケアマネージャーが作成します。基本的に介護サービスはケアプランに基づいて提供されますが、それは1回作成して終わりではなく、利用者の心身状態やニーズの変化・介護認定の更新等に応じて定期的に見直され、更新されます。
その際の判断材料の一つが記録であり、それを紐解いていくことで提供した介護サービスが目標達成に向けて有効なのか・本当に必要なのかといったことを見極めていくのです。実際に介護している職員はあまり意識することがないかもしれませんが、介護サービス提供の根拠がケアプランにあり、記録がその評価に役立つことを知っているだけで意識的な変化が生まれるかもしれません。
1.3. 介護記録の内容
ケアを行った日時と場所
- 明け方
- 昼過ぎ
- 夕方
- 夜中
等の表現はだいたいの時間帯は分かりますが、具体的に何時なのかが分かりません。また、容易に分離できる書面であれば、万が一の紛失に備え、西暦や年月日まで記入することが望ましいです。訪問サービスであれば自宅であることは明白ですが、施設等であっても居室・浴室・トイレ等、介護する場所が変化しますので、それを記録することも大切です。 文脈から読み取れることが多いですが、誰が読んでも場所が分かるかどうかを意識して記録する必要があります。
ケアの内容
何をしたかを記録するという意味合いは勿論のこと、先述のように介護サービスはケアプランを根拠に提供されますが、それが適切に実施されているか・その結果どうなったかを記録するという意味でも、内容を記入する必要があります。
利用者の心身状態
職員は利用者にとって身近な存在になることが多いですが、何となく違和感をおぼえたものの、記録を怠ることにより関係者間で経緯が把握できず、対応が遅れてしまうということがあります。些細な日常の変化に気付く観察力を磨き、それを記録・共有することで病気の早期発見等に繋がることもよくあるのです。
介護担当者の名前
責任の所在を明らかにすることが主たる目的ですが、過去の状況を確認する必要が生じた際のためにも、担当者を明らかにしておく必要があります。良くも悪くも対応者によって本人の反応が変わることもあり、担当者の選定に役立つこともあります。
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ケアきょう求人・転職の無料相談2. 介護記録の書き方
2.1. 5W1Hを意識する
「5W1H」とは
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(誰が)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
したのかを示します。介護サービスの内容や利用者の状態を列挙したもの・あまりにも表現が漠然としたものは、記録として意味をなしません。毎回5W1Hを網羅する必要はありませんが、意識しながら記録することが大切です。また、複数人が関与する状況や詳細の記入が必要な場面においては特にそれらを明確にしておかないと、書いた本人にしか意味が分からない物語になってしまいます。
2.2. 専門用語や難しい言葉、略語の使用は避ける
専門職である以上ある程度の用語は理解しておく必要があり、適度な使用が望まれますが、度を過ぎて専門的な用語や略語ばかりを使用すると、読解や共有の部分で問題が発生する可能性があります。難しい用語を多用すれば知識があるようには見えますが、記録の趣旨から考えるとあまり望ましいとは言えません。
2.3. 主観と客観をバランスよく分けて書く
主観と客観の大まかな意味合いとして
定義 | |
---|---|
主観 | 自身の好み等、自分が感じるものの見方で、その意見が他人の意見と同じとは限らない |
客観 | 調査データや数値として測られ、自分の意見と他人の意見は一致する |
と言われます。
例
事実 | 食事中の発語がなく、食事を完食しなかった |
---|---|
主観的表現 | いつもより元気がないように見え、食事を残していた |
客観的表現 | 食事中は必ず故郷の話をするのに今日は一切話をせず、主食を5割・副食を5割食べた時点で手を止めていた |
一概にどちらが正しいとは言えませんが、両者がバランス良く記載されているのが望ましい記録と言えるでしょう。
2.4. ケアの内容を具体的に根拠と共に書く
介護のきっかけとなる利用者の言動や状態に対し、どのように対応し、その結果どうなったかを記録します。入浴や排泄介助等は特に理由を考えずに定時で実施されることが多いですが、本来は利用者個々の排泄リズムや生活習慣に基づいて行われるべきものであり、全ての介護サービスには根拠があるはずだということを念頭に置いておく必要があります。
2.5. 想像や推測を書かない
記録 | |
---|---|
良い例 | 興奮して大声で暴言を吐いている(事実の客観的記述) |
悪い例 | 家に帰りたいのに帰らせてもらえないので興奮していると思います(推測の入った記述) |
例えばひどい興奮状態が見られる場合、「家に帰りたいのに帰らせてもらえないので興奮していると思います」と書くのは、仮にその可能性が高かったとしても、記録者の推測に過ぎません。原因分析のため必要な場合はそれらを記録すべきですが、事実の説明としては「興奮して大声で暴言を吐いている」等と記入するのが相応しいと言えるでしょう。
3. 介護記録を書くときのNG表現
3.1. 侮蔑表現、差別表現は避ける
当然のことですが、記録において職員の好き嫌いや偏見等は排除すべきです。 また、認知症という用語は一昔前は教科書やHOWTO書に「痴呆・ボケ・耄碌」等と記載されており、統合失調症についても「精神分裂病」と言われていました。当時は悪意なく普通に使われていましたが、現在では侮蔑的な意味合いで捉えられてしまいかねない表現となっています。これらはほんの一例で、他に「徘徊」「弄便」等も挙げられますが、その表現が適切なのかどうか、時流を知っておくことも大切です。
3.2. やわらかい表現を使用する
- 拒否された
- こちらの意図が伝わらなかった
- 他の職員が協力してくれなかった
等の事情で思うように介護ができないことは多々あります。あまり気分のよい状況ではありませんが、介護記録は閻魔帳や恨み帳ではありません。ギスギスした気持ちでした記録には気持ちが表れます。利用者のことをどう表現するのか(お客様・入居者様など)文章の言い回しをどうするのか(ですます調・断定調)といった部分は事業所の方針に委ねられますが、読み手が不快な思いをしない表現を用いる必要があります。
3.3. 指示用語をそのまま使うのは避ける
「~させた」というのが定番ですが、他に認知症で意思疎通が困難な場合に「指示が入らない」と表現することもあります。どちらも目上の者が目下の者に対して用いる意味合いが込められています。介護する側としてもらう側という側面が未だ拭い切れない現実はありますが、決して望ましい表現ではありません。具体的には「~を勧める」等、あくまでも対等の立場での表現を用いる必要があります。
4. 良い介護記録の例と悪い介護記録の例
4.1. 事故発見時の記録
◎良い
○月○日○時○分 担当:△田△男
訪室するとベッド横でそれを背もたれにして床に座り込んでいる。尋ねると「いちいち職員さんを呼ぶのは悪いので、自分でお茶を取りに行こうとして立ち上がったが、急にふらついて尻もちをつき、動けなくなった」との返答。
×悪い
○月○日 昼食後 担当:△田
訪室すると転倒されていた。トイレによく行くので、その時に足を滑らせたと思われます。
悪い例では明確な時間が分かりません。また、同姓の職員がいる場合も想定し、フルネームか名前の頭文字を付けることを推奨されることがあります。原因分析のための仮説や推測は必要ですが、事実の説明とは別個にした方がよいでしょう。良い例の方が状況を理解しやすいですし、
- バタバタした雰囲気を出さないよう配慮しよう
- お茶は手の届く範囲に置いた方がよい
- なぜふらつきが起こったのだろうか
と次の対策立案にも役立てられます。
4.2. トイレ誘導の記録
◎良い
トイレ誘導を実施。自室ベッドからトイレまで見守りにて移動。「終わったら呼ぶので待っていて下さい」とのことで、下着を下ろして着座されたのを見届けてから一旦退室する。コールがあったため排泄物を確認、排尿と少量の硬便あり。拭き残しがあったため、清拭を実施。
×悪い
トイレ誘導、排尿(+)排便(+)
排泄物の量の表現は様々なので難しい部分がありますが、悪い例はその時の状況や排泄物の状態がまるで伝わってきません。また、この利用者をトイレ誘導する場合、どの程度の介入が必要なのかも読み取れません。以上2例はあまりにも極端な例ですが、意外と現場でよく見られます。
はっきりと良い悪いを二極化しにくい問題であり、ある程度のことは分かっている前提で記録を簡素化するという考えもあるのですが、少なくとも良い文例の方は前述の趣旨を捉えられており、初めて読んだ方でもある程度の状況が理解できたのではないでしょうか。
5. 忙しい中効率よく介護記録を書くポイント
5.1. 業務のルーティーン・利用者の行動パターンを覚える
記録のための隙間を見つけることができる場合があります。(例えば、施設であれば13:30から14:00の間は居室で昼寝をされる方が多く、コールも少ない等)それでも現場は日々流動しますので、思い通りにいくとは限りません。些細なことはすぐに忘れてしまいますので、常にペンとメモ帳を持ち歩き、時計を見る癖をつけておくことも大切です。
5.2. 介護記録のひな型を作っておく
介護サービスには大きく分けて訪問・通所・入居がありますが、大抵は雛型が準備されており、それに従って記録するのが一般的です。紙媒体の場合、慣習的に使用されてきたものは大切なポイントが抜けていたり、時流に合わないことがあります。職員間で意見を出し合い、記録の意義を達成し、効率良くポイントを押さられる雛型になるよう定期的に見直しすることも大切です。
最近はパソコンソフトやタブレットでの記録も増えてきています。皆が操作を覚えるまで手間がかかるというデメリットはありますが、現場の実情を鑑みて作成されていますので、よく使う文言の予測変換やテンプレートが準備されていることが多く、定期的なアップデートもあります。
5.3. 業務につき話し合う
「介護ばかりで勤務中に記録ができず、残業続き」という声があちこちから聞こえてきますが、どちらも疎かにできません。つい社会が悪い・運営が悪い等と不平不満が出てしまいそうになりますが、そうしたところで時間は生まれません。業務パターンや分業の見直し、自身の意識や周囲との連携で解決できることもあります。特に古参職員が多い事業所では慣習に捉われて新しい試みを嫌う傾向がありますが、それでは進歩できませんので、前向きに話し合い、変化していく必要があります。
6. まとめ
- 介護業務に追われて忙しい
- ゆっくりコミュニケーションをとりたい
- パソコンが苦手
- 文書が不得意
- 書き物をするために介護の仕事を選んだのではない
等、様々な理由で記録を疎かにしたり難色を示す方がいますが、それらも全て含んでの介護と言えます。給料を得て介護サービスを提供する以上はプロであり、責任が付いて回ります。
反対に、正確な記録を残すことが有事の際に自身や法人を守ることにも繋がります。 記録の趣旨とポイントさえ押さえていれば字が下手くそでも、文章や表現が拙くても目的は達成できますし、視野を広げると記録には様々な意味があることが理解頂けたと思います。たかが記録、されど記録、明日からの意識改革にお役立て頂けましたら幸いでございます。
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