【介護福祉士監修】介護職ができる喀痰吸引の手順は?注意点や吸引前の準備も紹介
と喀痰吸引の安全な方法を知りたいと考えている方は多いでしょう。
この記事では、介護職ができる喀痰吸引の正しい手順や注意点、吸引前の準備も併せて紹介します。
介護職ができる喀痰吸引の正しい手順方法を知っておきましょう。
介護職ができる喀痰吸引等制度とは?
喀痰吸引等制度とは、介護・医療の現場のニーズを踏まえ、平成24年度(2012年)に施行された制度です。
たん吸引や経管栄養は「医療行為」であり、法律が制定されるまでは、厚生労働省の通知により、一定の条件下で認められていました。
この法改正により、規定の研修を受けた介護福祉士および介護職員は、たん吸引などの医療行為ができるとされています。
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実施できる医療的ケアの主な範囲は、喀痰吸引と経管栄養です。
医師の指導があれば、介護職員などによる実施が認められています。
- 喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・器管カニューレ内部)
- 経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養)
現在、前述した医療的ケア以外は特に認められていません。
医療行為についてさらに知りたい方は下記の動画も参考にしてください。
喀痰吸引等研修の特徴
医療的ケアを安全に行うためには、医師や看護師の指導のもと、たん吸引や経管栄養の具体的なやり方を学ぶために研修を受ける必要があります。
ここでは、喀痰吸引等研修の特徴を2つ紹介します。
基本研修と実地研修で構成されている
痰吸引等研修は、基本研修と実地研修の2つに分かれています。
基本研修
「基本研修」では50時間にわたる講義のあと、人形モデルを使って喀痰吸引と経管栄養を入れる演習をします。
喀痰吸引の演習は、口や鼻、気管から各5回以上のトレーニングが義務付けられています。
経管栄養も同様に各5回以上の演習をします。
これらの演習が終わると、プロセス評価が実施され、「問題がない」と判断されるまで実地研修に進むことできません。
実地研修
「実地研修」では、実際の介護施設や在宅の現場で利用者に対して行います。
基本的には、介護職員の勤務先で実施されることが多いようです。
口腔吸引は10回以上、鼻腔・気管カニューレ内部の吸引は20回以上実施する必要があります。
経管栄養の演習は、胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養のケア実習を20回以上実施しなければいけません。
演習が終わると、再びプロセス評価が行われます。
実地研修に合格すれば、「認定特定行為業務従事者」が発行され、喀痰吸引ができる介護職として正式に認められます。
医療的ケアや対象者の範囲で3つの研修に分かれている
喀痰吸引等の研修は、対象者や医療的ケアの範囲で3つの研修に分かれています。
- 第1号研修:不特定多数の利用者に対して、口腔・鼻腔・気管カニューレ内部の吸引が可能。胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養のすべての経管栄養も可能。
- 第2号研修:不特定多数の利用者に対して、口腔内・鼻腔内のみの吸引が可能。胃ろう・腸ろうの経管栄養も可能。
- 第3号研修:在宅で過ごしているALS患者や重度障害車などの特定の利用者を対象とし、口腔・鼻腔・気管カニューレ内部の吸引ができる。経管栄養を必要としている患者も同様。基本的に、患者が必要としている以外の研修は受けられない。
第1号研修は、最も広範囲な内容をカバーしている研修です。
第2号研修も不特定多数の利用者を対象としていますが、医療的ケアの範囲は第1号研修よりも限られています。
第1号研修と第2号研修は主に介護施設で働く職員が、より多くの利用者に対して幅広いケアを提供できるよう設計されています。
一方、第3号研修は特定の利用者を対象にし、利用者本人が必要とする範囲のケアが学べます。
第3号研修は、主に在宅介護の現場で働く介護職員を対象としているため、利用者が必要とする医療行為を学ぶ必要があります。
喀痰吸引をする前の準備
スムーズに喀痰吸引をするには、事前の準備が欠かせません。
ここでは、喀痰吸引をする前の重要な準備のポイントを4つ紹介します。
ベッド周りを整頓する
喀痰吸引を行う前に、まずはベッド周りを整頓しましょう。
不要なものは移動し、必要な道具を手の届く範囲に配置します。
ベッド周りを整えることで、たん吸引中に器具が取れないといった状況を避け、手早い処置ができるでしょう。
石鹸で手を洗う
吸引は、口や鼻など体内に吸引カテーテルを入れることです。
清潔な手を保つ事は、感染症防止の面から考えても非常に重要です。
吸引の前には、固形石けんを使い、流水で十分に手を洗いましょう。
液体石鹸よりも固形石鹸の方がより洗浄力が高いのでおすすめです。
タオルの共有もしないように気をつけてください。
吸引をする意思を確認する
たん吸引をする前に、必ず「吸引しますか?」とご本人さんに同意をもらいましょう。
一度体験してみるとよくわかりますが、吸引は、苦しく非常に苦痛を伴うものです。
特に鼻腔内の吸引は違和感と苦しさで体ごと逃げ出したくなるほどです。
そのため、吸引する利用者には必ず声をかけて、吸引をするか意見を再度確認してください。
利用者の姿勢を整える
吸入カテーテルが入りやすくスムーズに吸引できるように、利用者さんの体と自分の体の姿勢や位置関係を整えます。
利用者さんの頭の高さを変える時は、声かけながらゆっくりと位置を変更しましょう。
対位は看護師と相談しながら、安楽な姿勢を保てるように配慮してください。
体勢を整えたら、痛みや不快感がないか利用者さんに確認しましょう。
喀痰吸引をする手順
喀痰吸引には、大きく3つに分けられます。
鼻の穴から入れる「鼻腔内吸引」、口から入れる「口腔内吸引」、気管切開部から入れる「気管カニューレ内吸引」があります。
今回は、口から吸引カテーテルを入れる「口腔内吸引」に焦点をあてて説明します。
①指消毒剤での手洗い
まず、石けんと流水を使ってしっかりと両手を洗いましょう。
もしくは、速乾性擦式手指消毒剤の手洗いでも可能です。
感染リスクや手指に傷がある場合は、手洗い後に手袋の着用を忘れずにしてください。
口腔内・鼻腔内吸引では、未滅菌の手袋やピンセットを使い、カテーテルに触れても問題ありません。
知識として覚えておくといいでしょう。
②吸引カテーテルをつなげ、スイッチを押す
吸引カテーテルを吸引器の管につなぎます。
吸引カテーテルを持つ手とは逆の手で、吸引器のボタンを押します。
③吸引カテーテルの根元を塞ぎ、吸引圧の数値を確認する
カテーテルの根元を非利き手の親指で閉じて、吸引圧が20kPa(キロパスカル)以下であることを確認します。
数値が20kPa以上の場合は、圧力調整のボタンで調整します。
圧力を調整する間は、カテーテルの先端が周りのものに触れないよう気をつけます。
また何度か分けて吸引する場合がありますが、毎回圧力調整をする必要はありません。
④患者に声かけする
吸引を始める前には、患者さんの名前を呼び「〇〇さん、今から口の中を吸引しますよ」と必ず声をかけましょう。
返事ができない患者さんや意識障害がある患者さんの場合も、同様に声かけを必ず行ってください。
⑤吸引する
口腔内吸引を行う場所は、奥歯とほほの間、舌の周囲、前馬と唇の間を吸引します。
口を開けにくい患者さんには、唇をゆっくりと片手で開くか、必要に応じてバイトブロックといわれる気管チューブを噛まないための医療器具を噛ませたりして工夫します。
無理に口を開けると、反射で口を閉じたり、カテーテルを強く噛んでしまう場合があるため、患者さんがリラックスして筋肉が自然に緩むのを待つ必要があるでしょう。
また吸引時に口腔内の喉近くを刺激すると、反射で嘔吐をしてしまう場合があります。
特に食後は吸引を丁寧に行うよう心がけてください。
⑥吸引カテーテルの外側をアルコール綿で拭き、接続管の内側を洗う
吸引後は、吸引カテーテルの外側をアルコール綿で先端に向かってきれいに拭きとります。
接続管とカテーテルの内部は水で洗い流しましょう。
ただし、口腔内や鼻腔用のカテーテルはティッシュで拭くのも可能ですが、気管カニューレ用カテーテルの場合は必ずアルコール綿を使って拭いて下さい。
⑦患者に声掛けをして確かめる
口腔内吸引が終わったら、「〇〇さん、吸引が終わりました。まだ、吸引しますか」と声かけをします。
たんの吸引を再度してほしいか、十分だったかをご本人に確認します。
⑧カテーテルの外側をティッシュで拭き、接続管の内腔を洗う
以上の吸引が終わったら、吸引カテーテルの外側をティッシュで先端に向かって拭き取ります。
次に吸引カテーテルと接続管の内腔を水で洗い流します。
⑨吸引器のスイッチを切る
最後に、吸引器の電源を切り、処置を完了します。
医療職に連絡する判断基準
たん吸引中に利用者の状態に変化が見られた場合、介護職員は直ちに看護師などの医療職に連絡する必要があります。
状況が悪化する前に適切な対応をしてもらうためです。
ここでは、喀痰吸引を行っている介護職が、看護師や他の医療職に連絡を取るべき判断基準を5つ紹介します。
唾液や痰が十分に引ききれないとき
介護職員がたん吸引を行っても、唾液や痰が十分に引ききれない時があります。
唾液や痰が排出できないと、吸引をいくらしても患者さんは苦しく、体力も消耗します。
特に患者さんが苦しい症状をしている場合は、すぐに看護師に知らせましょう。
酸素飽和度が90%以上にならない
パルオキシメーターの酸素飽和度がなかなか90%以上にならない場合は、看護職に連絡します。
通常の酸素飽和度は、96〜99%の間です。
酸素飽和度が90%以下まで落ちると、体に十分酸素を送れていない状態だと理解しましょう。
酸素飽和度が90%以上にならない時は、必ず看護職に報告してください。
声掛けの反応が薄い
患者の表情がぼんやりしていたり、声かけしてもいまいち反応が薄い場合は、すぐに看護師に伝えます。
特に意識障害や唇や爪が青紫色になるチアノーゼが出てきた場合も同様の判断をして下さい。
人工呼吸器回路をつけた時、気道内圧が高い状態が続く
「気道内圧」とは、気管や気管支などの内側にある圧力のことです。
通常、気道内圧は、人工呼吸器の設定や患者の呼吸状態により一定に保たれています。
人工呼吸器回路を装着した際に気道内圧が高い状態が続いているというのは、何らかの理由により酸素を送るチューブが詰まっているか湾曲している、または閉塞している可能性があると考えられます。
気道内圧が高い状態が続いた場合は、すぐに看護師に知らせ、要因を確認し処置してもらう必要があります。
利用者の様子がいつもと異なる
介護職員はいつもと利用者の様子がと異なると感じた時点で、すぐに看護師に知らせましょう。
知らせる際には、何がいつもの様子と異なるのか具体的に伝えてあげると、看護職も内容を把握しやすいです。
例えば、「呼吸が不規則になった」「顔色が紅潮した」「急に熱が出た」などの具体的な状況を伝えて下さい。
このような状態が現れた場合は、すぐに報告し、医療職へ依頼しましょう。
研修で正しい手順を身につけて、喀痰吸引を行おう
定められた喀痰吸引の手順を知り、正しく身に付けましょう。
介護職ができるたん吸引は、口腔・鼻腔・気管カニューレ内部の吸引の3つです。
患者さんに異変が起きた場合は、すぐにナースに知らせて下さい。
また喀痰吸引は、今まさ介護現場に求められているスキルです。
喀痰吸引の研修を受け合格すれば、さまざまなタイプの介護施設や在宅事業所で働く可能性が広がり、収入アップ等も期待できるでしょう。
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