介護職で休憩取れないのは労働基準法違反?休憩を取りやすくする工夫もあわせて紹介
介護職をしていると利用者様の対応で忙しく、休憩を取れない日もあるのではないでしょうか?
以上のような悩みや疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、介護職の休憩事情に触れながら、休憩が取れないことと労働基準法の関連について解説します。
また、休憩が取りやすくなる工夫もあわせて紹介します。
ぜひ参考にしてご自分の職場にも活かしてみてください。
介護職の休憩に関する労働基準法について
介護職の休憩について労働基準法と関連付けながら、以下の疑問に答えていきます。
- 夜勤で仮眠や休憩が取れないのは違法?
- 休憩は必ず1時間取らないといけない?
- 休憩が取れない場合は時間外手当はもらえる?
- 休憩中のコール対応や食事介助は勤務時間になる?
- 休憩室がないのは違法?
また、職場の労働基準法違反については、以下の記事でも紹介しているのでぜひご覧ください。
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夜勤で仮眠や休憩が取れないのは違法?
労働基準法第34条によると、休憩時間は以下のようなルールがあります。
- 実働6時間を超える場合:最低でも45分以上
- 実働8時間を超える場合:最低でも60分以上
参考:労働基準法|厚生労働省
また、独立行政法人労働安全衛生総合研究所の公表している資料によると、夜勤が長時間に及ぶ場合は、2時間の仮眠を取ることが勧められています。
参考:介護者のための安全衛生マニュアル|独立行政法人労働安全衛生総合研究所
以上のことを考えると、最低でも1時間以上の休憩が取れない環境は違法となるでしょう。
仕事の進め方や利用者様の対応などによって、休憩が取りにくい場合の対処法については、以下の動画を参考にしてみてください。
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休憩は必ず1時間取らないといけない?
前述のとおり、8時間以上の労働に対しては、最低でも1時間(60分)以上の休憩を取るように労働基準法で明記されています。
介護夜勤のような長時間労働に関しては、2時間ほどの仮眠が推奨されていますが、これについては法律で決まっているわけではありません。
したがって、16時間労働の介護夜勤の場合でも、1時間の休憩が与えられていれば問題ないでしょう。
休憩が取れない場合は時間外手当はもらえる?
休憩が取れる状況であるにもかかわらず、自ら休憩をとらなかった場合は時間外手当が出ない可能性があります。
しかし、事業者側が職員が休憩をとっていないことを知りながら、放置し容認している場合は事業者側の管理責任が問われるでしょう。
万が一休憩が取れない時は、必ず時間と理由をメモに残し、その日のうちに上司に報告し残業代請求を申請してください。
夜勤であれば翌日の明けで帰るまでに申請するのが望ましいでしょう。
休憩中のコール対応や食事介助は勤務時間になる?
仮に休憩中にナースコールに対応したり、食事介助をしたりする必要がある場合、その時間は勤務時間に該当します。
厚生労働省の労働基準法に関する質問と回答でも、以下のように明記されています。
Q:私の職場では、昼休みに電話や来客対応をする昼当番が月に2〜3回ありますが、このような場合は勤務時間に含まれるのでしょうか?
A:まず“休憩時間”について説明します。休憩時間は労働者が権利として労働から離れることが保障されていなければなりません。従って、待機時間等のいわゆる手待時間は休憩に含まれません。
ご質問にある昼休み中の電話や来客対応は明らかに業務とみなされますので、勤務時間に含まれます。従って、昼当番で昼休みが費やされてしまった場合、会社は別途休憩を与えなければなりません。
休憩室がないのは違法?
労働安全衛生規則の第六百十六条によると
事業者は夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるとき、又は労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会があるときは、適当な睡眠又は仮眠の場所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない
と明記されています。
しかし現状は休憩室がない施設も多く存在します。
休憩室があったほうがしっかり休めることは確かなので、上司に相談して休憩室の確保を検討してもらうのもいいでしょう。
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ケアきょう求人・転職の無料相談介護職が休憩をとれない現状と問題点
介護職が休憩をとれない現状には、以下のような問題点があります。
- 休憩時間に介護記録を記入している
- 利用者様の対応で休憩に入りにくい
- ワンオペ夜勤で休憩が取れない
- 休憩を削らないと定時で帰れない
- 5分10分前行動が当たり前になっている
職場によって問題点は異なりますが、自分の施設に置き換えながら参考にしてみてください。
休憩時間に介護記録を記入している
事業所によっては利用者様の対応に追われ、介護記録を業務中に入力できない場合もあるでしょう。
記録ができない理由としては、「手書きのものをパソコンに入力する必要がある」「こまめに記録できる環境やツールが揃ってない」などが挙げられます。
手軽に記録できる事例としては、iPadやiPhoneなどを活用しワンタッチでできるような記録の簡素化やこまめに記録しやすい環境作りなどがあります。
利用者様の対応で休憩に入りにくい
利用者様の対応をしていると、どうしても休憩に入りにくい状況になると思います。
そういった場合は、交替できる状況であればスタッフ同士で声をかけ合う思いやりが大切です。
ただし転倒事故やオムツ交換の途中など、交替が難しい状況もあります。
その都度状況に応じた臨機応変な対応が求められます。
また休憩に入るのが遅くなっても1時間しっかり休めるよう、職員間の協力や相互理解が必要になってくるでしょう。
ワンオペ夜勤で休憩がとれない
ワンオペ夜勤の場合、その日の状況によっては十分な休憩がとれないこともあります。
たとえば、体調不良の利用者様のこまめな状態確認が必要な時や、認知症の利用者様の落ち着きがなく対応に追われてしまう時など、まとまった休憩をとるのが難しくなるでしょう。
ただし、利用者様が落ち着いてしっかり寝ている場合は、ゆっくりと自分のペースで過ごせます。
ワンオペ夜勤については、以下の動画を参考にしてみてください。
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休憩を削らないと定時で帰れない
休憩中に仕事しないと定時で帰れないため、休憩時間を自ら削っている人もいます。
この場合、そもそもタイムスケジュールに問題がある可能性が考えられます。
今の人数で適切に行える仕事量なのかを、考え直す必要があるかもしれません。
また職員によって能力に差があるため、その人に合った適切な人員配置も重要になります。
職員同士でフォローしあえる雰囲気作りも大切です。
職員一人ひとりが仕事を押し付け合うのではなく、協力して進めていく意識が求められるでしょう。
5分10分前行動が当たり前になっている
5分10分前の行動が当たり前になっているため、本来1時間の休憩が50分ほどしかとれない場合があります。
また休憩に入るのが10分遅れたとしても、戻ってくる時間は通常通りという状況も見かけます。
利用者様のことを考えて早めの行動を促しているのはわかりますが、十分な休憩が確保できないことでストレスに感じている職員も一定数いるでしょう。
与えられた休憩をしっかりとることは、利用者様に安全なサービスを提供するために必要不可欠です。
他の職員に迷惑をかけたくないという気持ちもあるでしょう。
しかし、まずは自分自身の体調を万全に整えることが介護のプロとして必要なことではないでしょうか。
介護職の休憩に関するリアルな声
ここでは、ネットやSNS上で見られた、介護職の休憩に対するリアルな意見を集めました。
昼休憩ちゃんと何時から何時までって時間決めて1時間ほしい
忙しいからじゃない理由で休憩取れない介護施設初めて見た
まともに1時間休みたい
しかも今日は日曜で職員一人少ないから休憩なしだと
仕事自体は楽なんやけど休憩ないのは別の話
それ以外は不満はないんだけど
この不満はかなりデカイ— わく@カナディ愛 (@wk__haya) May 21, 2023
結局仮眠どころか休憩すらまともに取れない夜勤だった。一晩で20回以上はトイレ誘導、介助したな。
おかげで一睡もする事なく重度訪問介護の仕事に行くはめになったわ💧— みほ@ (@MIHO1270) March 27, 2023
私特養で働いてるんだけど、職員がいなさ過ぎてやばい
介護職員としての配置じゃないのにユニットで1日フル稼働することあるし(そういう時はだいたい休憩取れない)、定期受診の対応はみんなでやろうって謎ルールあるし(看護師は着々と増えてる)
自分の仕事したい— えびふらい🍤 (@pipipi_chiho) March 24, 2023
介護に転職し特養の施設に勤務しました。人手不足で休憩は1時間取れない、入社してから30分以上過ぎないと残業付かないと言われました。
毎日5〜15分残業。
仕事内容は慣れたけど、上記の事があってモチベーション下がりまくりです。
労基署に相談したら是正勧告してくれるかな💨💨#サービス残業— m&k (@Ari73291531) March 3, 2023
この職場に勤めて6年、初めて休憩が取れた……
今まで他の施設にも勤めたけど、介護士まともに休憩取れないよね…
タイムカードもないし残業代も出ないし。おかしいと思う— 塩 (@_NOIRxROSE_) February 6, 2023
多くの介護職の方々が、休憩がとれない環境や、時間外手当がつかないことに対する不満を抱えていることがわかりました。
適切な休憩をとれる労働環境は、これからの介護人材確保の視点から考えても、非常に重要な課題と言えるでしょう。
介護職が休憩を確保するために工夫したこと
休憩時間を確保するために現場で実際の工夫の事例を5つ紹介します。
- ワークスケジュールを活用する
- リーダーとしてこまめに現場の状況を把握する
- 1時間しっかり休憩を取るように念を押す
- 個別で休める休憩室を要請する
- 分割して休憩取れるよう臨機応変に対応する
それでは一つずつ、詳しく解説していきます。
1.ワークスケジュールを活用する
職員一人ひとりが、自分のスケジュールを分単位で確認できるツールを導入することで、無駄な業務を省くことができます。
たとえば、以下のようなタイムスケジュールです。
時間 | 詳細 |
---|---|
7:00〜7:10 | 申し送り |
7:10〜7:15 | A様の離床介助、洗面、整容など |
7:20〜7:30 | B様のトイレ誘導 |
7:30〜8:00 | C様の食事介助 |
8:00〜8:05 | C様の口腔ケア |
自分がやるべきことが可視化されているため、時間の使い方が効率的になり、休憩時間の確保もしやすくなります。
ただその日の状況によって時間通り進まないことや、自分の業務以外を行わなくなるなどのデメリットがあります。
そのため、余裕ができたら他の職員を積極的にサポートする思いやりの意識が非常に重要と言えるでしょう。
2.リーダーとしてこまめに現場の状況を把握する
大規模な介護施設でよくあるのがフロアによって利用者の状態も違ったり、配置される職員の能力にも差があったりすることで、余裕が生まれるフロアもあることです。
そこで、比較的フリーで動けるリーダーがこまめにフロアの状況を確認し、必要に応じてサポートを依頼したり、リーダー自ら動くといった対応を心がけると状況が改善します。
リーダーに負担はかかりますが、まずはその日の職員に十分な休憩をとってもらうことを意識したことで「以前よりもゆっくり休めるようになった」という実感につながるでしょう。
3.1時間しっかり休憩を取るように念を押す
業務の進行状況によって、予定より遅れて休憩に入る場合があります。
多くの人は気を遣って予定通りの時間に戻ってくるため、実質1時間の休憩はとれていません。
そんな時は「10分遅れて入ったから10分遅れて戻ってきてくださいね」と同僚やリーダーが声をかけることで、気兼ねなく休憩をとってもらえます。
それでも気を遣って早めに戻ってくる職員はいますが、一言でも声をかけることで安心して休憩をとってもらえるでしょう。
4.個別で休める休憩室を要請する
こうした要望は個室がないと強く感じると思います。
休憩環境を整えることは職員の体調を管理し、利用者様のサービスの質向上にも関わるため、可能な限り快適な環境を準備するといいでしょう。
5.分割して休憩取れるよう臨機応変に対応する
利用者様の状態や人員不足など、その日の状況によって、まとまった休憩を取るのが難しい日もあります。
そのため、以下のような方法で、十分な休憩をとれるよう工夫も可能です。
- 30分を2回に分ける
- 15分と45分で分ける
- 協力しながらこまめに休憩をとる
お互い協力しながらこまめに休憩をとる取り組みは、一見ダラけてしまいそうですが、集中力を高めるには非常に効果的です。
人は長時間集中することは難しく、さまざまな活動でもポモドーロ法のような時間管理術によって、生産性が高まる結果が報告されています。
対人援助で感情労働(※)と言われる介護現場だからこそ、サービスの質を維持向上させるためにも、こまめな休憩は必須なのではと感じています。
自分の感情を抑圧しコントロールしながらする仕事を指す
介護職の休憩に関するよくある質問と回答
介護職の休憩に関するよくある質問は、以下の3つです。
- 休憩なしだと何時間働けるの?
- タバコ休憩は不公平じゃないですか?
- 休憩中に利用者様との食事を強制するのはありですか?
それぞれの質問に回答していきます。
休憩なしだと何時間働けるの?
労働時間が6時間までの場合は、休憩なしでも法的には問題ありません。
休憩が必要なのは、6時間を超える労働の場合です。
労働基準法でも、以下のように規定されています。
- 実働6時間を超える場合:最低でも45分以上
- 実働8時間を超える場合:最低でも60分以上
参考:労働基準法|厚生労働省
なお事業者は労働者に対して、仕事の途中に必要な休憩を与えなければいけません。
そのため、8時間労働の最後に60分の休憩を与える、または労働前に60分の休憩を与えてから8時間連続で働かせるといったことは法律違反です。
タバコ休憩は不公平じゃないですか?
タバコを吸う人は休憩時間以外にも、現場を離れてから5分〜10分ほど休憩をとる姿を介護現場でもよく目にしてきました。
タバコを吸わない人からすると、一見不公平に感じるのは当然です。
しかし考え方を変えてみると、タバコを吸う人だけが休憩を多くとっているわけではありません。
タバコ以外にも水分を補給したり、お菓子などの間食を食べながら談笑するシーンを介護現場で見かけることはあります。
タバコを吸う=不公平という考えではなく、記事内でも紹介したように、互いに協力しながらこまめに休憩を取り合える環境づくりが重要と言えるでしょう。
休憩中に利用者様との食事を強制するのはありですか?
労働基準法によって、休憩時間は労働者が権利として労働から離れることが保障されていなければなりません。
そのため、利用者様の食事介助や業務等が強制されている場合は、休憩とは言えません。
この場合、事業者側は労働者に対して、別途必要な休憩を与えなければ労働違反となるでしょう。
まとめ
多くの介護職が十分な休憩を取れていない現状がある中で、それが労働基準法に違反していることを自覚することが大切です。
しっかりと法律を理解した上で上司に相談すれば、いい方向に変わっていくことが期待できます。
「日々の業務に追われて休憩がとれない」「休憩時間の使い方を会社が強制してくる」などの不満を抱えている人は、本記事を参考に少しずつでも改善してみてください。
十分な休憩は自分自身を守ることはもちろん、利用者様を守ることにもつながります。
質の高い介護サービスを提供するためにも、十分な休憩時間の確保を心がけていきましょう。
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