人手不足の介護職 東京都の「有効求人倍率」をチェックすべき理由
介護現場の有効求人倍率
ニュースやハローワークなどで「有効求人倍率」という言葉を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
介護現場は深刻な人手不足に陥っていると言われていますが、その人手不足のバロメータとして用いられるのが「有効求人倍率」です。
この言葉の意味と、介護職が気にすべき理由を解説していきます。
有効求人倍率とは
有効求人倍率とは、仕事を探している人1人に対して何個の求人があるのか?ということを示す数値です。
有効求人倍率が大きければ大きいほど、人手不足であることを示しています。
「働きたいと思う人」よりも「求人数」が多いという意味になるからです。
逆に有効求人倍率が小さい場合は「働きたいと思う人」よりも「求人数」が少ないということで人が足りている職業であるということができます。
数値が1に近ければ働きたいと思う人と求人数は同じ数値であると言えます。
たとえば、厚生労働省発表によると2021年の(全国の)全業種の有効求人倍率の平均は1.16倍でした。
全業種でみると「働きたいと思う人」と「求人数」が同じということができます。
過去5年間の介護サービスの有効求人倍率は?
それでは、介護業界の有効求人倍率をみていきましょう。
厚生労働省の調査では、2021年現在で3.6倍となっています。
1人の「働きたいと思っている人」に対して「求人」が3.6個もあるということです。
全業種の有効求人倍率の平均が1.16倍であることを考えると、介護業界は他の業界と比較して、3倍程度有効求人倍率が高いことが分かります。
それだけ介護業界では人手が足りていないということがわかります。
厚生労働省:一般職業紹介状況(職業安定業務統計)よりケアきょう作成
過去3年分の有効求人倍率からわかる最近の傾向
介護サービスの有効求人倍率を、2019年から最新のものまで見ていきましょう。
新型コロナウイルスが流行した、2020年3月を境に有効求人倍率が低下。
有効求人倍率は全業種の有効求人倍率と比較すると高いままです。
「人手不足が解決した」というわけではなく、新型コロナの影響を受け「採用活動を停滞させている」という方が正しいという見方ができるでしょう。
厚生労働省:一般職業紹介状況(職業安定業務統計)よりケアきょう作成
東京都内の介護職の有効求人倍率は?
介護現場は全国的に他業種と比べても深刻な人手不足に陥っていることが厚生労働省の調査をみるとわかってきます。
特に介護現場で人手が足りないといわれている都市部では有効求人倍率はどのようになっているのでしょうか?
東京都の有効求人倍率をみていきましょう。
東京都内は他の地域よりも特に人手不足
それでは、東京の有効求人倍率をみていきましょう。
東京の「介護サービスの職業」についての有効求人倍率は、5.30倍です。
厚生労働省東京労働局:「東京の一般職業紹介状況」より
全国平均を大きく上回った数値です。
東京における「全業種」の有効求人倍率は、1.19倍です。
東京都全体が人手不足となっているのではなく、特に「介護サービスの職業」に当てはまる職業で深刻な人手不足に陥っていると言えます。
パートにおいても介護職の有効求人倍率は高い
東京の介護サービスについての有効求人倍率を詳しく見てみると、一般常用勤務(正社員)の有効求人倍率は「4.80倍」、パートの方の場合「6.11倍」となっています。
パートであっても正社員であっても東京都内では非常に多くの求人があるということになります。
東京都の介護職は全体としては、非常に人手不足である状況が伺えます。
深刻な介護現場の人手不足、政府の対策は?
有効求人倍率を見る限り介護職は他業種に比べてかなり深刻な人手不足の状況です。これから高齢化がさらに進むと予測される中で、政府も対策はすすめています。その中には現在介護職である人の給与をよくして介護の仕事をより魅力的なものにする処遇改善の政策、また未経験の方をどんどん介護職に呼び込もうという政策などがあります。
詳しくみていきましょう。
介護職の処遇改善を政府がすすめる
介護現場の人手不足状況を改善するために、政府はも介護現場に対して色々な支援を要望しています。
介護職のキャリアアップの仕組みづくり・職場環境の改善・賃金の手当などを主な目的として介護職の処遇を改善するため、事業所に支給されています。
処遇改善手当についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
介護報酬の見える化
他にも介護報酬の見える化なども行われています。
介護報酬は不透明で現場の介護職がやりがいを見出せないという声が数多くあがっています。
介護報酬の見える化が現場でどのようにすすんでいるのか?
こちらの動画をご覧ください。
未経験の初心者を介護職にする政策
また、無資格・未経験の方を介護現場に呼び込むためハローワークや自治体が主催して初任者介護職への再就職を増やすための準備金などの支援等が行われています。
初任者研修を無料で受講する方法についてはこちらの記事をご覧ください。
現場の介護職が行うべきことは?
全国的に有効求人倍率をみると、介護職では他業種に比べて3倍も人手がたりない状況に陥っていることがここまでわかってきました。
政府もさまざまな支援策をおこなっていたりしていますがまだまだ追いつかず、これでは介護現場でブラックな職場が発生してしまったり、夜勤の担い手がいなかったり、1人でたくさんのご利用者様を見なければならない状況がでてくるのも当然といえるでしょう。
実際に今介護現場で働いている介護職はこの状況でどうしていけばいいのか?考えていきましょう。
対策①
介護系の資格を取得すること
人手不足の中で現役の介護職ができることの1つめは、介護系の資格を取得することです。
人手不足の対策として加算が追加されたり新たな処遇改善手当が付与される時も、例えば国家資格である介護福祉士を持っているとその恩恵を大きく得ることができるケースが多数あります。
既に介護福祉士の資格を持っていると、処遇改善加算とは別に優秀な人を呼び込むために資格加算を設定し、月額数千円から数万円も給料がアップするという法人もあります。
介護福祉士などの資格は取得するためにお金や時間がかかり、面倒に感じる介護職もいるかもしれません。
ただ、今はまだまだ介護職が足りない状況なのでたくさんの自治体の補助も用意されており、前述したように加算ものぞめる状況です。
もし数年でも介護の仕事を続けようという気持ちであれば、初任者研修や実務者研修、介護福祉士の資格は取得しておけば必ずあなたのメリットになります。
対策②
ブラックな施設に居続けない
2つ目は、ブラックな施設に居続けないことです。
今勤めている施設が深刻人手不足だから、という理由で利用者のためを思って、責任感から転職はできないと思うかもしれません。
有効求人倍率が高いからこそ、今は「介護職が求人を選ぶことができる」時代です。
介護職の責任感を利用して、賃金を徹底的に下げ、不当な労働環境を強いるような法人も悲しいことに存在するのが事実です。
もしもあなたの勤め先が不当な残業を強制する、パワハラやモラハラがある、ご利用者様にひどい対応をするなどの事象がある場合我慢をしているうちに心身を壊してしまうかもしれません。
無理して心に傷を負うよりも、転職も検討するようにしましょう。
よりよい待遇を得られるかもしれません。
対策③
ブラックな施設に居続けない
3つ目は、転職するときは、しっかり検討することです。
有効求人倍率が高いといっても、あまりオススメできないような施設の求人も出ています。
転職をするときは、どの施設が自分にあっているのか?ブラックではないのか?をしっかりと見極めることが重要です。
雇用条件や手当の有無、働いている人の様子や評判などをしっかり検討するようにしましょう。
まとめ
全国的に有効求人倍率をみると、介護職では他業種に比べて3倍も人手がたりない状況に陥っていること、東京都内では5倍もの人手が足りない状況にあります。
やはり政府の支援策はなかなか数年では追いつかないことが予想されます。
しっかり自分の身を守りながら上手にこの状況を利用していきましょう。